【ジェンダーギャップ指数】日本、2025年は世界118位で前年と同じ 政治分野は後退

facebook
エックス
line
【ジェンダーギャップ指数】日本、2025年は世界118位で前年と同じ 政治分野は後退
2025年の日本のジェンダーギャップ指数は世界118位(出典:世界経済フォーラム「Global Gender Gap Report 2025」p.227)
編集部

世界経済フォーラム(WEF)は6月12日、男女格差の現状を各国の統計をもとに評価した「Global Gender Gap Report」(グローバル・ジェンダーギャップ・レポート、世界男女格差報告書)の2025年版を発表した。日本のジェンダーギャップ指数は148カ国中118位で、前年(146カ国中118位)と同順位だった。政治・経済分野の改善が遅れている状況は前年までと変わっていない。報告書は、現在のペースのままでは、世界全体で完全なジェンダーパリティ(ジェンダー公正)を実現するには123年かかるとしている。(編集長・竹山栄太郎)

1位は16年連続アイスランド、日本はG7最下位

報告書は、各国の男女格差を「経済」「教育」「健康」「政治」の4分野で評価し、国ごとのジェンダー平等の達成度を指数にしている。「0」が完全不平等、「1」が完全平等を示し、数値が大きいほどジェンダーギャップが縮小し、男女平等に近いことを意味している。2006年から公表されており、今回で19回目。

Global Gender Gap Report 2025の表紙
報告書の表紙(出典:世界経済フォーラム「Global Gender Gap Report 2025」)

世界全体の総合スコアは0.688。前年と比較可能な145カ国をみると、0.684から0.688に改善した。日本の総合スコアは0.666で前年(0.663)からわずかに上昇したものの、順位は前年と同じ118位にとどまった。G7(主要7カ国)をみると、英国(4位)、ドイツ(9位)、カナダ(32位)、フランス(35位)、米国(42位)、イタリア(85位)と続き、日本は最下位だった。

1位は16年連続でアイスランドで、スコアは0.926となり、1カ国だけ90%を超えた。2位がフィンランド、3位がノルウェーと、上位を北欧諸国が占める状況が続く。アジアではフィリピン(20位)やバングラデシュ(24位)の順位が高かった。バングラデシュは前年の99位から大幅に順位を上げた。

上位国と主な国のジェンダーギャップ指数(かっこ内は前年順位と前年比の指数の変化。前年は146カ国中の順位)

1 アイスランド 0.926(1、-0.010)
2 フィンランド 0.879(2、+0.004)
3 ノルウェー 0.863(3、-0.012)
4 英国 0.838(14、+0.049)
5 ニュージーランド 0.827(4、-0.008)
6 スウェーデン 0.817(5、+0.001)
7 モルドバ 0.813(13、+0.023)
8 ナミビア 0.811(8、+0.006)
9 ドイツ 0.803(7、-0.006)
10 アイルランド 0.801(9、-0.001)
11 エストニア 0.799(29、+0.025)
12 スペイン 0.797(10、±0)
13 オーストラリア 0.792(24、+0.012)
14 デンマーク 0.791(15、+0.002)
15 バルバドス 0.786(31、+0.013)
16 コスタリカ 0.786(19、±0)
17 スイス 0.785(20、±0)
18 ニカラグア 0.783(6、-0.028)
19 リトアニア 0.783(11、-0.010)
20 フィリピン 0.781(25、+0.002)

42 米国 0.756(43、+0.010)

101 韓国 0.687(94、-0.009)
103 中国 0.686(106、+0.002)

117 アンゴラ 0.668(113、±0)
118 日本 0.666(118、+0.003)
119 ブータン 0.663(124、+0.012)

146 チャド 0.571(144、-0.005)
147 スーダン 0.570(146、+0.002)
148 パキスタン 0.567(145、-0.003)

日本(118位)とスコア・順位が近い国々
日本(118位)とスコア・順位が近い国々(出典:世界経済フォーラム「Global Gender Gap Report 2025」p.13)

日本、経済分野はわずかに改善

日本のジェンダーギャップ指数は、2006年の第1回は0.645で、115カ国中80位だった。その後もスコアはほぼ横ばいが続いている。2025年は2年連続で上昇し、過去最高だった最も高くなった。順位も2年連続で上昇したものの、下位集団にとどまっている。

日本のジェンダーギャップ指数と順位の推移
日本のジェンダーギャップ指数と順位の推移。2018年までは各年版が公表されていたが、2019年12月に「2020年版」、2021年3月に「2021年版」が出されたため、年の数字は連続していない(グラフは編集部作成)

分野別のスコアと順位をみると、特に男女格差が大きいのが政治で、次が経済という状況は変わっていない。

政治分野のスコアは0.085で、順位は148カ国中125位。前年(0.118、146カ国中113位)からさらに後退した。閣僚の男女比は、前年は0.333まで改善したものの、2024年11月に発足した第2次石破内閣で女性閣僚が2人にとどまったことで、0.111と大きく低下した。衆議院の女性議員比率は、2024年10月の衆院選を経て15.7%まで上昇したが、下位グループを抜け出せていない。女性首相が過去ひとりも出ていないことも、スコアに響いている。

【政治】0.085(125位)

国会議員(衆院議員)の男女比 0.186(115位)
閣僚の男女比 0.111(124位)
過去50年間の行政府の長の在任期間の男女比 0.000(81位)

日本の政治分野のジェンダーギャップ指数と順位
日本の政治分野のジェンダーギャップ指数と順位(出典:世界経済フォーラム「Global Gender Gap Report 2025」p.227)

経済分野のスコアは0.613で、順位は112位。スコア・順位ともに前年(0.568、146カ国中120位)から上昇したが、女性管理職比率が著しく低い状況が続いている。労働参加率の男女比、同一労働での賃金格差など、他の項目でも改善はみられていない。

【経済】0.613(112位)

労働参加率の男女比 0.778(81位)
同一労働における男女の賃金格差 0.603(93位)
推定勤労所得の男女比 0.592(91位)
管理的職業従事者の男女比 0.192(127位)
専門・技術者の男女比 0.924(80位)

日本の経済分野のジェンダーギャップ指数と順位
日本の経済分野のジェンダーギャップ指数と順位(出典:(出典:世界経済フォーラム「Global Gender Gap Report 2025」p.227)

健康(医療へのアクセス)は0.973の50位(前年は0.973の146カ国中58位)、教育は0.994の66位(前年は0.993の146カ国中72位)で、前年から大きく変わらなかった。

【健康】0.973(50位)

出生時の性比 0.944(1位)
健康寿命の男女比 1.040(58位)

【教育】0.994(60位)

識字率の男女比 1.000(1位)
中等教育就学率の男女比 1.000(1位)
高等教育就学率の男女比 0.974(112位)

「ジェンダー公正の達成まで123年必要」

ジェンダーギャップの解消は豊かな国ほど進む傾向にあり、高所得国では0.743、低所得国では0.664だった。

分野別では、健康は0.962、教育は0.951と男女平等に近づきつつあるものの、経済は0.610、政治は0.229で、政治参加の男女平等は世界的に特に深刻な課題であることが示されている。

地域別にみると、北米のスコアは0.758と最も高く、特に経済分野が0.761と改善が進んでいる。欧州のスコアは0.751で、政治分野が0.354となり地域別では最も高かった。南アジアのスコアは0.646、中東・北アフリカは0.617にとどまるが、南アジアは教育、中東・北アフリカは政治分野で進展がみられるという。

世界経済フォーラムは、2006年以降の継続したデータがある100カ国のペースをもとに、「世界全体で完全なジェンダー公正を達成するには123年かかる」との見通しを示している。前年は「134年」で、11年分縮まったが、SDGsの目標年限である2030年にはとても間に合いそうにない。分野別では、政治参加の男女平等の実現は現在のペースのままだと162年、経済分野では135年かかる、とみている。

竹山栄太郎
竹山栄太郎 ( たけやま ・えいたろう )
朝日新聞SDGs ACTION!編集長。2009年に朝日新聞社入社。京都、高知の両総局で勤務後、東京・名古屋の経済部で通信、自動車、小売りなどの企業を取材。2021年にSDGs ACTION!編集部に加わり、副編集長を経て2024年4月から現職。

「朝日新聞SDGs ACTION!」
メルマガ登録

注目のニュースやキーパーソンの
インタビュー、
有識者の解説など、
おすすめ記事をご紹介します。

メルマガ登録
この記事をシェア
facebook
エックス
line
関連記事