7つの銀弾   作:りんごとみかんと餃子と寿司

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遅くなりました。忙しくてな!

ほんとは夕方5~7時あたりに出すのが読んでくれる人多いだろうけど、ヒャア我慢できねえ──からこんな深夜に投稿しちゃった!

まだFGOの新章やれてないよ……7月の後編配信までにはやらなきゃ(使命感)

感想欄で新章のネタバレとかやめてね!? フリじゃないからね!?




ロンドンー8:『凶弾』

 

 

 

シロガネハズムという人間は、いつだって“死にたい”と願っている。

 

より正確な表現をするとすれば、自分に対して常に“死ねばいいのに”という殺意を向け続けている。

 

彼は本質的には生ける屍の類とそう変わらない。生への執着がなく、欲求に希薄。自身のことを無価値で無用な者だと信じてやまず、力持たぬ者だと嘲り嗤う。

 

それでも、彼が歩み続けているのは。歩み続けていられるのは。そんな、今にも身を投げてしまいそうな彼の心には、(くさび)が打ち付けられているからに他ならない。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と、その強迫観念だけが彼の生きる理由だ。

 

それは想いだ。何よりも彼が大切にしている想い。自分自身ですら信じ切れない自分という存在を、唯一肯定してくれる想い。それは愛であったり、友情であったりする。何物にも代えがたい、かけがえのない想い。

 

それは記憶だ。自分が誰かに認められていたのだと。生きてほしいと言われたのだと、そうした無二の命綱。何よりも忘れ難い、尊き記憶。

 

彼は信じている。シロガネハズムという存在が、何よりも無価値で、この世界において最も不必要なものだと確信している。

 

彼は信じている。彼には何よりも大切な人々がいたのだということを。この世界において最も価値のある、愛すべき人々がいたのだと確信している。

 

──運命の日(fateにたどり着いた日)。彼にとって最も尊き人々は、彼に「生きろ」と言った。「あなたは私にとって大切な人だ」と彼を抱きしめた。

 

それは“救い”であった。自分なんて死んでしまえばいいと思っていた少年はその救いによって立ち上がり歩むことができた。

 

それは“呪い”であった。()()()()()()()()と願っていた少年は、その呪いによって立ち上がらされ、歩かされた。

 

いくつもの“救い”が彼の背を優しく押し、いくつもの“呪い”が彼の手を乱暴に引いた。彼に進まないという選択肢は無く、立ち止まるという甘えは許されなかった。

 

彼の心象にねじ込まれたその楔がどのようなものであったのか。思い返すたびにどれほど嬉しく想い、どれほど悔しく想い、どれほど辛く思っていたかを、私は──アルトリア・ペンドラゴンは知っている。

 

彼の中には大別して二つの楔があった。前世での楔と、現世での楔。それぞれに記憶と想いが結び付き、それぞれが彼という存在をかろうじて保っている。

 

 

 

だからこそ、私は。怖くて仕方なかったのだ。

 

その楔がほんの少しでも、どちらか一方でも破損してしまったとしたら。

 

彼という人間を人間たらしめている、想いと記憶の螺旋、彼を中心に束ねられたその禍福がほどけていったとき。

 

果たして彼は──人として生きていられるのだろうかと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

モードレッドと共に行った捜索においての成果はほぼ皆無といってよかった。

 

この探索のそもそもの目標であるリツカ達は、その痕跡すらも発見することはできず、またほかに有用な情報を手に入れることもできず。私たちは特になんの手土産も用意できずに拠点に帰ることとなった。

 

「見つけられなかったか」

 

お疲れ様と私たちを労いながら、マスター──シロガネハズムは残念そうに言った。もはや特異点ロンドンの戦いも終わりに近づいているというのに、リツカ達とは合流できていない。その事実は彼を非常に不安にさせているようだった。

 

彼はリツカを、ある意味で()()()しているようだった。彼には運命力があるのだと、運命を動かす力が備わっているのだとハズムは信じているらしい。だからリツカがいないこの状況が、リツカの運に頼れない事実が、僅かずつではあれどハズムの精神を蝕んでいた。

 

「どうしますか?」

 

私はそんな彼の心中を察しつつも、努めて平坦な声で言った。彼はあまり気を使われたり慮られたりすることを好まない性格であったからだ。自分にはそんな不相応なものはいらない、とそう考えてしまうめんどくさい性格であることはわかっていた。

 

ともかく、私たちは選択を迫られていた。もう聖杯があると思われる場所についてはほぼほぼ特定できていたからだ。このままリツカ達を探し続けるのか、私たちだけでも聖杯の在処へと向かい修復を行うのか。

 

これは分水嶺であった。どちらを選ぶにせよ、大きく運命が変わるであろうことに疑いはなかった。

 

「……」

 

ハズムは深く悩んでいる様子だった。彼はこの特異点で魔術王ソロモン──改め、憐憫の獣ゲーティアを討伐するという目標を掲げていた。銀弾をもって一撃で決める以上は、リツカ達の存在が必須というわけではない。しかし、シナリオをあまりに再現できていなければ、ゲーティアが現れない可能性がある。

 

もはやシナリオは崩れているも同然であったが、だからと言って軽視していい問題でもないだろう。彼の言うところの“原作”のシナリオはかなり精度の高い未来予知のようなものだ。わざわざそこから外れて不測の事態を増やすのは、賢いとは言えない。

 

行くか、行かないか。どちらにも利点があり、どちらにも欠点があった。

 

 

 

ハズムはまだ口を開かなかった。簡単に判断できるものでもないだろう。そう思って見守っていると、隣にいたモードレッドがため息を吐いた。

 

「判断が遅えんだよ、ったく……」

 

「それは、申し訳ないけど。でもこの選択は簡単に選べるものじゃあ──」

 

「確かにそうだな。で、それが? こうしてお前がうじうじ悩んでいれば世界は救えるのか? お前はオレにどうしたいって言ったんだ? “世界を救いたい”っていったんだろ! それを忘れたんなら、今度こそ首切り落としてやろうか!」

 

彼女は明らかに怒っている様子だった。興奮しているためか、顔の周りにはバチバチと赤雷が閃光を散らしている。

 

「何かを救うってのは、そんな生半可な覚悟でできることじゃねえだろ。こんな判断くらい即座に下して見せやがれ! それができないってのか?──騎士王に認められたマスターのクセに」

 

文字通り死んでも気づかなかったことではあるが、モードレッドという騎士は私のことを存外に好いていたらしかった。私から話しかけるようなことがあれば顔に喜色が滲みだすくらいには。もちろん、好意だけを抱いているわけではないだろう。数文字で語って済ますことができるほどの因縁であれば、私たちはカムランの丘で相打つことなどなかったはずだ。

 

ともかく、モードレッドから私に向けての感情は複雑怪奇なものでる。しかしその内訳として、好意やら尊敬やら憧憬やらが多くを占めているのは事実らしかった。

 

──だからこそ、その私がマスターと仰ぐ者が、シロガネハズムのような()()であるのが気に入らない。と、モードレッドは先の外出の折に零していた。今回はそれが一部爆発したということだろう。騎士王を従者として使うのなら、もっと()()()()()なってほしい。というのがモードレッドの正直なところらしかった。

 

「──お前は!……お前は、もっと自信をもって進むべきなんだ。大切な()()に認めてもらえているってんなら」

 

最後の言葉は予想外に静かだった。激情に駆られていると言わんばかりの先ほどまでと違って、モードレッドは諭すような声音で語り掛けた。こちらに瞳をちらりと向けると、身に宿していた赤雷を霧散させた。

 

 

 

 

「いこう」

 

ハズムは腹を決めたと言った様子で短く、吠えるように言った。内臓震えるほどの大音でもなく、耳を貫くほどの鋭利さがあるわけでもない号令。静かで、鈍く、しかして心に決意を刻み付ける。狼の遠吠えにも似た、広く多くの者たちをそろりと鼓舞する声色。

 

「──ありがとう、モードレッド」

 

「ハ、なにが?」

 

「背中を押してもらった」

 

「そんなつもりはねえよ。ただ、ムカついただけだ」

 

拳を鳴らしながらモードレッドは眼を反らした。礼を言われることに慣れていないのかもしれない。

 

「──見てられねえんだよ、テメェみたいなのは。まるで……いや、なんでもない」

 

口を閉ざした彼女の喉元に、何が出かかっていたのかは知る由もない。それは、生前のどこかで私が違う選択をしていれば、聞かせてもらえていたことだったのだろうか。いつかそれを知れたらと、私は思った。きっとその願いが二度と叶わないものだとしても。

 

私たちはその会話を最後にして、各々が無言で準備をした。

 

銀の鎧に身を包んだ騎士は、手にした両刃剣を確かめるように2度振ると、満足そうに鼻を鳴らした。

 

個性的な居候達のせいで気苦労の多い魔術師は、試験管に満たされた霊薬を眺めて想いを馳せた。

 

人造の花嫁は、身の丈ほどのメイスを肩に担ぐと、自らを激励するようにしてぐっと拳を突き出した。

 

気だるげな童話作家は、書斎からくすねた紙に、同じくくすねたインクで何かを書き込みながら、何が可笑しいかクツクツと笑った。

 

騎士たちの王は──私は、眼を瞑って自身の胸の内にある誓いを明確に浮かび上がらせた。シロガネハズムと交わした誓い。互いに命と正しさを預け合うための約束を。

 

 

 

──銀弾の射手は、腰の剣柄を撫ぜ、つづいて胸のロザリオに触れようとして、止めた。そこに真実どんな意味があったか明白ではない。しかし、私にとってそれは、諸手を挙げて歓喜するべきことのように思えた。

 

母さん(アヤメ)義母さん(ショウブ)母さん(アイリス)──父さん、有理、姉さん……みんな。みていてね

 

シロガネハズムは何かを口にした──ように見えた。実際のところそれは、心の内を虚空に投げかけただけの、音とならない声だったのかもしれない。少なくとも私の耳には何も聞こえはしなかった。

 

私たちは歩き出した。なによりも濃く暗い霧を、決意と希望で切るようにして。

 

この戦いの先に、なにが待つとしても。進みだすことを選んだのならば。今だけは前を向いて──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──聖杯の在処はきっと近い。現に、超高濃度の魔力が空気中に漂っている。ああ、今にも気絶しそうだ」

 

数日程歩き続けて、オレたちはついに、聖杯の近くへとたどり着いたらしかった。ハウラスさんが言うように、凝縮された魔力は質量を伴った空気のようにして、俺達の体力と意識に負担をかけていた。

 

道中に適宜休息をとってはいたが、慣れない環境で十分に回復できるはずもなく、身体は限界に近かった。それに、いくつかの戦闘を強いられたこともあったから、それの疲労も溜まっている。

 

オートマタやヘルタースケルターをはじめとして、童話を宿した本(ナーサリーライム)様子がおかしい劇作家(ウィリアム・シェイクスピア)すました顔の錬金術師(ヴァン・ホーエンハイム・パラケルスス)など。

 

いずれも強敵というわけではなかったが、余裕にいなせるものでもなかった。俺やハウラスさんはもちろんの事、特にサーヴァントとの戦闘を一手に担っていたマシュは疲労困憊だろう。

 

現に今は会話に参加することすらままならないらしかった。それでもオレのことを守るため、少ない体力と精神力を研ぎ澄ませて護衛を行ってくれている。無二の相棒だった。

 

「──結局、君の仲間は見つからず、か。不甲斐ない案内人(ナビゲーター)で申し訳ない」

 

「いえ、そんな。仕方のないことでしょうから」

 

ハウラスさんが今謝罪したように、オレ達は結局ハズム達と合流することなく聖杯のある空間に到着しようとしている。目的は同じだから、どこかで道は交わるだろうと最初こそ楽観的に構えていたのだが──それは叶わなかった。

 

ハウラスさんも毎夜毎朝、常に使い魔を飛ばし続けてくれていた──それこそ倒れそうなほどに──が、ハズム達の薄い痕跡程度しか見つからず、そのたび合流を断念することとなった。

 

ここまで合流できないとなると、不安が忍び寄ってくる。

 

まるで──そう、何者かの悪意によって合流を妨げられているかのような予感がするのだ。

 

そもそもこの特異点は異常だ。部隊は散り散り。カルデア司令部との連絡も途絶。サーヴァントが一部同行不能。こんなことは今までに無かった。なにか作為的なものを感じる。同時に強烈な()()すらも。

 

「──! 光が差している! たどり着いたぞ、リツカ、マシュ!」

 

その呼びかけにハッとして目線を上げると、開けた洞穴に自分たちが足を踏み入れたのがわかった。だたっぴろい空間──東京ドームいくつ分だろう、なんて日本人の感性が疑問を囁いてくる──には、中心に円形の高台があり、そこから淡い光の柱が立っていた。

 

「──ここは、先輩」

 

「うん、俺も同じことを思った」

 

ここは冬木であの堕ちた騎士王と戦った場所に瓜二つだった。広い地下空間に、まるで儀式に使う祭壇のようにして高台がそびえて、その中心には──きっと聖杯がある。

 

「ようやく、ようやくだ。リツカ、マシュ。では行こうか」

 

ハウラスさんは目標に到達したからか嬉しそうにしながら高台へと急ぎ足で向かった。あわてて俺たちも追いかける。

 

息を切らしながら登りきると、確かにそこには聖杯があった。黄金の器からほとばしる魔力の奔流が、俺たちを近づけまいとしているように見える。

 

「ゴーグルを外して見たまえ、リツカ。これは間違いなく聖杯だ。予想通り、魔霧はここからあふれ出していたのだ」

 

「──本当だ。ようやく、辿り着いた」

 

ハウラスさんの言ったとおりにすれば、ゴーグルで投下されていた魔霧の全容がうかがえた。霧は確かに盃からあふれ出している。この街のどこよりも霧が濃いだろうことは明らかだ。

 

手を伸ばせば指先が見えなくなるほどの濃霧。まさに一寸先は霧。俺はゴーグルをつけなおした。

 

ともかく、確かめたことからもわかるように、この場所、この聖杯こそが特異点を作り出しているに違いなかった。

 

「今回は、何の邪魔もないのですね」

 

ふと、マシュが言う。それは、確かに疑問だった。今までどの特異点であっても、そこには特異点を作り出した者、そして聖杯を操るもの──魔導元帥ジル・ド・レェなど──がいて、それを打ち倒してようやく聖杯を手に入れていた。

 

つまりは、その特異点における最後の決戦(FATAL BATTLE)が常に存在していて、俺たちはその戦いを命からがら駆け抜けてきた。

 

この特異点でもそれは例外ではないだろうと、今度はどんな黒幕(ボス)が待ち受けているのだろうと、半ば身構えていたのだが──

 

「でも、邪魔されたいってわけじゃないし。ラッキーだった、でいいのかな?」

 

「──はい、釈然としませんが。確かに、これで終わるに越したことは無いでしょう」

 

すっきりしない、といった表情でマシュは言う。確かにそれには同意だった。ここで誰も現れないことは特に問題ではない。むしろ喜ばしい。

 

これでもはや、俺たちがやるべきことは、聖杯を確保し魔霧を晴らすことだけ。そうすればカルデア司令部との通信も回復し、特異点修復と退去が行われるだろう。はぐれたハズム達ともカルデアで再会できるはずだ。

 

しかし、本当にこれで終わるとして。この特異点は修復されるとして。では──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

「時に、リツカ。最後に一つ、聞いておきたいことがある」

 

「っ、はい?」

 

不意に、ハウラスさんがこちらに語り掛けてきた。聖杯に伸ばしかけていた手をあわてて引っ込める。

 

彼は()()()と言った。これまで彼とは話す時間が山ほどにあったわけだが、その際“聖杯を手に入れたらお別れすることになる。そしてきっと二度と会えない”といった趣旨のことを彼には話していた。

 

だからこそ、彼はきっと最後の別れの言葉を交わしたいのだと思う。現に彼は寂しそうに笑うと、出会った当初のように片手を差し出した。最後に握手をしよう、という意図は言葉にせずとも理解できた。俺は力強く彼と握手を交わした。

 

「──しかし、まずはお礼を。君たちのおかげでここまで辿り着くことができた。これで私は、私の目的を達することができそうだ」

 

「いいえ、お礼を言いたいのはこちらの方です。ハウラスさん、ありがとうございました」

 

「いや、活躍したのは君たちさ。流石は、()()()()()組織の一員だと感心した。君たちの旅路は困難なもので、しかし君たちの決意は眼を見張るものだった。世界を救うという目的に真摯に向き合い、努力し、決意を抱く姿には、私も感服したよ」

 

手を握ったまま彼は俺たちを褒め称えた。悪い気はしなかったが、この特異点においての活躍は、マシュ7割、ハウラスさん2.8割、残りかす自分、といったところで、マシュが称えられるのはいいとしても、俺がその対象になるのは違う気がした。

 

「君たちには、色んな助けをもらい、色んなことを教えてもらったよ。そのどれもが有益で、有意義な時間だった。得難い旅路だった」

 

ハウラスさんは笑う。登山家が登頂を成し遂げた時にも似た、目的達成の清々しさを感じる笑いだった。

 

「でだ、最後に。先ほど聞きたいことがあると言ったね。そのことなんだが──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──世界を救う一団とやらが、あのような爆弾を野放しにするとは、何のためだ? 理解に苦しむよ。()()()()()()()

 

「──えっ」

 

だから人類は無価値なのだ。同じ過ちを繰り返し、それから学ばぬ。欠点を明確に認識していながら、それを愛や友情などという薄い仮面で誤魔化す愚行を平然と行う

 

ハウラスさんはその姿を徐々に変貌させていった。白人らしい色素の薄い肌は、泥と錆を混ぜたような赤茶色に。こげ茶色の頭は、白墨を塗り付けたように白く。ちょうど肌と髪の色相が入れ替わるようになり、顔立ちも変化していった。整った顔立ち。しかし今までの親しみやすさは消え去り、こちらを睥睨する瞳には侮蔑が宿っている。

 

まるで──そう、王が奴隷を見るかのような、心底こちらを見下している、酷い視線だ。

 

深緑色の上等なジャケットは、白と赤、黒を基調としたローブのようなものに入れ替わる。ところどころに鎧装甲や呪具のような()()()()に似合わぬものを引っ提げて。

 

これではまるで、人間ではなく──サーヴァントのようではないか。そう思うまでが限界であった。

 

信頼していた相手の突然の変容。全く予想外の事態に、俺もマシュも、彼の並べる罵倒の意味を聞き取るのに精一杯だった。するべき対応がとれないくらいの衝撃を受けていた。警戒すら先行して、裏切られたという落胆すら追い越して、ただただ驚愕だけが津波のように俺たちを襲っていた。

 

──だから、お前たちはここで終わるのだよ。()()()()

 

「え──」

 

我が名は()()()()()()()!! 人類を過去と未来にわたって焼き尽くし──無価値なる人類史を滅ぼす者!!

 

高らかに、謳い上げるかのように、そして──()()()()()()()()()()()()()()()。彼は大仰に手を広げ、大空洞に反響するほど声高に叫ぶ。

 

バンッ!

 

そして、その言葉と同時にして、彼は握っていた俺の片腕を勢いよく引っ張った。突然のことになすすべもなく、俺の身体は彼に圧し掛かるようにして引き寄せられていく。

 

「──せんぱいっ!!」

 

ようやく驚愕から解放されたのか、はたまた俺が未知の存在に引き寄せられた事実に対し、とっさに体が動いたのか、マシュはどうにか俺とハウラスさんの間に体を滑り込ませようとする。

 

一刻を争う事態に重い盾は邪魔と考えたか、投げ捨てて。身一つで壁になるかのように。彼女は飛び込んだ。

 

果たして、その行為は間に合い──()()()()()()()()。俺とマシュとハウラスさん──魔術王ソロモンの三人は、一直線に、そして一塊に並んだ。

 

これはきっと、この魔術王ソロモンを名乗る存在が()()()()()()()ことだったのだと思う。なぜならば、目の前の存在は悪辣な嗤いに表情を染めていたからだ。

 

──ああ、我が王よ。私はやりました

 

そう満足そうに言う彼の口端からは、赤黒い血が滴り落ちていた。遅れてやってくる、灼けるような熱さ。それは胸を中心として、じわじわと体に広がっていた。額には脂汗が滲み、もはや立っていられないぐらいに、身体の筋肉が弛緩していった。

 

自身の胸元を見れば、そこにはぽっかりと一つの穴が開いていた。それを弾痕だと思い至るまでに、ずいぶんな時間を要してしまった気がする。それとも薄れゆく意識のせいで、時間が引き延ばされて感じるのだろうか。

 

俺をかばって身を投げ出していたマシュの背を見れば、同様の穴が開いていた。俺からは見えないが、きっとソロモンの胸元にも同様に、それが刻まれているのだろう。

 

後ろを振り返る。この弾痕を刻み付けた射手の顔を拝んでやろうと。そしてそれは、きっと予想できていたことなのだろうと思う。

 

 

 

 

 

 

シロガネハズムが。親友の姿がそこにはあった。

 

こちらに、右手の人差し指を突き付けた状態で、呆然とたたずんでいる。きっと事態を把握していないのだろう。でも数舜後には──きっと泣き崩れてしまうのだろうか。

 

……きっとこれは、罠だったのだ。全容はわからなくとも、本質はわかる。

 

シロガネハズムという射手が常に狙い続けていた獲物──魔術王ソロモンが、狡猾にも、非道にも、俺とマシュを肉盾に使ったのだ。

 

しかも、自分が助かるため、なんて理由じゃなく。シロガネハズムという人間の心を壊すために。折るために。

 

 

 

──ああくそ、考えがまとまらない。

 

こんなはずじゃなかった。俺はハズムにそんな顔をさせたくて仲良くなったんじゃない。友情を苦痛に利用されるために仲を深めたわけじゃない。

 

世界を救う旅はどうなる。ナツキとの約束はどうなる。ハズムの幸せはどうなる──くそ、くそ、くそ。

 

 

 

──ごめんな、ハズム。

 

 

 







【今日の作者Tips!!(長いから飛ばしてどうぞ)】

さあ、始まりました。大好評につき早くも第一回目となる『今日の作者Tips!!』

本日の話題は『花』と『銃』についてです!

……え、なんか似合わないセットだなって? そんなことないでしょ、銃と美少女をセットで売り出すゲームが世の中にはあるんだから、花と銃だってさ──無理があるかな?



ともかくまずは『花』の話題についてですね。

世の中にはたくさんの花があるわけですが、今回はその中でも『アヤメ』『カキツバタ』『ショウブ』について話していきます。

アヤメは漢字を“菖蒲”と書くアヤメ科アヤメ属の多年草です。花言葉は『メッセージ』や『希望』ですね。

実に面白いことに、ショウブも漢字を“菖蒲”と書きます。

ショウブそのものはアヤメと似ても似つかぬ花ですが、別のハナショウブと言われる花はアヤメに非常によく似ていますし、そもそも“ハナアヤメ”と呼ばれたりもしますね。ちなみにショウブの花言葉は『優しさ』や『伝言』など。

最後にカキツバタですが漢字を“杜若”と書き、“いずれアヤメかカキツバタ”という慣用句が生まれるほどに、アヤメとよく似た花を付けます。花言葉は『幸福が来る』や『幸せは貴方のもの』など。

そういえば最初の話題に上げ忘れていたのですが、『アイリス』についても話したいと思っていたんですよね。

と言っても言いたいことは一つで、これまでに話したアヤメ、ショウブ、カキツバタのどれも、英語では“アイリス”と呼称されるということです。いやー花の世界って奥深いですね。

……オチはないです。



次の話題。『銃』について。

銃っていう道具はもちろん生物の命を奪うために作られたものな訳ですが、最強の武器ってわけでもありません。

まず訓練しないと的に当たらないし、当たったとしてそれが人間であっても動物であっても脂肪や肉に阻まれて命を取るに至らないことがあります。

さらに銃の明確な弱点として障害物に弱いという特性があります。標的が物陰に隠れてしまえば回り込む以外に銃弾を当てるすべが基本的にありません。なんせ銃弾はまっすぐにしか飛びませんから。

もちろん壁を抜けるほどの強力な銃があれば別です。銃モノのゲームを嗜んだことのある方の中には対物(アンチマテリアル)ライフルを使って壁越しに敵をぶち抜いた経験のある人がいるかもしれません。

支離滅裂な話をまとめると、銃は技量がないと当たらないし、技量があっても壁むこうの敵に当てることは無理だって話です。

では、()()()()()()()()がこの世にもし存在するとして、それってどんなものなんでしょうね。

例えば、そう、壁向こうの敵をブチ〇したいとして。そこにむけて撃ったとしたら。

銃弾は壁を回り込んで当たるんでしょうか。それとも壁もその他の全ても()()して、命を奪うのでしょうか。

私は後者のほうだと思います。だって、銃弾はふつう、()()()()()()()()()()()()



──はい長々とお付き合いしていただきました第一回『今日の作者Tips!!』

好評でしたら第二回が開催されるやもしれません。お便りお待ちしております。

ではではまた次の番組で!!









↑の言ってる意味が分からないあなたは正常です。

↑の言ってる意味が分かるあなたはこの小説を隅々まで読んで考察までしてくれているおかしい人です。

どっちのひともおんなじ読者。読んでくれるだけでうれしいんやで。

前回は感想。お気に入り、評価、ありがとうございました!

──そして、最後まで読んでくれてありがとナス!

今回も感想、お気に入り、評価、いっぱいお待ちしてます!

次がいつでるかわからんけど、その時はまたよろしくです!




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