私立大学の経営、売上トップは (学)順天堂 赤字率 5割に迫る、損益は地域格差が鮮明に
赤字企業率は年々上昇、5割に迫る
最新期の損益別では、黒字が290法人(構成比53.4%)に対し、赤字が253法人(同46.5%)で5割に迫った。赤字法人の比率は、前々期34.2%、前期40.8%と約6ポイントずつ上昇しており、採算がとれず厳しい経営に陥っている法人が増えている。 売上高10億円未満は49法人(構成比9.0%)で、学生確保に苦慮する短期大学などの小規模経営が中心。この49法人のうち、赤字は30法人(同61.2%)と6割を超え、学生数や事業規模で利益に格差が出ている状況がうかがえる。 また、赤字の253法人のうち、3期以上にわたり赤字が継続しているのは139法人(同54.9%)で、半数を超えた。慢性的な赤字経営から脱却できない法人の中には、文科省の私学助成金頼みの経営が続いている可能性がある。
赤字率は四国が最大で約8割
543法人の損益を地域ごとに比較した。 赤字率が最も高いのは、四国の77.8%で約8割にのぼった。以下、北陸の66.7%、東北の60.0%までが6割超え。5割台が中部の55.4%、中国の55.2%、北海道の55.0%だった。一方、最低は関東の40.6%で、以下は近畿42.2%、九州43.6%までが50%を下回った。 四国と関東は、37.2ポイント差に拡大している。人口が集中する都市圏と、それ以外の地域との格差が鮮明となった。 ◇ ◇ ◇ 文部科学省が公表した2024年度の大学進学率は59.1%で、過去最高を記録した。その一方で、同年度の入学定員充足率(入学者数÷入学定員)が100%未満の私立大学は、全体の59.2%(日本私立学校振興・共済事業団公表)にのぼり、約6割の私立大学が定員割れを引き起こしている。これは、進学率は上昇しているが、少子化で入学者の絶対数が減少していることに起因している。 大学の経営法人は、減収や減益、赤字経営の増加が顕著で、事業環境はますます厳しくなっている。特に、赤字率は大都市圏以外の地域や、短期大学など小規模経営の法人ほど高い傾向をみせており、これらの大学を中心に近年、入学募集の停止が相次いでいる。 一方、各大学は学生確保に向けた動きを活発化している。多様な入試や推薦制度を通じて入学希望者を取り込むほか、高校の係属校化や提携関係を強める動きが顕著だ。 ただ、こうした取り組みは知名度の高い大規模校ほど効果的で、人気の二極化が一層拡大する可能性もある。大学全入時代が到来し、大学経営に淘汰の波がジリジリと押し寄せている。選ばれる大学には伝統や施設、立地だけでなく、特色ある研究・教育と同時に、就職など学生の直面する課題に寄り添う実績が求められる。そして、法人として収益確保に向けた経営力が不可欠になっている。 ※ 本調査は、東京商工リサーチの企業データベースから、大学、短期大学を経営する法人の業績を抽出した。 ※ 2024年3月期を最新期とし、3期連続で業績が判明した543法人を抽出、分析した。 ※ 売上高は事業活動収支計算書内の【教育活動収入計】、利益は【基本金組入前当年度収支差額】を採用。法人ベースの売上高のため、付属高校などの系列校や医療、付随事業などによる収入も含む。