「何が悪い!!」ゆるキャラ“ぐんまちゃん”投稿に批判殺到のワケ…“政治的主張”よりも問題だったのは…
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愛か対抗か? “何が悪い”に込められた本音
そもそも、同じメッセージを訴えるのでも、たとえば「この県(くに)が大好きだ!!」といったストレートな表現ではダメだったのでしょうか? もしそうならば、受け止め方はだいぶ違ったはずです。 そう考えると、「何が悪い!!」という、ある種の反骨心をどうしても盛り込まなければならなかった事情が見え隠れしてきます。つまり、郷土愛や愛国心よりも現状の風潮に一石を投じることが、この投稿の一番の目的だったことが浮かび上がってきます。 そこにぐんまちゃんの苦渋が滲(にじ)んで見えるのです。
“オマージュ”が言い訳に聞こえるとき
だから、群馬県知事戦略部エンターテインメント・コンテンツ課の担当者による「アニメ『ONE PIECE』の場面へのオマージュだった」という説明も説得力を欠く結果となったのでしょう。 なぜなら、百歩譲って写真の構図自体は『ONE PIECE』にインスパイアされていたとしても、その意図以上に「この県(くに)を愛して何が悪い!!」のインパクトが強すぎたからです。 もし本当にオマージュを意識していたのなら、せめて原作に出てくる「この国を愛しているから」というストレートな表現を踏襲すべきだったでしょう。あえて「何が悪い」といった反発的な語調に変えた理由を、きちんと説明する必要があります。 「エンターテインメント・コンテンツ課」を名乗るのであれば、原作のコンテクストや語感にもっと細やかな配慮をしたうえで、「オマージュ」と主張すべきだったのではないでしょうか。 つまり、今回の騒動はこういう構図です。なんだか知らないけど、ゆるキャラのぐんまちゃんが急に保守的な主張をしだした。しかも、誰も何もケチをつけていないのに、「何が悪い!!」と世間に怒りをぶちまけるような言い方をしてしまった。 今回の騒動は、このふたつの唐突感が生み出した不幸だったのです。ともあれ、この炎上で初めて「ぐんまちゃん」の存在を知った人も多いのではないでしょうか。筆者もそのひとりです。 <文/石黒隆之> 【石黒隆之】 音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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