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「脚本を仕上げずに撮った映画は駄作になる」ジェームズ・ガンが批判 ─ 「この話を何度しても、まだそういうことが行われる」「腹が立つ」

Photo by Erik Drost https://www.flickr.com/photos/edrost88/53817354521/ Remixed by THE RIVER

新DCユニバースの舵取り人となるジェームズ・ガンは長年の経験を踏まえ、シリーズ展開や映画制作に堅実な姿勢だ。「脚本が完成していない映画を作らない」という持論を米NPRにて展開している。

マーベル・スタジオで『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズを手がけたガンは現在、対岸DCに渡って綿密な計画を立案。近年、スーパーヒーロー映画は人気のかげりが指摘されており、「マーベル疲れ」や「スーパーヒーロー疲れ」といった言葉も叫ばれるようになった。

もっともガンは、スーパーヒーロー疲れが「本当にあったとは思わない」と持論。「ヒーローものなら何でも儲かる」と思われ、視覚効果の発達もともなって数多くの作品が登場したが、やがて観客に飽きられ、駄作が増えたのだとガンは分析している。

スペクタクル大作が氾濫し、「映画業界は今、まさに混沌の極みにあります」とガンは語る。この大きな潮流の他に存在し得ているのは「ホラー映画ぐらい」と続け、「みんなに観てもらえるような中規模の映画を作るのが本当に難しくなっている」と私見。「そういう映画もあるにはあるけれど、例外的な存在です。そういう映画は、自宅で観られている。でも、流行っている大作映画を観に行くのは好まれている」とのジレンマを話す。

続けてガンが指摘するのは、「現在の業界はIP(知的財産)が牽引し、公開予定日が創作プロセスを支配している」という状況だ。「つまり、まず公開日を決める。それで脚本はない。そこから、公開日に間に合うように脚本を書こうとするわけです」。

ガンはかねてより、「脚本なき映画製作」の問題を糾弾している。シリーズの見栄えを良くするために、まだ満足のいく脚本が仕上がっていないのに、スタジオが先に公開日を決めてしまう見切り発車型の制作プロセスこそが、映画業界が衰退する真の理由であると見ているわけだ。

「大作映画の撮影期間のうち、8割は脚本が仕上がっていない状態で撮っているんです」と、ガンは驚きの裏側を暴露。「酷いですよ。そういう映画は駄作になりますから。脚本に基づいてやるべきです」と批判するが、現実には課題もある。「脚本執筆というのは難しいもの。適切なタイミングで、適切な脚本家と協力しなければいけないが、十分な数の優秀な脚本家がいないのです」。

脚本家が不足しているとは、どういうことか。「テレビ業界が優秀な脚本家のほとんどを奪ってしまったのです。優秀な脚本家のほとんどはテレビに行って、そこで責任を任されます。やりたいことができるからですね。今や、テレビが芸術の舞台となっている」。

ガンが具体例として挙げたのが、今最も絶賛を受けるシリーズの一つであるApple TV+配信のSFスリラードラマ「セヴェランス」と、自身が手がけるDCのドラマシリーズ「ピースメイカー」。「完全に常識を覆すドラマで、大ヒットしています」と評しながら、ガンは映画業界にとって具合が悪い実情を明かす。「テレビではやりたいこともやれるし、お金も稼げるし、ボスにもなれる。なので、映画の脚本を書く人は一体どこにいるんですかという話です」。

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から企画制作・執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

新『ワンダーウーマン』準備が加速か ─ 『スーパーマン』大ヒットを受けて

ワンダーウーマン

ワーナー・ブラザース&DCスタジオが、新DCユニバース映画第1弾『スーパーマン』の好調を受けて、『ワンダーウーマン』新作映画の開発を急いでいるという。米Varietyが報じた。

2025年7月11日に日米同時公開された『スーパーマン』は、米国オープニング興行収入1億2,502万ドルという好スタートを記録。7月15日(米国時間)の時点で米国興収1億5,504万ドル、世界興収2億5,004万ドルという優れた成績となっており、2度目の週末(7月18日~20日)も興行収入5,500万~6,200万ドルを稼ぎ出すとみられている。これが現実になれば前週比マイナス50~55%で、スーパーヒーロー映画としてはかなり異例の堅調さだ。

報道によると、こうした結果を受けて、ワーナーは『スーパーマン』の続編ではなく『ワンダーウーマン』の開発を「加速させている」という。巨大フランチャイズでは続編製作を早めるのが定石だが、DCユニバースは別の戦略を採るようだ。

DCスタジオの代表であり『スーパーマン』監督のジェームズ・ガンは、米Entertainment Weeklyにて、『スーパーマン』続編について「ある意味では取り組んでいますが……純粋な続編かといえば、必ずしもそうとは言えません」と曖昧に話している。自身のThreadsアカウントでも、「『スーパーマン』の続編は予想外の形かもしれません」と予告していた。

以前からガンは、新DCユニバースにバットマンとワンダーウーマンを登場させることを「優先事項」と明言している(ロバート・パティンソン主演『ザ・バットマン』シリーズはユニバースに含まれない)。2025年6月には、『ワンダーウーマン』新作の脚本作業が始まっていることも認めていたのだ。

ガンが目指している、ワンダーウーマンの新DCユニバース初登場とはいったいどのような形なのか? ワーナー&DCが開発を急いでいるならば、きっと遠くないうちに続報が到着するはずだ。

Source: Variety(1, 2), Entertainment Weekly, James Gunn

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

ジェームズ・キャメロンの広島・長崎原爆映画、原作トレーラー映像が公開 ─ 『アバター』後すぐに製作予定

https://x.com/Variety/status/1945528857676972041

巨匠ジェームズ・キャメロンが広島・長崎への原爆投下を描く映画『Ghosts of Hiroshima(原題)』の原作ノンフィクションより、トレーラー映像が公開された。本作は広島への原爆投下から80年を迎える前日、2025年8月6日に米国で発売される。

予告編は1945年8月6日、広島への原爆投下を発表するハリー・S・トルーマン大統領のスピーチから始まり、“原爆の父”として知られる理論物理学者J・ロバート・オッペンハイマーがヒンドゥー教の聖典「バガヴァッド・ギーター」から引用した「我は死なり、世界の破壊者なり」で締めくくられた。ナレーションはオーディオブック版と同じく名優マーティン・シーンが担当している。

Varietyによると、キャメロンは現在も、本作を『アバター』シリーズの承認を得られしだい製作する計画。ファンタジー小説『The Devils(原題)』の実写化企画に『アバター:ファイア・アンド・アッシュ』(2025年12月19日公開予定)の公開後着手すると報じられていたが、今回の報道では、『Ghosts of Hiroshima』が『アバター』(2008)以来はじめての“非『アバター』作品”になると明示されている。

映画版はチャールズ・ペレグリーノのノンフィクション作品『Ghosts of Hiroshima』『The Last Train from Hiroshima : The Survivors Look Back』に基づき、広島と長崎で2度被爆した“二重被曝者”の山口彊(やまぐち つとむ)氏を描く内容。キャメロンは2009年に山口氏と面会し、15年にわたって企画を温めてきたのち、2024年秋に映画化権を獲得した。

先日、キャメロンは映画版で原爆投下の様子をリアルに描く意向を明かし、「観客が原爆投下を体験したかのように感じられる映画を創りたい」「広島と長崎で起きたことを容赦なく描きたい」と語った。ペレグリーノがアドバイザーとして携わるほか、日本側の専門家や被爆者遺族の協力を受け、日本の作家やプロデューサーが参加する可能性もある。

現時点で脚本は執筆されていない。キャメロンは米Deadlineにて、「すべてが頭の中にあって、ようやく書き始めるのがいつものやり方です。あらゆるものを探求し、自分に影響を与えたものを思い出しながら、すべてを物語として構築していくと書き始められる瞬間がやってくる」と語っていた。

なお、『アバター』サイドの承認が下りる時期は不明。ただし、同じインタビューでは「『アバター』が映画監督としての人生を支配している今、状況を整理しているところです。『アバター』の完結だけでなく、大切な他のプロジェクトにも取り組める未来を模索しはじめている」とも話した。

原作本『Ghosts of Hiroshima(原題)』の日本刊行情報は不明。

Source: Variety, Deadline

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

ライアン・ゴズリング&ウィル・フェレル、新作アクションコメディに出演交渉中 ─ 犯罪組織を脱走した下っ端コンビ、追っ手の暗殺者から逃げる

ライアン・ゴズリング ウィル・フェレル
THE RIVER | Adam Chitayat https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Will_Ferrell_at_the_2024_Toronto_International_Film_Festival_5.jpg | Remixed by THE RIVER

『フォールガイ』(2024)『ラ・ラ・ランド』(2016)のライアン・ゴズリングと、『俺たちニュースキャスター』シリーズや『バービー』(2023)のウィル・フェレルが、Amazon MGM Studio製作の新作アクションコメディ『タフ・ガイズ(原題:Tough Guys)』に出演交渉中であることがわかった。米The Hollywood Reporterが報じている。

本作は、“使い捨て”扱いにうんざりした犯罪組織の下っ端2人が、残酷なボスを捨てて組織を脱走し、追ってくるエリート暗殺者から逃れながらも新たなルールを築き上げてゆくストーリー。脚本はカナダの人気コメディドラマシリーズ「ワーキングママ」のダニエル・ゴールドが執筆した。

ゴズリングは本作の脚本に魅了され、フェレルをプロジェクトに招き入れたとのこと。ゴズリング&フェレルはプロデューサーとしても関与する方向で契約交渉に入っており、製作陣にはゴズリングの製作会社General Admissionよりジェシー・ヘンダーソン、フェレルの製作会社Gloria Sanchezよりジェシカ・エルバウムも参加する方針と伝えられている。

2026年公開の注目作『プロジェクト・ヘイル・メアリー』に続き、本作でゴズリングはAmazon MGMの再びタッグとなる。『スター・ウォーズ/スターファイター』も含めてSF大作が続いているが、『ナイスガイズ!』(2016)や『フォールガイ』(2024)など軽快なアクション・コメディも十八番だ。『ナイスガイズ!』ではラッセル・クロウ、『フォールガイ』ではエミリー・ブラントと披露した見事な掛け合いを、「ガイ」つながりの新作でフェレルと発揮してほしい。

コメディ俳優のレジェンドと言えるフェレルも、リース・ウィザースプーンと共演のロマンティック・コメディ『真心を込めて招待します』(2025)やザック・エフロンとの共演作『Judgment Day(原題)』など、近年はAmazon MGM作品の常連俳優となっている。ゴズリングのユーモアセンスを今まで以上に引き出してくれる存在としても期待したい。

Source: The Hollywood Reporter

Writer

Yuka ShingaiYuka Shingai

携帯向け音楽配信事業にて社内SE、マーケティング業務に従事した後、妊娠・出産を機にフリーライターに転向。 映画とお酒と化粧品が好き。日課のオンライン英会話でもしょっちゅう映画の話をしています。

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