独自

敵基地攻撃用のF15改修、費用見積もり1兆円に 配備も遅れる公算

編集委員・土居貴輝

 航空自衛隊のF15戦闘機に、敵基地攻撃能力(反撃能力)を担う「スタンド・オフ・ミサイル」を搭載するための改修や試験などにかかる関連経費について、防衛省が1兆円超と見積もっていることが分かった。防衛省関係者が明らかにした。費用の見通しが1.5倍超に膨らむことになり、2027年度としてきた改修機の配備も遅れる公算が大きい。

 F15は1970年代に米軍で運用が始まった機種。改修計画は、中国の海洋進出への対応を念頭にした防衛力強化の柱の一つで、空自が保有する200機のうち比較的新しい68機について、対地攻撃用のスタンド・オフ・ミサイル「JASSM―ER」(射程約900キロ)を搭載できるようにする。新たなレーダーや電子戦装置などの搭載も予定されている。三菱重工業が、開発元の米航空機大手ボーイング社から技術協力などを得て改修し、50年前後まで運用する。

 防衛省は、21年度の時点で68機分の改修や試験などにかかる経費の見積もりを6465億円と算出。だが、開発のための試験の経費増加や円安、物価高の影響もあり、今年3月時点で1兆16億円にのぼると試算されたという。

 スタンド・オフ・ミサイル搭載のためのF15改修は19年度から始まったが、経費の膨張を受けて21年度にいったん計画を修正した経緯がある。しかし、新たな計画のもとでも経費の高騰を抑えられていないことになる。関係者によると、今春以降、防衛省から関係するメーカー側などに「27年度としていた改修機体の配備は遅れる見込み」と伝えられ、28年度にも間に合わない可能性を示唆されたという。

 一方、F15に搭載予定のミサイルについては23年度以降予算が計上されており、27年度以降に配備される見通し。27年度の時点で「弾はあっても、搭載する戦闘機が出来上がっていない可能性」(防衛省関係者)がある。

【防衛力の最前線がわかる】連載・自衛隊「空母」の現在地

自衛隊が進める大型護衛艦の「空母化」計画。最新状況をリポートします。

 改修は、米国政府が米メーカーの意向を踏まえて交渉窓口となって日本政府と取引する対外有償軍事援助(FMS)の枠組みが採用されている。改修の前に、日本向け仕様の設計費や作業用の施設などを整備する初期経費「初度費」が必要になり、その大部分は米側に支払う。

 防衛省は24年度予算までに初度費として計約1837億円を計上。25年度は計上されなかったが、防衛省幹部は「初度費の全体額について日米間で調整が続いており、計上が終わったわけではない。確定できれば、すみやかに残りの初度費を計上する」と説明する。

 加えて23年度予算までに20機分の機体改修費用として計919億円を計上している。

<スタンド・オフ防衛能力とF15戦闘機の改修>

 侵攻してくる艦艇や上陸部隊を、敵の兵器の射程圏外から攻撃できる長射程ミサイルなどの総称。防衛省は、射程や目標ごとに車両や艦艇、航空機などから撃てる様々なスタンド・オフ・ミサイルの研究開発、量産、導入を進めている。

 航空自衛隊のF15戦闘機の改修もその一環で、安保関連3文書の防衛力整備計画(2023~27年度)では、5年間で54機分の改修予算を計上することになっている。

「デジタル版を試してみたい!」というお客様にまずは1カ月間無料体験
さらに今なら2~6カ月目も月額200円でお得!