#59「松本隆×スージー鈴木②」
#59「松本隆×スージ鈴木②」
先週に引き続き今週のゲストは音楽評論家のスージー鈴木さん。松本隆さんの作品から今回も2曲、選曲いただきました。
●「このすごい凝った日本語からメロディー作るのも・・・」
まず選曲いただいたのは、原田真二さんの「タイム・トラベル」。
鈴木「『木綿のハンカーチーフ』は聴いてましたけど、私の実質的、松本隆体験ですね。『シャドーボクサー』が大好きで、『てぃーんず ぶるーす』、『キャンディ』、『シャドー・ボクサー』の次に『タイム・トラベル』が出て、歌詞がいいんですよ。1番の“暗い廊下で君は無言の手招きさ” “蕃紅花(サフラン)色のドアを開けて”って。サフランって言葉を知らなかったんで」
松本「このちょっと前にエジプトに旅行したんですね。それでサフランライスをいっぱい食べるんですよ。サフランライスは黄色なんですよね。で、砂漠も黄色じゃないですか。だから全体的にエジプトってサフラン色なのね。エジプトの詞にしようかなと思ってさ、導入部に扉があったら面白いな、何色がいいかな、サフラン色だっていう(笑)」
鈴木「これは曲が先じゃなくて詞が先だった」
松本「これだけ詞が先なんですよ。『てぃーんず ぶるーす』とか自分で書いた詞もあったんじゃないかな。彼がインタビューで言ってたから、ぼくも知ってるんだけど、その当時は吉田拓郎がプロデュースだから全然聴いてなくて」
鈴木「このすごい凝った日本語からメロディー作るのもまだ20歳そこそこ・・・」
松本「(詞が)長いじゃない。だから曲が出来たって聞いた時に、すごい才能だなと思って。デビューのとき、18くらいかな。この頃は20歳くらい。やっぱり早咲きのすごい才能だよね」(※1978年のリリース当時は19歳)
鈴木「一番初め“時間旅行のツァーはいかが”ってリフレインのところ聴いた時、どんなこと思いました?」
松本「面白いと思ったよ」
鈴木「僕の音楽原体験は、1978年で、矢沢永吉『時間よ止まれ』、サザンオールスターズ『勝手にシンドバット』。でもやっぱり、原田真二『タイム・トラベル』の特にサフラン色が・・・」
原田真二「タイム・トラベル」をオンエア♪
鈴木「小学校6年生の時の思い出が蘇ってきました。78年の紅白歌合戦で、これやるんです、生演奏。激しくやるんですね。とにかくカッコよかったんです。この話で2時間話せますよ(笑)」
松本「笑」
●「もう1回確認しますけど、アイビーは植物なんですね」
続いては太田裕美さんの「袋小路」を選曲いただきました。
鈴木「これは懺悔なんですけど、お恥ずかしい話をします。去年なんですけど、某千葉の方のFMをやってまして『袋小路』をかけたんですよ。歌詞にね、“ビルの狭間
の硝子窓から アイビー越しにタワーが見えた“、ここから私の無学が判明するんですけど、当時アイビーファッションというのが流行って。みゆき族とか言いますけど、アイビーファッションの若者の向こう側に東京タワーが見えたんじゃないでしょうか、と言ったら、Xで非難轟々、学がねぇと。アイビーというのは植物ですよね。蔦みたいな」
松本「蔦。立教大学も蔦が絡まってるでしょ。あんな感じで古いレンガ造りの喫茶店によく蔦が絡まってたのね。窓に垂れ下がれば、アイビー越しに、窓の外のタワーが見えた。アイビーファッションの代表は、銀座なのね。みゆき通り。『平凡パンチ』って流れなのね。原宿とか青山とかは、渋谷も違う。」
鈴木「これはどのへんの喫茶店ですか?」
松本「品川から三田の、わりと線路に近いようなところにあったと思うんだけど、あそこどこだっけって、通る度にチラッと見るんだけど、完璧に120%再開発されて、残ってるものなんにもないね」
鈴木「あとね『風街に連れてって!』のCDに『100%松本隆』っていう雑誌があるんですけど、“松本隆と花手帳” っていうコーナーがあって、月下美人とか、松本隆といえばスイートピーとか」
松本「当時は赤いスイートピーはなくて、白かピンクなんだけど、ぼくが勝手に赤って言っちゃったんで。(赤いスイートピーを作ったのは)淡路島の花屋さんらしいよ。ウワサでは半特定できてるんだけど」
鈴木「それが淡路島とは。ただ我々世代はザ・ベストテン見てて、松田聖子『小麦色のマーメイド』、歌詞に“裸足のマーメイド”って視聴者から来て」
松本「書いたんじゃないハガキ、スージー鈴木。人魚に足があるのはけしからん、って絶対書きそう、小学校時代(笑)」
鈴木「それに対して、松本隆さんがテロップで答えるんです。ビートルズに『Eight Days A Week』という曲があって、1週間なのに8日ある。みたいなもんであまり細かく考えない。すごいなその返しっていうの覚えてます。もう1回確認しますけど、アイビーは植物なんですね。アイビーはアイビーファッションじゃないですね」
松本「蔦です。(歌詞の解釈は)間違っても楽しいっていう」
鈴木「そうかもしれません、何が正解かとか・・・」
松本「ないない。ぼくは特定しないように書いてるから、それが普遍になるから」
太田裕美「袋小路」をオンエア♪
『風街ラヂオ』2025年5月17日(日)夜11:00~11:30オンエア
テーマ:「松本隆×スージー鈴木②」
パーソナリティー:松本隆
アシスタント:竹内香苗
松本隆 風街ラヂオへのメッセージ、リクエスト、質問は、こちらまで。
日曜夜11時に、ラジオの中の風街で、会いましょう。