「本当か」。挑戦的な上から目線の問題提起(笑)。FM COCOLO「J-POP LEGEND CAFE」の12月の特集は「笠置シヅ子と服部良一」。NHKの朝ドラの主人公になっている歌い手、ブギの女王と「J-POPの父」と呼ばれる作曲家ですね。
「朝ドラ」を録画しながら見てるのは初めてじゃないでしょうか。「あまちゃん」も割と見ていた方ですけど、ここまでマメには見てなかったですね。それはもうあの二人だからです。番組でもいつかやろうと思っていたけど、なかなか形にならなかった。
話を聞けるゲストがいない、ということと音源があまりに古くなるので他の番組との兼ね合いで浮いてしまうかもしれない。あのドラマが懸念を一掃してくれました。FM COCOLOもかなり盛り上がってるみたいですし歓迎される特集になりました。
で、先週収録したのが最終週。一か月の前半は笠置さんの曲を紹介して、後半は服部良一さんに焦点を当ててきました。今年の夏にドラマに先駆けてコロムビアレコードからそれぞれ二枚組のアルバムが4種類出たんです。
「笠置シヅ子の世界」「服部良一の世界」「淡谷のり子の世界」「渡辺はま子の世界」。全作の選曲と解説を書いていたのが「ブギウギ」の風俗考証も手掛けた日大教授、刑部芳則さん。1977年生れで昭和歌謡史の研究家、SP盤のコレクター。
先生の先行は日本近代史。最近は音楽の話の仕事が多いと笑ってました。で、四週目のテーマになったのが「戦時中」なんです。戦争を挟んで日本の歌謡曲がどう変わったか。服部さんはその両方を生き抜かれた方ですね。
彼が「J-POPの父」と呼ばれるのはもちろん理由があります。一つはジャズやリズムやハーモニー、ブルースのコード進行などを取り込んだ日本語の曲を書いた最初の人だった。自分で詞も書いてましたからシンガーソングライターでもあった。
もう一つは「軍歌」かを書かなったということなんですね。戦時中は、ジャズやカントリー、シャンソンなどの「洋楽」は「敵性音楽」として禁じられてましたからね。ドラマもその時代のことをちゃんと扱ってます。
音楽だけじゃなく恰好や歌い方まで「戦意高揚」じゃないと許されなかった。穂yとんどの作曲家が「軍歌」に手を染めざるを得なかった。服部さんはそれをしなかった、というのが定説になってました。
でも、ネットの中には「実は書いていた」という説も時々あったりする。どっかで本当はどうなんだろうと思ったりしてた。その辺を刑部先生に訊いて見たわけです。重要な答えがありました。「軍歌」と「戦時歌謡」なんですね。
僕は両方とも一まとめにして「軍歌」だと思ってたんです。先生は「軍のために買い曲が軍歌」でレコード音楽として一般に聞かれていた、戦時中の生活や風俗を題材にしたのは「戦時歌謡曲」と言うんだそうです。
選曲を先生にお願いしていて、彼が送ってくれたリストの中に渡辺はま子さんの「兵隊さんを思ったら」という曲があったんです。タイトルだけ見てぎょっとしたんですね。自分の番組で軍歌をかけるのかと思った。
先生にその話をしたら、「軍歌じゃないんです」と言われたんです。戦時中の女性の切ない心を歌ってる。メロデイーもそういう勇壮な感じじゃない。「戦時歌謡」なんです、とのことでした。確かに歌謡曲は世につれますからね。
「軍歌」は軍のために書いたもの。服部さんは笠置さんとかと中国大陸の戦地慰問も行ってましたから、現地で曲を頼まれて書いたことはあるでしょうけど、レコードにはなってませんから「書かかった」と言っていいでしょう、とのことでした。
安心したんですね。僕は両親が若者を戦地を「送り出す」側の仕事をしてましたから、「軍歌」には拒否反応を持ってましたし。戦後生まれのシンガーソングライターもそうでしょう。「軍歌」とは違う音楽を書く、というのが一つの支えだった。
服部さんみたいな人がいたから今の自分たちがあると思っていたのは間違ってなかった。2023年、こんなにきな臭い戦争の年末になると誰が予想したでしょう。「J-POP LEGEND CAFE」はそんな締めくくりになりました。来週月曜の放送です。
クリスマス休戦も実現しない。軍事力が全ての正義という風潮。日本もまたいつ「戦意高揚」を強制されないとも限りません。来年こそ、戦死者のない年が来るように、ということで、渡辺はま子さんの「兵隊さんを思ったら」を。
浜田さんの広島、行けませんでした。今日、家を見たいという方の「内見」がありました。僕だけ行くわけにもいきませんし。明日ももう一組。どうなりますか。家は何とか人様に見せられるまでにはなりましたけど(笑)。じゃ、お休みなさい。