ヤフコメにもあてはまるグレタさんの反論―イスラエルによるガザ支援ボランティア拘束事件
イスラエルによる封鎖で飢餓が深刻なパレスチナ自治区ガザへ支援物資を積んだ船で向かったボランティアらが公海上でイスラエル軍に拘束された件で、ボランティアの一人であった著名な環境活動家グレタ・トゥーンベリさんが、「パフォーマンス」だとの批判に反論しました。グレタさんが反論した相手は、イスラエルや米国のトランプ大統領でしたが、その反論の内容は、日本のネット言論にもあてはまると言えます。
〇「私たちは何も悪いことはしていない」と反論
ガザに向かう途中、イスラエル軍に拘束されたグレタさんが、強制送還先のフランスで各メディアの取材に応じ、「私達は拉致された」とイスラエルの対応を批判しました。AP通信等の報道によると、「不法入国した」と認める書類にサインするようイスラエル側に要求されたグレタさんは、これを拒否したとのことです。
「私達は公海で誘拐され、自らの意思に反してイスラエルに連れていかれました」「私達は12人の平和的なボランティアであり、公海で人道支援物資を運ぶ民間の船に乗っていました。法律を破ったわけでも、何か悪いことをしたわけでもありません」
*人権団体アムネスティ・インターナショナルの見解は記事配信後に追加
〇「パフォーマンス」批判へ反論
グレタさん達のガザ支援船に対し、イスラエルでは「パフォーマンス」との批判もあることについて、「とても皮肉なこと」とグレタさんは反論します。
「(イスラエル側は)サンドイッチとか配るPR活動はやってるけど、今回、私達が使った支援船はガザに支援を届けるための最後の船でした。それは、もっと沢山の援助物資を積んでいた大きな船が、2回も爆撃されたからだし、それがイスラエルの仕業であることの証拠もあります」
つまり、ガザを封鎖して約200万人の住民を極度の飢えで苦しませている上、ガザへ支援物資を運ぼうとする国際的な動きをことごとく妨害してきたイスラエルが、グレタさんらを拘束した後にサンドイッチを配る映像を公開したことこそ、パフォーマンスだと痛烈に皮肉っているのです。
*デモに関する報道は記事公開後に追加。
〇日本のネットの風潮にも当てはまる指摘
グレタさんに対しては、ヤフコメ(Yahoo!ニュースへのユーザーコメント)を含め、日本のネット上でも「迷惑をかけたのに謝らない」「パフォーマンスだ」との批判が結構な数でありますが、AP通信のインタビューでグレタさんが以下のように語った欧米社会に対する指摘は、日本のネット上の風潮にあてはまるのではないでしょうか。
「イスラエルはパレスチナ人に対して国際法違反と戦争犯罪を組織的に繰り返していて、人々を飢えさせ、大量虐殺を行っています。世界が見守るライブ配信中の本格的なジェノサイドです」「この極めて致命的な沈黙が、多くの死をもたらしているのを非常に恐ろしく思います」
2023年10月以降のイスラエルによるガザ攻撃は、最早、ハマスへの報復というレベルを超えた、まさに大量殺戮であり、あらゆる戦争犯罪が繰り返されたと言っても過言ではないものです*1。
これは、イスラエルとパレスチナのどちらを支持するとかに関係なく、普遍的な国際法・国際人道法、それに基づく国際秩序の破壊であり、断じて許してはいけないものです。日本は、米国やドイツ等と異なり、イスラエルに対する兵器供与等の露骨な軍事支援は行っていないものの*2、「法の支配」の下の国際秩序を守るという立場からは、「ガザは国際法・国際人道法の墓場」(UNRWAラザリーニ事務局長)という状況に対し、黙って見過ごすべきではありませんし、国際社会において「強い国は何をしても許される」という風潮が許容されるならば、ひいては日本にとっても深刻な悪影響が及ぶこともあり得ることです。まして、5万人以上を殺害し200万人を飢えさせているイスラエルよりも、グレタさんの言動の批判する日本のネット上の風潮は、問題の本質から外れているだけではなく、戦争犯罪への加担だというべきなのかもしれません。
グレタさんは、「彼女は怒りのコントロールが必要だ」と自身を揶揄したトランプ米国大統領に対し、「若い怒れる女性達がもっと必要だ」と反論しています。それは、そのまま日本にも当てはまることなのではないでしょうか。
(了)
*1記事公開後に国連の報告書を追加
*2欧米ほどではないにせよ、日本も、イスラエルの軍事企業に商機を与えたり、同国製のドローンを防衛省が導入を検討している等の問題がある。
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/714f1f682af2ac800cef978409b63129b7113b71