「自国の社会は壊れているか」というすごい設問
今回の参院選が大波乱となる可能性が高いと予感させるデータとして、日本国民の社会観、政治観が、欧米に遅れて、欧米並みの大変化を来している点を示す調査結果をこれから見ていこう。
世界ではポピュリズムの台頭という政治潮流がかなり前から注目されている。国の苦境の原因を移民や外国人のせいにする右派のポピュリズムもあれば、富裕層や権力者のせいにする左派のポピュリズムもある中で、その背景を探る国際調査をフランスの世界的な世論調査会社であるイプソス社が定期的に実施している。
イプソス社のこのポピュリズム調査では、「自国の社会は壊れているか?」というすごい設問を設けている。なかなかこんな風に正面切って聞けないと思う。上記のように、今回の参院選で日本でもそういう意識が強まっていると思われるので、最初に、この点を取り上げよう。
この設問の調査は、2016年から開始され、コロナ禍とその後の世界的な大インフレの時期をはさんで2~3年おきに行われている。
図表2には主要国、および調査国平均の回答結果の推移を示した。
途上国、先進国を含む調査国平均では、以前より「自国の社会は壊れているか?」に同意する比率は高く、2016年の61%から最近はむしろ低下ないし横ばい傾向にある(2025年は56%)。
これは、調査開始時点から値が上昇した国もあれば、開始時点からすでに値が高く、その後、横ばいで推移している国、あるいは当初高かったが、その後、急速に低下し、最近再度上昇した国など、さまざまであるためである。
図ではこの3区分ごとに主要国の推移を示した。
ドイツ、フランスなど西欧主要国では、上昇傾向、すなわち近年ますます社会が壊れていると考える人が増えている。あまり多くの系列を表示するとごちゃごちゃになるので図には省略したが、英国やカナダなども同じ傾向である。
最新の2025年には何とあのドイツが77%と世界で一番「社会が壊れている」国だった。この点はもっと注目されてもいいと思う。
今年2月のドイツ総選挙では移民排斥を訴える極右政党のAfDが第2党に躍進し、欧州政治で強まる右傾化を代表する動きとして注目されたが、その背景としてこうした社会崩壊認識が国民の間に広まっていたことは確かだろう。
かつて福祉国家として目指すべき理想モデルと考えられていたスウェーデンも2023年には73%とドイツを上回り、1位の南アフリカに次ぐ第2位の社会崩壊国だった。
しっかりした国づくりを行っていると思っていたドイツやスウェーデンで、国民の多くが「社会が壊れている」と回答しているのを知って、私などは少しショックを受けた。

