オルレアン-1
例えば、あんたがこの先おこることを全部知ってるとして。
例えば、あんたが何でも解決できる、すべての問題に対する打開策になる、そんな力を持ってるとして。
そして例えば。その力には明確な
──あんたは、その力をいつ使おうと思う?
まあ、つまりは。
これはそういう物語ってことだ。
◆
常に不機嫌な顔を崩さないハズムに、なにがそんなに気に食わないかときけば、「全部だよ」と返ってくるのは間違いないだろう。そのくらいに、友人の彼は楽しくなさそうというか、常に人生に対して気に食わないような顔をしていた。5年以上は一緒だというのに、一度も笑顔を見たことがないほどには。
彼とは中学生活の半ば、2年生かそこらに出会ったと思う。体育祭の委員会かなにかだったかもしれない。俺の顔をみてすごく目を見開いていた。不思議に思いながら自己紹介をすれば、彼はまるで信じられないみたいな顔をして、すぐに嫌な顔に変化させた(失礼なことに!!)。
あまり初対面から露骨に嫌われた経験はなかったから当時は戸惑ったけれど、彼と交流しているとどうやら俺(藤丸立香)自身を嫌っているというわけではなく、もっと漠然とした──彼の周りの環境、あるいは人生そのもの?──を嫌悪しているように思えた。
小学校から彼の友人である人曰く、信じられないことに昔はもっと快活で笑顔にあふれた人情味のある男だったらしい。成績優秀で、眉目秀麗で、運動神経抜群で、優しくて。まあちょっとませていてエッチなのは減点だけど──などとまくしたてるその子に苦笑いしたのはいい思い出だ。
ともあれ、彼がああなってしまったのは中学に入ってかららしい。その理由はわからないとも言っていた。でもその話を聞いた俺は、どうも俺自身に原因があるのではないかという不安をぬぐいされなかった。出会った時のハズムの様子が様子だったからだ。
あの時が初対面だったので、それまでに特に何かした心当たりはなかったけれど、知らないところでハズムを暗くしてしまうようなきっかけを作っていたのならひどいことだし、謝りたいと思った。
だから一度、彼に「俺は何か、君に謝らなければならないことがあるんじゃないか」と聞いてみたことがある。するとハズムは驚くことに逆に謝ってきた。
「いやあんたが悪いわけじゃない。むしろ悪いのはオレだと思う。そういう勘違いをさせるような態度をとってた。ごめん」
なんて、本当に申し訳なさそうにしているものだから、あわててしまった。ともかく、自分が原因じゃないのはよかったけれど、ではなぜそんなに変わってしまったのかが気になった。それとなく聞いてはみたが、「知らなかったことを知っただけだよ」なんて、曖昧な答えが返ってくるだけだった。
なんにせよ、俺がハズムに抱いていた不安(あるいは罪悪感)が解消されてからは、俺はハズムに積極的に絡むようになったし、ハズムも俺に対して(あくまで比較的にではあるが)以前より柔らかく接するようになった。いつも不機嫌顔な彼だが、根っこの部分の人間性は一緒にいて好ましい人だったから、偶然進路が同じ高校だったのも相まって、付き合いはずっと続いた。
それこそ、高校の間ずっと、さらに大学生になってからも──人理保障機関『カルデア』の一員になってからだって。
つまり俺と彼は、いわゆる親友と呼べるような、そんな間柄だったのだ。
◆
まばゆい光に包まれてからしばらく。さわやかな風に頬を撫でられながら目を開ければ、そこは草原地帯にある丘上だった。『無事に成功したみたいね』なんて通信が聞こえる。どうやら
レイシフトとは、過去の事象に干渉して──なんたらかんたらなんて、ロマンたちが説明していた。全然わからなかったけど、ようはタイムマシンみたいなものらしい。俺たちが生きていた現代、そこに至るまでの歴史的な重要地点が
なんとなく献血に参加して、強制的に連行されたと思えば、変な説明会に参加させられて。疲れてうとうとしていたら所長に引っ叩かれ追い出されて。カルデアが爆発したと思えば、燃える街に放り出されて。命からがら生き残ったと思えば、今度は中世フランスにきてしまった。
──苦しむのは、大変なのは、せめて俺だけでよかったのに、なんて。
これまた
こんなことになるとは予想だにしなかっただろうに、ハズムはいつだって落ち着いていて、常の不機嫌顔を崩すことがない。冬木から帰還して精神面を落ち着けるのに一日以上はかかった俺とは違って、彼は寝て起きた後にはダヴィンチちゃんに魔術の教えを乞うていたぐらいだ。精神的に強い人だとは知っていたけれど、ここまでとは思っていなかった。
そんな頼りになるハズムは、魔術の適性がからっきしの俺とちがって鍛えればそこそこにはなれるらしい。(これはダヴィンチちゃんのお墨付き。「レオナルドの
その代わり、マスター適性が俺より低いらしい──というより、なぜか英霊にあまり良い印象を持たれないようで、今だって、
「……セイバー、オレからするとあの光帯は
「……いえ、特にはなにも」
まるでハズムのほうこそが
ともあれ現状唯一ハズムのサーヴァントである彼女は、最低限の指示には従うし、ハズムを守ったりなどの役割は私情を挟まずに全うしてくれている。態度以外でハズムに対して反抗するわけでもないので様子見する、というのがカルデア首脳陣の結論で、俺もそうすることにした。
今のところ、サーヴァントというくくりの存在でハズムに普通に接してくれるのは、マシュとダヴィンチちゃんくらいだ。とはいえ、特に含むところもなく慕っているマシュとは違い、ダヴィンチちゃんは「彼を前にしたら、なぜか私も嫌な感じはするけれどね。それよりも彼のもつ
──ともあれ、外の世界に感動していたらしいマシュとともに俺も光帯を見上げる。カルデアの解析ではありえないほどの熱量の塊で、セイバーの持つ聖剣エクスカリバー何百本分もあるらしい。シミュレータで彼女の真名開放を観察した身としては、そんなものが空に浮かんでいて大丈夫なのかと、自然と恐怖が沸き上がった。ハズムの嫌な予感は当たったわけだ。
『間違いなく、特異点を作り出した原因につながっているはずね』なんて、解析したカルデア側から通信が入る。そして『次は、現地の様子を調査すること』という指令が入ったので、俺たちはとりあえず丘を下っていくことにした。
こうして、人理修復のための旅路は始まった。
◆
◇
20XX/03/23
あと7発しか残っていないなんて、マジかよって思った。たかだか12年そこらの人生で、もう6発も使ってしまった。このままじゃあ30歳までにはなくなる計算だ、なんてこった。日本の平均寿命考えたことあんのか。考えもしないでパンパン撃っていた過去の無能な自分を殺してやりたいくらいだ。
だけど、これが必要とされる時が今後いつ訪れるのかはわからないまま。明日かもしれないし、爺になってからかもしれない。そのときに残弾がなければ、オレはただの一般市民。端的に言えばただの無能、即お陀仏だろう。何も守れやしない。
ともあれ何か指標を見つけなければならない。いつ訪れるかもわからない、残酷な未来に対する指標だ。なぜかって、そのぐらいにはこの世界がクソみたいな世界だからだ。
一昨日相手にしたあのクソッタレ──オレの父親の臓物を引きずり出してかき回した、オレの母親の頭をかち割って脳みそいじくりまわした、オレの姉を犯した挙句に期待外れだなんて言ってむごい方法で殺したあいつ。憎い殺してやりたいもう殺した助けられなかったどうにもできなかったオレだけが助かった──クソッタレみたいなやつが、きっとこの世にはごまんといるんだと思う。あんな奴らに目を付けられるぐらいにはオレという存在は貴重らしいし、あんな奴らがこの世に堂々とのさばっているくらいには、この世界はクソだ。
でも一番クソなのはオレだ。何でもできる、将来安泰、チートで最高の人生! なんて舞い上がっていた、このクソガキが一番クソに決まってる。
自殺しようと思った時もあった。というかした。けど結果は
全弾尽きるまで死んでやろうかとも思ったけれど、もう一度首にナイフを当てたら、そのときちょうど血だらけのオレを発見した叔母さんがあわてて止めた。「あんたまで死んだら私どうすればいいの」なんて言いながら母に似た眼から大粒の涙を流す彼女を前にして、それでも死にたいと踏み切るような気力はなかった。
……来月から中学生だって、みんな喜んでくれてた。
反抗的で親の言うことも聞きやしない。口をつけば出てくるのは不平不満か自己顕示欲たっぷりの自慢話。親孝行の一つもしたことがない。そんな、可愛くない人でなしなクソガキのオレを、それでも3人は愛してくれていた。
もうなにも残っちゃいない。全部全部、血と銀の中に沈んで消えた。
……これからどうするべきかわからない。さっきも書いたが、なにか指標が欲しい。この残酷な世界を生き抜くための。未来の恐怖に備えるための指標を。
──この手に残った7発の弾丸で、何かを成し遂げれば。未来に訪れるであろう困難から、誰かを救えれば。それはきっと、あの日誰も救えなかった自分の贖罪になるのではないかと。
そんな、あさましい考えが体の中で渦を巻いてる。そんなことで許されるはずがないのにな。クソが。
期待に応えられなくてごめん、母さん。弱くて誰も守れない息子でごめん、父さん。助けられる力があったのに何もできない弟でごめん、姉貴。
……今日は寝る。もう、何も書きたくない。
◇
20XX/04/10
早いものでもう中学2年生。いまだに指標が定まらない日々を送っている。一応手は尽くしたけれど、そもそも未来に対する指標なんて簡単に言うが、それは未来予知とかそういう次元の話だ。簡単にどうにかなるものでもないだろう。あれから銀弾を使うようなことが起こっていないのは幸いだ。
そもそも本当に銀弾を誰かのために使いたいなら、紛争地域やスラム街にでも行ってそこにいる困った誰かを助ければと思わなくはないが。そんなことしたいなんて言えば、叔母さんが悲しむから──って言い訳がましい。そういうところがクズだ、オレ。
──そういえば始業式後、これからの生活について教師が話しているのを聞き流していると、あのナツキが話しかけてきた。それまで全く気付いていなかったが、隣の席らしい。あいつとは小学校で比較的仲がよかったけれど、まさか今のオレに話しかけてくるとは思わなかった。
小学校の時はとにかく人気者になることに優越感を感じていたから、成績優秀・スポーツ万能を目指し、さらに優しくてかっこいい優等生としてのふるまいを心掛けていた。けれどそんなことどうでもよくなったから、今では周囲が困惑するくらい真逆の生活態度で過ごしていると思う。だから小学校のとき結んだ縁はすべて切れたとばかり思っていたし、実際ナツキ以外はそうだった。
「だいぶ雰囲気変わったね」なんて言いながら笑顔のまま話すあいつは、罰ゲームだとかそういったことでオレに話しかけていた訳ではないように見えた。少なくともオレとの再会を喜んでいたし、オレが冷たい態度をとるのに悲しんではいたが、それ以上のことは無いようだった。
「もっと早く会いたかったな」なんてこぼすあいつに「オレは休み時間はずっと教室だし、すぐ帰るし、委員会とか部活もしてないしな。そもそもここの学校は生徒数が多すぎるから、去年すれ違っていたかどうかすら怪しいけど」なんて返せば、「じゃあ隣同士になったことに感謝しなきゃね」と言っていた。
久しぶりに楽しいと思える時間だった──と思う。少しだけ元気が出た気がした。
◇
20XX/05/07
今日はナツキが面倒ごとを持ってきた。あいつがオレと違っていろんな行事や部活動に熱心なのは知っていたが、それにオレを巻き込むのはやめてほしい。……それを通じてオレを元気づけようとしている節があるので、断りにくい。たちが悪い。
ともかく、明日は体育祭実行委員会に連行されるらしい。憂鬱だ。
◇
20XX/05/08
みつけた ここはFGOのせかいだったんだ
起源は『突破・解決』
魔術的にも肉体的にも、制限や問題をものともしない。作中でレイシフト適性が高いとあったが実際そんなことは無く、レイシフト適性という魔術的・霊的な制限を受けない体質なだけ。
サーヴァントに嫌われている、というか苦手意識を持たれている理由は、彼が外の理から訪れたこと(転生したこと)に加えて、銀弾の能力の作用によって、■■■■適性に似たものを持っているから。キアラとかカーマには嫌われないかもね。仲良くなるかは別だけど。
【銀弾使用用途】合計13発
1.幼年期、無意識使用。上手く歩行ができないという問題を解決。運動神経が向上。
2.幼年期、無意識使用。言葉を上手く覚えられないという問題を解決。頭脳明晰化。
3.少年期(6歳)、半意識使用。駄菓子を買いたいのにお金がないという問題を解決。手の中に100円玉が出現。買いたいと思っていたうまい棒10本を手に入れる。
※ここで能力を自覚。使用数・残弾数も自覚。
4.少年期(10歳)、意識使用。池で溺れていた同級生を助ける方法がないという問題を解決。
5.少年期(12歳)、意識使用。クソッタレを殺す方法がないという問題を解決。
6.少年期(12歳)、無意識使用。ERROR。蘇生効果発動。
7.青年期(19歳)、意識使用。■■■■■■を■■できないという問題を解決。
以後使用なし。残弾6発。
呼んでくれる人がいたら続くやで。
にわかで矛盾あるかもだけど広い心でゆるしてほしいです。