消費税減税で「社会保障費が減る」というウソ…石破首相も理解していない?「誤った“正論”の正体」
30年近く続いている「ウソ」!?
参院選を間近に控えてヒートアップしている「消費税減税」問題。しかし、肝心の議論は一向に深まらない。それは、メディアやジャーナリストはもとより、政治家に至るまで、消費税に対する基本的な理解が欠けているからだという。 『news23』 小川彩佳アナが秋葉原で玉木雄一郎代表へ直撃姿!”自民圧力で降板”のウワサを払拭 特に、消費税を巡る『誤解』で最も大きく根強いものは、「消費税を減税すると社会保障費が減るという話で、これは巧妙なウソ」だと専門家は指摘する。しかも、30年近く、この〝ウソ〟はつき続けられているという。 ◆ポピュリズムに与していない〝正論〟という間違い 参院選を控えて、消費税減税を掲げる野党が多い中、それを阻止しようとする政府・自民党の反応が目立つ。例えば、自民党の森山裕幹事長は「消費税は社会保障の重要な財源。命を懸けて守る」と述べ、石破首相も「社会保障の財源なので減税はしない」と明言している。 同様の発言は、テレビの情報番組などでも聞かれる。元政治家のコメンテーターは、「消費税の減税は社会保障費の減少につながるから反対です」と述べていた。こうした発言は、ポピュリズムに与していない〝正論〟であるものとして、概ねマスメディアでは好意的に受け止められている。 だが、こうした数々のコメントは、単に消費税に対する理解不足を露呈しているだけに過ぎない。 ◆石破首相も消費税を理解していない…… これまでは、さすがに政治家はウソだと知っているだろうと考えていたが、そうではない可能性も出てきた。 石破首相は、自民党全国幹事長会議で、消費税減税について「金持ちほど減税になるので、格差が広がる」と批判したという。このコメントについて、早速、東大大学院の政治学の教授が、「標準的な租税理論では、消費税は低所得者の負担が重い『逆進課税』とされる。したがって、消費税減税の恩恵は高所得者よりも低所得者のほうが大きい」という的確なツッコミを入れていた。 こんな初歩的な誤解をしているようでは、本気で、消費税減税で社会保障費が減ると考えていてもおかしくはない。 ◆「社会保障と税の一体改革」で消費税は「社会保障目的税化」 では、なぜ多くの人が消費税減税で、年金、医療、介護、少子化対策といった社会保障費が減ると考えているのか。その理由は極めて単純で、消費税の税収がすべて社会保障費に充てられていると思い込んでいるからだ。 その思い込みには根拠がある。’12年、当時の民主党政権下で、消費税率の引き上げと使途の明確化を目指した「税制抜本改革法」により、国の歳入分である「国分」の消費税収の使途について、全額、社会保障4経費(年金・医療・介護の社会保障給付と少子化対策費用)に充てることが決まった。 いわゆる、「社会保障と税の一体改革」であり、『消費税法1条2項』に追記されている。これをもって、消費税が8%に引き上げられた’14年4月以降、消費税は「社会保障目的税化」され、使途を明確化したことになっている。これが最大の根拠といえよう。 ◆消費税を正式な「目的税」にできない理由 一見、消費税収がすべて社会保障費に充てられていると考えて問題はなさそうだが、それは、〝洗脳〟されていると思ってほしい。 社会保障と税の一体改革で、消費税は「社会保障目的税化」されたと述べたが、これは、消費税が「社会保障目的税」になったということとは同義ではない。〝化〟という1文字が付くか付かないか、字面的にはわずかな差だが、意味するところは大違いなのだ。 この辺の事情を正しく理解するために、まず、租税における「普通税」と「目的税」について説明をしたい。 租税法の泰斗・故金子宏氏の『租税法』には、「使途を特定せず一般経費に充てる目的で課される租税を普通税と呼び、最初から特定の経費に充てる目的で課される租税を目的税と呼ぶ」と記されている。 この伝でいうと、消費税は社会保障目的税としてもよさそうだが、消費税は目的税とはなっていない。所得税や法人税、相続税、贈与税などと同じ普通税である。 本当に、消費税収をすべて社会保障費に使うならば、社会保障目的税にすればスッキリするはず。しかし、「社会保障と税の一体改革」では、あくまで社会保障目的税〝化〟にとどまり、社会保障の財源にするという表現になっている。 なぜか? 結論を先取りするなら、消費税収は、一般財源として国債の償還費や防衛費などにも使われているからだ。そのため、目的税として使途を限定することができない、というのが実状である。