米国とNATOがウクライナ支援について合意した内容の裏側が徐々に判明し、この合意を主導したのはドイツのメルツ首相で「トランプ大統領は国際政治を金融取引として捉えるため『ウクライナへの武器供給で米国が利益を得られるモデル』を提案すれば乗ってくる」と考えていたらしい。
参考:How Europe found a workaround to get Trump to help Ukraine
参考:US diverts Patriot systems from Switzerland to Ukraine
参考:Treaty can help Ukraine in short-term, PM says
メルツ首相はトランプ大統領と対立するよりも実用主義で扱った方が良いと考え方を変えた
トランプ大統領はルッテ事務総長との会談で「我々は事態の終結を望んでいるもののプーチン大統領には失望している」「2ヶ月前に合意が成立していたと思っていたのにそうなっていなからだ」「ロシアが50日以内にウクライナと戦争終結に関する合意に同意しなければ米国は痛烈な関税を課す」「これは(ロシアの貿易相手を標的にした)100%の二次関税だ」と述べ、新たなウクライナ支援についても「我々は最新の武器を製造してNATOに送る」「NATOは受け取った武器を他国に送る選択をするかもしれない」「その国は何か手放すかもしれないないが、それは主に代替品としての形になるだろう」と説明。

出典:NATO
ルッテ事務総長も「欧州諸国はウクライナに供給するための武器を米国から購入する」「ウクライナは大量の防空システム、ミサイル、弾薬などの武器システムを手に入れることになる」「これはプーチン大統領にウクライナとの和平交渉を再考させるはずだ」「この計画にはドイツ、フィンランド、カナダ、ノルウェー、スウェーデン、英国、デンマークが参加する」「ここではスピードが重要だ」と述べたが、その後の追加情報で米国とNATOが合意した内容の裏側が徐々に明らかになってきた。
この合意を主導したのはドイツのメルツ首相で、トランプ大統領は貿易から安全保障に至る国際政治を金融取引として捉えるため「ウクライナへの武器供給で米国が確実に利益を得られるモデルを提案すれば乗ってくる」と、米国がウクライナに直接武器を提供するのではなく「欧州に武器を売る」という政治的建前は「ウクライナを積極的に支援してロシアと正面から対峙したくない」「MAGAの支持基盤=孤立主義派を失いたくない」という問題を回避できると確信していたらしい。

出典:Президент України
メルツ首相の提案はルッテ事務総長に伝えられ、これがプーチン大統領に態度に失望していたトランプ大統領に刺さって14日の合意に繋がったのだが、この取り組みに全ての欧州諸国が参加している訳ではなく、チェコのフィアラ首相は「弾薬支援プロジェクトなどを他の取り組みによるウクライナ支援に重点を置いている。そのためNATOの計画に参加することは現時点で検討していない」と、フランス当局者もPoliticoの取材に「自国調達による防衛産業基盤の強化を支持しているため米国製兵器の購入には参加しない」と述べている。
この計画の参加国に挙げられたフィンランド、カナダ、ノルウェー、スウェーデン、英国、デンマークもどれだけ資金を出せるのか不明だが、メルツ首相はトランプ大統領との電話会談で「ウクライナへの武器供給においてドイツが決定的な役割を果たす」と確約し、ドイツ当局者もPoliticoの取材に「この計画に莫大な資金を投資している」と明かしているため、米国から購入した兵器のウクライナ供給はドイツのみで成立するのかもしれない。

出典:Lockheed Martin
さらに興味深いのは「米国製の武器をどうやって素早く手に入れるか」で、トランプ大統領は「パトリオットシステムを直ぐに供給する」と約束していたが、スイス政府は17日「我が国が発注したパトリオットシステムがウクライナ防衛のため転用されると米国が通知してきた」と発表し、トランプ大統領は確実な利益を得られるなら「迅速な武器供給にどんな手段でも講じる」と浮き彫りにした格好だ。
因みにAxiosは「この計画にはモスクワを含むロシア奥深くに届く長距離攻撃ミサイルが含まれている」と、Washington Postも「新たなウクライナ支援には強力な新しい攻撃兵器の使用許可(ATACMSを最大射程で発射する許可や追加供給)も含まれている」「新たなウクライナ支援の検討段階ではトマホークの提供も検討していた」「まだトマホークは提供リストに含まれていないものの「もっと大きな圧力が必要」と判断すれば、将来的にトマホークの提供を承認するかもしれない」と報じた。

出典:Photo by John Hamilton
これをトランプ大統領は否定したものの、メルツ首相は17日「長距離攻撃能力についてウクライナは数週間から数ヶ月以内により有利な立場を手に入れる」「この分野について我々からの支援を受け取るだろう」と述べており、ウクライナに対する長距離攻撃能力の提供についても「米国ではなくドイツが表に立つ」と示唆しているのかもしれない。
追記:今年2月の選挙で勝利したメルツ首相は「米国からの独立達成が優先事項になる」と訴えていたが、Politicoは「米国から武器を大量に購入するアプローチは驚くべき方針転換だ」「ここにはドイツの現実的な政治が色濃く反映されている」「メルツ首相はトランプ大統領と対立するよりも現実主義で扱った方が良いと考え方を変えた」と、さらに「欧州の指導者らは新たな米大統領を望むよりトランプ大統領と協力する方法を急速に学びつつある」「トランプ大統領との交渉における第一原則は『とにかくトランプ氏の指導力を称賛すること』だ」と報じている。
このような政治的状況は「個人崇拝」に近いと思うのだが、世界中の指導者も「作り笑顔」と「称賛の言葉」で現状を乗り切ろうとしており、これが2029年1月まで続くと思うとゾッとする。
関連記事:ロシアが折れるまで戦いをエスカレーションさせる、トマホーク提供も検討
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※アイキャッチ画像の出典:Президент України
















政治家トランプ大統領の判断基準は、来年の中間選挙で与党共和党に有利になることだと思います
メルツの言動は国内の調整ができてないことが多く後から撤回されることが多いので注意が必要。
トランプと交渉するときの秘訣とやらを公開してしまっていいのか?
内容次第では機嫌を損ねるだけでは?
米紙『トランプと話す時はまるでわがままな子供をあやすように』
元からアンチ寄りとはいえ、自国メディアにもっと酷い言われようだから大丈夫
米国負担で大量の武器弾薬支援をやってくれたらノーベル平和賞あげるよって言ったらトランプ大統領はどう反応するのかとふと思ったり。米国の武器弾薬は世界安定化の要でありこれを提供することは世界平和に決定的に寄与し、その貢献に対しあなたに贈られるノーベル平和賞はあなたへの栄典であるのと同じくらいにあなたが代表する米国への栄典でありすなわち米国が偉大である証ですとか適当なこと言って。
せっかくスウェーデンをNATOに引き入れたんですし。
さすがにこんな個人的な栄典のために祖国を売るよう誘うのはもはやそれ自体侮辱かもしれませんが。
とは言え、今ウクライナが必要としている武器弾薬を迅速に供給できる者はアメリカ以外には存在せず、そのアメリカを動かしているのはトランプだという現実がありますから。
私には、個人崇拝というよりは、まともな議論による合意形成は不可能という判断から「豚をおだてて木に登らせよう」としているように思えます。
要は金。何もかもが金
使えるもの(アメリカ)、使っていくのは大事だなと。
世界中がアメリカを安全保障に引っ張り込もうと、ドイツだけでなく、サウジアラビア・カタールなども札束で叩いていますね。
日本も他人事ではないわけで、日本はもの凄い出遅れてどうしようもなくっているわけで、自動車なんかも耐久消費財で代替できる製品なのに何やってるのかなと…
個人崇拝とは随分大げさな話ですね。
契約を取らなきゃいけない客相手に、君は良心が無い、やってることは無茶苦茶だ、私の言うことを聞けなどと宣う営業が居ますか?
ドイツがアメリカと対立路線を歩むのならば別にそうしても良いですけど、アメリカに武器を売って頂きたいとお願いする立場なのだから相手の顔を立てるのは当然でしか無い。
とても面白いです。
根本的にはパトリオットシステムとミサイルの製造限界から出て来た問題だったと思いますが、スイス向きのをウクライナに売る事にしたからちょっと待ってくれって事なら、これからもそういう事が繰り返されるはずです。
勿論製造能力は向上させようとするでしょうが、それでも何倍にもするのは無理でしょう。こういう手段は効果的で即効性もありつつ、言わば最後の手段みたいなものですが、トランプは即使ってきました。メルツが主導したのも面白いですけど。
これはイランに対するB2を使ったバンカーバスターによる攻撃と近いロジックだと思います。
効果的で即やれるのでなんでやらないのか、ってのをやったに近いのですけど、イランに対しての攻撃は空爆の限界を露呈してしまいました。
それと根本的には似たような問題をこれは提示すると思います。
「もしも、このような形でパトリオットシステムとミサイル本体を優先的に提供したが、にも関わらず状況は変わらず、そして本当に製造限界が来たというのが明らかになった」
となったら、ウクライナも米国も打つ手がなくなります。
そしてロシアはとっくの昔に気が付いてると思いますので、この一連の動きに型どおりの抗議はしても本気でやめさせようとはアクションしないと思います。代わりにやるのが飽和攻撃でしょう……と思ったら現在似たようなことをしています。
「欲しいって言うなら高値で売れるなら売るぞ!」のトランプはまだともかく、メルツ氏については本当にこの人がドイツの首相でよかったのかどうかは俺は疑問を感じますね。
トランプは人間としてはゴミだろうけど(政治家としてもアレだが)そんなに
邪悪極まりない存在ってわけでもないでしょ。
冷静に考えて人類史上の大国の指導者の人格なんてこんなもんじゃない?
自分をいい人間みたいに見せる努力をするかどうかの違いがあるだけで。
本当に邪悪なのは毛沢東みたいに国民を2000万人死なせるとかプーチンのごとく
他国に本当に侵略するとか実際に大量の人間を死なせる連中だろう。
トランプは自分の支持者さえいればOKってだけなんだから
トランプにおべっか使うくらいは全然いいわ。
ただドイツは自分の武装より宇の武装化を優先した方がいいとは思う。
欧州が宇に派兵する気がない以上、自分らの再武装は宇が消滅した後の
準備してるだけだからな。
政治家としては「私はこいつに譲歩しているわけではない」
という建前をしたいのは分かるんですけど、賞賛していればこいつは…みたいなのやってればバレてるだろうし
結局は着実に交渉するしかないとしか思いませんが…
記事にしても「賞賛していればいい」みたいな理論は余りにも人を馬鹿にしているといった感じですね…
あと全然関係ないですけどATACMSを最大射程で撃ったほうが迎撃される確率上がりそうですけど…
それに以前のGPS妨害とかってどうなったんでしょ…
『対立するよりも実用主義で扱った方が良い』とかほんま今更過ぎる……
日本は8年前にとっくに気づいてたぞ
「私はノーベル平和賞が欲しい」と自分でバカ正直に言う相手ですから、相応の接し方をすれば良いと思います。
安倍さんがやってたことですね
トランプは異常だけど多くのアメリカ人が望んでたことをやってるだけなんだよな