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国家主義、排外主義をオーガニックでくるむ参政党に異議あり  有機農業に関わる農民・市民団体が声明

大野和興ジャーナリスト(農業・食料問題)、日刊ベリタ編集委員・編集長
水も森も土も誰のものでもない、みんなのもの(撮影 吉田惣栄)

20日の投票日に向け参院選は過熱している。日本人ファーストを掲げ、天皇を軸にした国づくり、主権は国民ではなく国家にありとする参政党が台風の目玉の様相を呈してきた。強面の国家主義と外国人を敵視する排外主義政党の人気を支えているのは有機農業、食の安全、食料自給、オーガニック学校給食を目玉に押し出したソフト戦略。これに対し、有機農業や食の自給と安全を掲げる農民・市民グループから異議申し立ての声明、意思表示が相次いで出された。(大野和興)

◆外見はオーガニック 中身は排外主義  国際有機農業映画祭が警告

http://www.yuki-eiga.com/5996

東京都内で毎年数百人が参加して開かれている国際有機農業映画祭が14日、次のような表題の声明を自身のホームページに掲載した。

外見はオーガニック 中身は排外主義の参政党は 表示法違反です!

同映画祭は全国の有機農業者やその関係者、それに連帯する消費者市民が緩やかなネットワークでつながりながら内外の有機農業、アグロエコロジー、自然循環、地球環境などをテーマとする映像を上映してすでに18回になる。19回映画祭は来年3月に都内で予定されている。

映画祭運営委員会は自分たちが思い描き、実践してきた有機農業の思想と真逆の、排外主義、差別、優生思想を内にくるみこんだ参政党の有機農業にノーをつきつけたのが、今回の声明だと語っている。

声明は次の言葉ではじまる。

「国際有機農業映画祭は、グローバルな視点から有機農業をすすめるべく、映画祭を開催してきました。有機農業運動は、自然と人との共生と多様性の尊重がテーマであり、単なる農法ではなく、私たちの生き方、社会のあり方を問うものです。有機農業を発展させる根幹は、いうまでもなく民主主義であり、平和主義です。」

そして次の言葉で終わる。

「排外主義を包んだオーガニックは食べると危険です。国際有機農業映画祭の名において、私たちは参政党の存在にノーを突き付けることをここに表明します。」

◆オーガニック食品店も立ち上がる

いま静かに人々の間で広がっているのが、京都のオーガニック食品店を営む2人の女性が出した声明だ。表題は、

「限られた人のためのオーガニックは

  私たちの目指す世界ではありません」

声明は「私たちはオーガニック食品に関する仕事をしています」から始まる。

「それは一部の限られた人の特権としてのオーガニックではなく、おいしくて、安全で、できるだけ環境・社会負荷の少ない食材に誰しもがアクセスできる世界を目指した取り組みです」

「国や民族、年齢、性別、経済的な状況、障害があるかないかなどにかかわらず、オーガニックの食材を手にしてほしいし、おいしいを共有したい。」

自身の仕事に誇りと自信を持つ市井の民の心情がたんたんと語られる。読み進むうちに、声明に書かれた言葉が胸にせまってくる。 声明を発したおふたりは中間報告を次のように行った。

1週間前にこの声明をSNSなどで発信したのですが、私たちが思っていた以上に多くの方に賛同のご連絡をいただきました。はじめは京都を中心に、次第に他の地域からはじめましての方も多く、人の繋がりの可能性を感じました。

ネット上で外国人への差別を煽る情報が多く出回っている中、草の根的に私たちの小さな声も皆さんのおかげで広がっている。いくらよいオーガニック政策を掲げていても、その根底に排外的・差別的な思想があることの危険性を少しでも多くの方が考えるきっかけになれば幸いです。

声明全文は以下ー

「限られた人のためのオーガニックは
私たちの目指す世界ではありません」

私たちはオーガニック食品に関わる仕事をしています。

それは一部の限られた人の特権としてのオーガニックではなく、おいしくて、安全で、できるだけ環境・社会負荷の少ない食材に〝誰しもがアクセスできる世界〟を目指した取り組みです。

私たちの町には外国籍を持った人や長期滞在の人もいれば留学生や旅行者、多種多様な外国ルーツの人々がいます。

国や民族、年齢、性別、経済的な状況、障害があるかないかなどにかかわらず、オーガニックの食材を手にしてほしいし、おいしいを共有したい。

オーガニックを広めたいというその根底には、既存の仕組みの中で犠牲になってきた小さな声を見逃さずに本当の意味で健全な世界にしたいという想いがあります。
それは誰かを排除したり、命に順番をつけるような世界への抵抗なのです。

オーガニックを掲げながらも「日本人ファースト」というストレートな差別発言を選挙活動を通じて広めている政党と私たちの思うオーガニックは根底の一番大切な部分が違います。

すべての生きとし生けるものに健やかな食と暮らしがいきわたることを目指すオーガニックをこれからも私たちは広め続けます。

ナチュラルフーズドングリ 赤塚瑠美(京都)
すみれや 春山文枝(京都)

◆2022年、農民とその仲間が発した警告

前回に参院選で参政党は初議席を得、続く地方議員選挙でも、着実に議席を増やした。そのことに最も危機感を持ったのは農民とその仲間だった。農民と農業ジャーナリストが協同して起草、多くの仲間を誘って呼びかけた。表題は

「私たちは農と食が国家主義・排外主義の枠内で語られることを拒否します」

そして次にように語る。

「有機農業運動はこれまで一貫して国際交流を大事にし、海外の実践に学び、日本の経験を分かち合いながらその思想や技術を発展させてきました。食の安全を求めて運動している消費者生活者は、世界中誰もが安心して食べられる世界をめざしています。国家主義・排外主義は私たちのこうした思いや実践と相いれません。」

そして、世界人権宣言がうたう「食料への権利」で、次のように結ぶ。

「世界人権宣言や国際人権規約に明示されているか『食料への権利』は、人は誰でも、いつでも、どこに住んでいても、心も体も健康で生きていくために必要な食料を作り、手に入れることができる、すべての人が生まれながらにもっている権利として位置づけられています。私たちは、この声明の出発点を「食料への権利」に置きたいと考えます。」

声明の呼びかけ人のひとりは、3年前は注意喚起くらいの気持ちだったが、政治状況がこんなに急速に変わるとは予想がつかなかった、と述べている。

声明全文は以下ー

【声明】私たちは農と食が国家主義・排外主義の枠内で語られることを拒否します
 私たちは農民です。農民として、自分の身の丈に合わせ、自然と相談しながら営農を持続し、ある者は有機農業に挑戦し、地域の農業を維持してきました。自由に、思いや行動や知恵や技術を発揮できることに誇りをもって食を作ってきました。
 私たちは消費者であり生活者です。私たちは食べる者として、自身と将来世代の誰もが健康で幸せに生きることができるように、安心して食べ続けられるように、消費者生活者としての運動をつみあげてきました。
 それこそが農と食の民主主義だと私たちは考えます。

 7月の参院選は食と農をめぐって、排外主義的な農業でも良しとするのかという問いを私たちに突き付けました。
 はじめて選挙に登場した参政党が、大量の候補者を立て、当選者を出し政党要件を獲得するという出来事がありました。同党は三つの主要公約の一つに「化学的な物資に依存しない食と医療の実現と、それを支える循環型の環境の追求」を掲げ、有機農業や食の安全に関心をもつ人たちの中に小さなブームを巻き起こし票を集めたのです。
 同党は綱領の第一に「天皇を中心に一つにまとまる平和な国をつくる」を唱え、主要公約の一つに、「日本の舵取りに外国勢力が関与できない体制づくり」「外国人労働者の増加を抑制し、外国人参政権を認めない」を掲げています。国家主義・排外主義の色彩が極めて濃い政党です。
 有機農業運動はこれまで一貫して国際交流を大事にし、海外の実践に学び、日本の経験を分かち合いながらその思想や技術を発展させてきました。食の安全を求めて運動している消費者生活者は、世界中誰もが安心して食べられる世界をめざしています。国家主義・排外主義は私たちのこうした思いや実践と相いれません。
 いま日本では、国民の危機意識を煽りながら軍備の大拡張に動き出しています。そのために邪魔になる憲法の改定が具体的な政治日程に上がっています。あらゆる分野で「安保優先」の動きが強まり、国家による監視と統制、排外主義が持ち込まれようとしています。農と食という生命の再生産をつかさどるもっとも人間的で自由でなければならない分野も、例外ではあり得ないと私たちは懸念します。

『私たちは、農民、消費者生活者が取り組む農業生産活動、有機農業や食の安全をめざす運動が、国家主義・排外主義の枠内で語られることを拒否します。』そのことを言いたくて、この声明を発します。

 世界人権宣言や国際人権規約に明示されている「食料への権利」は、人は誰でも、いつでも、どこに住んでいても、心も体も健康で生きていくために必要な食料を作り、手に入れることができる、すべての人が生まれながらにもっている権利として位置づけられています。私たちは、この声明の出発点を「食料への権利」に置きたいと考えます。
 この声明に賛同いただける個人・団体を募ります。ぜひご一緒に
2022年8月11日

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ありがとうございます。
ジャーナリスト(農業・食料問題)、日刊ベリタ編集委員・編集長

1940年、愛媛県生まれ。四国山地のまっただ中で育ち、村歩きを仕事として日本とアジアの村を歩く。村の視座からの発信を心掛けてきた。著書に『農と食の政治経済学』(緑風出版)、『百姓の義ームラを守る・ムラを超える』(社会評論社)、『日本の農業を考える』(岩波書店)、『食大乱の時代』(七つ森書館)、『百姓が時代を創る』(七つ森書館)『農と食の戦後史ー敗戦からポスト・コロナまで』(緑風出版)ほか多数。ドキュメンタリー映画監督作品『出稼ぎの時代から』。独立系ニュースサイト日刊ベリタ編集委員・編集長、国際有機農業映画祭運営委員・前代表。

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