再犯防止の孤立対策わずか4市、21自治体アンケート調査結果 京アニ放火殺人から6年
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名古屋市も、裁判で執行猶予判決を受けたり検察で不起訴処分(起訴猶予)となったりした高齢者や障害者らを対象に、「名古屋市立ち直り支援コーディネート機関」を設置。また京都市は、出所後に悩みなどを相談できる窓口や支援機関を紹介したハンドブックを作製し、罪を犯した人や保護司らの民間協力者に配布している。
アンケートでは再犯防止に関する課題や必要な取り組みについても尋ねた。名古屋市は「孤独・孤立対策の幅の広さに難しさを感じる」と言及。札幌市は「関係機関による切れ目のない支援ができる体制を構築する必要がある」とした。
国への要望も相次いだ。神戸市は「国の財政的支援があれば、地域に身近な基礎自治体で再犯防止の取り組みが進む」と指摘。相模原市や仙台市からは、福祉人材の確保や居住支援充実に向けた財政的支援の拡充を求める意見があった。
■「難しい差別化、人手も不足」(石田光規・早稲田大教授の話)
孤独・孤立対策のプラットフォームの整備を実際に進めている自治体は多くないのが現状だ。率先して改革を進めている自治体もあるが、できていない自治体には事務的に人員が割けないという背景がある。自治体もやるべきことが多く、幅広い孤独・孤立対策までは手が回らないことが考えられる。
同種の政策がある程度存在するため、孤独・孤立対策との差別化が難しいのも確かだ。孤独・孤立対策として始めたが、ほかにも貧困や自殺、虐待など、それぞれ縦割りで担当する機関が存在する。どの部署が対応するのか明確でないことも多く、戸惑う自治体も少なくない。どこまで孤独・孤立対策として進めるべきなのか、もう少しはっきりとさせるべきだ。
京アニ事件であったような「世の中どうでもいいからすべてを投げうってやる」という極端な考え方は、一人になるのがとにかく怖く、つながりの中に食らいつきたいという心理から生まれる。社会とつながっているからこそ、うまく一人にもなれる。社会とつながっていると実感できる状況を作り出すことが重要ではないか。(杉侑里香、小野田銀河、東九龍、塚脇亮太)