電気グルーヴのツアーへ26年ぶりに砂原良徳が参加した夜。/電気グルーヴ『ツアー“the”席指定』2025年東京公演2日目ライブ・レポート

電気グルーヴのツアーへ26年ぶりに砂原良徳が参加した夜。/電気グルーヴ『ツアー“the”席指定』2025年東京公演2日目ライブ・レポート

 電気グルーヴが約30年ぶりの全席指定ホール・ツアー『ツアー“the”席指定』を、吉田サトシとともに、初期メンバーである“まりん”こと砂原良徳をサポートに迎えて走らせた。名古屋→仙台→三島→大阪→福岡→東京の各地を巡り、電気グルーヴのこれまでを今の空気=サウンドで味わい直す時間になった。

  この記事は、6月27日の立川ステージガーデンで開催された東京公演2日目の様子を、当日を無心で楽しみ、急遽5日前にライブレポを書くことが決まった筆者が、必死に記憶を掘り起こして書いたものだ。情報の抜けは、ぜひサンレコのXまでリプライを。

 また公演前に、電気グルーヴのお二方と砂原良徳にインタビューを行ったので、一部コメントとして掲載する。本編とステージ機材写真については、いつか必ず公開するので、楽しみに待っていてほしい。

  • Text:鹿野水月(plug+) Photo:小原啓樹

電気グルーヴ『ツアー“the”席指定』ライブレポート(32枚写真有り)

 真っ赤な衣装のピエール瀧(車掌、vo)が、“東京の皆さん、電気グルーヴでございます!  座席指定ツアーにご乗車いただきまして、誠にありがとうございます”という挨拶をするのと同時に、石野卓球(運転手、prog)、吉田サトシ(g)、砂原良徳(syn、prog)の3名が次々とステージに出そろうと、観客は大きな歓声と拍手で応じた。

 電気グルーヴのかつてのメンバー砂原良徳がツアー7公演をフルで参加するのは、ファンにとっては念願であり、手放しでワクワクする出来事だった。このツアーは古参にとっては思わず自分の人生を振り返ってしまうような機会だったのではないかと思うし、後追いにとっては確かにあったとされる桃源郷を確かめに行くような時間になっていたと思う。

 実際この日は、砂原が在籍していたころのアルバム『VITAMIN』や『A』などに収録の初期曲にも重点を置いたことが伺える選曲で、サウンドの面で見てもTB-303系のベースが波打つ当時のアシッドなアレンジを現代らしい解像度の高さでリメイクし、DJミックスのようにスムーズな流れで連結させていた。

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 暗転した会場でスクリーンに疾走する新幹線が映し出されると、「新幹線」のカラフルな音のリフレインとダイナミックなキックのシーケンスが走り出す。石野と瀧が二人でマイクを持つ「Missing Beatz」から滑り出されるように四つ打ちの「モノノケダンス」につながる。

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 無機質なテクノを独自解釈するピエール瀧が奇妙な動きをし続け、初っ端からフロアをハイテンションに持っていくのを見て、“居るだけで確実に機能してしまうムード・メーカー”ピエール瀧の存在感は、改めて稀有だと思う。この三曲だけでも電気グルーヴの魅力をギュッと詰め込んだキャッチーな流れだった。

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 そんな快感を伴うカオスから一変、陶酔感を味わえる「Fallin' Down」や「トロピカル・ラヴ」で、伸びやかでエモいシンセやディレイするメロウなギターに身体をゆだねていると、あっという間に「いちご娘はひとりっ子」の人懐っこいリフレインが始まり、早々にアンセムの「Shangri-La」に着地。ストリングスの揺らぎと美しいリリースの解放感が合わさるロマンチックな音場で、観客たちも元気に大合唱。26年の時を経て、多幸感に満ちていた。

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 MCで石野が、“今回(まりんと)一緒にやってきたんですけど、毎回楽屋で殴り合ってました!”と話した直後に、砂原が一人でスポット・ライトを浴びながら「♩ママケェ〜キ〜、トゥットゥットゥ(以下、省略)」と意気揚々と歌い、三人仲良く前に出てきてラブリーな振り付けまで披露。“これで終わりだと思うなよ!”と叫んだ砂原が石野とハイタッチしていたのが、エモいを超えてメロかった。

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 「ママケーキ」が後半になるにつれて、吉田のギターと砂原のシンセの歪みにより、ハードな響きにグラデーションを描きながら変化していたのも良い。「gimme some high energy」のサンプルから、前奏が流れた瞬間にフロアから歓声が上がった超初期曲の「Bingo!」では、シンセが執拗にピッチ・ベンドを繰り返す。瀧のシュールなラップとポップなオケがミックスされた「HOMEBASE」、フィンガー・ドラムの音が行き交う「SHAME」からタイトな四つ打ちにTB-303系の音が波打つ「SHAMEFUL」のシーケンスに移行するミックスには、メドレー的な味わい深さがあった。

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 次の「B.B.E.」では恒例の、蟹コール。ちなみに、ツアー・グッズの中に、「B.B.E.用のラバーカニグローブ(3,500円)」がラインナップされていたが即完売だったとのこと。他の曲での使用が公式から推奨されないレギュレーションだったため、この十数秒が終わると皆すぐに赤い爪をカバンに仕舞っていた。

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 石野と拡声器を持った瀧が叫びまくっていた「誰だ!」ではトランシーなテクノが炸裂し、フロアのボルテージがさらに上昇。「猫夏」の中毒性が高いトラックは吉田のどこかスパニッシュなギター・ソロと絡み合い即興性も感じられるアレンジになっていた。「POPCORN」では、砂原が一曲通してひたすら研鑽するようにフレーズを手弾きし、ストイックなムードが強くなる。同じく『VITAMIN』収録の「N.O.」ではカラフルなシンセのメロディと艶かしいギターが行き交った。

 瀧が厳かな声音で歌い上げる「あすなろサンシャイン」ではユーモアの暴力を身体で体感し、エレクトロ・ディスコな「FLASHBACK DISCO」に続いて、「かっこいいジャンパー」は原曲のチルな方向よりもTB-303系のうねりをベースに生かしたアシッドかつテンポの速いアレンジになっていた。

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 象徴的なピアノ・バッキングが小気味良い「CATV」では、シンセ・リードに合わせて瀧が消化器を吹く。最後までテンポを緩めることなく「人間大統領」を演奏し切ると、TB-03と犬の鳴き声がユニゾンする余韻を残して、メンバーはステージを去った。

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 アンコールはクラフトワークの「アウトバーン」をカバー。砂原が用意したというトラックに、吉田がボサノヴァ・ギターを重ねたアレンジに合わせて、石野と瀧が2人で横並びに座りなごやかな雰囲気で歌唱した。 

  それぞれの26年をせめぎ合わせるように音を鳴らしていた一夜は、電気グルーヴが貫いてきたものと、ちゃんと変わってきた部分の両方を刻んでいた。だからこそ、このライブが伝説の追体験ではなく、革新的であり続ける“電気グルーヴ”の証明にもなったのだろう。

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 ピエール瀧のステージ機材。左からタンバリン、マラカス、拡声器。これ以外にも瀧は消化器を手にしたり、ブース内でパッド類を操作しているシーンもあった。

セットリスト:

  1. 新幹線
  2. Missing Beatz
  3. モノノケダンス
  4. Fallin' Down
  5. トロピカル・ラヴ
  6. ママケーキ
  7. Bingo!
  8. HOMEBASE
  9. SHAME
  10. SHAMEFUL
  11. B.B.E.
  12. 誰だ!
  13. 猫夏
  14. POPCORN
  15. N.O.
  16. あすなろサンシャイン
  17. FLASHBACK DISCO
  18. かっこいいジャンパー
  19. CATV
  20. 人間大統領
  21. アンコール:クラフトワーク「アウトバーン」カバー

ライブ直前コメント(ツアー最終日)

石野卓球

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「まりんは電気を辞めてから随分経つし、その間に(高橋)幸宏さんと仕事をしたり、うちら以上にいろんな経験をしてきたわけじゃないですか。だから今の3人が集まっても昔と同じ音にはならないんですよ。でも、いまだに楽屋ではクラフトワークの1981年の来日の話をする(笑)。会話だけは成長してない」

ピエール瀧

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「「Shameful」で、TB-303系の音が主役になるセクションがあるんですけど、フィルターのかけ方がまりんと牛尾(憲輔)で違うんだなっていうのを感じました。どちらが良いという話ではなくて、ステージ前方にいる自分からすると、後ろから違う球がバンと飛んできて新鮮でした」

砂原良徳

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 「最近やっているライブではシンセ・ベースを弾くことが多かったので、上モノを弾きまくったのは久しぶりでした。生で弾くと、間違えた部分も含めてやっぱりライブ感が出ますね。今回は久しぶりに実家に帰ってきたような感覚のツアーでした。これで終わりだと思うなよ!」

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あとがき

 今回のツアーで3人がどんな会話を交わし、実際にどんなライブ機材を使ったのか。いつか刊行されるかもしれない砂原の関連アイテムで公開……するかもしれないし、刊行されないかもしれないが、いずれにしても、サンレコは電気グルーヴと砂原良徳をこれからも応援していく所存である。

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