【あんののみらい】「エネルギーの井戸──高温ガス炉が支える日常」次世代型原子力の安全性確保と地域活用
【あんののみらい】2025年参院選でチームみらいとして出馬する安野たかひろ代表の当選後の未来を描く架空超短編物語。チームみらいとは直接関係はありません。
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提案者: のりぃ様
エネルギー政策の改訂:次世代原子力、レジリエンス強化、国民生活安全担保 #2192
【あんののみらい】「エネルギーの井戸──高温ガス炉が支える日常」次世代型原子力の安全性と地域活用
スイッチを押せば、電気が来る。
蛇口をひねれば、水が出る。
ずっと、それが「当たり前」だと思っていた。
──東京で使ってる電気の多くは、実は東京で作られていない。
火力も水力も、ほとんどは県境の向こう。
東京で消費する電力の8〜9割は、遠くから送られてくる。
送電線が切れれば、都会はすぐに闇に沈む。
10年前、山村悠(やまむら・はるか)、42歳はエネルギー系の技術者として高温ガス炉の設計プロジェクトに加わった。
「安全な原子炉を、人の暮らしの中に。」
それがプロジェクトの目標だった。
高温ガス炉は特殊な炉だった。
核燃料をセラミック球で包み、冷却にはヘリウムガスを用いる。
電源が喪失しても自然に冷える構造──メルトダウンを起こさない原子炉。
悠たちは試作炉の安全試験を重ね、都市部配備の実現を目指した。
そして今。
東京郊外の緑丘公園──彼自身が設計に関わった小型高温ガス炉が静かに稼働している街に、悠は移り住んでいた。
暮らしの中にある自分の設計。
それを見届けたかった。
休日、散歩中に小学生に声をかけられた。
「おじさん、本当にここに原子炉があるの?」
悠は笑った。
「ああ。君がサッカーしてる芝生の下だよ」
「危なくないの?」
「危なくないように設計したんだ」
悠はゆっくりと説明した。
「普通の原発は水で冷やす。でも高温ガス炉はヘリウムガスで冷やす。燃料も特殊なセラミックで包まれてるから、熱が逃げても安全だ。
たとえ停電しても、勝手に冷えていく。だから都市の中に置けるんだよ」
悠はスマホを取り出し、AI監視システムを見せた。
「毎秒モニタリングして、異常があれば自動停止。僕らは“止まる設計”を一番大事に作ったんだ」
なぜ都市の中に置くのか?
それは、「エネルギーを近くで作る」ことが最大の安定につながるからだ。
送電ロスはほぼゼロ。
お湯も暖房も、隣の家に直接届けられる。
そしてもし災害が起きれば、公園全体が自律型避難所になる。
ふと、公園の片隅の水素ステーションが目に入った。
青く光る水素自動車が静かに充電されている。
「あれもこの原子炉の熱から作った水素だよ。水を高温で分解して作ってる。これからの車は、ここで“充電”する時代になるんだ」
照明、暖房、給湯、燃料──すべてがこの地下から生まれていた。
暮らしの真下にエネルギーの井戸がある感覚。
悠は、設計者である前に、今は一人の生活者として思った。
「スイッチを押せば電気が来る──その当たり前を守るために、僕らはこれを作ったんだ。」
公園の芝生を駆け回る子供たちの笑顔の下で、小さな原子炉は今日も静かに稼働を続けていた。
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