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20日投開票の参院選兵庫選挙区に立候補している前明石市長で無所属新人の泉房穂氏(61)を巡り、神戸新聞の「ファクト検証」情報募集コーナーに「明石市長時代の暴言を市がパワハラと断定した」との言説は本当か、との疑問が寄せられた。検証すると、本人はパワハラを認めているものの、市が断定したというのは「ミスリード」だ。
■言説
泉氏は明石市長だった2017年6月、明石駅南の国道2号拡幅工事を巡り、建物立ち退き交渉の担当職員に「火付けて捕まってこい」などと暴言を吐いた。
このことが19年1月に報じられ、泉氏は記者会見で謝罪。市長には地方公務員法に基づく処分規定がなく、辞職して同3月の出直し選に臨み再選した。
ネット上では今も、兵庫県の斎藤元彦知事のパワハラ問題や、タレントのセクハラ疑惑と比較して、泉氏を取り上げる投稿が続く。
昨年1月にX(旧ツイッター)に投稿された「パワハラ『認定』されてる泉房穂さんはTV番組側がどんどん器用される理由がわからない」(原文ママ)との投稿は、7月15日までに110万回以上表示されている。
■検証
市によると19年1月、泉氏は問題発覚直後の会見で「(パワハラより)もっとひどいものだと受け止めている」と述べ、自身でパワハラ行為をしたことを認めた。本人が謝罪して責任を取ったことから、市の内部調査は行われず、第三者委員会も設置されなかった。
再選後も内部調査などはされず、23年に市議への暴言をきっかけに再び辞職した際にも、本人が認めて責任を取ったとして内部調査は行われていない。
これらを踏まえると、X投稿の「パワハラ『認定』されてる」との言説は、一見事実と異なることは書いていないが、「公的機関が調査の結果認めた」と受け取れるため、誤解の余地がある「ミスリード」とした。神戸新聞への調査依頼にある「明石市が認定した」についても、市長自身が認めたため誤りや不正確とは言い切れないが、同じく「公的な調査の結果認めた」と受け取れるため「ミスリード」とした。
なお、泉氏の暴言問題でパワハラ被害を訴えた職員はいなかったが、厚生労働省が示すパワハラの3要件(①優越的な関係を背景とした言動②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動③労働者の就業環境が害される)に「被害の訴えがあること」は入っていない。
(参院選取材班)