■注意喚起(以下の点にご注意ください)
・パトパトチャンネルの二次創作
・ちょっとしたカナロカ
・作品内容の改変
・キャラ崩壊
・語彙力の無さ
「ん……うん…?」
意識が覚醒する、どうやら私【四季芦花】は眠っていたようだ。
私は身体を起き上がらせて周りを見渡した、そこはさっきまでいた騒がしい会場とは違い、静かでベッドかテレビくらいしか無い病室の中だった。
「ここは…病室…?」
イマイチ意識が状況が呑み込めていないのか、私は困惑しながら自分の頭を手で抑えて状況確認をする。
「えーっと…あれ?私、確か…さっきまでリオ先生と…」
「うーん…おっかしいなぁ…あの暗闇で戦闘した後の事を何も覚えてない…」
私はこの時、先程まで自分が会場で戦っていた相手【リオ・カムニバル】の事を思い返していた。
【リオ・カムニバル】とは、元【地球防衛軍】の隊長であり世界の英雄。
そして現在は世界的に有名な能力開発研究所の最高責任者兼、能力化学の発案者として新社会を作り出した革命家という名目で世界に名を轟かせている私が出場するWCBT(ワールドチャンピオンシップバトルトーナメント)一回戦第十一試合の対戦相手だ。
正直1回戦からあまりにもやばい相手を引いてしまって、試合開始前は完全に負けを確信してたくらいの強者。
「はぁ~記憶は無いけどどうせこの感じ、私負けたんだろうなぁ~」
まぁ当然っちゃ当然の話である、私の奥の手ですらあんまりダメージを食らっていなかった程だ、勝てる訳もない。
「うーん、攻めて2回戦くらいまでは行きたかったなぁ~」
などと私は呟きながらベッドに再度寝転がり、天井を見上げる。
「それにしても凄く身体が気怠い上に所々が痛む…そんなに消耗してたのかなぁ?」
なんだか動く気にならないほど身体が怠く、私は若干無気力気味になっていた。
「───あ、起きたんだね」
そんな時、突然病室の扉が開いたと同時に聞き覚えのある声が聞こえた。
私はその声の聞こえた方向へと顔を向けると、そこには病室の扉を開けて入ってきた、私の姉【四季桜花】がいた。
「あ、桜花姉…」
私がそう声を出すと共に桜花姉は私の寝ているベッドの近くにある椅子に腰を下ろした。
「大丈夫?芦花ちゃん」
そうやって桜花姉はいつもの変わらない優しい声色と優しい表情で私にそう問い掛ける。
「う、うん!大丈夫だよ!」
「ちょっと身体は気怠くて動く気にもならないけど、私は元気だよ!」
私はいつものように笑顔を浮かべながら自分は元気だとアピールする、心配をかけさせないように。
「そっか、それなら良かったよ」
そんな私を見てニコリと微笑む桜花姉、この優しい笑顔は正直癒やしである、流石は何でも癒やす春の巫女と言ったところか。
「あぁ~そう言えば私、選手が休む病室にいるって事はもしかして負けちゃったのかな?」
「あはは、だとしたらやっぱり敵わないねリオ先生には」
「まぁあれだけ神打で押したのにピンピンしてた人だからね、そりゃしょうがないかぁ~手応えはあったんだけどなぁ」
頭を指でポリポリと掻きながら私は、私が対戦した相手の感想を述べた。
「………」
だけどそんな私とは裏腹に、桜花姉は少し悲しそうな顔をして黙っていた。
「桜花姉…?どうしたの?」
「あっ!いや!なんでもないよ!」
「ふーん?まぁいいけど」
疑問を覚えた私はそう聞くと、桜花姉は少し慌てた様子で反応を返す。
そんな時だった。
またしても私の病室の扉が開く音がした、それに気づいた私と桜花姉の二人はその方向へと顔を向ける。
「桜花、頼まれた物買ってきたぞ…って!!」
「芦花!起きていたんだな!!」
私の病室に入ってきたのは、桜花姉の彼氏である【柊要】だった。
おそらくさっきのセリフから察するに要君は桜花姉から何か頼まれて買い物をしてきたんだと思う。
「あ、要君」
「一応目覚めるかもしれないと桜花に言われたもんだから軽い食い物を買ってきたんだ、ほらゼリーとかな」
私の近くの机にはゼリーを始め色んな食べ物が置かれる、正直さっきの試合でかなり力を使い過ぎたものだから、そのせいで空腹を患っていたので有難かった。
「うわぁ!有り難う要君!」
「どういたしまして、早く食って元気になれよ?」
「ふふん!私はもう既に元気モリモリだよ!!」
「そうか、それなら良かった」
要君はなんだかほっとしたような顔をして、その後に優しく微笑んだ。
相変わらず要君は優しい人だ、これで元は犯罪者組織【神王連】の構成員だったのだから驚きだ。
ちなみに私の友達にも元神王連の子がいるけど、その子もまるで人が変わったかのように優しくなっている、やっぱり闇に落ちても根が良い人は多いのかな?
「も~要君ってば私以外の子にそんな顔しないでよ~!」
「あ~すまんすまん桜花」
「………」
私はさっき要君からもらったゼリーをパクパクと食べながら、その二人のやり取りをジッと見ていた、まるでその様子は新婚夫婦だ。
というか要君が桜花姉と結婚したら私のお兄ちゃんになるのかな?だとしたら呼び方は要兄?今の内に呼ぶ練習でもしておこうかな、あわよくば揶揄える素材になるかもしれないし、なんて悪魔的な考えを浮かべてみたり。
それにしてもゼリーはひんやりしていて美味しい、この味結構好きかも。
「それじゃあ要君、芦花ちゃんも目を覚した事だし皆に報告しに行こっか」
二人が病室に来てから暫く時間が経ち、桜花姉は座っていた椅子から腰を上げながら要君の方向を見てそう言った。
「えぇ~二人共もう行っちゃうの~?」
「ごめんねぇ~芦花ちゃん」
私が残念そうな声を出すと桜花姉は手を合わせてウインクしながら謝罪する。
そんな桜花姉に私は「しょうがないなぁ~」と返事をして了承する。
そうして桜花姉は病室のドアノブへと手を伸ばした、だけど。
「あれ、どうしたの?要君」
要君は何故かその場から動かなかった、そしてしばらく間が空いた後に要君は口を開く。
「すまないが桜花、ちょっと先に戻っていてくれ、俺は自分の試合が始まるまではここにいるから」
「え?う、うん、分かったよ」
要君は何故かそう言って桜花姉を先に戻るように促した、桜花姉も何故だか不安そうな顔をしながらも了承した。
そうして桜花姉は病室から出ていき、私と要君の二人だけになる、なんだか気まずい感じがするなぁ。
「………」
そう思って私は要君の方へと顔を向けると、何故だが要君は悲しそうな表情を浮かべていた、まるでさっきの桜花姉みたいに。
「どうしたの?要君…桜花姉と一緒に行かなくてよかったの?」
「あ…あぁ…」
いつもより少し元気の無い声を出して返事をする、どうしたのかな要君。
などと思いながら私は首を傾げていると、要君は何かを考え込むように腕を組んでしばらく沈黙していたが、その後何かを決めたようにふっと息を吐いて口を開いた。
「お前…今自分がどんな状況か、分かっているか?」
要君はいつにもなく真面目な顔とトーンでそう言った、だけど私にはその言葉の意味が分からなかった。
「え?どんな状況って…うーん…イマイチピンとこないかなぁ~」
自分が負けてベッドの上で眠っている事を指して聞いているのかと思ったけど、それじゃそんな顔にはならないと思うからきっと別の要因があるのだと私は瞬時にそれを悟って素直に分からないと振る舞う。
「そうか…そりゃ覚えてないか…」
覚えてない?どういう事だろう…なんて私は思って首を傾げる。
「お前は…あの試合の勝敗は分かっているか?」
「え?そりゃ私の負けなんじゃないの?現にここにいるんだし…」
何当たり前の事を聞いてくるんだろうと私は困惑したが、この後彼は私の想像の斜め上を行く発言をする。
「あの試合の勝者は……お前だよ芦花」
「……へ?」
その時予想外の言葉を放たれた私は思わず裏返ったような声を出す。
意味が分からなかった、私が…勝ち?あのリオ先生相手に?いやいやそんなの絶対ありえないよ!なんて私は思っていた。
だがそう思うのは至極当然の事だ…だって相手は仮にも元【地球防衛軍】の隊長なんだから。
それに最初あれだけ神打で押しても少し怪我をした程度にしかダメージを与えられなかった相手だったのに、私が勝てる訳がない…きっと負けた私を励ます為の嘘だ…なんて思っていたけど。
「………」
どうにも要君の顔が真剣過ぎる…嘘を付いている人の顔には到底見えない…だとしたら本当に私はリオ先生に…?
なんてそんな思考を巡らせていると、要君は私のその思考を遮るかのように話しだす。
「あの試合は確実にお前が勝った、なんならトーナメント表の写真でも撮って見せることも出来る」
「………」
ここまで事実だという証拠を述べようとしてる彼の言葉を、私は否定出来なかった、何せ見れば一発で分かるような証拠の話を出してまでそう言うのだから。
だとしたら本当なんだ…本当に私はリオ先生に勝ったんだ…でもおかしい、私はその時の記憶が全然無い…一体どうして?
「お前は勝った…だけどな、その時ちょっとしたハプニングが起きたんだ」
「ハプニング?」
私がそう聞き返すと、要君は一度咳払いをして鋭い目つきをしながら語った。
「お前はあの時、力が暴走したんだ」
「え…?」
一体、どういう事?力が暴走?もしかして神打の?いやありえない…私はあの形態で暴走した事なんて無い…ならどうして…?
「暴走したお前はリ…じゃなく…あの能力化学の先生を一方的に肉塊になるまで何度もいたぶって殺したんだよ」
「え…う、嘘…」
耳を疑うような衝撃の事実だった、まさか私が暴走してリオ先生を惨たらしく殺したなんて…と思っていると要君は容赦無く「嘘じゃないよ」と言った。
でもそんな事いきなり言われたって信じられる訳がない、でも私は暴走して意識が無かったんだからその事実を確認する術は持っていなかった。
「勿論その事もあってお前は、観客席にいた人間達からは酷くイメージダウンをされたよ」
「気絶していたから知らないだろうけど、芦花が能力化学の先生を嬲り殺してるその姿を見た人達は皆お前を強く批判し、恐怖と嫌悪を持ったんだ…」
「………」
言葉が出なかった、記憶が無いにしてもそんな事実を突きつけられたら私は正常じゃいられなくなった。
怖い…観客席に戻るのが怖い…私はひたすらにそう思った。もし仮に戻れば私を批判した人達からきっと冷たい目線で見られる、化物扱いされるかもしれない、そう思うと震えが止まらなくなる。
「芦花…」
要君は震えている私に対し、優しい声色で私の名前を呼んだ。
「大丈夫だ、何があろうと俺達はお前の味方だ」
「えっ…?」
「俺から言った事だけど、結局それはお前を知らない連中が勝手に抱いてる感情だ…気にする必要はない」
要君が私を励ましてくれる、そのおかげで少しだけ震えが収まった。
「うん…ありが…とう…」
「すまん…やっぱり言わない方がよかったかもしれん…でもお前に聞いてほしいのはこれからなんだ…」
これから…?まだこれ以上にもあるの?なんて私は考えていると、要君は優しい目線で私を見つめてくれる、その目を見るともう少しだけ話を聞く気になれる気がした。
「これからって…何…」
「実はだな…お前が暴走した時、お前は四季の力とは別の力を使っていたんだ」
「別の…力?」
また身に覚えのない事実が私に飛んでくる、私は確か四季の能力しか使えない筈、それ以外の能力なんて持っていなかったはずだ…。
「あぁ…そしてその力は芦花の身体を支配して、お前は理性を失い、暴走した」
「そして暴走したお前は本能のままに暴れ回り、あの能力化学の先生を肉塊にした後」
「それを異常事態だと気づいた人達がお前の暴走を止めようと、複数人でお前と戦ったんだ」
……あれ?
今一瞬、その時の私は彼の発言に違和感を覚えた、だけどその違和感の正体には直感の良い私は案外すぐに気がつけた、その違和感とは…。
なんで頑なに要君はリオ先生の事を【名前】で言わないんだろう…という些細な違和感だった。
さっきもそうだ、名前を言おうとした時咄嗟に呼び方を変えたし、それからはずっと「能力化学の先生」と呼称していた。相手の名前は短いんだからそんな長い単語に訂正しなくてもいいのに…なんて私は疑問を浮かべる。
だけどそんな私の疑問を遮るかのように要君は続けて話をする。
「その際に暴走した芦花の手によって地球防衛軍の隊長二人が負傷した、全く寄せ付けずに暴走したお前は隊長二人を翻弄したと聞いた」
「嘘…隊長が二人も…?」
地球防衛軍の隊長は正直地球上で最強格に位置する人間達と言っても過言ではない。
そんな地球防衛軍の隊長二人を私が負傷させるなんて…しかもその隊長達を寄せ付けないくらいの強い力なんて私は持っていなかったはずだ…。
私はそう思いながら、自分の両手を眺めてそう考える。
「結果的には早急に凍夜さんが暴走したお前を沈めてくれたからよかったけど、来るのが遅ければもっと被害者が出ていたかもしれない」
「そう…お父さんが…」
要君の言った凍夜さんとは私の父の【四季凍夜】の事だ、地球防衛軍の二番隊隊長で世界三強とも呼ばれるレベルの強者だ。
隊長二人で苦戦した相手を一人で仕留める時点で世界三強はレベルが違うなと実感した、流石はお父さん…と今の私では素直に喜ぶ事は出来ない。
「それから結果的にお前は試合の勝者となり、お前はずっとここで眠っていた」
「そこで色々とお前を検査して、お前はそれ以前にそんな力を持ち合わせていなかった事が判明した…」
「だから結論で言えばお前が暴走してしまったのは、お前がいつの間にか誰かに力を植え付けられたからなんだよ…」
力を植え付けられた…?そんなの一体誰が…私自身そんな力を以前貰った記憶は無いし、あの会場にはリオ先生と私しかいなかった…。
……あれ、もしかして…?いや、流石にそれはないか…。
「じゃ、じゃあ要君は私が誰にその力を植え付けられたのか…知ってる?」
私はそんな嫌な可能性から目を逸らし、少し不安を抱きながら恐る恐るその犯人の正体を聞いた。
すると要君は一旦間を置いて、さっきまで私に向けていた目線を逸らしながら「知らない…」と言った、だけど私には分かる、今のは嘘だと言う事を…でも私は彼が無意味に嘘をつくような人では無いと分かっているからきっと何か事情があるんだろうと思って追求はやめる。
それに、何故だかそれ以上は余計な詮索はしない方がいいかもしれないと私の直感がそう告げていた、だから私は「分かった」と返事をする。
「それじゃあ取り敢えず…私は何者かによって身体の中には何か強大な力が植え付けられたって事でいいのかな?」
そう聞くと要君は首肯する。
「あぁ…おそらくお前に植え付けられた力の正体は"七つの大罪"って呼ばれる禁断の力の内の一つだと思う」
「七つの大罪って…あの有名な?」
結構色んなアニメや創作物などで扱われる比較的有名な悪魔達の事だね、と言う事は私の中には悪魔がいるの!?
そう思った私は無意識に自分の腹部を手で抑えていた。
「あぁ…そして今のお前はその力の内の一つに支配されてしまったんだ…」
「今でこそ俺と面と向かって話せてはいるけど、現状のお前は中にいる悪魔次第でどうにでもなっちまうだろうな」
「え、そう…なの?」
つまり私はその悪魔に管理されている状態? もしかすると私自身その悪魔に生殺与奪の権を握られている可能性もあるんじゃないか?などと思うと、私はこの身体に宿る悪魔を恐れてしまった。
そしてまた自分が悪魔に支配されてしまうんじゃないかと恐怖心を抱いた、そう思うだけで冷や汗が止まらなくなり一気に震えが起こる、そしてあまりにも私のそんな感情が顔に出ていたのかは知らないけど要君は私の名前を呼びかけてくれる。
だって私がまた悪魔に支配されちゃったら、さっきの話のように私はまた人を傷つけてしまう…そうする事で周りの人達からは嫌われてしまって、最悪友達が私の目の前から去っていく、そんな嫌な想像ばかりが膨らんで気が気じゃなくなる。
でもそんな不安で心が黒く支配されそうになっていた私を要君はずっと宥めていた為、しばらく時間が経ったら自ずと恐怖心や不安は薄れてきた。
「落ち着いたか?芦花」
要君は申し訳無さそうな表情をしながらも優しい声色で私の心配をする、そうやって彼に宥められている間は何故だか妙な安心感で心が満たされていくような気がした、だからか案外すぐに私の中を真っ黒に染めていた不安もすっと消えていくような感じがした。
だから私は「大丈夫だよ」と彼に返事をする。
次第に私はまた冷静さを取り戻していく、そこで途端に私は頭の中に浮かんできた今現状で最もこの場で一番聞きたいと思った質問を聞く事にした。
「でもさ…いきなりどうしてこんな話を要君からするの…?」
「そんな話はきっとお父さんとかお姉ちゃん達の誰からでも出来ると思うし…だからわざわざ要君から話す理由は無い筈だよね…?」
私はそう問うと、要君は顔を俯かせて少し悲しそうな顔をした、その顔を見るときっと他に理由があるんだとそう思った私は話を続ける。
「だからきっと…要君にはこれを話す為の理由があったんだよね…?」
「……はは、相変わらず鋭いな、芦花は」
少し間を置いてから、要君は少し悲しそうに微笑み、流石は天才少女だなと私を褒める。
「あの…さ……」
「うん?どうしたのかな?」
私がそう返事をすると彼はまた少し間を置いて、意を決したような表情をしてから要君は口を開いた。
「実はさ…俺もその力の一つを持っているんだよ…」
「えっ!?」
予想外だった、それには思わず私も素っ頓狂な声を上げた、だがそんな私はお構い無しに要君は話を続ける。
「予選の時に見ただろ?黒い翼が生えている俺を…」
私はその言葉を聞いて予選を思い出す、四人の姉妹で要君の予選を見てる時確かに黒い翼が生えていた。
「あぁ~あの姿か…私達と同じで身体に何かの神様が入ってるのかなとは思ってたよ、じゃないとあんな凄まじい力使えないからね」
人間から見たらかなり強いけど、私達から見ればお世辞にもあまり強いとは言えない程の要君が、圧倒的な程力の差が空いている格上を倒せるレベルまでパワーアップしていたあの力、あれも七つの大罪の力なんだったんだと少し驚いた。
「となると今までの話を聞くからに…要君は同じ力を持つ者として話しておきたかった…って事なんだね?」
「あぁ…そうだよ」
色々と合致したような気がした。
「だから俺は…お前がこれから一人でその力に苦しむくらいなら、同じ力を持つ者として…ずっと芦花の味方でいたいと思ったんだ、だから話したんだよ」
先程までの寂しそうな表情とは違った真剣な目で私を真っ直ぐ見つめて、要君はそう言った。
「…っ!!」
その言葉を聞いた私は少し驚き顔を逸らす、それと同時になんだか心臓の鼓動が早くなり、顔が段々熱くなっていくような感じがした…なんなんだろうこれ。
「……でも、俺は結局足手まといで弱いから、何も守れない」
「…え?」
要君は思い詰めたような顔をする。
「実はさ、俺もあの時…暴走したお前を助けに行こうとしたんだ…」
「え!?そ、そうだったんだ!」
「だけど…その道先で俺は防衛軍の人間に足止めを食らって手も足も出ずに、無力化された…」
「だから結局俺はその場に駆け付けられなくて…情けなく他の皆に任せて、俺はずっと見ている事しか出来なかったんだ…俺が一番助けたかったのに、助けに行くことすら出来なかったんだ…」
「………」
今にも泣きそうな顔をしている要君を私はじっと見つめる事しか出来ない、下手に口を出さない方がいいのかもしれない、私はそう思った。
それと同時になんだか少しだけ嬉しかった、私を助ける為に駆け付けてくれた事実を聞いて、少し嬉しかった。
「俺はそんないつまでも弱い自分が憎くて、悔しくて…目の前で苦しんでいるお前の元へ俺は行けなかった自分を…俺は…」
「要君…」
要君、凄く辛そうな顔をしてる…周りへの劣等感と力の無い自分を強く卑下している。
何故だろう、そんな彼を見ていると私まで要君と同じように心が凄く辛くて悲しい気持ちになってくる。
「せめてあの防衛軍の足止めくらい跳ね除けるくらい強ければ…俺はお前を助けに行けたんじゃないかと後悔した…」
「俺だってこの一年間ずっと強くなろうと必死で修行したんだ…能力の扱いにも慣れようとした…だけどそれでも俺はあいつらに置いてかれてしまってるどころか大きく離されていってる…その事実があまりにも辛くてしょうがないんだ…」
「分かってる…おそらく俺じゃ今のあいつらには絶対に勝てないって…」
要君の劣等感がこっちまで移ってくるような感じがした、でも何故だろう…それ以上にやっぱり私を助けようとしてくれた事実が嬉しい気がする。
「もしお前が俺と同じように辛い思いをする事になってしまったら、俺はきっと俺を許せなくなる…」
「分かってるさ、俺が助けようと他の人が助けようと、その先の事は結局変わらないって事がさ…でも、それでも俺は駆け付けられなかった自分が悔しかったんだ…」
「だから俺は結局何も守れない足手まといなんだ…」
要君の想いが沢山伝わって来たような感じがする、要君から感じる後悔や不安はきっと過去の事も影響してるのか、とても大きいものだった。
だからこそ私はそんな彼の抱える大きな不安と後悔を和らげたいと思い、その為に口を開いた。
「そんなこと無いよ、要君」
私は渾身の笑みを浮かべながら彼の言葉を否定する、だって私にはそれを否定する理由があるのだから…それは。
「だって君は天界の時、気絶した私を助ける為に駆け付けてくれたんだよね?」
「…え?」
要君は顔を上げて困惑したような声を出した、だけど私はお構い無しに話を続ける。
「私はあのまま行けばきっと地面に落下して死んでた…たとえ不死身族とは言えども辛くて死を受け入れざる負えない状態にはなってたんだと思うよ」
「でもね、あの時要君が駆け付けてくれたおかげで私は助かったんだよ?」
「だから君は足手まといなんかじゃない…君にもちゃんと誰かを守れる力はある、だって私自身が君に守られた人間なんだから事実だよ!」
そう、君は足手まといなんかじゃない…無茶をしてでも私を助けようとしてくれたかっこいい人だよ、たとえ力が無くても足手まといになろうとも私を助けようとしてくれた優しい人だよ。
だからこそ彼が苦しんでいるところを見るのが私は辛かったんだと思う、手を差し伸べたかったんだと思う。
「……そっか」
要君は少し微笑んだ、私の言葉で多少は後悔や不安が吹っ飛んだのか元気になってくれた。
「あぁ…でもあの時はぶん投げて悪かったな…」
「あ~!そういえばそうだったね!もう!あれ本当に痛かったんだからね!」
「いやすまん、本当にすまんかった」
要君の調子も元に戻ってきた、さっきまでの辛そうな顔の面影がもう無い、なんだかいつにもまして感情の起伏が激しいね今回の要君は。
天界攻略の時にぶん投げられた時の痛みは忘れないけど、それも要君が助けてくれた証に他ならない、だからあの痛みも私にとっては良い思い出の一つなのかもしれない。
「ふふ、だからさ…」
私はいつものように笑みを浮かべながら、要君の頭にそっと手を置いて撫で始める。
「要君は決して弱くなんかないよ、寧ろ強いんだよ」
「力とか目に見えるそんなものなんかじゃない、心がずっと強くて…優しいよ」
「そんな君に救われた人もいるんだよ、そう…ここにね?」
「芦花…」
私の言葉に安心したのか要君は凄く優しい顔を浮かべる、そんな彼の顔を見た私は不覚にもドキドキしてしまった。
「あ!ご、ごめん!嫌だったよね!」
私は慌てて手を頭から退けると、要君はなんだか凄く照れ臭そうな顔をしながらも真っ直ぐな目をして私に言った。
「芦花、約束する」
「俺が絶対にお前を辛い目には合わせない、同じ力を持ってる者として、お前に苦しい思いは絶対にさせない」
「あ、あぅ…」
真面目な顔をしてそんなセリフを吐く彼を前に私はいつも以上に心臓の鼓動を更に高鳴らせて、顔を熱くさせる。
さっきからこの感じはなんなんだろう、彼の優しさをこの身に受けてからずっと私の身体はこの調子だ…そう思っていると更に私の顔は熱を帯びる、沸騰しそうだった。
「だから俺、強くなるよ…今度は足手まといと言われないように今よりもずっと強くなって、お前も───そして桜花や皆も誰も傷つけさせないくらいに守ってみせるよ」
「……あ」
彼の吐くセリフの最後の言葉を聞いてさっきまで凄く高鳴っていたはずの私の心臓は段々と鼓動が遅くなっていき、熱を帯びた顔の温度は下がっていき、私の頭の中は冷静に戻ってしまった。
「………」
それと同時に心臓がキュッとなるような感じがして、ただひたすらに苦しかった。
そっか…そうだったね…なんで私ドキドキしてるんだろう…本当に馬鹿みたいだ…。
だってこれは誰がどう考えても特別な言葉?なんかじゃないのは目に見えて分かる事なのに…私は少し勘違いをしてしまっていた。
そうだった…だって彼はあくまでも私が自分と同じ七つの大罪の力の被害者だから同情してるだけ…だって要君にはもう既に桜花姉がいるんだから…。
だからこんなよく分からない想いを彼に向けちゃ駄目だった…そんな事はとっくに分かっていた筈なのに、そう考える事で私はさっきと同じくらい苦しくなる、頭の中がグチャグチャになりそうになる、涙が出そうになる。
だけどここばかりは耐えないといけないんだと、そう思いながら私は意地でも自分の心を抑制する…だけど思った以上にこの気持ちは厄介な代物で、私自身この気持ちは抑えられそうにはなかった。
だって…。
要君が私に対して向けてくれたその優しさや気持ちが、心の底から嬉しかったのだから。
そのことからきっと私は…要君の事が好きなんだと、そう思った。
だから私は、その気持ちを少し抑えながらも、ラインを超えない最低限の言葉として彼の前に吐き出した。
「───うん、待ってるね!君が私を守るナイトになる日を!」
終わり。
七つの大罪の力を植え付けられた芦花と、同じ被害にあった要が話すだけ。