消費税減税で「社会保障費が減る」というウソ…石破首相も理解していない?「誤った“正論”の正体」
財務省が捻り出した「社会保障目的税化」というグレーゾーン
では、「社会保障目的税〝化〟」とはどういうことなのか。財務省としては、あくまで「社会保障目的税のように扱います」というアピールなのだろう。普通税ではあるけれど、まるで目的税であるかのようにみせる、極めて曖昧な表現だといえる。 そして、見逃してはいけないのは、〝わざと〟誤解を生むようなグレーゾーンを作っているという点だ。社会保障目的税化という、標準的な租税理論にはない、曖昧模糊とした概念を持ち出して誤解を誘発しているのである。 「重箱の隅をつつくような話だな」と軽んじる読者もいるかもしれない。だが、こうしたグレーゾーンを残す表現は、典型的な官僚の作文といえるものだ。わざと、自分たちが〝裁量〟を振るうことができる余地を残しておくのである。 実際、「社会保障と税の一体改革大綱」を参照しても、社会保障目的税化が何を意味しているのかはつかめない。 財務省のサイトをみると、「消費税収の国と地方の配分と使途」として、以下の図が出ている。この図では、国分の消費税収は社会保障目的税化となっており、地方分は社会保障財源化となっている。大綱でも、この社会保障目的税化と社会保障財源化の違いについては、何も説明はされていない。 繰り返しになるが、消費税収がすべて社会保障費に充てられていると思っている人は、そうした財務省のミスリードを誘う手にまんまと乗せられているのだ。 ◆消費税収が増えても社会保障費は減らない 社会保障目的税にはなっていなくとも、消費税収が社会保障費に全額充当されていれば目くじらを立てることはない、何しろ法律で規定しているのだから使われているはずだ、と思う人は多いだろう。 しかし、それは政府・与党を信じすぎているというか、お人好しに近い。以下、充当されていない〝証拠〟を挙げていこう。まず、これはさまざまな識者から指摘されていることだが、『消費税を増税しても社会保障費が減っていない』という事実がある。 例えば、「社会保障と税の一体改革」によって、消費税が5%から8%に引き上げられた’14年をみると、消費税収は16兆円で、’13年の10.8兆円から5.2兆円増えた。そして、社会保障費はというと30.5兆円で、’13年の29.1兆円から1.4兆円増えているのである。 これだけ、大幅に消費税収が増加したならば、社会保障費は減るのが自然だ。’14年に社会保障費が大幅に増加したという要因は、特段見当たらない。つまり、消費税増税によって増えた税収は、社会保障費には充当されなかったのだ(’14年の歳出をチェックするとおもに国債の償還費に使われた模様)。 ’14年、’15年あたりは、「消費税を増税しても社会保障費には回っていない!」といった批判が散見されたが、ほとんどの人は忘れているのだろう。 ◆総理大臣も全額に充当しているとは答えられない もう1つ、証拠を挙げておきたい。’21年の第207回国会で、野党議員から消費税収の使途に関する質問が出た。本記事に関係するものを4点抽出すると、①「社会保障目的税化」の定義について、②社会保障4経費以外の使途は本当にないのか、③使途の明細を教えてほしい、④消費税と社会保障4経費の区分経理をしないのか、といったものだ。 この質問に対する、当時の岸田首相の答弁書は、①と②をまとめて、「消費税の収入については、地方交付税法に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する経費に充てる」という、国会答弁にありがちな、法令を棒読みしただけの要領を得ないもの。そして、③については単純に「答えられない」とし、④については「検討の必要がある」というものだった。 明確に答えられるわけがない。消費税は普通税として一般会計の歳入として扱われ、特定の歳入と歳出として区分経理されていないからだ。いわゆる〝どんぶり勘定〟というやつである。したがって、本来は、消費税を社会保障財源と呼ぶことにも無理がある。社会保障財源と呼ぶなら、一般会計とは別となる特別会計で扱わなければおかしい。