0.02%の金持ちになるには

大半の庶民と何が違うのか

君のいいねは捨てられない

マッチングアプリで出会った彼女とはすんなり会えた。居酒屋で食事をし、広島に旅行に行くことまでその日に決まった。会話のフィーリングも合うし、音楽が趣味というのも同じだ。

 

彼女は保育士をしていて、職場での不満を漏らしていた。「子どもは好きなんですけど、事務処理とか人間関係がややこしくて」と。

 

そんな話を聞きながら、ホテルは彼女が手配し、車は僕が出すことに決まった。

 

マッチングアプリで初めて会えた異性。

その嬉しさは計り知れない。だが、彼女はふくよかだった。悪く言えば巨漢だった。

 

居酒屋の前で待ち合わせた時、彼女はそこに立っていた。黒のジャンパーに黒のジャージのようなズボン。化粧っ気もなく、体格はふくよかだった。

 

僕は彼女に対して性的魅力を抱こうと努力した。彼女が居酒屋で愚痴をこぼしている最中に彼女の瞳、唇、胸に目をやり、セックスができそうか、すなわち興奮できそうか判断していた。頑張れば旅行先のホテルでその気になれるかもしれない。その時はそう感じていた。

 

「また明後日」と言って僕らは別れた。アプリで車を予約して、その日までにさらに身体を絞った。朝からランニングを1時間ほどこなし、お風呂上がりには美肌パックをして、当日に備えた。

 

洋服はZARAの黒ジャンパーに黒のパンツを合わせ、シンプルイズベストに努めた。

 

待ち合わせ場所はJR沿線の駅の南口。

「よく路上ライブしてるところあたりに着きました」と彼女からラインがあった。

「すぐ近くのファミマの前にいるよ」と返信した。

 

彼女がスーツケースを転がしながら車の前まで現れた。

少しばかりか期待していた。多少は痩せているだろう。化粧っ気が生じ始めているだろう、服装に気を遣い始めているだろう、そのどれでもいい、僕は期待していた。

しかし、彼女は以前よりむしろ太っていた。そして、同じ黒のジャンパーに黒のジャージのようなズボンをはいて、化粧っ気も全くなかった。そしてこちらを見て少しニコッと笑っているのが不快に感じた。

 

彼女が後部座席のドアを開け、スーツケースを入れた。そして、助手席に座った。

 

「お仕事お疲れ様」と僕は声をかけた。

 

「今日は定時で上がりました。そうしたら同僚に嫌な顔をされました」とつぶやいた。

 

同情心は抱けない。僕はナビを入れて車を発信させた。高速に入ると彼女はいびきをかきながら眠り始めた。彼女の肩幅が広いことに気づく。

 

真正面を向いていても僕の左目まで入ってきそうなほどに隣に座る彼女の横幅が広かった。

そして、暖房をオフにしているのに、とても暑く、汗が滲んできて僕は窓を少し開けた。隣に聞こえない程度のため息を開けた窓の隙間に漏らした。

 

「あまり食べないんですよ」と彼女が居酒屋で話していたことを思い出した。なのに彼女は太っている。それが腹立たしく思えた。

 

車を運転しながら何度も考えた挙げ句、彼女とは寝れないなと感じ、目的地に着く直前、1部屋しか取っていなかった部屋を2部屋にできないか寝起きの彼女に車中で提案した。

 

「お互い緊張して眠れなくてもあれだし、部屋2部屋に変更できないかな?」

 

「私も迷ったんです」と彼女は言った。

 

実は居酒屋の席でホテルの部屋をどうするか話していた時に僕が「1部屋」にしようと言っていた手前、なんだか申し訳なく、気まずくなって、お詫びにコンビニでデザートを奢ることにした。

 

 

チェックイン時、幸い、部屋をもう1部屋取れて、僕はまず彼女の部屋に入り、一緒にコンビニで買ってきたドリアを食べた。部屋はダブルだった。ちょっと可哀想だと思ってしまった。

 

僕が食べ終わる頃、彼女は「まだ時間かかるからもう出ていいよ」と言いながらスイーツのカップを自身の手前に寄せた。なんとなくいじけているようにも感じた。でも僕は気づかぬふりをして「ゆっくり休んでね」と言って部屋を出た。

 

1個下の階の自分の部屋もダブルだった。ベッドに横たわりながらアルバイト先の可愛いD子ちゃんと一緒ならどれだけ楽しかっただろうと思った。同時に1個上の階にいる彼女のことが腹立たしく思えてきた。

 

これだけ絞って美肌パックをして、オシャレして一緒に旅行に行く相手がこんなおデブさんだからだ。

 

どう考えても釣り合っていないと感じた。

 

1000円のりんごに10000円を支払っているような感覚だった。

 

どうせなら、1000円のりんごを1000円以下で買えるような恋愛がしたいと思った。

 

 

彼女とはもう無理だ。この旅行を最後にもう会うことはないだろう。

 

こんなふくよかな人とホテルに一緒に入って、街中を歩いて一緒に食事をする。いろんな人に見られていろんな憶測が飛び交っていたかもしれない。

もう恥も変なプライドもなくなった。これからはどんな美女に対しても直球ストレートでアタックできそうな気がしていた。仮にデートの誘いを断られても「あのふくよかな彼女と一緒に出歩くよりはマシだ」と感じられることだろう。

 

僕は彼女と出会えたことに心から感謝した。彼女がそれをもたらしてくれたのだから。

 

彼女には幸せになってほしい。そのためには今、この関係が終わることが1番だ。

 

そして彼女に気づいて欲しい。そう思った。もっと、魅力的になっていい男性と出会ってほしいと。

 

 

 

タワマン身勝手男たち6

平日の夜、カシオはラブホテル街を徘徊していた。
そういう癖がいつの間にか生じていた。
何をするわけでもなく、ただ、ラブホテル街を徘徊しながら、A子とゆかりのことをぼんやりと考えているのだった。
どちらが自分にとって大切な人なのだろうと。
本当はどちらも大切にできたらいいのだが。


そんなことを考えながら運転する車の運転席と助手席の両方の窓を全体の3分の1程度開けて、カタカナや英語表記のカラフルな文字で彩られたラブホテルのネオンに囲まれながら静かに徐行する。
そして一時停止の表示のところでパトカーも感激するぐらいにピタリと確実に停止するとアイドリングストップがかかった。
同時に地獄耳だと自負するカシオの両耳をそのラブホテル街に吹き込む外気に向かって研ぎ澄ませる。
しーんと静まりかえる窓の開いた車内。
都会らしい静寂だ。虫の声も川の流れる音も聞こえないが、地下深くまで張り巡らされているであろうインフラ機構の数々が体内を循環する血液のように忙しく動き回っているのが分かる。そんな音が聞こえてくるのだ。それは地下鉄の線路を車輪が擦れる音であるかもしれないし、どこかの不倫カップルが痕跡を消すため流した今日付けの体液が下水を流れる音かもしれない。それらが何度も繰り返されているのが分かる。環境保全とかエコだとかいう言葉が馬鹿馬鹿しくなるぐらいに。
もちろん、それを地上から目にすることはできないし、普通の人なら聞こえないような音だろうが、カシオの鼓膜には確実に振動を与えていた。






ラブホテルの目の前の一時停止線で確実に停止しているだけと見せかけて、実はその隙にラブホテルの開いている窓などから漏れ出るいやらしい音に車内から耳を澄ましているとラブホテルの従業員なら防犯カメラ越しでもお見通しなのだろう。
身長180㎝ぐらいのプロレスラーのような男と細身のめがねをかけた男性2人組が利用者専用の入り口ではない勝手口のような黒い小さな扉から白いゴミ袋を2つ持って出てきたのだが、こちらを警戒しているのが分かる。
ラブホテルのスタッフだろう。
盗聴されていないかなどを気にしているのだろうか。
おそらく、ゴミ出しはついでで、実際はカシオを観察している。
さっさとゴミ出しして戻ればいいのに、立ち止まったままチラチラとカシオの方を見てきたため、アイドリングから再度、エンジンのかかった車を発進させ、逃げるように左折した。







ラブホテル街を抜けて大通りに入るとアクセルを踏み込んだ。パトカーに追われる盗難車のように疾走し、しばらく走ると海が見えてきてアクセルを緩めた。この辺には海底にそびえ立つお城のようなラブホテルがちらほらあるが、どれも古くて汚い印象だ。看板の明かりすら灯っておらず、営業しているのかすら分からないような廃墟みたいなホテルもある。
カシオはハンドルを握る窓の開いた車内から眼球だけを動かして夜の海を眺めていた。
思えばA子とカシオの出した体液もコンドームやティッシュペーパーに受け止められ、包み込まれながら長い下水の道を潜り抜け、果ては大海原という1つの着地点に放出された。
それはカシオがA子の体内で出した約1億個もの精子が生存競争を経てたったひとつ、子宮に着床するのと同じように。
終着地点はいつも同じであとは子宮に流すか下水に流すかの違いだけだとカシオは思った。
妊娠を望まないのなら下水へ、妊娠を望むのなら子宮へ。
ところで、ゆかりの子宮へは何回出したことだろう。
子宮の奥の奥まで身体ごと目一杯出した記憶がふとよみがえる。
気持ち良かった。
しかし、今はA子に取って変わっただけの話だ。
ひたすら走らせた愛車を他の新車に乗り換えるように。それは至って普通で健全なサイクルだ。
どこか懐かしくもあり、新鮮にも感じられる夜の海風が車内の空気を循環させ、そんな風を吸い込んだカシオは、再びアクセルを踏み込んだ。






もう、あの男たちもいないだろう。
そう思ってあのラブホテル街に引き返し、また同じように停止線でアイドリングをかけ、窓越しに両耳をラブホテルへと向け、研ぎ澄ませた。
しかし、誰もいない代わりに何も聞こえなかった。
そして、A子の本音もゆかりの想いも何も聞こえてこなかった。ただ、かろうじてさっきの海風がカシオの顔面を微かに吹き抜けたような気がした。


セックスをする時は大きな喘ぎ声を出すものというのはカシオの偏見だ。またはそういう願望を抱いているとも言える。
静かなセックスだってきっとたくさんあるのだろう。
そう思って車を発進させようとした時のことだった。
ふと見上げるとラブホテルの2階部分の4つある客室のたった1つの四角い窓から人の影が揺れ動いて見えたのだ。他の客室は全部暗いのに、そこだけ人影がある。
窓は曇りガラスになっていて内部を詳細に確認することはできないが、明かりがついていて人が動いているのが黒い影のようなもので分かる。
両手を振り上げたり、前にかがんだりする大胆な動きが見て取れた。
裸の女性が台の上などに手をつき、前かがみになって立ち、背後から男性が挿入した女性の丸いお尻を手のひらでパチンパチンと叩いている光景が思い浮かんだ。
それを窓際でやっていると。
そう思いながら見ていると興奮した。
しかし、しばらくするとその部屋の明かりが突如消えた。
そのラブホテルの中で唯一明るかった部屋だ。
その部屋が何事もなかったかのように突然暗くなって死んでしまったようになった。
いや、少なくとも愛し合った後の明かりの消え方ではない。広々としたホール内で行われた最終公演のハッピーエンドに終わるミュージカルが閉幕する時のような照明の名残惜しい感じの消え方ではなかった。あっさり暗くなり、感極まる観客を出入り口まで誘導する補助灯の暖かみのようなものさえそこにはなかった。何の余韻にも浸れない。パッと喧嘩別れでもしたかのようにあっさり消えたのだ。つい数秒前までセックスしていてそんな展開になるのだろうか。
しばらく考えを巡らせたが、冷静になって、清掃の人が行為後の客室をただきれいにしていただけだと考えると少し虚しくなった。






そうして徘徊するラブホテル街も、A子と身体を重ねるときに利用するラブホテルも含め、たいていは同じ表情をしていた。
カラフルでチカチカする建物の脇にいつも横づけしているデリヘル送迎車。
カップル。夫婦。老夫婦、不倫カップル。
ゲイ、レズ、盗聴男、探偵、刑事、浮気された妻、妻の浮気相手を探る夫、パパ活
例外なく、みんなセックスをする。または、そうした行為を捕らえようとしている。
たとえば、ただ突っ立ってるだけの男。スーツ姿でスマホ片手に電話する男。挙げればきりがない。
そしてラブホテル街を徘徊するカシオ。
他からどう見えているのだろうか。
ただの変質者か不審者だろう。



社会で言われているような文化遺産とか有形文化財とか聞こえはいいが、現地に来るのはたいてい暇を持て余した高齢者。
若者のわの字もそこには存在しない。
もし来ているとしてもそれは学校行事などによる強いられたものだ。そして書きたくもない日記やレポートを書かされる。それのどこが文化的なのだろうか。別にそれを悪いと言っているわけではない。
しかし、ラブホテル街は国から文化的価値を認められたわけでもないのに若者から高齢者まで幅広い世代にもれなく愛されていて認知されている場所だ。
そして、それは学校行事のように強いられるものではないし、むしろ皆、何かを求めて積極的にやって来る。
たとえば愛や快楽、情熱、お金、好奇心、本能など。
本来ならばそうした場所が文化的であり価値があると言えるのではないだろうか。
しかし、実際は社会の「恥部」のように扱われている。


もし、カシオがどこかの省の大臣なら、A子とよく利用するホテル仲人というラブホテルが有形文化財「ホテル仲人」になる日もそう遠くはないはずだと思った。






A子とラブホテルでセックスを重ねるごとにA子というより、女性自体が人間ではなく精巧にできたオナホールに見えてしまい、カシオからすれば自分の局部を気持ちよくさせてくれるいち道具でしかなくなっていたような気がしていた。
でも、多くの人はそれを愛とか絆とか結びつきとかいう言葉で包み隠し、偽装し、女性もそれを信じている。
カシオからすれば本当に愛が存在するならセックスなんて必要ないのではないかと思っていた。
いや、どうも愛とセックスを一緒にできないのだ。カシオの恋愛観が歪んでいるのだろうか。
きっとそうだろう。物心ついた時から愛の結晶などという言葉が嫌いなのだから。



快楽が愛ではなくエゴだとして、愛が犠牲を伴った無償のものだとしたら。
いくら相手のことが大切だと口にしても、そこにセックスという快楽を訴求している時点で所詮は自分にとっての脳内報酬を求めているだけに過ぎないと感じてしまい、それこそがまさにエゴではないかと思ってしまう。
愛とは本来そんな生々しいものではなく、もっと清らかで見返りを求めないものでなければ愛とは呼べないとカシオは考えていた。
むしろ、自分に苦痛が伴ってでも相手のために尽くしたいと思えるのが愛ではないかと思っていた。
そう考えると自分に苦痛が伴ってでも尽くしたい相手なんて存在しなかった。でも、自分を犠牲にしてまでカシオに尽くしてくれる女性が欲しいとは感じていた。
結局は自分がかわいいのかもしれない。
そして、そう思いながらラブホテルを出入りし、毎回、ベッドで射精して気持ちよくなる僕をゆかりやA子はどう感じているのだろうかと考えていた。






その日のホテル仲人の受付にも見えないおばさんは座っていた。
こういうところで働く人は少し訳ありな人が多いというイメージがあるが、カシオならむしろ好奇心で一緒に働いてみたいと考えていた。
そこに座っているだけでいろんな男女がやって来るのだから。
部屋の清掃(汚物処理など)はともかく、受付は楽しそうだ。
受付の横にある部屋のパネルはほとんどが埋まっており、その数だけ男女がヤっていると思うとやはり特殊な場所なんだと思った。






A子とエレベーターに乗り込む。
扉が閉まったと同時に抱きしめる。
照れながら笑うA子。
1ヶ月ぶりのデートだ。
扉が開き、部屋の前まで向かっていると女性従業員が早歩きで横を通り過ぎた。全身、黒ずくめで目立たない格好をしているのだが、こちらをちらっと一瞬気にしたのが直感的に分かった。
しかし、部屋に入り、ドアを閉めるとその瞬間にカシオとA子だけのプライベート空間となった。少しほっとした。
まるでホーム中に反響する新幹線の発車ベルの音が扉が閉まると同時に小さくなってミュートされていくように。



メイクされた白いベッドまで行き、また抱きしめた。

「会えると思ってなかった」
A子がそんなことを言った。
カシオとA子の関係は脆く儚いものだとA子自身も分かっていたのかと思っていたが、A子は「もう二度と会えないと思ってた」とさっき言った言葉に「二度と」をつけ加えて言い直した。


「どういうこと?」
二度と会えないとはいくらなんでも大袈裟過ぎる気がする。
二人の関係が儚く脆いものだとしても会うたびに今後は二度と会えないなどとはふつう思わないだろう。
どうしてそんなこと言うのか尋ねるとA子は「DM」とだけ言った。




「DMですごく言ってきて言い合いになったでしょ?」
カシオには全く思い当たるものがなかった。
そもそもA子にそんなDMをしたことがない。
それにA子がどんなSNSを使っているのかすら知らない。




「DMなんてしてないよ」
そう言うとA子はすぐに「なりすましだったのかも」と言った。
どうやらカシオになりすました人間がA子に喧嘩を仕掛けるようなDMをしたというのだ。
そしてA子はカシオだとばかり思いレスをし、その中で激しく言い争ったそうなのだ。
そして、その言い合いがきっかけでA子はカシオに二度と会えないと勘違いしていたようだったのだ。



カシオになりすますような人間なんているのだろうか?
カシオが有名人ならともかく。





カシオはふと考えた。
僕になりすまして得をする人間。
つまり、A子の機嫌を損ねて得をする人間。
つまりは、僕とA子との関係を引き裂こうとしている人間。




「ゆかり」の3文字が一瞬、頭をよぎったが、わざわざそんなことをするほど執着しているとも思えなかったし、現実味が湧かなかった。
それにゆかりも暇ではないだろう。


そして、そんなことを考えていると、カシオは何だか申し訳ない気持ちになって、慰めるようにA子の頭を優しく撫でた。
本当に子猫を撫でているかのようだ。
全体的に小柄で丸くて柔らかい。





カシオの推理はA子の思う壺だと財原美賀子の部下である愛美は思った。
ここはラブホテル仲人の管理人室。
大量に仕入れたコンドームの入った段ボール箱が床の上に1つ、フードの夏フェア用メニュー写真が複数枚机の上に散らばっている。
そしてホテルの出入り口を示す防犯カメラ映像が記録されてはまた記録されていく。
刑事に求められたらいつでも開示するつもりだ。
そして実は各客室の内部を映した映像も画面表示を切り替えれば観ることができる。(これは刑事も知らない。バレたらやばい)
仲人では防犯対策のため、やむを得ず客室内にも防犯カメラを設置することにしたのだ。
もちろん、それを公にはしておらず、カメラ自体も超小型のものなのでまず気づかれないだろう。
そういう説明をオーナーからは受けているが、今まで撮ってきた膨大なセックス映像がどんな形で用いられているのかは不明だ。それに進んで観ることもない。罪悪感も伴う。
オーナーが趣味で観ているのか、販売されているのかも分からない。
少なくとも防犯対策として実際に役に立ったことはあまりないと思う。
だから普段は客室内の映像はモニターに映さず、(データとして記録はされているのだろうが)ホテルの出入り口を示す映像だけを監視している。むしろそれがふつうだ。
しかし、部下である愛美は私のいない隙を狙い、勝手に画面を切り替え、他人のセックスを間近で鑑賞していた。そういう時は注意するのだが、あんまりきつく言って辞められても困るのであまり踏み込んだことはできなかった。
この業界はただでさえ人手不足だから。




「前の時は手を繋ぎながら入って行ってたのにね」

愛美はどうもこの手を繋ぎながら仲人にやって来るカップルのファンらしい。
歳が近い感じだし、親近感が湧くのだろうか。
この前、来た時はずっとこの二人のセックスを最初から最後までモニター越しに釘付けになっていた。まるでサッカーの試合を観戦するかのように。
私はその間はいつも備品の整理をしながら知らんふりをして早く終わらないかと思っていた。
そしてやっと二人がホテルを出ると、愛美が元気よくその客室の清掃に行き、それを済ませた後、ティッシュに包まれた精液入りのコンドームを嬉しそうに今日のお土産に持ち帰るって言いながら戻ってきたこともあった。


当初、この二人(カシオとA子)が恋人繋ぎをしながら何度かホテルに入る映像が愛美の記憶にあったためか、なぜ今回は手を繋いでなかったのか不思議に思ったそうだ。



「でも、そういうことね。彼女、彼の愛を確かめたいんだ」
愛美がにやにやしながら私に言う。
私はこの日もコンドームの発注をしていた。夏場はすぐに在庫が底をつく。そして、愛美はその横で足を組みながらパイプ椅子に座っていた。




「客室の清掃は終わったの?」
発注書に「財原実賀子」と書き終えた後で私は呆れたように言った。



二人が裸で抱擁を交わしているベッドの音声付き映像が管理人室にリアルタイムに流れているままだ。ビートを刻むようにあんあんと。内心、やめてほしいと思っている私のことなどお構い無く、ニコニコしながら愛美が続けた。



「彼女のDMの話は嘘で、彼になりすました架空の人間、、、、彼とA子の仲を阻むような共通の敵を作ることでこの恋を燃え上がらせようと彼女は考えているんだと思う」


ここで一呼吸置くように私の方を見ながらドヤ顔する愛美の推理に多分、揺らぎはないのだろう。


「彼からしたら身に覚えのないことを彼女から言われたら気になるでしょ?そしてそれがなりすましだったらそのなりすました人間に対して腹が立つでしょう?
彼女のことが好きならなおさら」


さらに愛美が続ける。


「彼女はたぶん架空のなりすました人間に対して彼がどれだけ怒りをあらわにしてくれるかを試しているのかも。だって、それがそのまま彼女自身への愛のバロメーターになるから」




「なんでそこまで分かるの?」



そう言うと愛美は突然、険しい顔になった。
そして、こう言った。


「ようは浮気相手だから愛情を確かめにくいんでしょ。だからそんなまわりくどいことで確かめなきゃ不安になってしまう」



愛美が流暢に英語を話すように憶測を展開するのを私は聞き流していたが、「浮気」というワードが耳の中に入り込んだ時、このカップルは浮気なのかと初めて興味が湧いた。しかし、愛美は「女の勘ですよ」とだけ言って、それ以上何も語らず、管理人室から足早に出て行った。
そして、激しく腰を振る男とただ股を開く女の二重奏のような音色が管理人室に未だ響いていた。











偽装ラブホテルという言葉をインターネットで初めて知った。
届け出上はふつうのビジネスホテルなのだが、実体はラブホテルなのだという。
そう言えばビジホかラブホがよく分からないようなホテルが都心で増えているなとは思っていたが
そういうことだったのか。
休憩の料金とかは書いていないが、ビジネスホテルにしてはいやらしい雰囲気が漂っていて、でも、鈍感なおっちゃんサラリーマンならうっかり出張で泊まってしまいそうな、そんなホテルだ。そんなホテルにA子と行った。



その日もまたA子と逢瀬を重ねていた。
前のデートから5日しか空けてないから前の続きをするような感覚だった。前に注入した精子がそろそろ死滅する頃だろうから新しい精子を送り込んでやらなければ。
いつも行くラブホテルだと足がつくかもしれないから気分転換も兼ねてここのホテルに入ろうとA子が直接言ってきたわけではないが、多分、そういう趣旨でここのホテルにしたのだと思う。
縦長で、都心のデザイナーズマンションを思わせるシックな装いだ。ここはビジネスホテルなのだろう。不倫にはもってこいだ。
そして、エントランスを抜けるとホテルの女性スタッフがカウンター越しに仕事をしていた。
カシオとA子がカウンター前に来るとその若い女性従業員はにっこりと微笑んだ。
それで少し気恥ずかしくなった。
セックスすることを悟られているかもしれない。
デイユースで料金はラブホテルの休憩と同じぐらい。
手続きを済ませ、カードキーをもらい、逃げるようにエレベーターで部屋のある階までA子と向かった。




「ここだね」とA子が言ってドアを開けた。
室内は狭いが、清潔感があり、置いてある寝具やデスク類などが黒を基調としたものとなっており、高級感が感じられ窮屈に思わない。
それにシャワーはセパレートで広々としている。
全体的にモダンな印象で、築年数も浅いわりには、低価格で良心的だ。



しかし、壁はラブホテルのように頑丈な感じはせず、ビジネスホテルらしい反響があった。
それに隣のゴソゴソとした物音が微かに聞こえ、ここでエッチすると思うとそれはそれで興奮した。初のビジホセックスだ。




しかし、コンドームが1つ置いてあったことからここはビジネスホテルではなくラブホテルなのだろうと悟った。にしてもここがラブホテルだとして受付の人があんな堂々と客と対面するラブホテルは初めてだ。新しいスタイルなのだろうか。ふつうはお互いの顔が見られないようになっていると思うのだが。
不思議な感じがしつつも、前戯を最後に残した単純な仕事を片づけるかのようにあっさり済ませ、すみやかに挿入した。早く挿入したかった。そして気持ちよくなりたかった。
相手が感じていようが感じてなかろうがどうでもいい。ただひたすら腰を振り、自分さえ気持ちよくなれればそれでいいと思っていた。
女なんて所詮、男の性処理のための道具だ。
A子だって量産されたムーブメントの1つに過ぎない。
そんないけないことをたまに思うことがカシオにはあった。そしてそれは自分が不機嫌な時に生じるものだった。
でも、今日のA子はカシオを不機嫌にさせることはなかった。
従順に股を開き、忠実に鳴き、正統に精子を絞り取った。
1時間半で2回も。
ゴミ箱行きのティッシュにくるまれた精液まみれのコンドームが2つもこの部屋にはある。
とても征服感を味わえた。
犯して犯して犯しまくった満足感に包まれた。
そして、少し精液の匂いが充満している室内がいい感じの煮込み料理が出来上がったみたいで嬉しかった。




「2回もしたの初めて」
とA子が興奮したように言う。
そして、カシオが持参した0.03㎜のオカモト製コンドームの箱を見たのも初めてらしい。






コンドームの着け方ひとつとってもゆかりとA子では違うとそのコンドームのパッケージを見ながら思った。
ゆかりは手品師のように気がつけばコンドームを僕の亀頭に被せていてあとは口でそれをくわえながら根元までするりと下ろしていた。
対して、A子はまずコンドームの袋を慎重に開け、それを取り出すとそのゴム部分に向かって息を吹きかける。そして、注意深く、僕の亀頭に乗せるのだが、3回に1回は反対になっていてゴムが下りなかった。そうした時はいつも恥ずかしそうに「あっ、反対だね」とか「ごめん」とか言ってやり直していた。





その一方で、A子とのセックスは回数を重ねるごとに気持ちよくなり一体感も増していた。
射精直前はベッドが大きく揺れるぐらいに激しく腰を振り、A子の身体とカシオの身体がぴたりと隙間一つなくハマっているのが分かる。それ自体が一つの生き物になっているかのようだ。それぐらい密着している。そして、そのまま二人の身体はシーツの上で大きく揺れ、射精時には声帯以外の器官から大きな声が出るような感じがして同時に意識が遠のいていくのが分かった。
そして完全に意識が遠のいた後は自分がどんな声を出していてどんな格好になっていて、相手はどんな表情で受け止めているのかすら分からない無茶苦茶な状態になっていた。
頭が真っ白になっていた。
それがおそらく2~3秒あって、その後に自分の固い陰茎がドクドク収縮しているのが感じ取れ、やがてそれも収まり、最後の1滴まで漏らさずA子の中で出し切ろうという思いを持ちながら、全部奥の方に突っ込んで出し切った後、果てた性器をゆっくり抜き出していた。
ほとんど本能によって操られている感覚だ。
そして、最後にはいつも精液に包まれたコンドームをA子がゆっくり外してくれた。
その外し方さえ、ゆかりの方がスムーズだった気がする。




行為が終わった後、A子が脱ぎ捨てた下着や洋服を着る時にA子の裸の身体をベッドから眺めているのだが、お腹にはぜい肉が少し付いており、脚もすらりと長くなく、ゆかりとは真逆だ。
A子は甘いものが大好きで、ゆかりはジムの話ばかりするのもこの結果として表れているのだろうか。


スタイルで言ったらゆかりの方がいいし、毎回気持ちよくセックスするという上での安定感もゆかりの方が上回っている。





でも、ゆかりは完璧すぎるのかもしれない。
だから、いずれ刺激が足りなくなり飽きてしまう。
対して、A子はまだまだ不完全だから会うたびに新しい発見があるし、A子が成長するのを見るのも楽しい。毎回、刺激的なのだ。
そして、足りない部分、欠点さえも愛しく感じられる。不思議なことなのだが。







そう言えば、父が「ドイツ車は完璧すぎる」と言っていたのはまさにドイツ車の唯一の欠点であったのだろう。
完璧すぎることが欠点になる。
ドイツ車に乗り続けてきた父が言ったその一言が恋愛にも当てはまる気がしていた。



きっと、恥じらいや刺激や初々しさは不完全なものから滲み出るのだろう。
カシオはそうした不完全なものから滲み出る蜜を欲していたのかもしれない。




「ドイツ車は完璧すぎる」






カシオは決して不完全なものを欲していたわけではない。
ただ、足りない部分も補い合えるような相手がそばにいてほしかった。

タワマン身勝手男たち

この窓からだと人も車も鉄道も、みなちっぽけに見えてしまう。
ないものねだりな性格は誰に由来したのだろう。その窓を眺めながらカシオはふと思った。
脚のきれいな女性、ぱっちり二重の女性、胸元に思わず目がいきそうになる女性、白くて柔らかそうな二の腕、さすがにタワーマンションの最上階からだと確認できないか。
そして地上にいた時もその全てをひとつひとつ手にしたいと思っていた。
でも、なぜだろう。いざ手にしてみると今度はそれが億劫になってくる。窮屈になってくる。抜け出したくなってしまう。毎日の同じ景色がなんだか物悲しく思えてくる。
ゆかりとセックスをして1ヶ月ぐらい経過した。
ゆかりは僕の手にしたいもの全てを兼ね備えている。だけど、毎日セックスをしていると破局するだろうなとカシオは思った。
だから、あえてセックスの頻度を、つまりは会う回数を減らした。ゆかりがそれをどう思っているかは分からない。分かりたくもない。
その結果がフラれるというものであっても致し方ない。
少なくとも僕の方が窮屈な思いをするのが嫌だった。ゆかりからすればなんて身勝手な男だと思うだろう。でもこちらが尽くしても他の男の影がちらつくことだってあるのだから、お互い様だとカシオは言い聞かせた。
「どんな恋愛でも片方のエネルギーだけが勝ってるんですよ」と和田玖未子は言った。
重量配分で考えた時にちょうど五分五分になっていることがないのだという。うまい具合に釣り合わない。どちらかが多少の我慢や妥協をしている時があると和田玖未子は繰り返した。
自分が不満を抱いている時、相手は不満など抱いていないかもしれないし、自分が幸せだと感じている時、それを相手が同じぐらい共有できているとは限らない。だから、いくら親しくなっても相手を尊重することが大事だと。
和田玖未子は商業ビルの一角で占いをしていてその時に言われたことをカシオは思い出した。
「付き合っている=どちらも幸せ」だと思っていた当時の自分にそのアドバイスは理解できなかった。だから、その時に和田玖未子がひいたカードのイラストの燃え盛る炎と共に焼却された。
でも今になってそれが分かってきた。
自分がその当事者だからだ。
ゆかりと出会った当時は本当に僕はずっと興奮していた。ゆかりのことで頭がいっぱいだった。でも、月日が経過し、燃え盛る僕の炎は徐々に勢いを弱くさせ、今は線香花火のようにかろうじて生存している程度だ。
反対に、ゆかりの僕への想いは日に日に増してきているような気がする。
それは別れ際、ゆかりが次会うことを確認してくるからだ。
でも、次会うのが1週間もしないうちだったら僕はそれを億劫に感じるだろう。
それをうすうす分かってなのか日時を指定してくるようなことはしない。あくまでゆかり自身が空いている日を示してくるだけだ。
でも会うのは1ヶ月先になってしまう。ゆかりがその時に示したいくつかの空いている日など、とっくに過ぎ去っている。
でも1ヶ月ぐらい会わない時間を作らないとゆかりへの想いが湧いてこないのだ。
仮に1週間に1回会ったとしても、それが義務感でのものなら自分自身が辛いし相手も果たしてそれで楽しいのだろうか。
毎日なんてもっての他だろう。
カシオは考えた。
想いが湧いてきて会いたくなった時に会う。そしてセックスをして抱き合う。そしてまた1ヶ月の空白を作る。そして会う。その繰り返しが1番安定するような気がしていた。
1ヶ月ぐらいすれば自然と会いたくなってくるのだから。

不倫タクシー

蓮華寺昭二。71歳。
時刻は午後11時。
個人タクシーの運転手をしている。
働く時間は主に夜から明け方にかけて。
仕事柄、山道を走ることが多い。
というより山道をよく行き来するのだ。
乗せるお客さんはみんなあの宿を利用している。
錆びて茶色になったのか、元々の色が茶色なのか分からないようなあの3階建ての旅館を。
出入り口は2つに分かれていて、いつも裏口でお客を乗せる。
あんまり大きな声では言えないんだが、この旅館、
不倫カップル専用の宿なのだ。
この宿の経営者いわく、バレないための不倫宿らしい。
私がこの宿と専属契約を結んだのは夢のような報酬が条件として提示されたからだ。
おそらく、一般的な個人タクシーの給料の2倍、3倍はあるだろう。
それが毎月、約束されている。
そのくせ、乗せるお客はそんなに多くない。
一晩で1、2組程度だ。それも不倫宿から都心部まで送り届けるだけだ。所要時間は1時間もかからない。山道をひたすら走れば着く。しかも深夜だから空いているんだ。
基本的には不倫宿の裏口前で待機しておく。
そうすれば宿の支配人から連絡が入るから、あとはお客が出てくるのを待って乗せればいいだけだ。
2人で仲良さそうに出てくる場合もあるし、男か女の一方だけというパターンもある。
車内では終始、無言のお客がほとんどだ。
この私さえも疑ってかかるぐらいじゃないと危ない世界が不倫というやつだ。
おやおや、支配人から連絡が来たぞ。
まあ、そっと見てておくれ。






神無月みらい。27歳。
関口ともき。34歳。既婚。子持ち。都心部の3000万のマンションを40年ローンで購入。2歳の娘と生後3ヶ月の男の子。妻のかなえとは職場で知り合った。

現在、2人は不倫宿の客室で情事を交わしている。
みらいの身体はきれいにムダ毛の処理がされているが、女性器を覆う毛は無造作に生えていた。
客室の照明は2段階調節が可能となっており、一番控えめな照明に今はなっている。
関口ともきは財布の小銭入れの中に閉まっておいた厚さ0.02㎜のコンドームの袋を破っていた。
その骨太な指は、さっきまでみらいの女性器をぐちょぐちょに濡らしていた。
その証にともきの指には水でも油でもない、いやらしくて艶のある分泌物がまとわりついていた。

「挿れるよ」
白い布団の上でともきがささやいた時、みらいはゆっくりと頷いた。
ともきの硬くなった陰部がみらいの柔らかくてぬるぬるとした女性器の中に入っていく。
その陰部が全てみらいの女性器に覆われた時、ともきは「うっ…」と声にならない声をあげた。
みらいもそれに呼応するかのように艶のある高い声を出した。
ともきの陰部が上下に動くたびにみらいの喘ぎ声はより響きを増し、ともきの息遣いも荒くなる。
女性器の奥まで入ってはまた顔を覗かせる陰部。その繰り返しだ。
陰部は規則的な動きをしながら、みらいの放つ分泌物をまとわりつかせ、女性器から引き抜く動きをする度に何本もの糸を引いている。
そしてまたみらいの女性器の奥を目指す。
こうしてみらいの女性器を用いて陰部を刺激している内に、ともきは現実から離れられる。



「イクよ」
ともきのピストンはこれまでにないぐらい速く、みらいの喘ぎ声も隣の壁を突き破りそうなぐらい大きくなった。
そして、ともきの身体もみらいの身体も大きく揺れていた。



「ねぇ、キスして」
射精を終えて、ぐったりとしたともきにキスのおねだりをするみらい。
ともきが財布の隣に置いてあったチェルシーバタースカッチの箱を取る。
それを箱の中から1粒取り出した。
そして口に入れてキスをする。
甘いバタースカッチの味がみらいの口の中に移る。
こうしてバタースカッチの味を2人で同時に共有するのもまた、ともきにとっての癒しの1つであった。





都心部のマンションの最上階。
駅に停車するためにスピードを落とした新幹線のぞみをそこから見下ろすことができる。
子どもは寝静まっている。
そして、かなえは友人と連絡を取り合っていた。

「馬鹿よね。X(人気俳優)のこと。子どももいるのに。もう全てが台無しよね」

友人はそう言った。
かなえもそのことはよく知っている。

「あれも結局、相手の女がリークしたんでしょ?
怖いわね。Xってケチらしいからね」


かなえは最近、息子の夜泣きに悩まされていた。
今も泣き声が聞こえている。

「ごめん、ちょっと息子が…」
そう言い、電話を切った。
時刻は日付けが変わり午前1時になろうとしている。





チェルシーバタースカッチはとっくに口の中で姿を消した。
でも、口の中はちょっぴりビターな味わいが広がっている。
ともきの唾液とみらいの唾液はそっくりそのまま交換され、それぞれ、自身の一部となった。
一方、ともきのしおれた陰部とみらいの乾きつつある女性器は共に酸いも甘いも掻き分けた同志のようである。
しかし、数十時間後にはまた固くなり、全体を湿らせ、一つになる。
「タクシー呼ぶね」
客室の内線からタクシーを手配してもらう。
その間に、みらいは服を着て準備を始める。
深夜2時のことである。






宿の1階には駐車場があり、そこに黒のマカンが赤い小さなライトをフロントガラス越しに点滅させながら白線に沿ってきれいに駐車されている。ナンバーには板のようなものが置かれ、見られないようになっている。
ともきの車だ。





「女性1名。○○駅(都心部の主要ターミナル駅)付近のAマンションまでお願いします」

午前2時を過ぎた時、宿の支配人からそう連絡が入った。告げられるのはお客の人数と性別と行き先だけ。
それ以外は何も伝えられない。支配人の顔だって分からない。


5分ほど待っていると、その女性客は小走りでタクシーに乗り込んできた。
きっと情事を終えたのだろう。
ミディアムロングの黒髪で前髪は今流行りのシースルーになっている。
20代前半に見える。よく女子大にいそうな雰囲気だ。

車内では終始、スマートフォンを見ており、私と話す気などゼロに近かった。
しかし、時折、リップクリームを唇に塗って、乾燥を防いでいるようだった。
私は車内のエアコンの風量を弱めた。



「今、仕事が終わった。○○君は寝たかな?」
かなえのラインに通知音が響く。しかし、かなえはすでに息子の隣で深い眠りについていた。
時刻は午前3時をまわったところだ。
ベランダから外を眺めると、依然として深い闇が全体を覆っているが、少しずつ次の朝への準備が進んでいるようにも見てとれる。
動き出す新聞配達の原付バイク。始発の準備を始める新幹線N700。住宅街をゆっくりと低速で流す自動車警ら隊のクラウンパトカー。
闇の中でも決して動きは止まらない。






女性客を乗せたタクシーは山道をひたすら走り、都心部に入ろうとしていた。
厳しい暑さは次第に和らぎ、過ごしやすい日が増えた。
都心部の道路は深夜でも車の流れは絶えない。
歩行者だってたくさんいる。
この街は眠らない街ではなく、眠りながら進む街なのだ。



Aマンションの前に到着する。

「5800円です」

女性客はヴィトンの長財布から1万円札を取り出し、渡した。
おつりを渡そうと、ケータイ用金庫を開けた時には
もう女性はすでにタクシーを降りて、闇の中に消えていた。
よくあることだ。
不倫男女はこうしたちょっとのタイムラグを嫌う。
まるでいつもパパラッチに追われているハリウッド女優のように。



転回し、あの宿へと戻る。
もう今夜はこれで終わりだろうか。
そんな勘が働く。


ともきの運転するマカンが信号で停車している。
あと10分弱で自宅マンションの地下駐車場に着く。
念のため、毎回、ルートを変えている。
対抗車線である向かって斜め前方には軽四とタクシーが停車している。
タクシーはスモールライトになっているが、軽四は一番まぶしいライトになっていた。
信号が青に変わり、アクセルを踏み込む。
ラインの既読はついていない。



午前4時、5時、6時。
結局、この日はあの女性客を乗せただけで、それ以降は誰も来なかった。
誰も乗せない日だってあるから今日なんかはいい方だ。
タクシーを自宅近くのテナント貸しの駐車場に停め、歩き出すと、ケータイに着信があった。
私がずっと所属していた大手のタクシー会社で働く後輩の芳樹からだった。
「飲みに行きませんか?」
私が仕事終わりの時間帯を見計らってというよりは、仕事が終わる時間がおそらく同じなのだろう。
駅前の「デンデンちょうちん」という居酒屋で待ち合わせることにした。

「お疲れ様です。蓮華寺さん」
芳樹が言った。
50代半ばのハゲ散らかした小太りのおっさんだが、私より一回りも二回りも若いのは信じがたい事実だ。
焼酎の水割りとタコわさを注文する。
私たち以外に客はいない。
タッチパネルの画面から注文するようになっていて注文する際の音だけは立派だが、肝心の厨房からは物音ひとつしない。
寝ているのではないかと思ったが、酒とつまみは案外早く出てきた。


「ちょっと、蓮華寺さんには言いにくい話なんですが…」
突然、芳樹がそんなことを言う。

「あの、蓮華寺さんが契約している宿、脱税しているみたいで、近々、調査が入るみたいです」

芳樹が続ける。

「これはまだ序の口なんです。本当にやばいのはそこから。もし、調査が入れば、おのずと利用者の情報もバレるみたいで、特にあの宿を利用している有名女優Aなんかは週刊誌やマスコミに晒されることになるでしょう」


「どこで、そんな情報を?」

「知り合いに、記者がいまして…。
あの宿のことで知っていることはないかって聞かれて蓮華寺さんのことを話したら食いついてきて、その流れでいろいろ教えてもらったんですよ」



お前は余計なことを…

芳樹がスマートフォンの画面を見せてきた。
「この人。見覚えあります?」


それはまさに今日乗せたシースルーの女性客だった。

「この人がどうした?」

「いや、A(有名女優)がよくこの宿を利用しているそうなんですよ。既婚男と一緒にね。乗せたことありますか?」

芳樹がにやけながら言う。
「遅かれ早かれどうせ公になるのは決まってます。
問題は誰がいつどんな風にその証拠を差し出すかです。蓮華寺さんが知らないふりをしていても、いずれ他の誰かがタレコミます。ちなみに、情報をあの週刊誌にリークした場合、報酬は○○○万円だそうです。どうです?悪くないんじゃないですか?」



「俺がさも決定的な証拠を持っているかのように言うなよ」


芳樹が笑う。
蓮華寺さんは人間観察が好きでしょう?特に女性の。それだけはよく知っています」


「いやいや…。だいたい、いくら調査が入ってもそんな客個人のプライベートな事情までは分からないだろう」

芳樹が答える。
「さあ、どうでしょうね」


日は昇り、朝日が店内を照らす。
車の走行音やトラックがバックする音が聞こえてくる。


「今日はおいとまする」
私は伝票の上に自分の頼んだ分だけのお金を置いて店を出た。
芳樹はまだチューハイやらビールなどを注文しているようだった。



自宅に戻り、布団を敷いたままの部屋でその有名女優Aが出演していたドラマをYouTubeで観てみる。
予告編だけだが、Aのセリフや表情を確認することができる。
まるで、タクシーに乗せた時とは違う明るい雰囲気が漂っていた。
表情豊かで、嫌みのない笑顔だった。
しかし、タクシーに乗り込んできた時のAは無表情で口がへの字に曲がっていた。
オンとオフを上手に切り替えられると言えばそこまでだが、人間、そんなにも表情を180度変えられるものなのだろうかと疑った。



芳樹によると、どうもAは週に2、3回、あの宿で情事を交わしているらしい。
でも、帰りは深夜2時の時もあれば、翌朝になることもあって、また、移動手段もタクシーだけでなく、相手の自家用車やマネージャーの車、時にはわざわざ隣の県まで始発で向かって帰宅するという用意周到ぶりのようで、Aを乗せることができるタクシー運転手はごく稀だそうだ。
いわゆる「不倫タクシー」も私の以外にも何百台も同じような契約者がいるらしい。
中には副業のように年に数回だけ来るとかもあるらしい。こうしたタクシーは足が付きにくいことからプレミア価格で客を乗せれるそうだ。
これらを芳樹から聞いて初めて知った。


1週間ほどたって、芳樹から最終確認の電話があった。
Aを乗せたんですか?週刊誌へのリークはどうするんですか?、と。
私は沈黙を貫き、週刊誌へのリークに関して丁重にお断りした。


私は不倫タクシー運転手としてお客の命と共に、お客の秘密も守らなければならないと勝手に使命感に燃えていたのだ。

悪魔のプロポーズ

海の見えるレストランで食事することなどめったにない。
たまに仲のいい女友だちと女子会をする程度だ。
付き合って3年になる彼に誘われてやって来たイタリアンのお店。
ふかふかのソファ席に座れば目の前に海と大都市の夜景がひろがる。


「みさきと付き合ってもう3年になるね」
彼は赤ワインをひと口、乾いた唇を湿らす程度に飲んだあと言った。


私は今年で29歳。
いろんな恋愛をしてきたけど、もう彼と結婚して子どもを産みたいというのがある。
彼も子どもが好きなようでおおかたの価値観は一致している。
ゼクシィを彼の見えるところに置いたりなどはしなかったが、彼も彼で結婚を考えているだろうし、私の気持ちも察しているだろう。


「みさきといると楽しいし、もっと一緒にいたいなって思う」



そう言いながら彼に見つめられてドキッとした。
やはり今日はプロポーズするつもりなのだろう。
無意識に姿勢が正される。


「みさき、結婚しよう」

やっぱり、だ。
この瞬間、嬉しさのあまり意識を失いそうになった。
昔、貧血持ちで倒れたことはあったが、嬉しさで倒れそうになる感覚はこの時が初めてだった。
頬はきっと真っ赤に染まっているだろう。


「はい、よろしくお願いします」
私は一呼吸置いた後でゆっくり言った。



店内の照明がいっそうキラキラと輝いて見えた。
私はまるでハリウッド映画の最後のハッピーエンドのシーンのヒロインになったようだった。
彼は優しい眼差しで私を見ている。
周りのお客さんにもこれが人生で1番のイベントであるプロポーズであることはお見通しだろう。
声なき祝福がどこからともなく聞こえてくるような気がした。





「それでね、ひとつ、協力してほしいことがあるんだ」
彼は突然、そう言ってかばんの中から書類のようなものを1枚、取り出し、テーブルの上に置いた。

「婚前契約書。欧米では主流になっているんだけど、日本ではまだまだマイナーなようだ。でも、お互いに仲良くやっていくためには必要だと思う」


この時、人間だと思って接していたものが人工的に作られたアンドロイドであると分かった時のような衝撃を受けた。
あるいは、女だと思っていたものが実は男だった、とか、そのような類いの衝撃を受けた。
そしてこの衝撃が自分にとってショックなことなのか、ある意味、新鮮なことなのかということすら分からなかった。
まるで車にひかれて死んだのにもかかわらず、まだそれを受け入れられない亡霊のように。

涙腺は何個もあるのだろうか。
さっきは感動のあまり涙が出そうだったのだが…
感動とは違う種類の変な涙が出そうになるのを堪えながら一通り、婚前契約書の内容を読んでみる。


一、1日3食必ず手料理する
ニ、水回りは常にきれいにする
三、育児と家事は分担する



意外とまともな内容だ。
それが多少の救いになった。
それに考えてみればどれも当たり前のこと。

そう言えば彼のこうしたちょっぴり変わった部分は昔からあったな。
受け入れる寛容さも大切だ。


そう言い聞かせて、サインをしようとしたところ、彼は大きな手でそれを塞いだ。

「裏面もあるからちゃんと確認して」


婚前契約書(裏面)

一、配偶者以外の者との身体的接触については追求しない。ただし、夫はこれを追求することができる



この1文を何度読み返しただろうか。
何度読んでも頭に入ってこない。
読めば読むほど訳が分からなくなる。


「これはどういう意味なの?」
私は彼に尋ねた。

「そのまんまだよ」
彼が答える。
そして、少しの沈黙の後でしびれを切らしたように彼は続けた。
「つまり、僕は浮気してもいいけど、みさきが浮気した場合はしっかり責任をとってもらうからねっていう意味」
彼は悪びれもせず言った。


浮気…?
文面をよく見ると身体的接触とある。
しばらく考えた。
そして反射的に声が出てしまった。
「身体的接触ってセックスのこと?」

「そんな大きな声で言うなよ」
彼は赤面しながらまるで不法侵入者を阻止する警備員のように手を振り上げた。
周りから咳払いする音であふれている。

「浮気なんて嫌よ。そもそも私、浮気なんてしないわ」
私は泣きそうな声で言った。
しかし、彼は言った。


「みさき、男は浮気する生き物なんだ。でもトラブルになるのは嫌だろ?だからこうして前もって同意してもらおうと思ってるんだよ」


同意?
こんな理不尽な同意を?
私は、また涙が出そうになるのを堪えて言った。
「私、浮気は許せないの。あなたが浮気をすることに同意はできないわ」


しかし、言葉ではそう言いながらも頭の中では冷静な算段がつきはじめていた。彼は年収5000万の弁護士。
私はもうすぐアラサー。いや、夫の浮気を許容したアラサー人妻。
まるで裁判官のように両者を天秤にかけてみる。

彼は結婚後の浮気を許してほしいと言っているようだ。
しかし、それは5000万で埋め合わせできるものなのだろうか。
5000万円で夫の浮気を我慢できるだろうか。
浮気を認めてくれといったような信じがたいことをさらっと婚前契約書に忍ばせる彼に驚いたが、年収5000万円が手に入ると思うと何とも判断に迷う自分がいた。



すると彼は新しい書類を取り出した。


一、妻には月々7万円を支給する



「家賃とか光熱費別でね。もちろん、子どもが産まれたら子どもの学費も」
また、彼は悪びれもせずさらっとまるで飼い慣らされたインコのように言った。
私はそんな彼に腹立たしさを覚えた。
すると、それを察知したかねように彼はもう一度念を押した。
「家賃とか光熱費は別だよ?」


「そうだとしても月々7万?…生活保護受給者でももっと多いわ。しかもあなた、結婚後の浮気を許せと言ってるんでしょ?それなのに7万?…」
私は呆れてため息が出ていた。
ため息の白い煙が見えそうなほどに。


すると彼は言った。
「言葉に育ちが出るね。君みたいな感情の起伏が激しい女性とはやっていけないな。さようなら」
あっさり彼は言ってすぐさま席を立ち、会計を済ませた後、その場を後にした。
残された私はほとんどお客さんのいなくなった空間で涙を流すことさえできずにいた。
29歳の夏の出来事である。


ラブホテルオーナーの秘められた仕事

「換気の徹底、スタッフの検温、アルコール消毒の実施などを行っておりますので安心してご利用ください」

ラブホテル「6亀頭」のオーナーである江藤さんが眉間にしわを寄せながらこの前貼り出した感染症対策のためのポスターを自分の頭より上に持ちながら管理人室のパイプ椅子に座り、眺めていた。

江藤さんは60歳代で丸顔の小柄なおじさんである。
眼光が鋭く、昼間でもサングラスをかけている。
愛車はレクサスLS。
分かりやすいぐらいのチンピラ風ファッションで、胸ポケットにはいつもマルボロが透けている。
ただ、江藤さんが吸っている姿は見たことがない。

管理人室の机の上にはホテルの出入口を映す液晶のカメラモニターとパソコンがある。
現在、人の出入りは全くない。
江藤さんの隣で売り上げや備品の在庫確認などを手際よく行っている中年の太めのおばさんが現場責任者の沢田さんである。
清掃員の僕が休憩で管理人室に入るといつも柿の種やポテトチップスなどを食べているが、今日は食べていないようだ。


そしてつい10分ほど前に帰ってしまった細身のおばさんがアルバイトの倉橋さん。
コロナ渦ということもあって、今は、沢田さんと僕と倉橋さんでまわしている。

他にもアルバイトはちょくちょく入ってくるが、そのほとんどが定着せず辞めていく。
よく聞くのが「汚物の処理に耐えられない」というものだ。


オーナーの江藤さんはこのホテルの所有者で、めったにやって来ないが、たまに様子を見に来る。
いつもは「ご苦労さん」と白いキラキラした歯を見せながらサングラス越しに笑うのだが、今夜ばかりはそうはいかないようだった。



「低迷するにもほどがある。いつもの2割以下だ。
これが続けばこのホテルもダウンサイジングしなければならなくなる。今は6気筒だけどな」

深刻そうな言葉を並べるわりにはその表情から深刻さが伝わってこない。
江藤さんには他にもシノギがあるのだろう。



「どこのホテルも今はこのような感じですからね。
現に潰れていってるホテルもたくさんありますからまだマシな方だと思います」

沢田さんが在庫確認表のバインダーを壁に引っ掛けた後に言った。



すると江藤さんは軽く頷いた後にこう切り出した。

「一応聞いておくが、お前たちは贅沢が好きか?
それとも切り詰めた生活でも構わないか?」


すると沢田さんは笑って僕の方を見た。

「そういうのは彼に答えてもらいましょう」


突如、僕は江藤さん、沢田さんの視線を感じながらほぼ直感的に「贅沢したいです」と答えた。



「よし、分かった」
こう言って江藤さんは自前のノートパソコンを起動させた。

「ちょっと、見てみろ」
江藤さんが指さすパソコン画面にはAVの隠し撮り風の男女の性行為中の映像が映し出されていた。
映像には20代の男女が白のシーツにさざ波を立てながら少しずつ乱している最中だった。
体位は正常位。
女は小柄で色白。そして男の揺れる広い背中にそっと置かれた小さな両手は微妙にその位置を変えながらまるで爬虫類の手のようだ。


「分かったかな。これ、うちのホテル。
リアルタイムの映像だよ」

そう、江藤さんが言い出した途端、単なるAVだと思っていた僕の下半身に熱い血が流れ出したようだった。

「隠しカメラ。超小型の。この映像をDVDに焼いて売るのさ。結構な値段で売れるんだよ」


そう言うと江藤さんはすぐにパソコンの電源をOFFにし、机の上に置いていたレクサスのキーを手に持った。そして胸ポケットからマルボロの箱をのぞかせながら足音も立てず管理人室を出ていった。

コロナウイルスは国家からの挑戦状

今日は夜遅いしコンビニのうどんでいいか。
うわーSNSチェックしてたらもう深夜2時だ。
最近、運動してないな。ずっとスマホを触ってる。

トイレの後、手を洗わない人。
風邪をひいてもマスクをしない人。
口元を手やハンカチで被わず平気でくしゃみやせきをして菌をばらまく人。

当たり前のことが当たり前にできない人が増えてきている。


ここは国家の機密結社。

医療費の高騰など社会保障費の圧迫が増税として
表れ、消費は落ち込む。

まず、高齢者人口を減らさねば


この点、高齢者は免疫力が落ちているから強力なウイルスをばらまけばイチコロだ。


あと、常識がなってない人は、脱税をしたり、病気にかかりやすかったり、他者に迷惑をかけたりするから、そういう人たちも排除しよう。

つまり、基本的な常識を守れる人間だけが生存できるようなウイルスをばらまこう。

そうすれば国家の将来に一筋の光が見えてくる。


コロナウイルスにより、老害が消えて、マナーや常識を守れない人が消えた社会。

残ったのは国家の負担にもならなければ国家の邪魔もしない常識的な人。


国家にとっても常識のある国民にとっても都合のいい政策だ。


スマホに夢中になり多くの国民の生活リズムが乱れ
免疫力が低下してきている現時点で、コロナウイルスを投下。



2020年夏ごろまでに残念ですが、多くの国民が命を落とし、残された常識的な国民は不安感に苛まれることになるでしょう。



そうした時に国家は、ある提案をしてきます。
迫り来る脅威への対抗です。

緊迫した中東、アジア情勢下にあって我々はできる限りの対抗策を取らなければ生存が脅かされる危険性がある。


これらを未然に防ぐために国民一人一人の協力を仰ぎたいと国家は説く。

不安感を煽られた常識的な国民の多くは従順で異論を示さず、まさにイエスマンだ。


時の戦争のアップデートの日がやって来るのだ。



大事な戦争において反戦論を唱えるような国家からすれば非常識で邪魔でしかない人間はコロナウイルスにより抹殺済み。


スマホでなんでも書け、世に発信できる時代にそのような人間がいれば、きっと国家主導の戦争を遂行するにあたり大きな妨げとなっていたであろう。

なぜなら、反戦論に共鳴する人間も一定数出てくるはずであるからだ。それがインフルエンサーであればあるほど。

だから、ユーチューバーやインスタグラマー、その他、芸能人は二つの選択を迫られるだろう。

ひとつは、国家の戦争を遂行するにあたって国民の忠誠心を高めるための橋渡し役、つまり広告塔だ。


そうなれば、YouTubeにアップされるユーチューバーの動画のほぼ全てが敵国を煽るような内容の動画となるだろう。


そしていかに自国が豊富な武器と圧倒的な戦力を兼ね備えているかということもその内容となる。


その全てが国家の指示により行われる。
検閲どころの騒ぎではない。


しかし、インフルエンサーは何もできない。
なぜならもう一つの選択は死しかないからだ。

戦争を遂行するにあたっては何気ないユーチューバーの動画であっても国民の戦闘力を落としかねない。

だから、ユーチューバーは国家の利益になる動画以外はあげられず、それが嫌ならユーチューバーを辞めるしかなくなるのだ。それはユーチューバーにとっては死だろう。

そしてアーティストは国家への忠誠心を高めさせるような楽曲を、お笑い芸人は敵国を誹謗中傷するようなコントを作るよう指示されることになる。

最近、キーの高い楽曲が多いのも、国民の高揚感を高め、戦争へとスムーズに向かわせるためだと考えても違和感があまりない。

そして、8.6秒バズーカに代表されるような反日はどんどん排除されていくだろう。


偽りでも構わないからとにかく愛国心を表明することが求められるだろう。


秘密保護法や集団的自衛権など拡大に拡大を重ね
この時効いてくる。



時の戦争との唯一の違いは女性に対しても広く徴兵できるということであり、男性であっても、時の戦争で女性が行っていた作業ができるということだ。


SNSへの投稿やコメント、血筋、何気ない会話などから国家は独自に判断し、すでに選別を開始しているだろう。



このままでは本当に第三次世界大戦が起こってしまう。


これらを防ぐには国民ひとりひとりが徹底的にコロナウイルス対策を行い、生存することが大切である。

具体的には、、、

①マスクの着用
②手荒い、うがい
③人混みを避ける
④バランスのとれた食事、適度な運動、睡眠など



多くの国民が生存すれば、国家もそう簡単には戦争を仕掛けられない。


危機感なく、のほほんと暮らしているようではコロナウイルスに打ち勝てない。


国家からの挑戦状をわれわれはどう受け取るべきか

何をするべきか、すでに試されている。