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9.国際社会の平和と安定
9.国際社会の平和と安定
①戦争のない世界のための国際秩序の構築
◎公明党は「平和創出ビジョン」に基づき、積極的な対話と平和外交を一層強化します。自由、民主主義、基本的人権の尊重、法の支配といった普遍的価値や原則に基づく国際秩序の堅持に取り組みながら、地球規模課題の解決、そして日本と国際社会の平和と安定のために、国際社会の国・地域と連携・協力を強化します。地雷除去や国際保健など日本の国際貢献の成果をわかりやすく国内外に発信し、国民に平和国家としての誇りと使命感を醸成します。学校教育やメディアを通じて人間の安全保障やSDGs(持続可能な開発目標)の理念を広め、国民的合意のもとで一貫した平和外交を推進します。
◎法の支配や国際ルールを大切にする国々と連携しながら、紛争を未然に防止する対話の枠組みを強化する観点から、北東アジアにおける多国間の安全保障対話・協力機構の創設を日本が主導して推進します。
●国連がその本来の機能を果たすよう、国連で採択された「未来のための協定」に基づき、国連安全保障理事会の常任・非常任理事国の枠を拡大するなど、G4(日本、インド、ドイツ、ブラジル)やアフリカをはじめとする国際社会と緊密に連携し、議論をリードし、改革に向けた統合モデルの作成をめざします。
●ロシアによるウクライナ侵略の一日も早い停止と、ウクライナへの公正かつ永続的な平和実現に向け、国際社会と連携し経済制裁を強化します。G7や国際金融機関等とも協調し、ウクライナの喫緊の資金ニーズへの対応を継続するとともに、我が国が震災等で培った創造的復興の知見と経験を活かし、戦後復旧・復興支援、人道支援において国際社会を主導し、深刻な影響を受ける周辺国への支援も推進します。
○国連をはじめとする国際機関やカンボジア、ベトナムと連携し、ウクライナをはじめ、全世界の地雷除去を進めていきます。リスク回避の教育・啓発、探査・除去機材の供与、被害者への医療・義肢支援、カンボジアとの三角協力を進めます。TICAD9(2025年・横浜開催)で地雷・不発弾対策のイベント、ウクライナ地雷対策会議の主催、オタワ条約締約国会議の議長国として国際連携をリードします。
●ガザを巡る情勢に関し、人質の即時解放、事態の早期沈静化、周辺地域への波及防止に向けた外交努力を継続し、二国間及び国際機関を通じた十分な支援等の実施により、ガザ地区の人道状況の改善、周辺地域の安定化に向け、積極的な貢献を果たします。
◎AI等の新興技術により自律的に攻撃を実行するLAWS(自律型致死兵器システム)について、特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の枠組みにおける政府専門家会合(GGE)での議論・交渉を前に進め、LAWS開発を禁止する技術的要件等の規制の具体策を含め、国際社会での合意形成を図るため、日本が主導して議論を加速させていきます。(再掲)
●クラスター弾の根絶に向け国際社会をリードします。多数の民間人を傷つけるクラスター弾の製造・使用・保有を禁じたオスロ条約への普遍的参加を働き掛け、非締約国にも使用自制を強く求め、各地の不発弾処理や被害者支援にも協力し、人道的軍縮を牽引します。
●北朝鮮の核・ミサイル開発や長期化するロシアのウクライナ侵略などに対する制裁について、国際的な連携を一層推進するとともに、制裁の効果の分析、制裁の回避や迂回を防止するための情報収集、経済制裁措置の実効性を確保するための金融機関等に対する外為法遵守に係る検査の実施等のために必要な体制を強化します。
●司法外交閣僚フォーラムの成果である、効果的なウクライナ汚職対策支援、ASEAN・G7の法務省等若手職員のネットワーク形成等や、京都コングレスの成果として策定を主導した再犯防止国連準則の活用支援を着実に実行します。また、国際機関への法務省職員の派遣や司法外交の展開に必要な国際法務人材の育成に引き続き取り組みます。
●ICC(国際刑事裁判所)への人材派遣や相互研修を通じて活動を支援します。ICCの独立性と公平性を守り、国際的な法の支配を重視し、力による現状変更を防ぐため、司法外交を展開し、新たな国際秩序形成をめざします。また集団殺害(ジェノサイド)の処罰・防止に関する条約の批准の検討を進めます。
●G7や国際金融機関等と連携し、ウクライナの喫緊の資金ニーズへの対応を継続するとともに、ウクライナの復興支援や、深刻な影響を受ける周辺国への支援を推進します。
②核兵器のない世界の実現へ
◎唯一の戦争被爆国として、核兵器による威嚇や使用、核共有の導入に断固反対します。国是である非核三原則を堅持しつつ、「核兵器の役割低減に関する首脳級会合」の提案や核兵器禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加など、あらゆる機会を通じて議論を提起し、核兵器国と非核兵器国との間の「橋渡し」の役割を担い、さまざまなNGOと連携しながら、核兵器禁止条約の署名・批准に向けた環境整備を進めます。
●広島・長崎への原爆投下や福島での原子力災害の経験を活かし、日本が被害者援助と環境修復を主導していきます。
●「核使用」と「核秩序崩壊」のリスクを防ぐため、米国、ロシア、英国、フランス、中国の5核保有国による恒常的な対話枠組みを提唱します。核兵器国が非核兵器国に対して核兵器を使用しないことを約束する「消極的安全保障」の誓約と、その先に見据える「先制不使用」の合意に向けた外交を積極的に展開します。
●非核兵器地帯条約の法規範性を高め、地域的な拡大をめざします。NPT(核兵器不拡散条約)に先行するかたちで発効した「ラテン・アメリカおよびカリブ地域における核兵器禁止条約(トラテロルコ条約)」をはじめとする主要5条約(ラロトンガ、バンコク、ペリンダバ、セメイ)において、全ての核兵器国による附属議定書の批准を促します。朝鮮半島の非核化を進め、北東アジア非核兵器地帯構想の実現をめざします。
●原爆遺構や証言、画像、映像などの資料の保存、核廃絶に向けた軍縮・不拡散教育の取り組みを強化することなどにより、被爆の実相に関する正確な認識を国境や世代を超えてしっかりと広めていきます。
●核廃絶に関する国際会議の広島、長崎での開催を推進するとともに、「国際賢人会議」等の取り組みを通じて、NPT(核兵器不拡散条約)運用検討会議において意義ある成果が収められるよう、国際的な議論を主導していきます。
●日本とオーストラリアが主導して立ち上げたNPDI(軍縮・不拡散イニシアティブ)の枠組み等を通じて、「核兵器のない世界」の実現に向け国際社会が一致して取り組むことのできる共通の基盤の形成に貢献します。また、国連軍縮会議、非核特使、ユース非核特使といった取り組み等への積極的貢献を通じて、国内外への発信力を高めます。
●核軍縮・不拡散を推進するため、NPTの体制強化とともに、CTBT(包括的核実験禁止条約)の発効促進、FMCT(核兵器用核分裂性物質生産禁止条約)の早期交渉開始等に向けて積極的に取り組みます。
③SDGs達成へ取り組みを加速
◎人間の安全保障の理念に立脚しながら、気候変動、国際保健(グローバルヘルス)、食料・農業、防災、貧困撲滅、平和構築、人道、難民・避難民問題、ジェンダー平等、教育等、国際社会共通の重要課題への対応を主導し、推進します。
●紛争や災害による被災者・難民への人道支援を拡大します。シリア難民キャンプやガザ地区、ウクライナ避難民などへの緊急支援を継続強化し、教育・生計支援を含む長期的支援で和平と復興を後押しします。
◎新たな開発協力大綱を踏まえ、ODA(政府開発援助)を拡充し、SDGsの2030年達成に向けた国内外の取り組みを政府、国際機関、自治体、民間企業、NGOやNPOなど多様なステークホルダーと連携し、加速化させます。また、2030 年以降の目標(ポストSDGs)の策定に向けた議論を官民で喚起し、国際社会をリードしていきます。
●デジタル化による価値創出でSDGsを推進し、デジタル格差是正と包摂的成長をめざします。途上国によるICTアクセス拡大や人材育成を強化し、誰一人取り残さないデジタル社会を実現します。気候変動や防災では、人工衛星データを活用した国際協力を推進。宇宙技術の平和利用で、防災・減災の連携を主導します。
●SDGsを国家戦略とし、SDGs推進基本法(仮称)の制定をめざします。国際連帯税やデジタル税など革新的な資金調達や公正な国際金融の議論を主導し、企業・NPOの活力を結集します。
④国際保健(グローバルヘルス)の推進
●「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」※の達成に向け、医療体制整備や人材育成、世界的な健康危機対応の枠組みを推進します。また、国連、UNICEF、UNFPA等の国連機関や国際機関及びグローバルファンド、Gavi、GHIT、Stop結核パートナーシップ、Unitaid、UHC2030などの官民連携組織との拠出金等を活用した連携強化に取り組みます。
※ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC):全ての人が、効果的で良質な保健医療サービスを負担可能な費用で受けられること。
●将来のパンデミックに世界各国が協力して対応するため、人獣共通感染症の予防、ワクチンの早期開発や公平な分配など、パンデミックへの予防、備え、対応(PPR)に関する国際的なルールを定めた「パンデミック条約」など、世界が協力を強化する仕組みを実効性があるものとして構築していきます。参議院決議を踏まえ、台湾のWHO加盟承認を後押しするなど対策の空白地域を埋める取り組みを主導します。
●治療・ワクチン・診断を通じた危機克服や保健システムの強化、コールド・チェーン※の整備やラスト・ワン・マイルのための支援の継続・拡充を図ります。グローバルファンド等においても、優れた日本の医薬品や医療機器を活用し、支援の質を高めていきます。
※コールド・チェーン:生鮮食品や医薬品などを生産・輸送・消費の過程で途切れることなく低温に保つ物流方式
⑤国民の生命と平和な暮らしを守る、すき間のない安全保障体制の構築
●戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に対応し、国民の生命と平和な暮らしを守るため、専守防衛の下、防衛力を着実に整備・強化します。今後の最優先課題として、現有装備品を最大限有効に活用するため、可動数向上や弾薬・燃料の確保、防衛施設の強靱化への投資を加速するとともに、スタンド・オフ防衛能力、無人アセット防衛能力などの将来の中核となる能力を強化します。
●平和安全法制に基づく適正な運用を積み重ね、日米同盟の抑止力・対処力の一層の向上を図ります。あわせて、国家安全保障戦略等に基づき、同盟国、同志国とも緊密な連携を図り、情報収集・警戒監視、また弾道ミサイル防衛、宇宙・サイバー・電磁波、経済安全保障、海洋安全保障など広範な分野での緊密な協力を拡大し、平時から緊急事態までのすき間のない体制を強化するための施策を推進します。
●AI・無人化等の先端技術を取り入れた装備品の早期実用化を一層推進するとともに、国内防衛産業の維持確保のための各種支援を通じ、防衛サプライチェーンの強靱化を図り、厳しい安全保障環境に対応できる能力を確保していきます。
●自衛官の給与について、任務の特殊性を考慮した俸給、手当になるよう処遇を向上します。また自衛官の定年年齢の適切な引き上げ、退職自衛官の活用、特に女性自衛官として結婚や出産、子育て等により任務を離れた経験のある中途退職自衛官を活用できる環境の整備を行い、現場、前線の自衛官の人員、人材確保に取り組みます。
⑥日米同盟の強化・深化
●戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面している中、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現のため、法の支配の確立、国際法に基づく紛争解決、持続可能で包摂的な経済成長の実現、人材育成や質の高いインフラ整備の促進、連結性や強靭性の強化、経済安全保障、サイバー安全保障、海洋安全保障、宇宙安全保障、人道支援・災害救援、国際テロ・組織犯罪対策、軍縮・不拡散、人的・文化・知的交流、感染症対策、気候変動問題、北朝鮮問題などの分野で、日米同盟を基軸に、豪州、インド、ASEAN、韓国、欧州、アフリカ諸国、太平洋島しょ国、中南米、中東などの各国・地域、機関と緊密に連携・協力し、地域や世界の平和と繁栄に積極的に貢献します。
●在日米軍専用施設・区域の7割以上が集中する沖縄の基地負担軽減は喫緊の課題です。厳しさを増す安全保障環境を踏まえながら、日米同盟の抑止力を強化しつつ、日米で合意されている嘉手納以南の土地返還計画の加速化や訓練の県外分散移転の着実な実施、在日米軍の再編等を通じて、目に見える形での負担軽減を実現します。
●日米合同委員会合意に基づき運用されている凶悪犯に関する起訴前身柄拘束移転の日米地位協定明記の検討や、基地周辺自治体と基地司令官等の定期協議の開催、また日本側の基地への立ち入り権の確立などを推進し、日米地位協定のあるべき姿を不断に追求していきます。
⑦日中関係
●経済関係や人的・文化的交流、安全保障などにおいて重要な地位を占める中国との関係は、日中双方にとって重要なだけでなく、地域や世界の平和と安定にとって重要な関係です。一衣帯水の隣国として、これまでもさまざまな意見の違いを乗り越え、大局的な観点から安定的な関係の構築に努力し、日中国交正常化以来、両国関係を発展させてきました。これまでの大局的観点を失わず、また双方の有する懸念については、お互いに率直に指摘できる関係を維持すべきです。
●中国における人権や基本的自由の尊重について、国際社会から具体的な懸念が示されており、公明党としてもその懸念を共有しているところです。人権や基本的自由は、いかなる政治体制においても尊重されるべきものです。中国は透明性をもって説明し、国際社会に対する責任を果たすべきであると考えます。
●尖閣諸島をめぐる情勢や東シナ海におけるブイの設置、東シナ海・南シナ海における力による一方的な現状変更の試みを含め、多くの課題や懸案が存在していますが、主張すべきは主張し、中国に対し責任ある行動を強く求めます。同時に、少子化問題や気候変動など共通の諸課題については協力していくことが重要です。
●このようにして幅広い分野において対話をしっかりと重ね、「戦略的互恵関係」を包括的に推進するとともに、「建設的かつ安定的な関係」を構築していくため、首脳間を含むハイレベルでの意思疎通が継続的に行われるよう推進します。与党交流をはじめ政党間交流、民間交流を活発化させ、積極的な対話を推進し、相互理解を深める努力を続けていきます。
⑧北朝鮮問題への対応
●米韓及び国際社会と緊密に連携しつつ、日朝平壌宣言に基づき、核、ミサイル、そして何よりも重要な拉致問題を解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現をめざします。
●北朝鮮による全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全で検証可能、かつ、不可逆的な方法での廃棄の実現に向け、日米、日米韓3カ国で緊密に連携し、国際社会とも協力しながら、関連する国連安保理決議の完全な履行を進め、北朝鮮の非核化をめざします。
●拉致問題の解決に向けて、我が国自身が主体的に取り組み、あらゆるチャンスを逃すことなく、一刻も早い全ての拉致被害者の帰国をめざします。
●拉致被害者全員の帰国に向けて、拉致問題対策の協議や戦略的な取り組み等を推進するとともに、拉致被害者等に係る情報収集や拉致問題に関する理解を広げる取り組みを強化します。また、拉致被害者等給付金、老齢給付金をはじめとした各種給付金の支給や地方公共団体を通じた自立・社会適応促進事業を実施します。
⑨日韓関係
●国際社会におけるさまざまな課題への対応に協力していくべき重要な隣国である韓国とは、引き続き緊密に意思疎通しながら、改善の軌道に乗った日韓関係をさらに発展させていくことが重要です。政治、経済、文化芸術などさまざまな分野における協力関係や人的交流を強化・拡大するとともに、北朝鮮への対応をはじめ、日韓、日米韓の連携を強化するなど、未来志向の日韓関係の構築に取り組みます。
⑩日ロ関係
●ロシアとは、北方領土問題を解決して平和条約を締結するとの方針の下、これまで粘り強く交渉を進めてきました。北方領土問題に関する日本の立場や御高齢になられた元島民の方々の思いに応えていくとの考えに変わりはありません。しかし、ロシアによるウクライナ侵略という現下の状況で、平和条約交渉の展望を語れる状況にはありません。まずは、ロシアが国際社会の非難を真摯に受け止め、軍を即時に撤収し、国際法を遵守することを強く求めます。
●ロシアによるウクライナ侵略は断じて許容できず、国際社会が一致してロシアに圧力をかけていく必要があることを踏まえ、国際的な連携をさらに推進するとともに、暗号資産交換業者等による制裁措置の適切な履行を確保するため、必要な体制の強化に取り組みます。
⑪日ASEAN関係
●インド太平洋地域の平和と安定の維持のためには、ASEAN諸国との連携・強化が不可欠です。海上交通安全等の海洋協力、質の高いインフラ投資等の連結性支援、UHCを始めとした保健、気候変動対策、防災、サプライチェーン強靱化、デジタル技術、食料安全保障の強化などといった幅広い経済分野での協力を強化していきます。また、対日理解促進交流プログラム(JENESYS)や魅力ある文化・人的・知的交流の取り組みをさらに推進していきます。
●ASEAN諸国及び太平洋島嶼国の自然災害への財務強靱性を高めるため、世界銀行等と連携し、保険等の災害リスクファイナンスの促進に貢献します。
⑫アフリカ諸国への支援強化
●アフリカ諸国との連携強化を図り、アフリカの経済成長や平和と安定、持続可能な未来の実現に向け、第9回アフリカ開発会議(TICAD9)の成果を踏まえた取り組みを推進し、日・アフリカ関係を一層深化させていきます。
⑬グローバル・サウス諸国との連携強化
●グローバル・サウスと呼ばれる新興国・開発途上国が国際社会の中で存在感を増しており、これらの国々と連携を強化していくことが重要です。G7広島サミットの成果を土台に、「人間の尊厳」に焦点を当てながらグローバル・サウスとの連携を深め、国際社会の平和と安定に貢献していくとともに、日本にとって最もふさわしい形での国際秩序の維持・強化に努めます。食料、開発、保健、気候変動、エネルギー、環境など真に必要とする支援を行い、関係構築、強化を図り、グローバル・サウスの信頼を獲得する外交を展開します。国際社会の分断克服に貢献し、日本の安全保障基盤も強固にします。
●民間資金・ノウハウも動員しつつ、JICA・JBICや国際金融機関による途上国への支援を通じて、グローバル・サウスと連携して地球規模課題への対応を推進します。
⑭科学技術外交の推進
●我が国の経済力・技術力の向上を通し、世界平和に貢献します。科学技術外交の推進による海外交流や協力、それらを通じた国内研究開発環境の改善、人材育成などをさらに推進し、日本の強みである科学技術・イノベーションを強化していきます。また科学技術を活用したODAを通し、地球規模課題解決につなげます。
⑮貿易・投資に関する協定などの推進
●FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)構想の実現も視野に、CPTPP及び日EU・EPA等の着実な実施とともに、CPTPPの高いレベルを維持しながらの拡大に関する議論を主導します。また、RCEP協定の透明性のある履行確保や米国、インド、東南アジア諸国などが参加するIPEF(インド太平洋経済枠組み)での取り組みを推進します。
●経済連携協定及び投資関連協定の交渉を促進し、日本企業の海外進出を後押しします。加えて、アジアを中心とした産業保安体制構築支援等を行うとともに、電子商取引のルールづくりや紛争解決制度改革など、WTO改革を主導します。また、国際経済紛争処理の体制強化にも取り組みます。
●人材の育成や国際仲裁の国内外での周知啓発、仲裁機関の認知度及び評価向上に取り組むとともに、国際機関との連携をさらに強化し、紛争解決制度や民商事法の分野における国際的なルール形成を主導します。また、AI翻訳を活用するなどし、日本法令の外国語訳の整備と国際発信を一層推進します。
⑯国際機関への人材輩出
●国際社会における日本のプレゼンスを一層強化するため、関係省庁が連携・協力し、語学力や国際経験、専門的知見を有する人材の育成、海外での情報収集等に取り組むなど、戦略的に進めるための体制を強化し、国際機関の主要ポストに優秀な人材を積極的に輩出します。
⑰テロ対策、サイバーセキュリティの確保など
●経済安全保障推進法に基づく基幹インフラの安全性・信頼性の確保の徹底、知的財産や個人情報を保有する企業や大学に対するサイバーセキュリティ対策の強化、サイバー攻撃対策を担う人材の育成など、安全・安心なサイバー空間を確保するための取り組みを強力に推進します。
●我が国を取り巻くサイバー環境の変化に対応するため、国家安全保障戦略を踏まえ、情報集約から政策措置までの一体的推進のための総合調整などを担う政府のサイバーセキュリティ対策の司令塔機能を強化するとともに、サイバー攻撃の防御力の強化を図る能動的サイバー防御法に基づき実効性ある対策を進めます。
●情報漏えいや盗聴等、巧妙化・複雑化するサイバー攻撃のリスクに対応するため、量子暗号通信の研究開発支援を行うとともに、世界に先駆けるサイバーセキュリティ分野への研究・人材育成の強化など、自律的な対処能力の向上に向けた対策を推進し、通信ネットワークの安全性・信頼性を高めます。
●軍事転用のおそれのある製品等の流出につながる不正輸出の防止に向け、税関の情報収集・分析機能を強化するとともに、厳格な審査や調査等により適正な輸出通関を確保するための体制を強化します。
●金融業界横断的なサイバーセキュリティ演習等の実施により、金融業界全体のインシデント対応能力の強化に取り組みます。
●「マネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画(2024‐2026年度)」に沿って、金融機関等の検査・監督体制の強化、体制整備を含む経済制裁の実施強化、アジア太平洋地域のマネロン等対策の強化を含む国際機関等の活動支援等を推進します。
⑱海上保安能力の強化など海洋政策の充実
●海上保安能力強化をさらに進めるため、巡視船・航空機等を増強し、その確実な運用を図ります。また、自衛隊等との連携強化を図るとともに、インド太平洋沿岸国の海上保安機関に対する能力向上支援等を推進します。
●海洋政策の大変革OX(オーシャン・トランスフォーメーション)を推進するため、国際社会との連携強化や、国内の技術革新、北極政策の推進、DXの実装など、あらゆる施策を強化します。
●総合的な海洋の安全保障を確立するため、自律型無人探査機(AUV)の開発・利用の推進や、海洋情報を利活用するための「海しるビジネスプラットフォーム」の構築等による海洋状況把握(MDA)の能力向上、国境離島の状況把握のための地形照合システムの整備等の施策を強化します。
●南鳥島周辺海域のレアアース等の生産の社会実装を加速化するとともに、国が前面に立って関連開発企業を支援 するなど、長期的な展望に立った資源開発・安定供給に向けた取り組みを進めます。
●海洋関連産業の競争力強化に向けて、洋上風力発電のEEZにおける活用拡大や、水中ロボット技術など海洋産業の重要技術の国産化を進めるとともに、海洋人材の育成・確保を一層促進します。
●水中ロボットのAUV(自律型無人探査機)やHOV(有人潜水調査船)、ROV(遠隔操作型無人探査機)の開発・利用を進めます。また、深海探査船「ちきゅう」や「よこすか」等の機能強化と着実な更新を推進します。
●気候変動の影響解明に向けて、北極域研究強化プロジェクト「ArCS-3」の取り組みを加速化し、国際社会の課題解決をリードします。
●地球環境や海洋生態系の全球観測と観測データを活用した海洋デジタルツインの構築及び南海トラフにおけるゆっくりすべりのリアルタイム観測の整備を加速します。
⑲重要土地調査法の適正な運用
●安全保障上重要な施設の周辺や国境離島等における土地等の利用状況を調査し、重要施設等に対する機能阻害行為を防止するため、重要土地等調査法に基づき、指定区域内の土地等の利用状況の調査等を実効的かつ着実に実施します。また、法の執行状況や安全保障を巡る内外の情勢等を見極めた上で、さらなる検討を行います。