社説:オスプレイ配備 住民の不安に向き合え
安全性への地元の不安を置き去りにしてはならない。 陸上自衛隊は、佐賀市に新たに開設した駐屯地に、輸送機V22オスプレイの配備を始めた。 8月中旬までに暫定配備先の木更津駐屯地(千葉県)から全17機を移駐させる。 政府が進める九州、沖縄の防衛力を強化する「南西シフト」に伴う戦略的な配置だ。 オスプレイは国内外で、相次ぐ死亡事故やトラブルが問題になってきた。その原因究明や対策も不透明なまま、短期間で再開してきた運用を改めなければ、安全面や騒音、排水の影響など住民の懸念は消えない。 新駐屯地は隣接する佐賀空港の滑走路を使う。配備機の主な任務は、西に約60キロの長崎県佐世保市に拠点がある離島防衛専門部隊「水陸機動団(水機団)」の輸送だ。近距離を生かして一体的な運用を見込む。 オスプレイは高速で長距離移動できる固定翼と、滑走路なしでも離着陸できるヘリコプターの両方の機能を持つ。佐賀から日本最西端の沖縄県・与那国島まで、従来ヘリの半分の約3時間半で移動できるのが利点という。 「台湾有事」を念頭に、島しょ部に水機団を急行させ、敵からの防衛や反撃に当たる想定である。今後、水機団との訓練を重ね、海自艦との連携も見据える。 だが、運用が本格化するオスプレイは開発段階から故障が多く、2023年11月に米空軍機が鹿児島県・屋久島沖で墜落して8人が死亡。米国やオーストラリアでも死亡事故があり、陸自機も昨年10月に沖縄で破損事故を起こした。 屋久島沖の事故後、米軍は変速機の歯車破断が原因としたが、なぜ壊れ、どう対策したか明らかでない。構造的欠陥を疑う声も根強い中、防衛省は米軍の説明を「丸のみ」し、3カ月半で飛行再開を認めた。他の事故でも同様だ。 日米地位協定で米軍機への調査権が日本にない上、今春に陸海空3自衛隊の「統合作戦司令部」を設け、米軍との運用一体化が進む背景があろう。 だが、その内実は、日本独自に装備の安全性すら判断することができず、事実上の米軍指揮下で追従する形なら、なし崩しに米国の戦争に巻き込まれかねない。 南西シフトにより、矢面に立たされる住民のリスク増大を直視すべきだ。実効性が疑われる島民らの広域避難やシェルター建設よりも、地域の緊張緩和を粘り強く図る自立的な外交こそ求められる。