遊戯王の世界で遊戯王プレイヤーたちが遊びだしたようです。   作:だんご

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マスターデュエルでおじゃまを作成していたら、なんか続きができていました。
60枚デッキになり、トライブリゲードと合わさったら強いってことで、結果的にはABCおじゃま鉄獣戦線になったわけですが……。

おじゃまキングもナイトもカントリーも抜けた今、このデッキがおじゃまデッキと言っていいのだろうか。
ハリケーンが入っているから、ギリセーフだと思いたい。

今回処理に困ったカードがありますが、ノリでいきます(´・ω・`)


このカードの性質上、やむを得ないことです。

 異空間に設えられた、オサレなサ店。

 

 そこで椅子に腰かけ、テーブルにノートと本を広げた一人の美女。

 優雅にコーヒーをたしなみながら、「ふむ」と一言。口から漏れ出た音の響きはなんとも心地が良く、気品を感じさせる。

 

 その女性は何かに納得したのか、本から視線をノートに移し、その細い指でシャーペンを握ると書き込んでいく。

 

 「あ、ヌメヌメエッチなの」

 

 そして盛大に頭をテーブルにぶつけた。

 おでこを赤くし、さすりながらなんとかといった様子で顔を上げる。

 

 「エイリアン☆エイリアンさん、その、申し訳ないのだけど、その呼び方はやめてくれないかしら?なんか、ほら、恥ずかしくなってくるのよ」

 

 端正な顔立ちであるが、どこか残念な雰囲気を醸し出している美女の声は震え気味。

 エイリアン☆エイリアンと呼ばれた銀髪の幼い少女は目を見開き、「なんかごめんなの」と謝った。

 

 「あれなの、対魔忍と同じ類と思ってたの。だからむしろネタにしないと失礼だと思ってたの」

 

 「いや、最初はそうだったのだけど……」

 

 気まずげに顔をそむけるヌメヌメエッチに、頭に?を浮かべるエイリアン☆エイリアン。

 

 「流石に野郎の体ならともかく、この体でその名前だと思うと段々と恥ずかしくなってきちゃって……」

 

 「それは……ドンマイなの」

 

 「掲示板ではコードネームがもう変えようないらしいし、身勝手なお願いではあるのだけど、対面の時ぐらいはヌメロンとかそっちの名前で呼んでもらえたら嬉しいわ」

 

 体と魂を紐づけする関係で、コードネームの変更が効かない。

 

 その事実を最初は甘く見ていたのだが……。

 

 この出るところが出ている立派な体。

 そして鏡に映る氷のように白く、美しい顔を見る回数が増えれば増えるほどに、ヌメヌメエッチはなんかもう後悔が半端なくなってきた。

 

 常人が変態のふりをしてはいけない、そんなお手本となるべき人物がヌメヌメエッチである。

 

 対魔忍?

 あれはむしろバーチャルの世界でしか発揮できない性癖を思う存分発揮しているので、気にするだけ損。

 

 「了解したの。ところで、こんなところで何をしているの?ノートに本だなんて、デュエルの勉強でもしているの?」

 

 「いえ、リアルの資格の勉強をしていたのよ」

 

 たまたま会社で資格をとることになり、勉強をする時間が必要になった。

 

 そこで最初は自宅で資格の勉強を行っていたのだが、ある時ふと気分を変えたいと思い立ち、管理人が作り上げた遊戯王世界の異空間へ。

 

 ここはチーム俺たちであれば、ドリンク・軽食が無料のサ店が存在する。

 景観を見るに、どちらかといえばラウンジの方が言葉があっているのかもしれない。

 ではなぜサ店なのかというと、「サ店に行くぜ」と言った某決闘王のせいである。

 

 店員・時間を気にすることなく、無料の飲食が利用できることはとてもありがたい。

 ヌメヌメエッチはそのような理由で、たびたび勉強のためにここを使っていたのだが……。

 

 「この肉体のスペックがいいからか、この世界で勉強をするとね、すらすらと頭に入ってくるのよ」

 

 魂に肉体が引っ張られ、肉体に魂が引っ張られる。

 

 管理人によって作られた肉体は、原作世界のデュエリストの肉体でありとても頑丈。

 さらに設定によって基本的な能力がモリモリになった結果、チーム俺たちの肉体は現実のものとは比べ物にならないぐらいに高スペックになっていたのである。

 

 もっとも、スペックだけ上がったところで、中身がチーム俺たちであることに変わりがない。

 そのため、残念なところは残念なままである。ソースは誇り高き対魔忍。

 

 「こっちで覚えたことは、現実に帰った時に向こうでも覚えていることができる。なら学習能力がとても高い、この女性の体で勉強した方がとても効率がいいのよ」

 

 「……確かに、仕組みはわからないけれど、こちらでデュエルのために体を鍛え始めてからは、現実でもすごく体の調子がいいの」

 

 「このガワの中にいる間に魂が磨かれ、現実世界で私たちの体を補正してくれているのかもしれないわね。想像でしかないのだけれども」

 

 「いい話を聞いたの。今度管理人や他の俺たちにも教えてあげた方がいいの」

 

 記憶能力と情報処理能力、そして身体能力は望んでも中々手に入らないものだ。

 それがここでは持つ側として思う存分能力を奮い、自身を磨くことができる。

 仕事をする人間にとっても、学生にとっても嬉しい話に違いない。

 

 「ところで、エイリアン☆エイリアンさんはどうしてここに?」

 

 「これから金髪ドリル令嬢と生放送デュエルなの。軽く飲み食いしたくて、ここの存在を思い出したの。利用は初めてなの」

 

 その言葉にヌメヌメエッチは何とも言えない表情になる。原因は明らかだ。

 

 「……よりにもよってあの子なのね。気をつけなさい。ここに来てから一番最初に、エクゾディアを使ったのはあの子よ」

 

 他の俺たちが思い入れのあるデッキや、可愛いカード、ロマンカードをソリッドビジョンで楽しもうとする中で、真っ先にエクゾディアに飛びついた俺たちがいた。

 

 頭の中で高笑いする金髪ドリル令嬢の姿に、二人は互いに苦笑して、うなずき合った。

 

 「昨日、面白いデッキが出来たって騒いでいたから、きっとろくでもないやつなの。ま、楽しんでくるの」

 

 「あなたは何を使うの?愛用はエーリアンだったわよね?」

 

 「シンクロやリンクが使えない中で、はりきっている金髪ドリル令嬢を相手にするのはちょっと不安が残るの。あいつ相手なら、他の使っている未知との遭遇デッキでいくの」

 

 「ふふ、楽しみに待っているわね。そうだ、そっちが終わったら私とデュエルしない?もちろん、OCGの基準でね」

 

 「上等なの、シンクロ・エクシーズ・リンクを使うのはやっぱり楽しいの」

 

 会話が弾んで楽しそうな銀髪の幼い美少女と、クールビューティーなお姉さま。その中身は俺たち。

 

 「ここを使い慣れていそうなヌメロンに、ここのおすすめを聞きたいの」

 

 「そうね、ここはブレンドコーヒーがオススメよ。クラブハウスサンドも美味しいけれど、女性のガワなら甘いものが好きになっていない?」

 

 「確かにそうなの。この体は辛いしょっぱいより、甘いものがいいの」

 

 「ならフレンチトーストがオススメね、甘くて美味しいわ。コーヒーとも相性抜群よ」

 

 「めっちゃ旨そうなの。それにするの。ありがとうなの」

 

 口によだれがたまり、エイリアン☆エイリアンはとてとてと急ぎ足でカウンターへ。

 少し高く感じるカウンターは、この小さなガワのせいだろう。

 良いことばかりのガワだが、こればっかりは困りものだと、身を乗り出すようにしてカウンターに乗っかった。

 

 「注文を、お願い……したいの」

 

 コックハットを被った【モリンフェン】がいた。

 

 エイリアン☆エイリアンは思考が止まる。

 

 もちろん、目の前の情報は正しく確認出来ている。

 しかし、高スペックな肉体と脳にも関わらず、何が起こっているのか上手く情報が処理できていない。

 

 ふと横に視線を動かせば、【エンゼル・イヤーズ】と【シーホース】も頭にコックハットを被っていた。

 

 オールスターズである。なんの冗談だ。

 

 『注文は?』

 

 「こ、こいつ。直接脳内に……っ!?ふぁ、ファミチキくださいなの」

 

 『すいません、権利の関係でご提供できません』

 

 「こんなにふざけているのに、そこは真面目なの!?」

 

 慌てて後ろを見れば、ヌメヌメエッチがニヤニヤと笑っている。

 

 こいつ、と思った。きっと分かっていたのだろう。

 エイリアン☆エイリアンは負けじと顔を引き締め、心はワクワクしながら注文の覚悟を決める。

 

 「ブレンドコーヒーと、フレンチトーストなの……ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 普通にめっちゃうまかった。

 エイリアン☆エイリアンはなんか悔しくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『あの、大丈夫ですの?調子が悪いのでしたら、他の方をお呼びいたしましょうか?』

 

 向かい合う二人の表情は正反対。

 片方は困惑、片方はなぜか落ち込んでいる。

 

 『……気にしなくていいの。おかしいの。あいつら、あの手?爪?蹄?でどうやってあれを作ったの。不可思議なの』

 

 『……ほんとに、大丈夫ですの?』

 

 『いいからやるの、この理不尽はデュエルで発散するの』

 

 『よくわかりませんが、ならばよしですわ!』

 

 『『デュエルッ!!』』

 

 

 

『始まったぞ!』

『今日は……また見たことないデュエリストたちだ!』

『おいおい、いったい裏デュエルは何人凄腕のデュエリストを抱え込んでいるんだ!』

『あの小さい子かわいいわね!』

『ふむ、立派な金色のカール。それにあの振る舞いはどこかの貴族のお嬢様かな?』

 

 

 

 『おーほっほっほ!先攻はわ・た・く・し!わたくしは手札から【王家の神殿】を発動いたしますわ!』

 

 華美なドレスに身を包み、きらきら輝く金髪は縦カール。

 まるでどこかの貴族のお嬢様のようなデュエリストが、声高らかにカードを発動すると、空間が一瞬にしてエジプトの古代の遺跡に変貌。

 荘厳なアトモスフィアがフィールドを包みこむ。

 

 対する銀髪の幼い少女は顔を憎々しげに歪めながらも、目をキラキラと輝かせた。

 

 『めっちゃきれいなの。エジプトチックはデュエルモンスターズのだいご味なの』

 

 『ですわね!いつかエジプトに聖地巡礼にいきたいものですわ!』

 

 『でもこれ、絶対エラッタ前使ってやがるの、ざけんじゃないの』

 

 『あったりまえですの!王家なのですから、景気よくいかなければ詐欺同然!【天使の施し】を発動!3枚引いて2枚捨てる!そして手札から墓地に送られた【代償の宝札】を発動!デッキからカードを2枚ドローいたしますわ!』

 

 『おい、やめるの。それは絶対やったらいけないやつなの』

 

 『こんな気持ちのいいこと、絶対にやめられませんわ!とまりませんわ!かっぱえびせんですわ!』

 

 『微妙に庶民感覚露呈しているの、しっかりするの』

 

 『ですわ!?』

 

 

 

『最初から【天使の施し】なんて、手札事故か?』

『仲良さそうだなぁ』

『出てくる裏デュエルの人たちって、みんな基本は美男美女で驚くわ』

『鼻の下のばしていると、すぐに死ぬぞ。この前のワイト事件を忘れたか』

『忘れられるかあんなもの。あの翌日、世界のネット検索ワードランキング1位がワイトになったんだぞ?ニュースになって笑ったわ』

『公開されたドルイドガールのプロフィール、嫌いなものの項目にワイトって書かれてて笑った』

『てか、ドルイドガールって、魔女っ娘ってコードネームだったのな』

『どうせこの子たちも、プロも真っ青のデュエルタクティクス持ちなんだろうよ』

『これだけ綺麗ですごいデュエルできるんだから、大きな大会にも参加してくれたらいいのに。絶対に盛り上がるしいい成績残せるだろ。会ってみたいなぁ』

『優勝も狙えるんじゃない?』

『そしたら絶対にサインもらいにいくわ』

『てか、さらりとバトルシティで使われた超レアカードを使っている件』

『裏デュエルではプロですら見たことないカードが使われること多いんだから、もう今更だろ。俺は慣れない』

『慣れないんかい』

 

 

 

 金髪お嬢様は【代償の宝札】によってドローしたカードを確認。満足げにほほ笑む。

 

 『わたくしは手札から魔法カード、【魔術師の書庫】を発動!自分のデッキから好きな魔法カードを1枚を手札に加えますわ!』

 

 銀髪の幼い少女の動きが止まる。

 

 そんな様子を不思議そうに首をかしげながら、金髪お嬢様がデッキからカードを手札に加えた。

 なんとも言えない空気感になっているが、銀髪の幼い少女は震える手で金髪少女に指をさす。金髪お嬢様の頭の上には【?】が。

 

 『つ、続きの効果処理を早くするといいの』

 

 『……え、いや、あのそんなものはありませんわよ』

 

 『嘘つけなの、さっさとコストで手札を全部除外とかするの』

 

 『そんな酷いデメリットはこのカードにありませんわよ!?というか【魔術師の書庫】の効果は説明した以外にございませんわ!?』

 

 『ボールペンくれてやるからデメリット書き込めなの。頭おかしいの。そんなん許されていいわけないの。ぶっとんでるの』

 

 『おーっほっほっほ!由緒正しい主人公の使用カードですわ!ガッチャ楽しいデュエルですわ!』

 

 

 

『銀髪ちゃん、なんかめちゃくちゃぶちぎれている模様』

『確かに強力なカードだが……うん』

『なんていうか、年齢相応に子供って感じがする子がようやく出てきてくれて安心したわ』

『ジュニアデュエルなんて、怒ったり泣いたりが普通だもんな。これまで闇デュエルに出てきた子たちが、年齢の割にみんなやばいんだわ』

『魔女っ娘も普通に伝説のカード、ブラックマジシャンを何回も特殊召喚してくるからね。すごいよ彼女は、是非大会で彼女の雄姿と黒魔導士の活躍を見てみたいよ』

 

 

 

 試合場には現在流れているコメントが確認できるのだが、銀髪の幼い少女はコメントを見て「お前らマジかよ」と驚愕。

 金髪お嬢様も悩まし気に苦笑している。

 

 『ま、まぁ。わたくしも気持ちはわかりますわ。続けてもよろしくて?』

 

 『これが、世界観からくるギャップなの。異文化交流の難しさを改めて痛感するの。ごめんなの、続けていいの』

 

 『ありがとうですわ、それじゃカードを1枚セットして、そのまま永続罠カード【棺桶売り】を発動しますわ』

 

 『む、まさかのカードなの。確か相手のモンスターカードが墓地に送られた時に300ダメージ───』

 

 『違いますわ。この【棺桶売り】、モンスターカードに限らず、相手のカードが墓地に送られた時にそのカード×700ダメージを相手に与える効果ですわよ?』

 

 『おい、カメラ止めろなの』

 

 プリプリと怒り始める銀髪の幼い少女の姿に、コメント欄は裏デュエルらしからぬほんわかな流れになっている。

 

 しかし、銀髪少女にとってはそうはいかない。

 

 『まさかの顔芸神カードなの?というか、そんなやばいカードだったとは知らなかったの。バトルシティで直接攻撃系魔法が全部禁止にするなら、そいつら罠系バーンも軒並み潰せなの。絶対に許すななの』

 

 『まぁ、罠カードは1ターンの猶予があるから許されているのでしょうね』

 

 『その罠カードが今、1ターン目の、この場で発動しているんですがそれはなの』

 

 『王家ってすごいですわね』

 

 『王家ってクソなの』

 

 顔を手で覆って震える銀髪の幼い少女、視線を虚空にさまよわせる金髪お嬢様。

 

 一方、コメント欄はマジックコンボだと盛り上がっていた。

 

 アニメではシャークさんが攻撃力アップ魔法カードを使っただけでマジックコンボになったので、まぁこんなものである。

 少女のメンタルライフはもうゼロだ。

 

 『さて、先ほど手札に加えさせて頂いた魔法カードを発動しますわ』

 

 『さっさと来いなの。もうこれたぶん、私は終わったの。ドロールアンドロックバードはデッキで遅刻してるし、ハネワタは休暇取ってベガスで遊んでいるの』

 

 『【魔法除去細菌兵器】を発動しますわ』

 

 『ほんとろくでもないカードしか出てこないの!?』

 

 銀髪の幼い少女は白目をむいて絶叫した。

 

 少女の髪と同じ色の物々しい細菌兵器がフィールドに出現。照準を少女へと向けた。

 そのリアクションに視聴者たちは困惑を見せるが、一部の視聴者はその恐ろしいコンボの全容を理解し、驚愕。

 

 

 

『【魔法除去細菌兵器】ッ!?あれはバトルシティで海馬社長が使用した幻の魔法カードッ!?』

『あのカードの効果は、まさかッ!?』

『嘘だろ、あのお嬢様、やりやがった!!』

『え、あの、何が起こってるの?』

『魔法カードが銀髪のお嬢さんのデッキから消し飛ぶんだよ!大変だ!』

『おいおい、逆転のカードがなくなっちまうじゃねぇか!』

『違う、違うんだ!それだけじゃない!場にはあのカードがある、つまり……ッ!』

 

 

 

 コメントの一部に理解者が現れたことで、金髪お嬢様はニンマリと嬉しそうに微笑む。

 彼女はこのような目立ち方が大大大好きであった。

 

 『【魔法除去細菌兵器】は相手の手札の魔法カードをすべて墓地に送り、そして相手のデッキから10枚のマジックカードを墓地に送りますわ!!』

 

 『そして場には、【棺桶売り】があるの……っ!』

 

 『そう、この【棺桶売り】はどこぞのへなちょことは違い、同時にカードが墓地に送られてもちゃんとカードの枚数分ダメージを与えますわッ!デッキからも手札からも、送られた数×700のダメージを与えますわ!』

 

 『うわぁ、もうドン引きする以外に何もないの』

 

 『わたくしたちのデュエルのライフは4000ッ!さぁ、【魔法除去細菌兵器】さんやぁっておしまいッ!』

 

 勝利を確信した金髪お嬢様の高笑いと共に、【魔法除去細菌兵器】が細菌ビームを発射した。

 既にコメント欄は先攻1ターン目1ターンキルの可能性に阿鼻叫喚。

 

 容赦のない残酷な金髪お嬢様のデュエルに、コメント欄にいる全員が地獄をのぞいた気持ちになっている。

 

 魔法カードはデュエルの要であり、どんなデッキであっても最低10枚は入っているといっても過言ではない。

つまり、ほぼ確実に少女はこのターンで敗北する。

 

 銀髪の幼い少女に細菌ビームが着弾。

 そして【棺桶売り】の効果が発動。

 

 金髪お嬢様は良い仕事をしたと額の汗をぬぐい、コメント欄はデュエルの諸行無常によりお通夜状態。

そして少女のライフは───

 

 

 

 

 

 

 

 『……はい?』

 

 『めっちゃくちゃ危なかったの。このデッキで良かったの』

 

 金髪お嬢様は、口を開けて呆然とたたずむ。

 少女のライフは尽きていなかったのだ。

 

 少し全身がすすけているものの、少女は恐ろしい【棺桶売り】の効果を乗り切ったのである。

 

 

 

『おおおおおおお!』

『すごい、先攻1ターン目では、防げるカードはなかったのに!』

『ライフポイントは……1900!?』

『え、てことはあの子のデッキには魔法カードが3枚しか入っていないってこと!?』

『おいおい、お嬢様もすごいが、あの子もとんだヤンチャガールじゃないか!』

『デッキに魔法カードが3枚!?え、3枚!?』

 

 

 

 『え、3枚?え、えー?マジですの?なんのデッキですの、それ?』

 

 『さ、続けていいの』

 

 『ぐ、手札抹殺があれば決めきれたのですが……。仕方がありませんわ。プランBですわ!手札から【デビルズ・サンクチュアリ】を発動!場にメタルデビル・トークンを特殊召喚し、リリースッ!アドバンス召喚、現れなさい、【威光魔人】ッ!』

 

 『うわー……やっばいやつが来たの』

 

 光を放ち、不敵に微笑む魔人がフィールドに降臨。

 しかもまだまだ、金髪のお嬢様には手札がある。

 

 『【威光魔人】は全てのモンスター効果の発動を無効にする!さらに手札から【死者蘇生】を発動、【天使の施し】で墓地に送っていた【人造人間サイコ・ショッカー】を特殊召喚しますわッ!』

 

 『【人造人間サイコ・ショッカー】……ッ!エスパー絽場、城之内のフェイバリットカードッ!く、格好いいの!』

 

 『分かりますわ!このデザインは超クールですわ!』

 

 王家の神殿の前に、モンスター効果の発動を許さない悪魔と、罠カードを許さない人造人間が並び立つ。

 その威圧感に少女の額からは汗が流れ落ちるが、ふと感じた疑問を問いかける。

 

 『あれ?でもいいの?【人造人間サイコ・ショッカー】を出したら、【棺桶売り】の効果が無効化されて───』

 

 『何をおっしゃいますの。この【人造人間サイコ・ショッカー】はレベル7、つまり無効化されて破壊されるのはあなたのフィールドの罠カードだけですわ。まぁ、無効化のみであり、効果発動による破壊は、【威光魔人】によってされなくなってしまいますが』

 

 『原作インチキ効果も大概にするのッ!』

 

 

 

『めっちゃ有名なカード【人造人間サイコ・ショッカー】の効果をしらない銀髪の子かわいい』

『いや、それどころじゃないだろ。なんだあのお嬢様のフィールド』

『つまりこれって今どうなってるの?』

『【威光魔人】ってカードの効果で、あの銀髪の子はモンスターの効果は発動できない』

『【人造人間サイコ・ショッカー】の効果で、あの子のフィールドで発動した罠は全て無効化される』

『そんな状態であのお嬢様のフィールドには【棺桶売り】が発動しているので、あの子はライフの問題で2枚しかカードが使えない』

『あと【魔法除去細菌兵器】のせいで、手札もデッキも魔法カードはボロボロ。まぁ、3枚しか入っていないようだけど、代わりに入っているだろう罠がもう使えない』

『その上、お嬢様の場には伏せカードが1枚。まず間違いなく相手の攻撃を防ぐ魔法か罠だろうな』

『なんだこの悪魔のフィールド……』

『え、【威光魔人】がいるから【人造人間サイコ・ショッカー】のモンスター効果は無効で、罠は使えるんじゃないの?』

『効果の発動を無効であって、【人造人間サイコ・ショッカー】の罠無効化の効果は健在だ。罠破壊の能力は発動を封じられたがな』

『そんなのどうやって勝てばいいんだよ!?』

 

 

 

 恐ろしいカード、凶悪な効果にコメントの流れが早まっていく。

 視聴者の数は既に20万を超えたが、まだまだ視聴者の数は増え続けていく。

 

 お嬢様のデュエルタクティクスに誰もが戦慄し、同時に相対する幼い少女に同情が集まる。

 生放送に集まった視聴者たちの誰もが、すでに少女の敗北とお嬢様の勝利を確信する中で。

 

 デュエルを行っている二人だけは───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ドローなの』

 

 ───敗北も、勝利も確信していなかった。

 

 

 

 

 

 

 『ラストターンなの』

 

 少女の宣言。

 それによって動画の視聴者は少女のサレンダーの可能性を考え、彼女への憐れみと暴虐無人なデュエルを行ったお嬢様への恐れを抱く。

 

 そして対面し、宣言されたお嬢様はというと……。

 

 『だ、【大天使クリスティア】さえ来ていればッ!?』

 

 絶望の仮面を貼り付け、少女の氷のように冷たい視線に一歩後ずさる。

 

 金髪お嬢様の苦悶に満ちた声に、視聴者は困惑を隠せない。

 どう考えても敗北するほどに追い詰められているのは、この圧倒的な盤面を整えられてしまった銀髪の少女の方である。

 

 少女のライフはすでに半分以下の1900。

 にもかかわらず、何故お嬢様が追い詰められているのか。

 いったい、この二人には何が見えているのだろうか。

 

 『その反応、余裕のなさ。伏せカードは【和睦の使者】や【威嚇する咆哮】のような延命カードではないとふんだの。金髪ドリル令嬢は顔にでやすいの』

 

 『かまをかけましたの!?ずるいですわ!?』

 

 『カードゲームは心理戦なの。さて、これで安心してモンスターをリリースするの』

 

 

『……はい?』

『モンスターを生贄にする?おい、あの子のフィールドには1枚もカードなんてないじゃないか』

『まさか【クロスソウル】!?』

『いや、魔法カードの発動なんてなかった!第一、【魔法除去細菌兵器】で彼女のデッキにはもう魔法カードはないッ!』

『じゃあ、いったい彼女は何を……って!?え!?』

 

 

 

 困惑するコメント。

 そして【はにわ】のような絶望顔のお嬢様、無表情ながらもどこか満足げな顔の少女。

 

 リリースされかけている【威光魔人】は早い退場に困惑気味であり、【人造人間サイコ・ショッカー】は相方に首を横に振っている。

 

 『や、やっぱり持ってやがりましたのね!?わたくしの、【威光魔人】が!?』

 

 『相手のモンスターをリリースして、特殊召喚』

 

 【威光魔人】が生贄召喚のエフェクトと共に消失。

 代わりに大きな巨影が生贄召喚のエフェクトの奥に出現。

 

 

『は?』

『これは、相手の場のモンスターをリリースだって!?』

『なんだと!?』

『ラヴァゴーレムか!』

『いや、1体だけだぞ!?』

 

 

 

 『現れるの、【海亀壊獣ガメシエル】』

 

 

 雷鳴のように轟く咆哮が、フィールドに響き渡った。

 

 海亀のような大怪獣の出現に、お嬢様は死んだ魚のような目でそれをお迎え。

 親の顔より見た怪獣、いや壊獣の姿に様々な走馬灯がお嬢様の脳裏をよぎっていく。

 

 その心は───「あ、これ死んだわ」。

 

 『相手のフィールドに壊獣がいるので、私のフィールドに壊獣モンスターを手札から特殊召喚できるの。来るの、【怪粉壊獣ガダーラ】』

 

 そして現れるのは2体目の怪獣。

 

 互いに相対した壊獣たちが威嚇し、鱗粉と塩気が含んだ暴風がフィールドに吹き荒れる。

 映画顔負けな大怪獣バトルの様相を呈してきたフィールドに、お通夜状態になっていたコメント欄は瞬く間に活気が戻っていく。

 

 

 

『で、でかい!』

『なんじゃこりゃ』

『さぁ、もうよくわからん!』

『え、怪獣映画?なんだこのフィールド』

『なるほど、強力なモンスターを送りつける代わりに、どんなモンスターでもノータイムで除去ができるのか。まさに諸刃の剣だね』

『よくわからないけど、なんかすげぇ!格好いい!』

 

 

 

 『さぁて、これで厄介な【威光魔人】は消えたの』

 

 『あの、わたくし、もうだいたいは分かっているのですが、そのデッキに罠カードって入っていますの?』

 

 『ゼロに決まってるの』

 

 『そうですわよね!?墓地の魔法3枚って絶対に【雪花の光】ですものね!?【未界域壊獣カグヤ】とか、4000のライフポイントでやっちゃいけないデッキじゃありませんこと!?』

 

 『マリク様コンボをやらかそうとしたお前に慈悲は無用なの。私はさらに【棺桶売り】を墓地へ送って、手札から【トラップ・イーター】を私のフィールドに特殊召喚するの』

 

 『私の生命線が、ついでとばかりにぶち切られましたわ!?』

 

 【棺桶売り】を食い破って大口のモンスターがエントリー。

 お嬢様のフィールドにあった恐ろしいモンスター、凶悪な罠カードがあっという間に沈黙してしまう。

 

 そのスピード、逆転劇にコメント欄の盛り上がりが頂点に達し、少女への応援コメントがすごい勢いで流れていく。

 

 それを見た金髪お嬢様は目を白黒させた。

 

 『ちょ、視聴者の紳士淑女の皆さま!?少しはわたくしを応援してくれてもよろしくてよ!?私のコンセプトは悪役令嬢ではなくって!?』

 

 『やっていることを考えると、完全な自業自得なの。ざまぁすることなく普通に沈んでいくがいいの。私はさらに手札から【未界域のビッグフット】の効果を発動するの。さ、好きな手札を捨ててあげるから言ってほしいの』

 

 『え、選びたくありませんわ!右から2番目ですわ!』

 

 『選択されたのは【未界域のサンダーバード】なの。それを捨てて【未界域のビッグフット】をフィールドに特殊召喚し、1枚ドロー。ついでに墓地に落ちたサンダーバードの効果で、そのセットカードを破壊しておくの』

 

 『私の最後の命綱の【神風のバリア─エア・フォース】がッ!?』

 

 『……ミラフォじゃないあたり、やっぱりこいつガチなの。危険なやつなの』

 

 突然手札から大猿が現れて胸を打ち鳴らし、墓地から飛び出した謎の大鳥がお嬢様のセットカードに雷を落として消えていく。

 

 

 

 

『なんだ、何が起こっているんだ!?』

『わからない!だがお嬢様のフィールドはもうボロボロだ!』

『あの子のフィールドにもうモンスターが3体もいるぞ!対してお嬢様のフィールドには王家の神殿とサイコショッカー、そして大怪獣しかいない!』

『しかも既に場の2体は相手モンスターに攻撃力で勝っている、あと一歩だ!がんばれ!』

 

 

 

 『手札の【未界域のサンダーバード】の効果を発動したいの。さ、好きなのを選んでいいの』

 

 『ええい、今は悪役令嬢が微笑む時代なのですわ!右から、1番目!』

 

 『自分で名乗ったらせわないの。……ちぇ、大当たりなの。既に効果を使っているサンダーバードはそのまま墓地に送られるの。中々回らないの』

 

 『せ、セーフですわ。ざまぁはされませんわ!かろうじて、かろうじて命を拾いましてよ!』

 

 『仕方がないの、運がなかったの。なら山札の上を8枚除外して、手札から【機巧蛇─叢雲遠呂智】を特殊召喚するの』

 

 『命を拾ったと思ったけど、別にそんなことはありませんでしたわ!?』

 

 少女のフィールドにいるモンスターは4体。

 

 大猿が手をぽきぽきと鳴らしてこぶしを温める。

 それに続いて蛾の怪獣が目を爛々と輝かせながら鱗粉をまき散らす。

 罠食いの悪魔が歯を打ち鳴らし、機械龍が3つの頭から光線を放つ準備を整えた。

 

 対するお嬢様のフィールドにいる亀の怪獣は、唸り声を上げているがどこか及び腰であり、人造人間は顔を青くするお嬢様を守るべく一歩前に進み出る。

 

 お嬢様のモンスターを倒してもなお、相手のライフを削りきることが可能であるモンスターたちを前に、お嬢様はというと。

 

 『……く、殺せですわ』

 

 『なら遠慮なくいくの。4体で攻撃なの』

 

 『ちょ、もうちょっと風情を大切にしてくださいまし!?』

 

 『1KILL未遂犯にかける情けはないの』

 

 『ごもっともって、やな感じバイバイキンですわぁぁぁぁぁぁぁッ!?』

 

 蛾の怪獣が放った鱗粉が亀の怪獣を破壊。

 大猿のパンチが人造人間をぶん殴り、その長身を爆散させる。

 そしてその奥から飛び出した機械龍、大口の悪魔にフルボッコにされたお嬢様は爆発。諸行無常。

 

 ぷすぷすと煙を放ちながら倒れ伏すお嬢様を背景に、銀髪の少女がふんすと胸を張った。

 

 映像ではこの逆転劇を見せてくれた少女へたくさんの声援、応援のコメントが寄せられている。

 その中には著名人、有名デュエリストの反応もあり、それが呼び水となってさらに動画は盛り上がりを見せていった。

 

 

 

 

 

 

 ……そして、このデュエルを見ていたデュエリストたちの心の中に、大きな闘争心が燃え始めていた。

 

 

 この裏デュエルのデュエリストたちは、全員本名も不明、経歴も不明。

 しかし、そのデュエルタクティクスが本物であることは、動画を見る限り疑いがないだろう。

 ならば、デュエリストとして彼らと戦いたい、デュエルしたいと思うことは当然。

 

 本心からデュエルをしたい者。

 有名になってきた『チーム俺たちの裏デュエル』や、『にやにや動画』に関わりたいと思った者。

 裏デュエルのデュエリストを倒すことで名を上げたい者。

 裏デュエルで使われたカードを欲する者。

 

 様々な思惑がある人々は、『チーム俺たちの裏デュエル』が望む望まないに関係なく、自らの誇りや欲望を胸にアプローチを始めていったのであった。

 




◎ヌメヌメエッチ

残念クールビューティー。
中の人は真面目なので、一週間ほどでコードネームにネタよりも恥ずかしさの方が上回った模様。

途中で醒めて悶えてしまう設定や、変更がきかない名前は絶対に止めましょう。
名前に「♰」を使うことは自由ですが、覚悟をちゃんと持つべきです。

デッキはラスボス系のようなカードが多い。

◎エイリアン☆エイリアン

銀髪不思議系少女であり、本人曰く、タッグフォースレイン恵リスペクト。
語尾をつけることは、ロールプレイの基本。
でも流石にティラノ剣山クラスまでは頑張れなかったようだ。

デッキは爬虫類や、不可思議っぽいカードテーマが好き。

◎金髪ドリル令嬢

チーム俺たちのヤバいやつ一号。

お嬢様ロールプレイは一度やってみたかったが、高笑いによる咽喉の痛みが深刻なため、最近は飴を必ず携帯している。

プレイスタイルはデュエルリスペクト皆無。
カードを回すことが楽しい、気がついたら相手の目が死んでいる。
でも負けることも楽しいらしいので、周りも遠慮なく彼女にはソリティアを仕掛けて大丈夫です。

◎最初から【天使の施し】は手札事故

そうなんだって。遊戯王Rで言っていたよ。
だからみんなも手札事故が起きないように、【天使の施し】の禁止からの復帰を祈りましょう。

◎ガダーラ

がだーらいつもありがとう
コピペは名文が多い。
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