少子化対策「なぜ女性だけに…」 参政党・神谷代表発言に憤った理由

伊木緑

 参政党の神谷宗幣(そうへい)代表の少子化対策をめぐる発言や公約に、各地で女性たちが抗議行動を起こすなど波紋が広がった。女性たちは何に憤り、そして、その底流に何があるのか。

 神谷氏は3日に東京都内で行った公示後第一声で、「今まで間違えたんですよ。男女共同参画とか。もちろん女性の社会進出はいいことだ」とした上で、「高齢の女性は子どもは産めない」と発言した。「子どもを産んだほうが安心して暮らせる社会状況を作らないといけないのに、働け働けとやりすぎちゃった」と述べ、高校や大学卒業後に仕事に就かずに子育てに専念する選択がしやすくなるよう、子ども1人あたり月10万円を給付すると公約を語った。

全国に広がった抗議行動

 この発言に、SNSなどで抗議の声があがった。神谷氏はこれを受けて、8日に福島市での演説で「子どもを増やそうと言っただけで、女性全員に産めよ増やせよなんて言ってません」と言及。産みたくても産めない女性が多いとして、「その多くの理由が生活環境だったり、労働関係を含めた生活環境でお金の問題だから、それは政治が解決しましょうよと言っているだけ」などと述べた。SNS上には「生物学的な事実を述べただけ」といった擁護する声もある。

 一方、11~13日には発言への抗議活動が全国100カ所以上で行われた。12日に川崎市であった抗議行動には100人以上が集まった。3歳の長男を抱いて参加した女性(38)は「繊細な問題に土足で入ってくるような発言に嫌悪感を覚える」と話した。不妊治療を経験し、親しい仲の人にさえ「子どもを持ちたいか」「2人目をどうするか」と聞くのはためらわれる。中学校教員としてやりがいを持って働いており、「『男だから、女だから』という考え方は今の社会に逆行しているように聞こえる」。

 女性たちはなぜ声をあげたのか。抗議行動を呼びかけた一人の太田啓子弁護士は「妊娠は女性だけではできないのに、女性のことだけに言及している点がそもそも非対称。男性には高等教育を受けずに家庭に入れと言わない点で、育児は女性の仕事とする性別役割分業を推奨している。ジェンダー平等やワーク・ライフ・バランスを追求してきた男女共同参画を否定している」と指摘する。

 その上で、「『産め』と強制してはいなくても、子どもを産むことが女性の大きな価値であるかのように述べることで、『産む』女性と、『産まない』『産めない』女性の間に分断を生じさせている。人間の価値は本来同じなのに、それが脅かされるように受け取り、傷つく人が多くいる」とした。女性の尊厳を傷つける内容を政治家が少子化対策の文脈で掲げたことに憤り、多くの女性たちが街頭で声をあげたのだと太田氏は指摘する。

「女性の主体性やキャリアを軽視」

 識者は神谷氏の発言や公約をどう見たのか。ジャーナリストの津田大介氏は、「仕事に就かずに子育てに専念する選択がしやすくなるよう、子ども1人あたり月10万円を給付する」という点について、「女性の主体性やキャリアを軽視している」と指摘する。「保育所など子育て環境を充実させたり、育児休暇を拡充したり、男性の育児参加を促進したり、柔軟な働き方ができるようにしたりするなど、仕事も育児も両立できる環境を整備するのは本来、政治の仕事。神谷氏の発言は、政治の責任を放棄して、少子化の原因を女性に押しつけている」と述べた。

 「性と生殖に関する健康と権利」について発信する「#なんでないのプロジェクト」代表の福田和子氏も、「仕事に就かずに子育てに専念する選択がしやすくなるよう、子ども1人あたり月10万円給付」に疑問の声をあげる。「一見、産む人を大切にしているかのようだが、実際は女性を家に押し込める政策だ」と指摘する。

 「出産だけが私たち女性の人生のすべてではない。これだけ家事や育児、介護などのケア労働が女性に偏った上に軽視されている社会の現状で、産んだあとの女性の人生はどうなるのか。発言からは、女性を『子どもを産み育てる存在』としか見ていないように感じた」と話した。

 参政党は党の政策でも「これまで国が積極的に進めてきた女性の社会進出が一般化する中で『職業人としての女性』だけではなく『専業主婦』も女性の尊い選択肢であり『将来の夢はお母さん』という価値観を取り戻す必要がある」としている。

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この記事を書いた人
伊木緑
東京社会部
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ジェンダー、メディア、スポーツ
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