消費税減税で「社会保障費が減る」というウソ…石破首相も理解していない?「誤った“正論”の正体」
〝どんぶり勘定〟で消費税の使途を「隠蔽」する
こうした数々の矛盾が指摘されながらも、現在に至るまで、政府・与党は、消費税は全額社会保障財源であるという強弁を続けている。どんぶり勘定を逆手にとって、「明細は出せないが社会保障費に全額充当しています」と言っておけば、本当かどうか国民は確認できないからだ。 また、消費税収の総額が社会保障費に達していないことも、都合がいい。社会保障4経費と消費税収の差額を、財務省は〝スキマ〟と呼ぶ。’24年度当初予算は、消費税収25兆円に対して社会保障費は38兆円だったので、この時点でのスキマは13兆円。消費税収が社会保障費を大幅に下回っているので、全額充当しているという理屈は通りやすい。 ◆消費税を〝聖域〟にする理由は存在しない こうしたことから、「結局、消費税収が減れば社会保障費も減る可能性が高いので、全額充当かどうかは大きな問題ではない」という意見も想定される。たしかに、消費税収が減れば社会保障費も減るかもしれないが、それは、他の所得税や法人税などの税収もまったく同じ。消費税だけを〝聖域〟扱いする理由にはならない。 物価高で実質賃金の前年比マイナスが続いているような国内景気を鑑みれば、これまでの欧州のように、景気対策として消費税の減税は検討されてしかるべきだろう。自民党が公約としている、貯蓄に回りやすい現金給付よりも、食料品だけでも0%にするほうが経済効果は大きい。消費税減税は消費しないと恩恵が受けられないからだ。 ◆「消費税増税」の口実になるおそれも…… また、消費税が社会保障財源であるという誤解は、弊害のほうがはるかに大きい。今後、さらに社会保障費が増大していった場合、「社会保障費をなんとかしたければ消費税の増税を受け入れろ」という話になりかねないからだ。 緊縮財政派のリーダーであり理論的支柱となっている学者が、かなり以前、とある原稿の中で、「消費税の社会保障目的税化は、増税の大義名分を与えるとともに、基礎的財政収支の大幅な改善をもたらす一石二鳥」と述べていることからも、その危険性は高い。 本来なら、社会保障の維持には、所得税や法人税などを含めた歳入全体の見直しこそ必要であるはず。消費税増税の口実になることは、何としても阻止しなければならない。 ◆消費税の「社会保障財源化」は根本的な間違い そもそも、消費税のような大型の間接税を、社会保障費の財源にするという発想が根本的に間違っている。消費税と社会保障の間に負担と受益の関係があるとは到底思えない。個人の消費を「課税客体」として、社会保障の財源にするという国は、日本以外にあるとは考えにくい。 1989年に消費税が導入されたときの名目は「直間比率の是正」だった。税収の「直間比率」とは「直接税」と「間接税」の割合のこと。国の税収のバランスを、それまで高かった法人税や所得税といった直接税の比率を下げて、消費税をメインとする間接税の比率を上げるというのが目的だ。 それが、前掲した財務省の図にあるように、明確に「福祉目的化」されたのは、1998年から翌’99年にかけてである。与党だった自民党が当時の自由党と連立政権を作ったことで、自由党がそれ以前から掲げていた消費税の「福祉目的税化」の構想を受け入れたとみられる。実際、’99年度以降の一般会計の予算総則には、消費税収を「高齢者3経費」に充当することが明記された。 このアイディアは、おそらく、連立政権のキーマンだった自由党の小沢一郎党首に、当時の大蔵省の官僚が吹き込んだものと推測される。この国家ぐるみのウソは30年近く前から始まり、今に至るまで続いているのである。 取材・文:松岡賢治 マネーライター、ファイナンシャルプランナー/証券会社のマーケットアナリストを経て、1996年に独立。ビジネス誌や経済誌を中心に金融、資産運用の記事を執筆。著書に『ロボアドバイザー投資1年目の教科書』『豊富な図解でよくわかる! キャッシュレス決済で絶対得する本 』。■X(旧Twitter)→@1847mattsuu
FRIDAYデジタル