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1.景気・経済
1.景気・経済
①物価高の克服
◎2025年度税制改正において所得税の基礎控除等の引き上げが行われたことを踏まえ、所得税のさらなる負担軽減へ、今後は物価の上昇等に応じて基礎控除等の額を適時に引き上げる仕組みを構築します。
◎教育費にお金がかかる子育て世帯の負担軽減につながるよう、扶養控除など各種控除の見直しに取り組みます。
◎当面の物価高対策として、税収増等を活用し、「生活応援給付」として国民に還元します。金額は、18歳以下のお子さんには一人4万円、今年度の所得税減税の恩恵を受けられない住民税非課税の低所得世帯の大人の方には一人4万円、その他の方々には一人2万円を給付します。支給方法については、迅速かつ効率的な方法を検討します。
◎自動車の取得、保有、走行の各段階で課されているさまざまな税制を抜本的に見直し、自動車ユーザーの税負担を引き下げます。
◎ガソリンの暫定税率(1リットル25.1円)を廃止します。本年末の税制協議で廃止時期を決定し、当面の間、補助金による支援を継続し、ガソリン価格を引き下げます。
◎ガソリン価格の上昇等を踏まえ、マイカー通勤を行う従業員に対する通勤手当の所得税の非課税限度額を拡充します。
◎使用量が増える夏の電気・ガス料金を軽減するための支援を行います。また、今後の価格動向等を踏まえつつ、家計を圧迫しているエネルギーコストを引き下げるための取り組みを推進します。
●「重点支援地方交付金」を追加で措置し、エネルギーや飲食料品価格等の高騰の影響を受けている生活者や事業者に対する、地域の実情に応じたきめ細かい支援を実施します。
●トラック、タクシー、航空機、船舶等の燃料油価格対策について、エネルギー価格の動向等を見極めながら、必要に応じて機動的な対策を実行します。
◎小中学校の学校給食の無償化、体験活動の負担軽減、高校授業料の無償化、高校の教材費などの授業料以外の支援、大学生等の授業料無償化や給付型奨学金の対象拡大、卒業後の奨学金の肩代わり返還支援や月々の返還額を自分で決める減額返還制度など、切れ目のない教育負担の軽減と教育の質の向上に取り組みます。
●企業が従業員のために行っているランチ代(食事代)補助は、一定の要件を満たせば福利厚生費と認められ、従業員一人当たり月3,500円までは非課税となります。この非課税限度額は、物価が上昇しても約40年間変わっていないことから、限度額の引き上げや要件の見直しなどを行い、制度の更なる利用を促すことで食事代の負担軽減につなげます。
●給与とともに支給される通勤手当は「標準報酬月額」の対象となっており、実質、実費から減額されてしまうため、標準報酬の対象から除外し、手取りを増やします。
②持続的な賃上げに向けた中小企業等への支援
◎雇用の7割を占める中小企業が、物価上昇を上回る賃上げができるよう、価格転嫁等による取引適正化の徹底や、5年間で60兆円の投資を集中的に行います。特に、サービス業など、最低賃金引き上げで大きな影響を受ける、人手不足が深刻な業種については、省力化やデジタル化をきめ細かく支援し、生産性の向上を実現します。
◎デジタル人材の育成・配置などで中小企業のDX化を進め、省力化・業務効率化投資による生産性向上で中小企業の「稼ぐ力」を向上させ、働く人の給料を増やします。
◎最低賃金を2020年代に全国加重平均1,500円まで引き上げ、中間所得層を含め、着実に給料を増やします。
◎日本の優れたさまざまなプロダクトやサービスの国際標準化を進めるとともに、中小企業を含む日本ブランドの海外展開を推進します。また、海外展開に挑戦する中小企業等を支援するため、政府保証を付けた投資等の拡充を図る取り組みを進めます。
◎公定価格で成り立つ医療・介護・障がい福祉・子ども子育て分野については、物価・賃上げコストを報酬に上乗せできないことから、物価・賃金の高騰に十分対応できるような処遇改善を行うための報酬改定等を実施します。
●GX・DX、経済安保等の戦略分野への高付加価値な成長投資やフロンティア技術のイノベーションを促進すべく、諸外国の措置・動向も踏まえつつ、大胆なインセンティブ措置を講じるとともに、地域経済を牽引する中小・中堅企業の原資確保に向け、成長意欲の高い中小・中堅企業への成長投資を支援します。
●欧米における大胆な投資促進策が検討されていることを踏まえ、より柔軟性を高めた即時償却などの税制措置などを大胆に講じるなど、大企業も含めた事業者による国内投資加速に向けた投資促進策を推進します。
●中小企業を含むサプライチェーン全体での適切な価格転嫁を商習慣として定着させるため、価格交渉への支援、パートナーシップ構築宣言の拡大と実効性向上に取り組みます。
●中小企業が持続的に賃上げできるよう、労務費含めた価格転嫁の徹底、下請Gメン、優越Gメンの調査を通じた適正取引の推進、独占禁止法、改正下請法の厳正な執行を強化します。
●中小企業の価格交渉に応じつつ、大企業への価格転嫁を行う「中堅企業」は、我が国の持続的・構造的賃上げの波及や経済成長の要となることから、中堅企業がサプライチェーン全体の中で、その役割をしっかり果たせるよう投資や税制など各種支援策を図ります。
●「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」(12の行動指針)に基づき、労務費を含めた適正かつ円滑な価格転嫁のための事業者間取引の適正化等の取り組みをサプライチェーン全体で定着・推進し、労働者の持続的な賃上げ・所得向上につなげます。
●国・地方の官公需契約においては、「官公需の基本方針」を周知・徹底し、労務費、原材料費、エネルギーコスト等の実勢価格の変化に適切に対応するとともに、取引実態を調査します。
●手形等の支払いサイト60日への短縮や、改正下請法に基づく「手形の利用廃止」の着実な実施のため、指導基準や改正法の内容について、幅広い経済・業界団体を通じた周知徹底に取り組むとともに、サプライチェーン全体での取り組みを後押しします。
●納入する製品やサービスの最低価格や納品に係る支払条件などを独占禁止法の適用対象外として取り決めることができる「団体協約」の活用を推進して、組合員が事業者との間で行う取引の適正化に努めます。
●持続的な賃上げの実現に向けて、事業者が生産性を向上させ、収益力を拡大していけるよう、省力化や自動化などのDX投資を強力に支援します。
●中小企業等が直面する構造的人手不足への対応のため、省力化に必要な設備・機器等をカタログから選んで導入できる「省力化投資補助事業(カタログ注文型)」について、より幅広く業種や分野等を拡大し活用促進に取り組みます。加えて、新しく創設した「省力化投資補助事業(一般型)」により、事業者それぞれの業務に応じたオーダーメイド型の省力化投資を支援します。
●中小企業等の資金調達の円滑化と金融規律の正常化に配慮しつつ、経営改善・再生支援に重点を置いた資金繰り支援、資本基盤強化、債務減免を含めた債務整理等に総合的に取り組みます。
●中小企業の思い切った事業展開や早期の事業再生、円滑な事業承継等を促すために、「経営者保証改革プログラム」なども活用しながら、経営者保証に依存しない融資慣行の早期確立に取り組みます。
●強化した「賃上げ促進税制」を丁寧に周知・広報し、地域の良質な雇用を支える中堅企業による活用、仕事と子育ての両立や女性活躍支援に積極的な企業への上乗せ、赤字の状況等でも賃上げに取り組む企業への5年間の繰越控除措置などのさらなる活用につなげます。
●「中堅企業成長ビジョン」に基づき、地域経済を牽引し、良質な雇用を支える中堅企業に対して、国内投資・イノベーション・人材確保等に対する集中支援を行います。また、重点支援企業を選定し、プッシュ型の伴走支援を行うなど、地方での企業支援体制を強化します。グローバル市場の獲得等に向けて経営力を向上する取り組みや新たな分野への進出、働きやすさを重視する経営の導入など、企業の魅力を高める取り組みを支援し、中堅企業等のさらなる賃上げに向けて、大規模成長投資の補助制度を通じて、着実に取り組みます。
●中堅企業へのステップアップをめざす、成長志向の中小企業による大胆な設備投資やソフトインフラの構築、成長機運の地方への波及等を支援し、恒常的な「100億企業」の創出を実現します。
●地域未来投資促進税制の措置について、自治体とも連携しながら活用を促し、地域経済を牽引する強靱な産業基盤の構築に努めます。
●地域の立地環境を整備するため、工業用水等の生産拠点を支えるインフラの強化を進めるとともに、地方公共団体自らまたは官民連携により行う新たな産業用地整備を後押しします。
●事業再生、事業承継をはじめとした多様な経営課題を抱える中小企業に対する相談体制を整備するとともに、中堅企業へのステップアップをめざす中小企業のためにも、親族内承継やM&Aを機とした自己変革の推進、支援体制や伴走支援の拡充など、補助金・税制等を含め包括的に支援します。
●イノベーションによる競争力向上と着実な経済成長の鍵を握る中小企業の経営力を強化するため、伴走支援に取り組む各種団体や地方自治体、金融機関等の連携強化やノウハウ共有、シニア人材の積極的な登用などを推進します。
●DX、GX等の事業環境の変化への対応を促すため、切れ目のない継続的な新事業進出や新製品・サービス開発等の支援を行うとともに、新規輸出1万者支援プログラムの推進等、海外ビジネスを通じた「稼ぐ力」の向上に取り組みます。
●海外への発信・プロモーションを強化するとともに、イノベーション・地域活性化に資する対日投資案件を戦略的に誘致し、日本企業と海外企業の協業連携を促進し、海外企業誘致を行う地域への伴走支援を強化します。
●世界の越境EC市場が急速に拡大し、中小企業等の新たな販路として重要性が増している状況を踏まえ、「ジャパンモール」をはじめとする越境ECを活用した市場開拓支援を継続します。また、中小企業等の海外展開が自律的に拡大する仕組みの構築をめざした新たなビジネスモデルの構築を支援します。
●中小企業等の知財管理体制の整備、オープンクローズ戦略の立案と標準化・特許化・ノウハウ化を含めた知財ポートフォリオの構築、特許調査による研究開発の方向性等、知財シーズ発掘、知財契約アドバイス等の支援をより強化します。
●世界で市場獲得競争が激化する中、不確実性が高い分野等において、国が前面に立って戦略的標準化を推進するため、戦略策定から規格開発・活用まで一気通貫で標準化を進める体制構築や、各分野の標準戦略ロードマップ策定、充実した体制での継続的な規格開発・交渉の実現に取り組むとともに、グローバル対応に向けた認証基盤の充実等により国内認証機関を強化します。
●国際的に人権デューデリジェンス(HRDD)の義務化が進む中、日本においても国際基準に整合的な法制度の整備が求められています。国際競争力を維持しつつ、企業が積極的に人権尊重に取り組めるよう、大企業や特定業種への限定的な適用や、中小企業への支援措置を組み合わせるなど、人権デューデリジェンスの義務化を推進します。また、人権を守る責任あるサプライチェーンを確立するため、輸入規制の導入などを含め、強制労働・児童労働の根絶に向けた取り組みを進めます。
●事業者の経営改善を後押しするため、官民金融機関による顧客企業の業況変化の兆候を早期発見し、解決策をプッシュ型で提示する積極的な経営改善・事業再生支援を促進するほか、米国関税措置に伴う影響を受ける事業者への資金繰り支援等に万全を期します。また、日本政策金融公庫等の資本性劣後ローンや賃上げ貸付利率特例制度等を活用した支援を継続します。
●大企業から地域の中堅・中小企業への人の流れを生み出すため、株式会社地域経済活性化支援機構(REVIC)の人材プラットフォーム「REVICareer」(レビキャリ)の利用を一層促進し、地域金融機関を通じた経営人材マッチングを推進します。また、地域一体で人材確保・育成・定着を図る「地域の人事部」モデルを全国に展開します。
●JBICを通じて、日本の産業の成長力向上に資する中堅・中小企業を含む日本企業の海外進出の支援を強化します。
●地方や中小企業の賃上げ等に着実に繋がるよう、「地方版政労使会議」の継続開催や機運醸成、最低賃金の地域間格差の是正などの取り組みを国が地方と連携し、全国で賃上げの流れを加速します。あわせて価格転嫁が進まない地方公務の対策も進めます。
③成長型経済を支える「人への投資」の抜本強化
◎若者世代を中心に奨学金の返済が生活の重荷になっていることから、さまざまな負担軽減策を実行します。まず、月々の返済額を自分で決められる「減額返還制度」の年収制限の緩和や、企業や自治体が行う「代理返還制度」の導入メリットの拡大など、より多くの方が利用できるよう制度を拡充します。加えて、奨学金返済額の一定割合を所得控除できる仕組みなど、税制における支援を検討します。
◎同一労働同一賃金の実現を通して従来の「正規/非正規」という概念をなくし、どのような雇用形態を選んでも、賃金などの労働条件に格差が出ないよう、「正社員待遇」が当たり前の社会をめざします。同時に、リ・スキリング(学び直し)やスキルアップなどに取り組む労働者への支援を充実し、所得の向上につなげます。
●我が国の労働市場の競争力を向上し、労働者のキャリアアップと持続的・構造的な賃上げを実現するため、三位一体の労働市場改革(
①リ・スキリング(学び直し)による労働者の能力向上支援
②各企業の実態に応じたジョブ型人事(職務に応じた賃金制度等)の導入
③成長分野への労働移動の円滑化)を推進します。
●株主に偏重してきた分配のルールを改め、企業価値の根幹をなす従業員を第一に尊重するよう、企業の行動規範見直しを進めていきます。具体的には、「コーポレートガバナンス・コード」に労働分配率の向上と長期的視点での研究開発投資の重視について明記するよう検討を行います。
●キャリア相談、リ・スキリング、転職までを一体的に支援する取り組みの着実な実施を図るとともに、人的資本経営の促進などを通じて、企業における人への投資の後押しを行います。
●人や設備への投資により労働環境等の改善に取り組む企業に対し、税制や予算による大胆な支援を行います。
●介護や障がい福祉などの人材不足分野や、ITなど成長分野への失業なき労働移動を促進するため、必要な処遇改善を図るとともに、教育訓練の充実、ハローワークと民間求人メディアの連携、キャリアアップ助成金等各種助成金を活用した支援を推進します。
●広く社会人に対するリ・スキリングの機会を提供し、社会全体で人的資本の高度化を進めます。具体的には、企業等が組織的に知識・技能をアップデートできる環境整備の促進、地域の大学・高専等を社会人のリ・スキリングのための学習地域拠点となるための支援などに取り組みます。
●保育人材や介護人材など潜在的な有資格者の再就業促進を図るため、福祉人材センターにおける支援体制を強化します。離職した潜在有資格者の登録制度の活用や再就職準備金の貸付制度、短時間正社員制度の推進などにより、再就業を支援します。
●就職のみならず異業種間も含めた転職や再就職などの円滑化のため、産業界とも連携し、企業が求めるスキルや希望者自らが持つスキルの見える化、データベース化を図るとともに、それらを地域の職業訓練校や教育現場などにおける職業訓練に生かします。
●ネットやデジタルに関心が強いひきこもり歴のある若者、就職氷河期世代を含めた中高年、定年退職後の高齢者、結婚・出産でキャリアを中断せざるを得なかった女性、障がい者等の方々を、新たなデジタル推進人材として確保・育成し、その潜在力を企業や社会で存分に発揮し所得向上に繋がるよう、雇用創出と地域活性化に向けた各種取り組み等を推進します。あわせて、デジタル専門人材を活かす人材のマッチング支援等の取り組みも推進します。
●人手不足のデジタル分野の教育・就労を支援するため、フリーランスや在職者も含めたデジタル分野の教育支援や、求職者支援訓練におけるデジタル分野の訓練枠を拡充するとともに、個人の教育履歴や取得資格等のスキルが可視化できるデジタルバッジの付与など対策を進めます。
●労働者がその希望に応じて自身に合った職場を適切に選択し、円滑な労働移動を促進するため、職場情報総合サイト(しょくばらぼ)及び職業情報提供サイト(jobtag)の充実を図ります。また、リ・スキリングのプログラムや施策内容を含む各種情報を可視化するプラットフォームを整備し、これらの活用促進を行います。
●利用者目線に立ってハローワークの機能を強化します。具体的には、さまざまなサービス提供や雇用保険手続においてオンラインを活用するとともに、求職者に対するキャリアコンサルティング機能強化の継続や、人材確保に悩む中小企業等に対する雇用管理指導等も含めたサポート機能の継続を図ります。また、人材紹介会社に頼ることの多い医療・介護・保育業界が、ハローワークを積極的に活用できるよう必要な取り組みを進めます。
●高齢者世帯や単身世帯の増加に伴い、低所得者の割合が急増している現状等を踏まえ、賃金・所得の拡大、不本意非正規雇用労働者の正社員への転換や男女間賃金格差の是正、ワーク・ライフ・バランスを重視した多様かつ柔軟な働き方を実現する取り組みを引き続き推進するとともに、職業の安定、失業なき労働移動を実現するため、求職者支援制度の活用促進、デジタル人材の育成等職業訓練のさらなる充実を図ります。また、改正雇用保険法に基づき、教育訓練やリ・スキリング支援に取り組みます。
④多様で柔軟な働き方の推進
◎社会保険料負担の発生で手取り収入が減ってしまう「106万円」、「130万円」の壁を見直し、壁を意識した就業調整をすることなく、働いた分だけ給料が増えるよう支援します。あわせて、誰もが希望に応じて働くことができる柔軟な働き方を推進します。
◎本人の希望に応じて、働きたい時にもう少し働ける社会へ、労働者の健康を第一に、労働時間のルールの見直しや多様で柔軟な働き方を推進し、所得アップにつなげます。
●短時間正社員制度の企業における導入・活用、兼業・副業など多様な働き方を推進します。
●公明党の提案により実現した「地方版政労使会議」「地域働き方改革会議」を活用し、地域の特性や課題を分析しつつ賃上げの拡大をめざすとともに、非正規労働者の正社員化・処遇改善、人材育成の促進、地方就職や多様な働き方の推進、長時間労働の是正、有給休暇の取得促進、仕事と子育て・介護等の両立など、地域特性に応じて働き方改革を戦略的に進めます。
●中小・小規模事業者の働き方改革を支援するため、「働き方改革推進支援センター」においてきめ細かな支援を行うとともに、勤務終了時から翌日の始業時までに一定の休息時間を設ける「勤務間インターバル制度」の普及を促進し、助成金等を通じて中小・小規模事業者における同制度の導入を推進します。
●短時間勤務やテレワークなど時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を推進するため、テレワーク導入支援を拡充するとともに、サテライトオフィス等に前向きな企業と自治体とのマッチング支援やテレワークデーの普及を促進します。
●テレワークを一層推進するため、在宅勤務でかかる通信費についても、通勤手当と同様に定額の非課税枠を設けるなど、各企業が「通信手当」を導入しやすい環境をつくります。
●フリーランスの方が安心して働けるように、フリーランス・トラブル110番を始めとする相談体制の強化や都道府県労働局における指導体制の確保や、取引適正化のための施策の推進、安全・衛生対策や健康確保を含めた就業環境の改善などの環境整備を進めます。
●雇用形態に関わらず労働者が安心して働くことができるよう、改正雇用保険法に基づく雇用保険の適用対象の拡大について、円滑な施行に向けて、その意義や重要性、メリット等の丁寧な周知に努めます。また、人への投資や労働移動の円滑化に向けた支援の強化に万全を期すため、雇用保険財政の早期再建に着実に取り組みます。
●持続可能で活力ある地域社会や地域共生社会の実現に向け、2024年度開始の活用促進モデル事業等を通じて、地域における労働者協同組合の活用を促進します。
⑤暮らし、雇用のセーフティネット
●出向や業種・職種を越えた再就職、教育訓練、非正規雇用労働者のキャリアアップ、賃上げを行う中小企業等に対する支援の拡充など雇用対策を強化します。
●支援が必要な人を早期に発見し、必要な支援につなげていくため、地方自治体における支援会議設置を推進するとともに、税等の滞納をSOSと捉え、税務部局等から生活困窮者自立支援制度の利用勧奨を行い、家計改善支援事業と税務部局との連携で生活再建を優先する取り組みを推進します。
●緊急小口資金等特例貸付について、償還猶予を受けた方も含め、償還するのが難しい場合は生活再建を最優先に速やかに免除する等償還免除を躊躇なく積極的に行うとともに、生活再建に向け、当事者に寄り添ったきめ細かい相談支援を継続的に実施するため、引き続き体制強化を進めます。あわせて、地域共生社会の実現を図るため、社会福祉協議会に常勤相談支援員を増員するなど支援体制を抜本的に強化します。
●生活保護制度が最後のセーフティネットとして機能し、入りやすく出やすい制度となるよう、関係機関による計画的な支援、就労準備支援事業等の実施や生活困窮者自立支援制度との一体的な実施を推進します。あわせて、福祉事務所における生活保護の実施体制等を強化するため、交付税措置の増額を図ります。
●単身高齢者、生活困窮者を含む全ての地域住民が安心して住まいを確保し、日々の生活を営むことができるよう、住まい政策を社会保障の重要な柱として位置づけ、多元的かつ持続可能な住まい保障を実現します。
●非正規雇用労働者などが月10万円の生活費を受給しながら無料で職業訓練を受けられる「求職者支援制度」を拡充するとともに、就職困難者に対しては生活困窮者自立支援制度と一体となった支援を推進します。
●過重労働撲滅特別対策班など労働基準監督署の執行強化や、労働条件相談「ほっとライン」の利用促進など、若者の使い捨てが疑われる「ブラック企業」「ブラックバイト」への対策を強化します。
●労働審判を実施できる支部が限られているため、実施支部を拡大し、そのための人的・物的基盤の整備を推進します。
⑥GXを通じた持続可能な経済成長
●2050年カーボンニュートラルの達成と持続的な経済成長の実現を両立するため、本年策定された「GX2040ビジョン」を踏まえ、脱炭素社会に向けた国内投資を戦略的に進めていきます。
●日々の暮らしにおける省エネや非化石転換を推進するため、EV 等の電動車や省エネ家電の購入、断熱性能に優れた窓への改修や高効率給湯器の購入等の支援を拡充します。また、学校やオフィス、病院、商業施設など日々の暮らしに関わる建築物のゼロエミッション化(エネルギーを自給自足でまかなうこと)を進めます。
●「カーボンプライシング」とGX経済移行債による「投資促進策」を効果的に組み合わせた「成長志向型カーボンプライシング構想」を通じてGXを実現していきます。再エネや多排出産業の燃料転換など、幅広い分野の研究開発・設備投資等について、エネルギー安定供給を前提に、脱炭素と産業競争力強化・経済成長の同時実現に資する投資を大胆に推進します。
●GX2040ビジョンに基づき、GX・DXをきっかけに成長をめざす企業に対して、新たな産業集積に向けた事業環境整備を推進します。 また、電力と通信の効果的な連携(ワット・ビット連携)を通じたデータセンターの適地誘導を進めます。
●排出量取引制度については、GXリーグの取り組み状況等を踏まえて、2026年度からの本格稼働に向けて公平で実効性を持つよう、制度の具体化を進めます。またGX推進法に基づく化石燃料賦課金及び有償オークションの実施のために必要な方法について検討します。
●産業、くらし、エネルギー各分野でのGXの方向性や先行投資支援と規制・制度的措置の見通しを示した「分野別投資戦略」を踏まえ、企業のGX投資にメリハリをつけて後押しします。また、DXの進展などの変化やエネルギー安全保障の確保の要請などに照らし、長期的視点に立ち、GXで成長する強靱な産業・エネルギー供給構造の在り方を検討します。
●企業のGX投資に係る予見性を向上すべく、削減実績量や削減貢献量を含めたGX価値の見える化、公共調達やGX率先実行宣言等の施策を通じた官民での需要拡大、GXリーグのあり方の見直しを通じたサプライチェーン全体での排出削減を促進するための仕組みの検討といった、GX市場創造の取り組みを推進します。
●家庭・産業・運輸の各部門において省エネ法などの規制と支援の一体型で省エネ投資を促進します。特に中小企業向けについては、省エネ診断や省エネ設備更新への支援を強化するとともに、金融機関を含む地域での省エネ支援体制の構築や専門人材の確保を進め、家庭向けについては高効率給湯器の導入といった住宅の省エネ化への支援等を進めます。また、企業や家庭のさらなる省エネ・非化石転換・ディマンドリスポンスの取り組み促進のための制度を検討します。
●2035年までに乗用車新車販売で電動車100%の目標達成にむけた電動車の購入、充電・充てんインフラの整備、蓄電池の製造基盤の確保、電動化に伴う業態転換等を支援します。
●電動車(EV車、PHV車、HV車、FCV車)の購入補助やエコカー減税などの支援策、燃費性能の向上、事業用のバス・タクシー・トラックへの電動車の普及の促進、次世代型路面電車のLRTやBRTの導入、ITS(高度道路交通システム)を推進し、CO₂排出量を削減します。
●電動化や脱炭素化をはじめとする事業環境の変化と世界的な消費行動の変容に中小・小規模事業者が適切に対応し、業態転換や事業の多角化に積極果敢に挑戦できるよう、課題に応じたセミナーや専門家派遣といった伴走型支援、思い切った設備投資などソフト、ハードの両面から支援します。
●内燃機関部品製造を担う中小企業から自動車販売店・整備事業者、ガソリンスタンドに至るサプライチェーン全体の事業者が円滑に電動化に移行するための業態転換や合成燃料の早期実用化をめざします。バイオ燃料については、ガソリンへの直接混合を含めたバイオエタノールの導入拡大、バイオディーゼルの普及拡大に向けた取り組みを進めます。
●蓄電池サプライチェーンの強靱化にむけて、国内で150GWh/年の蓄電池製造基盤確立という目標を着実に達成するため、蓄電池・部素材・製造装置の国内製造基盤をさらに拡充するとともに、全固体電池をはじめとした次世代電池の実用化や量産の実現に向けた設備投資・技術開発等を支援します。また各地域の産業集積の特性を踏まえ、産学官が連携した人材育成・確保に取り組みます。
●前・後工程・製造装置・部素材・原料など、半導体サプライチェーン強靱化に向け、必要な製品・工程の誘致や、我が国が握っている国際的なチョークポイントの強化をめざし、国内生産拠点整備を継続します。具体的には、設備投資支援のほか、産学官連携による半導体関連人材の育成、関連インフラ整備を強力に進め、先端領域や環境対策等での研究開発を支援します。また、ラピダス・プロジェクトを中心に、次世代半導体の量産に向け、必要な研究開発や金融支援を実施するとともに、設計開発支援等の利活用促進を加速します。
●我が国の国際通信の99%が経由する海底ケーブルについて、経済安全保障の観点から、自立的な供給・敷設・保守の体制を確保します。
●水素社会推進法に基づき、自立が見込める国産水素への最大限の支援や国内外におけるサプライチェーンの構築、国内の拠点整備、新たな市場創出・利用拡大に向けた制度措置の在り方を検討し、規制・制度一体型の包括的な制度整備を進めます。特に、商用車における水素の利用拡大に向け、重点地域において集中支援を行い、水素ステーションのコスト削減と同時に水素需要に見合った供給能力を持つ水素ステーションを戦略的に整備します。
●水素を活用して鉄を生成する水素還元製鉄や水素のみを燃料とする水素発電、液化水素運搬船を世界に先駆けて実用化するなど、水素の需要拡大に向けた取り組みを通じて価格低下を進めます。
●合成燃料や合成メタン(e-methane)、持続可能な航空燃料(SAF)など脱炭素燃料の実用化に向けた研究開発や普及促進のための設備投資、需給創出、実装に向けた環境整備等に取り組み、水素・アンモニアの国内外のサプライチェーンの構築、既存燃料との価格差に着目した支援制度を整備します。
●SAF、合成燃料の導入促進、電動航空機や水素航空機等の新技術の導入、運航方式の改善等による消費燃料削減を図るとともに、空港再エネ拠点化方策の検討を進めます。
●航空機分野の脱炭素化に向けて、軽量化・効率化、ハイブリッド電動、燃料電池、水素燃焼推進等の次世代航空機の研究開発、社会実装を進めます。また、我が国の航空機産業能力構築のため、これまで培ってきた部品製造能力を活用し、次世代の航空機開発への参画とともに、共同生産体制を国内で構築するための取り組みを強力に進めます。
●脱炭素化をめざす「カーボンニュートラルポート」の全国展開や、環境に優れたLNG(液化天然ガス)・水素・アンモニア等によるガス燃料船の開発・実用化を推進します。また、液化天然ガス(LNG)を燃料とする船舶への燃料供給を行う「LNGバンカリング拠点」の整備を進めます。加えて、洋上風力発電の導入や海洋保全の取り組みも推進します。
●製造業において排出削減が困難な熱需要のカーボンニュートラル化を推進するため、水素等を含む非化石燃料の導入を前提として、天然ガス等への燃料転換に取り組むとともに、LNG等の安定供給を確保します。
●燃焼時に二酸化炭素(CO₂)を排出しないアンモニアのみを燃料とした発電技術の実現に向けて、CO₂が多く排出される石炭火力発電所において、アンモニアとの混焼を促進します。あわせて、これらの技術を東南アジアや中東欧に輸出し、成長産業化を図ります。
●二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)の技術開発や2030年までの二酸化炭素回収・貯留(CCS)事業開始に向け、支援制度の取りまとめ等を含む、規制と支援の両面からの環境整備を進めます。
●鉄鋼・化学などの脱炭素化が困難な素材産業について、脱炭素技術開発の支援や、環境価値が評価される市場ルール整備等の検討を進めるとともに、生産プロセス転換のために大規模な設備投資を引き出す支援による国際競争力の維持・強化に向けて取り組みます。
●今後10年間で官民150兆円超のGX投資を実現するため、GX経済移行債による20兆円規模の国の支援を進め、GX推進機構を通じた民間資金を呼び込むための取り組みを加速します。また、アジアの脱炭素化を進めるため、各国・関係機関と連携してトランジション・ファイナンスを推進します。
●海外の金融当局・金融機関等と連携して、トランジション・ファイナンスの実装に向けた有効な金融手法や事例について議論等を行い、アジアにおけるGX投資を促進するほか、社会・環境的効果と成長の実現を図るインパクト投資を推進します。
●企業のサステナビリティ情報の開示や、これに対する保証のあり方について検討を進めるとともに、人的資本に関するサステナビリティ開示基準の開発に向けた国際的な議論に積極的に参画・貢献します。
⑦エネルギー(省エネ・再エネ・原子力発電)
●国際情勢やエネルギーの価格の変動等に強く、非化石エネルギーを主体とした強靱なエネルギー需給構造を構築するため、エネルギー自給率の向上、S+3Eの観点を踏まえながら、「第7次エネルギー基本計画」に基づき、エネルギー安定供給と脱炭素を両立する観点から、再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入するとともに、特定の電源や燃料源に過度に依存しないようバランスのとれた電源構成をめざします。また、2050年カーボンニュートラル実現を見据え、DXの進展に伴う将来的な需要増加などの不確実性にも対応できるように一体的に取り組みます。
●DXやGXによる電力需要の増加が見込まれる中、徹底した省エネに加え、再生可能エネルギー、原子力等の脱炭素電源を最大限活用していきます。また、脱炭素電源への投資回収の予見性を高め、事業者の新たな投資を促進し、電力の脱炭素化と安定供給を実現するための事業環境整備や資金調達環境の整備を進めていきます。
●再エネの最大限の導入拡大に向けて、オフサイトPPAの普及等、地域と共生した太陽光や洋上・陸上風力などのさらなる導入を支援するとともに、各家庭やビルの壁面等にも設置できるペロブスカイト太陽電池や浮体式洋上風力、次世代型地熱等の技術開発、EEZ(排他的経済水域)における発電設備の設置に係る法整備を通じた今後の商業運転の実現に向け取り組みを加速します。
●ペロブスカイト太陽電池、浮体式洋上風力、水電解装置等について、国産再生可能エネルギー・水素の量産体制及び強靱なサプライチェーン構築の早期実現に向けた国内産業強化のために必要な支援を行います。また、太陽光の設置スペース拡大のため、住宅、工場、倉庫、空港、鉄道駅や公共施設など大胆な活用を進めます。
●全国の送電ネットワークを整備することで、再エネの主力電源化と電力のレジリエンスを強化するため全国規模での系統整備計画(マスタープラン)に基づいた系統整備を加速します。具体的には、北海道・本州間海底直流送電を含めた地域間連系線の整備や、鉄道網や道路等のインフラを活用するなどによる効率的な送電システムの整備により、今後10年間程度で、過去10年間と比べ、8倍以上の規模で整備します。また、再エネ導入等に資する地内系統の整備を進めます。
●再エネの導入拡大に必要となる脱炭素化された調整力の確保に向けて、安全性等が確保された蓄電池等の導入支援やディマンドリスポンス(DR)のさらなる普及のためのIoT化支援、スマートメーターのIoTルートを利用したDR実証、アグリゲーションビジネスの進展に取り組みます。
●クリーンで安全かつ安定的な電力である水力発電所の新たな設置や、既存ダムのさらなる有効活用、すでに存在する発電所の改修を強力に進めます。また、技術者の人材確保を目的とした特定の講習を受ければ免許の取得に必要な実務経験年数を短縮できるなどの制度の整備をめざします。
●天候等に左右されず安定的に発電できる地熱発電のさらなる導入に向けて、国による掘削調査や自然公園での柔軟な運用等に向けたワンストップでのフォローに取り組みます。また、次世代型地熱については、超臨界地熱発電やクローズドループなどの実証・開発を進め、我が国の地熱発電のポテンシャルの最大限活用を図ります。
●再エネ及び省エネの技術自給率向上や世界の市場獲得に向け、次世代技術の確立、需要の創出、生産体制の整備を同時に進め、新しい技術を活かした日本企業の産業競争力を強化します。「アジア・ゼロエミッション共同体」において、アジア・ゼロエミッションセンター等と連携しつつ、ルール形成やプロジェクト組成を推進し、世界の脱炭素化に貢献します。また、二国間クレジット制度(JCM)の協力の拡大に取り組みます。
●安全神話に陥った東京電力福島第一原発事故への反省と教訓を踏まえ、立地地域や国民の安全・安心の確保に向けて、さらなる原子力安全へ不断に取り組みます。福島第一原発の廃炉・処理水対策、風評対策、福島イノベーション・コースト構想の一層の具体化などを通じた福島復興の加速、そして、東京電力はじめ電力各社による組織運営の改革及び不断の見直し、自治体の実情を踏まえた避難経路の確保等を含む防災・減災対策の拡充、テロ・サイバー攻撃等への対策をIAEA等と協働しての国際的な安全確保の枠組強化などを着実に進めます。
●原子力発電所については、安全性確保に向けた取り組みやバックエンドに関する取り組みを進めることを大前提に、原子力規制委員会が策定した世界で最も厳しい水準の基準を満たした上で、地元の理解を得た原子炉の再稼働を認めます。その際、地域住民の不安を一掃するよう国が前面に立って、自治体の避難計画の策定・充実化を支援します。そして、立地地域の財政・経済・雇用対策に万全を期すとともに、原子力の安全性向上をめざし、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・設置に取り組みます。
●使用済み核燃料の処理・処分などのいわゆる「バックエンド問題」については、使用済み燃料の再処理工場の早期竣工、高レベル放射性廃棄物の最終処分を含めて、責任をもって対処します。また、廃炉資金の確実な確保等、廃炉を円滑かつ着実に進めるための制度を運用します。核燃料サイクルについては、地元地域との関係を引き続き尊重し、十分な理解と協力を得ながら取り組みます。
●東京電力福島第一原子力発電所の廃炉については、燃料デブリの取り出しを加速するための技術開発や、原子炉内部の調査を行いつつ、処理水等対策とあわせて安全かつ着実に実施します。また、技術的難易度の高い研究開発への補助を推進するとともに、廃炉を担う人材の育成に取り組みます。
●東京電力福島第一原子力発電所の廃炉・処理水等の対策を着実に進めます。処理水放出の安全確保、風評影響を最大限に抑え込むとともに、漁業者をはじめとする事業者等がこれを乗り越えられるよう、漁業者・国民の安心と理解を得るための安全性等の知識の普及、国内外への徹底した説明や正確な情報発信等のさまざまな対策を引き続き行います。
⑧DXの社会実装の加速
●インターネット等の通信における「高速通信」「低遅延通信」「多数同時接続」を可能とした5G通信について、利便性を誰もが実感できるよう、居住地や離島・条件不利地域に限らず、主要道路などの非居住地域への基地局整備をさらに促進します。
●光ファイバーなどのデジタル基盤を迅速に整備し、デジタル技術を活用したトラック、バス等の自動運転や、ドローンによる災害時の救助活動、遠隔地からの医療受診等を全国において実装させ、地域の多様な課題を解決します。
●ネットワークから端末まで、すべてに光通信技術を活用し、現在よりも高速な通信速度かつ超低消費電力を実現する技術を確立させ、世界に先駆けたデジタル社会基盤の構築やグリーン社会の実現に資する「Beyond5G(6G)」の研究開発を重点的に支援し、その成果の社会実装や国際標準化、海外展開を強力に推進します。
●生活や仕事等で必需品となっている携帯電話サービスやネット等について、自然災害や通信障害等の非常時においても、利用者が安心して使用できるよう、事業者間ローミング(相互乗り入れ)を行うとともに、放送やネット回線を通じて信頼性の高い情報を確実に入手できるよう、耐災害性強化を推進します。
●地上における災害等に影響されず、従来よりも広範囲かつ低遅延に通信することができるHAPS(非地上型の通信)やStarlinkなどの衛星通信の国内実用化促進・展開に向け、必要となる制度の整備を迅速に進めます。
●自動車のデジタル分野での国際競争が激化する中、クルマのSDV※化に必要な技術開発、自動運転の社会実装の早期実現、脱炭素やサプライチェーン強靱化に資するデータ利活用などの施策を具体化し、モビリティDXの推進を加速します。
※SDV:Software Defined Vehicle
●さまざまな産業において人手不足の解消、生産性向上やDX化を実現するため、製造業のロボットシステムの研究開発やサービス分野を含む新領域でのロボット実装を加速させます。技術シーズを持つスタートアップや研究機関、自治体、ロボット関連企業等の参画によりAI等新技術とロボットの融合・実装を加速するイノベーション推進環境を構築します。
●量子技術の実証環境整備とユースケース創出や、デバイス、光電融合による情報処理等の研究開発投資を拡充します。また、生成AIを活用したサービス創出等に向け、国内の基盤モデル開発を進めるとともに、計算資源の高度化やさらなる量的拡大を、エネルギー・GX政策と連動させる形で進めます。
●個人のスキルアップを促すためのスキル情報を蓄積・可視化する情報基盤を構築し、企業DXのさらなる促進のため、デジタル人材育成を加速します。
●サプライチェーン全体のサイバーセキュリティ向上のため、サプライチェーンにおける重要性に応じて各企業が満たすべき対策の水準や対策状況を可視化する仕組みを整備し、「サイバーセキュリティお助け隊サービス」など中小企業におけるサイバーセキュリティ対策の支援を拡充するとともに、セキュリティ専門人材の育成、中小企業支援機関等との連携を通じた普及啓発を強化します。
●データの越境移転の課題となっている各国規制の透明性の改善などDFFT※の具体的推進のための国際枠組みによる具体的なプロジェクトの実施に取り組みます。
※DFFT:Data Free Flow with Trust:信頼性のある自由なデータ流通
●ブロックチェーン技術を用いた社会課題解決などに期待が集まるWeb3.0の健全な発展のため、金融制度や会計などの事業環境整備、人材育成等に取り組みます。
●携帯電話基地局装置の接続仕様をオープンにし、状況に応じて、さまざまなベンダーの機器やシステムとの相互接続ができる「Open RAN」の国内外における普及を促進します。
●世界に通用する日本の放送コンテンツの制作・流通を推進し、クリエイターへの適切な対価還元を実現させるとともに、クリエイターのための4K設備・VFX等の利用環境整備及び人材育成や権利処理の効率化を支援します。
●誰一人取り残されず、高齢者や障がい者等デジタルに不慣れな方々を支援する取り組みや好事例を全国に展開します。また、提供されている情報やデジタルの機能等を誰もが活用できるよう、講習会の開催や字幕放送・解説放送、手話放送の普及、聴覚障がい者でも利用できる電話リレーサービスの周知・拡充等により、情報格差是正に取り組みます。
●利用者にあった携帯会社や新しい料金プランによって乗り換えやすい環境を整備するなど、携帯各社の公正な競争が活発化するように取り組むとともに、安価な利用料金や実感できるサービスの向上を進めます。
●デジタルインボイスの普及を促進し、商取引全体のデジタル化や事業者のバックオフィス業務全体の効率化を進めます。あわせて、トレーサビリティが確保された優良な電子帳簿の普及・一般化に取り組みます。
●納税者の利便性を向上しつつ適正・公平な課税・徴収の実現を図るため、「書かない確定申告書」の実現など税務手続のデジタル化や納付のキャッシュレス化を進めます。
●CBDC(中央銀行デジタル通貨)について、制度設計の大枠の整理として主要論点に関する基本的な考え方や選択肢等を明らかにし、その後、発行の実現可能性や法制面の検討を進めます。
●街の書店の活性化・書店の経営基盤強化、ICタグの導入などDX化に向けた取り組みを支援します。また、小規模書店を中心に、中小企業施策の一層の活用を促します。合わせて、日本文化の発信、作家等の人材育成を実施するとともに、図書館と書店との連携方策を検討します。
⑨ヘルスケアテックの推進
●PHR(健康医療情報)の活用は、国民に価値が還元されることが重要であり、ヘルスケア・スタートアップの育成を図ると共に、医療機関・薬局等の医療分野に加えて、高齢者・介護関連分野におけるユースケースの創出を進めるとともに、マネタイズ可能なビジネスモデルの構築をめざします。また、民間PHR事業者団体と連携して、データの標準化やサービス品質確保等、安心安全なPHR利活用促進に向けた事業環境を整備します。さらに、プログラム医療機器(SaMD)など先端医療機器の開発とグローバル展開を推進します。
●高齢者数がピークを迎える2040年に向けて、地域特性に応じた地域資源開発や働く家族介護者の支援を強化することが重要です。そのため、自治体と企業による連携・共創を通じた高齢者・介護関連サービス振興とともに、ICT・ロボット技術等を活用した介護サービスの生産性向上を図ります。また、企業経営層が両立支援の知見を共有できる仕組みづくりをはじめ、両立支援に係る効果検証等の取り組みを支援します。
◎介護事業所等のICT化による業務の効率化、情報の共有化を進め、介護従事者等の負担軽減とサービスの質・生産性の向上を図ります。
●新たな機器の開発や見守りを含めた介護ロボット等の効果的な活用により、高齢者や家族等の負担を軽減するとともに、障がい者や高齢者がロボットを用いて生活の質を向上させる取り組みや、ロボット介護機器の海外展開を推進します。
●介護や障がい福祉、医療現場の生産性と質の向上を図るため、これらに資する介護テクノロジーの開発に加えて、介護テクノロジーの社会実装を進めるための介護事業者等における導入及び効果検証を支援します。
●エビデンスに基づく適切なヘルスケアサービスの社会実装を推進するため、予防・健康づくりの特色を踏まえたエビデンスの構築・整理を進めるとともに、AMEDにおける研究開発やプライマリヘルスケア・プラットフォームを通じた開発・実用化支援を進めます。
●創薬ベンチャーに対して国内外の認定ベンチャーキャピタル※による出資を条件に日本医薬研究開発機構により実用化開発費の補助を着実に進め、グローバルに繋がる創薬ベンチャーエコシステムの構築を加速します。
※ベンチャーキャピタル:成長が期待されるベンチャー企業やスタートアップに出資し、経営支援も行う投資会社や投資ファンド
●再生・細胞医療・遺伝子治療は、我が国が世界に勝てる科学技術であり、さまざまなシーズが臨床研究・治験に進んで、今後国内外での治療増加も見込まれます。今こそ、円滑な承認取得及び本格的な産業化を見据えて、基礎研究から実用化まで一貫した支援を行い、拡大する製造ニーズを請け負える受託製造開発拠点(CDMO)の整備及び製造人材を育成します。
⑩人間中心のAI社会
●一人の人間の「幸福」と国際社会の「平和創出」を原点に、人類を物心両面で豊かにする新たな価値の創造を目的として、新たに成立した「AI法」を踏まえ、イノベーション促進とリスク対応の両立を図りつつ、急速に進化するAIを適切に利活用していく先見性と実効性に富んだ施策を推進し、 “誰一人取り残されないデジタル社会”に包含された「人間中心のAI社会」の実現をめざします。
●AI時代に求められる教育と新たな人材育成について、AI技術や実践的スキルのみならず、情報モラルや偽・誤情報への耐性等を養うためのAI情報リテラシーを含めたAI教育を各階層、各分野で推進します。
●欧州のARISA(人工知能スキルアライアンス)プロジェクトなどを参考に、基礎的な倫理観と高度なスキルを兼ね備えた良識あるAI人材の育成プログラムや認証制度の創設をめざしますなどAIスキル標準を示し、それを習得する人材育成とキャリア形成等のエコシステム構築を推進します。
●AIの開発、提供、利用の各事業者のAIガバナンスの指針である「AI事業者ガイドライン」の周知・活用等を図るとともに、専門機関である「AISI」でAIの安全性評価の基準や実施手法をより明確にするなど同ガイドラインの実効性を確保します。
●AIイノベーションと著作権をはじめ知的財産権の適切な保護との両立を図る「知財エコシステム」の実現に向けて、AIの各事業者や権利者等が行う法・技術・契約の適切な組合せによる対応を図るとともに、俳優や声優等の肖像や声も含め必要な検討を進めます。
●テロや犯罪、サイバー攻撃、軍事目的などにAIが悪用されることないよう、国際社会でのルール策定など我が国が主導し、対策を推進します。
◎AI等の新興技術により自律的に攻撃を実行するLAWS(自律型致死兵器システム)について、特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の枠組みにおける政府専門家会合(GGE)での議論・交渉を前に進め、LAWS開発を禁止する技術的要件等の規制の具体策を含め、国際社会の合意形成を図るため、日本が主導して議論を加速させていきます。
●AWS(自律型兵器システム)や、AI-DSS(AI意思決定支援システム)については、国際人道法に則った国際ルール構築に向けた協議を進めます。また、核兵器の運用へのAI関与及び判断を一切認めない観点から、2026年の核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議において最善を尽くします。
●AIによる偽・誤情報の技術的対策として、自動検知やファクトチェック等「ホワイトなAI技術」とともに、情報コンテンツに発信者情報を付与する「OP(オリジネーター・プロファイル)」等の「発信者の実在性と信頼性を確保する技術」の開発・導入に向けた支援を推進します。特に「OP」については、主要ブラウザの国際標準機能やプラットフォームへの搭載をめざし、官民が連携して推進します。
●AIの正誤を判定するソフトウエア技術の開発・実装、民間の研究開発の促進、大学や研究機関、ファクトチェック組織への必要な支援及び連携、メディア企業との協力体制の構築、国際連携の強化など総合的な取り組みを進めます。また、インターネット上で正しい情報をどう仕入れるかについて、情報発信者のレイティング(信頼性評価)の取り組みも検討します。
●ネット上でのフィルターバブル、エコーチェンバーといったAIによる情報偏食や偽・誤情報の拡散は、社会、特に選挙において深刻な悪影響を及ぼしています。この「情報的健康」を損なう問題に対し、ユーザーが多様性や信頼性を重視した情報選択ができるよう、民間プラットフォームによる環境整備を促すガイドラインの策定やビッグテック外交などの対策を検討します。
●AI等デジタル技術を活用し、政治資金等の透明化をはじめとした政治改革を推進します。
●日本の強みを生かしたAIの研究開発や活用、投資とイノベーションを促進するため、基礎研究開発への支援を拡充するとともに、計算リソースの整備・拡充や基盤モデルの開発等AIインフラ整備に取り組む企業やスタートアップ、国の研究機関等に対する必要十分な支援を行います。なお、スタートアップ等の企業支援の際にはリスク対応も考慮しつつ進めます。
●AI開発に不可欠な計算リソースのさらなる高度化を図り、幅広い研究開発に利活用し、卓越した成果を創出するため、スーパーコンピュータ「富岳」の後継機となる、優れたAI性能を有する新たなフラッグシップシステム「富岳NEXT」の開発を推進します。また、GPU等の国産AI半導体の開発・振興に向けた産学連携体制の構築や研究開発、人材育成とともに、クラウドサービスを整備・提供する国内の企業等を支援します。さらに、産業技術総合研究所(産総研)が提供する計算リソース「ABCI」を拡充するなど日本の生成AIを含むクラウドプログラムの開発力や提供体制を強化します。
●既存のスパコン関連アセット及び開発が進む「富岳NEXT」を最大限活用することを念頭に、スーパーコンピュータとの連携及びデータセンターを軸とした AI 開発インフラネットワーク「AI ファクトリー」に対する大規模な投資・開発について、産学官及び関係省庁の横断的連携による推進を図ります。
●AIの基盤モデル開発を強化するため、質の高い日本語データの整備・拡充、公的機関の高品質なデータへのアクセス提供や好事例の横展開など官民連携で着実に整備を進めます。また、「GENIACプロジェクト」を推進し、基盤モデルの開発企業やスタートアップ、大学等の研究機関を強力に支援するとともに、国による科学基盤モデルの開発を加速化し、利用促進や展開を図り、科学技術イノベーションの創出に繋げます。
●AIの普及に伴う電力需給逼迫に対応するため、省エネ半導体開発等によるAI自体の省力化を促進しつつ、必要な計画を検討します。あわせて、地方のデータセンターの活用や分散立地、再エネや省エネの電力活用の環境整備等の方策を検討します。また、AIインフラの高度化に向けた民間投資を拡大し、Beyond 5Gの社会実装・海外展開に向けた研究開発を促進します。さらに、オール光ネットワークを活用したAI開発・利用により、業界や分野別の小規模LLMを用いた高品質なAIコンステレーションを実現し、次世代インフラ整備を進めます。
●医療、介護福祉、物流、建設など、人手不足が深刻な分野におけるAIやヒューマノイドを含むAI搭載ロボット等のフィジカルAIの導入・活用に係る支援の強化とともに、倫理的な課題や安全性確保のための取り組みを進めます。あわせて、医療研究、医薬品の研究開発プロセスにAIを活用するシステム「創薬AIプラットフォーム」の具体化を含む創薬、教育、スマート農業、防災、行政など、さまざまな分野での「人間中心のAI」の利活用を促進します。
●AIイノベーション推進のため、国家戦略特区等で革新的な技術研究開発とリスク検証を進めます。あわせて、日本の強みとなるデータ利活用のエコシステムの構築に向けて、アカデミア・産業界のデータ提供の意欲を高めるインセンティブ設計等の仕組みづくり、情報基盤の整備・高度化を、秘匿性に配慮しつつ進めます。
●自律性の高い「エージェントAI」の開発・利活用と社会実装を推進します。さらには、いわゆるAGI(汎用人工知能)の時代や将来的なASI(人工超知能)の時代の到来も見据えて、人間とAIが協調する上でのAIの安全責任等のあり方について検討します。
●AIの適切な利活用による行政コスト縮減等を強力に進め、恒久財源を確保しつつ、民間を含む生産性及び労働分配率の向上を図り、医療・介護・障がい福祉・保育・物流・建設などエッセンシャルワーカーの処遇改善に繋げます。
●安全・安心で信頼できるグローバルなAI社会を実現するため、G7サミットで合意された「広島AIプロセス」を主導し、人間中心の信頼できるAIの実現に向けた国際基準の策定など発展させます。その深化を図りつつ、OECD加盟国等との「広島AIプロセスフレンズグループ」やGPAI(AIに関するグローバル・パートナーシップ)といった国際的な枠組みも活用し、日本のAIエコシステム(AI人材育成、研究開発投資、データ基盤整備、スタートアップ支援など)の国際展開にも貢献します。
●新たなAIイノベーションの創出やAI人材育成・確保を進めるため、グローバル・サウスと連携・協調を図りながら、東南アジア諸国へ事業進出を行うスタートアップの支援を推進します。また、日本の生成AI関連の競争力強化における勝ち筋として、シンガポール政府が主導する「東南アジアLLM計画」への日本の参画を進めます。
⑪科学技術・イノベーション
●科学技術予算を倍増させ、科学技術を我が国の経済再生の原動力として、国際競争を勝ち抜くため、官民連携の強化、若手研究者や博士人材等の育成・活躍促進、イノベーションの持続的な創出に向けた大学・高校・高専等の機能強化、グローバルな視点での国際頭脳循環の強化等を着実に進め、科学技術創造立国を構築します。
●「公明党科学技術・イノベーショントータルプラン」を策定し、世界と人類に貢献できる科学技術イノベーション政策を強力に推進します。また、「統合イノベーション戦略2025」、「科学技術・イノベーション基本計画(第7期)」の策定・着実な実行を推進し、経済安全保障との連携強化、研究力の強化、科学技術人材の育成・確保、イノベーション力の向上を図ります。
●イノベーションを生むための挑戦的な研究開発を安定的に支援するため「ムーンショット型研究開発制度」を推進します。また、経済安全保障重要技術育成プログラムを通じて、AIや量子、マテリアルなどの個別の重要技術やAIを利用したマテリアルズ・インフォマティクスで電池や触媒など新材料の創出といった学際領域について、関係省庁と連携して着実に研究開発を推進するとともに継続的かつ強力な支援の実現をめざします。
●AI、量子技術、先端半導体、次世代情報通信基盤、バイオ、再生医療、マテリアル、フュージョンエネルギー、宇宙、海洋など我が国の勝ち筋となる各戦略分野への研究開発投資や人材育成の支援を進めるとともに、事業環境の整備などの取り組みについて、官民挙げて社会実装を進めます。
●AIのイノベーション促進とリスク対応の両立を目指します。特に、生成AIモデルの透明性・信頼性の確保に向けた研究開発や、大学・研究機関等の緊密な連携を促進することにより、学生を含むAI分野の若手研究者の循環的な交流・育成を促すネットワークの強化に取り組みます。また、あらゆる産業分野でのAI利活用の拡大を図るとともに、AI法に基づき安全で信頼できるAI活用を推進します。
●量子分野では、量子コンピューティングの研究開発投資を拡大し、量子人材育成と関連スタートアップ創出の拠点を整備し、量子通信インフラの構築・実証を進め、量子暗号技術の国際標準化を主導します。
●フュージョンエネルギーの早期実現に向け、新たな国家戦略に基づき、実施主体の在り方やサイト選定の進め方など、社会実装を促進する取組の在り方について検討を進めるとともに、他国に劣らない資金供給量を確保し、工学設計等の原型炉開発と並行し、トカマク型、ヘリカル型、レーザー型等多様な方式の挑戦を促します。
●博士号取得者数を世界トップレベルに引き上げるため2040年には約3倍にすることをめざして、博士人材活躍プランを着実に進めます。博士課程学生の処遇向上と博士人材活躍プランによる産業界での受け皿拡大や起業支援、テニュアトラック拡充などキャリアパスの拡大・多様化、独創的かつ挑戦的な研究に対する支援の強化や国際共同研究への参画の促進、世界トップ水準の大学院教育を行う拠点形成などの環境整備に取り組みます。また、日本学術振興会(JSPS) の特別研究員事業(DC)の拡充など、博士課程学生への支援の倍増に取り組みます。修士・博士課程学生への生活費支援や奨学金を倍増し、大学院進学者の増加と次世代研究者の育成を図ります。
●女性研究者が出産・育児等と両立し安心して研究を行い、活躍を続けられるよう、学内の保育施設の整備やサポート制度等の支援の拡充、ハラスメント対策に取り組みます。また、シニア研究者を含めた研究者全体の活性化を図るために、内地留学や民間と官公庁の人材が行き来する仕組みを活用し全教員の交流機会を広げます。
●健康・医療バイオ分野では、あらゆる年代が健康な社会を実現するため、認知症等の克服に向けた脳科学研究やiPS細胞等を活用した難病研究、がん研究、早期ライフステージにおける生命現象の解明に向けた基礎研究等、生命の発生から老化までの「ライフコース」の研究を推進します。ワクチン・治療薬・診断薬の研究開発等を強化し感染症有事対応能力の向上を図ります。合成生物学の研究とバイオものづくりを推進し、安全・倫理指針の整備によりバイオイノベーションを促進し、ゲノムデータ基盤を整備し、AI活用による個別化医療の実現で一人ひとりに最適な医療を提供します。また、iPS細胞など再生医療の実用化を加速し、研究開発支援の充実と臨床試験・承認プロセスの円滑化を図ります。
●バイオものづくり革命の実現に向けて、中核を担うバイオ分野のプラットフォーム事業者と革新的な素材や燃料などの異分野事業者との共同開発、味噌・酒・醤油で培った我が国が強みを有する発酵技術を用いた生産実証・開発支援、バイオものづくりの社会実装に向けた製品加工の技術開発を進めます。
●多様な分野における研究データの保存・管理、流通、活用を支える情報基盤を強化し、これを活用したAI for Scienceを加速します。大型放射光施設SPring-8‐Ⅱの整備やNanoTerasu、J-PARCの着実な運用・高度化、ポスト「富岳」の速やかな開発・整備など最先端大型研究施設の整備・共用・高度化を推進します。
●宇宙戦略基金を活用し、宇宙分野のスタートアップを含む民間企業・大学等の支援に取り組みます。次期基幹ロケット等に向けた研究開発、先進的な衛星開発、ISSの利用拡大、国際宇宙探査(アルテミス計画)への参画を通じた宇宙科学や月面資源開発、民間企業による新たな打上げ計画に迅速に対応するため宇宙活動法の早期改正、円滑な審査体制の整備を進め、宇宙開発利用を推進します。またカーボンニュートラルや防災・減災などの社会課題の解決に貢献する宇宙・海洋・環境エネルギー分野等の研究開発を推進します。
●宇宙分野は、災害対策・国土強靱化や地球規模課題の解決への貢献、宇宙資源の利活用、新たな知の創造、安全保障の確保など国民の命と暮らしを守り、豊かにするための重要な分野です。宇宙基本計画に基づき、日本人宇宙飛行士の月面着陸の実現、宇宙科学の発展、衛星コンステレーションの構築に取り組み、宇宙資源の探査・開発やスペースデブリ(宇宙ゴミ)対策をはじめとした広範な分野で国際的なルールづくりをリードし、官民共創による宇宙産業の活性化を図り、イノベーションと経済成長の推進力となる宇宙利用の拡大を進め、世界をリードし自立した宇宙大国の実現をめざします。
●地球上で正確な位置と時刻を提供する現代のデジタル社会における基幹インフラである我が国の準天頂衛星システム「みちびき」について、持続測位を可能とする7機体制を2025年度中に整備するとともに、安定測位を可能とする11機体制に向けた開発を進めます。また、準天頂衛星システムを活用した衛星測位サービスや災害情報・安否情報の配信サービスの運用、避難所等における防災機能の強化を進めます。
●防災・減災対策を推進するため、改正活火山法に基づき設置された火山調査研究推進本部において、火山観測・調査研究の充実、火山専門家の育成・確保を進めます。
●革新的なGX技術の研究開発力の強化、原子力分野における革新的な技術開発等、環境エネルギー分野の研究開発及び人材育成を推進します。なかでも水素・燃料電池やCCUSなど脱炭素技術の研究開発と実証を加速し、再生可能エネルギーと次世代蓄電池の技術革新を促進し、エネルギー貯蔵強化で脱炭素目標の達成を後押しします。また我が国が強みを有する革新的な先端ノードやパワー半導体等のアカデミアにおける次世代半導体に関する研究開発、研究基盤整備及び人材育成を強化します。
●先端技術の社会実装を加速するため、実証実験の拡充と規制改革の迅速化によって新技術の産業応用を促進します。
●官民連携で研究開発から事業化までシームレスに支援し、海外ベンチャーキャピタル誘致や政府調達の活用などを通じてディープテック・スタートアップのエコシステムを強化します。
●がん治療等に資する「医療用等のラジオアイソトープ」の国内製造・安定供給の早期実現に向けて「医療用等ラジオアイソトープ製造・利用推進アクションプラン」に基づき、研究開発や制度・体制の整備、人材育成などの取り組みを推進します。
●我が国にとって戦略的に重要な技術領域を特定し、税制を含む政策を総動員して人材育成から研究開発、拠点形成、設備投資、スタートアップ支援、ルール形成等を一気通貫で支援することで、国際的に遜色のないイノベーション立地競争環境を確保し、民間の研究開発投資を促していく方策について検討します。
●知的財産の創出・活用の促進や、我が国の研究開発拠点としての立地競争力の強化に向けて、イノベーションボックス税制の着実な執行と周知・広報に取り組みます。
●企業が足元の利益を中長期的課題である人的投資やイノベーションのための投資に振り向け、価値を生み出しながら将来にわたって成長できるよう、投資家等との建設的な対話や企業のガバナンスの質の向上などを促します。
●地球温暖化、資源循環、食料供給などの課題解決と経済成長の両立を可能とする重要技術であり、政府主導で微生物の設計・開発、大量製造技術の確立などへの積極的・継続的な官民投資の呼び込み、市場創出に取り組みます。
⑫スタートアップ支援
●福祉や教育、環境などの社会的課題の解決に取り組むスタートアップ(インパクトスタートアップ)の認証制度やさらなる支援策の検討を含めて、地方自治体とのマッチング等官民が連携した総合的な支援を推進します。
●科学技術イノベーションの原動力となるスタートアップ(新興企業)を主軸に、「成長と分配の好循環」に資するような企業間競争の促進を図るなど新たな社会変革を実現するため、世界に伍するイノベーション・エコシステム形成の核となる「グローバル・スタートアップ・キャンパス構想」を含めた「スタートアップ育成5か年計画」に基づき、産学官が一体となって、人材・ネットワーク、資金供給、オープンイノベーションの取り組みを着実に実行し、投資額10倍増、10万社創出などの目標を実現します。
●企業・業種横断のデータ基盤・システム連携のプラットフォーム構築等の取り組みであるウラノス・エコシステムについて具体的な事例の創出・横展開やグローバルでの連携を進めます。また、地域の社会課題解決に挑戦する企業への投資やNPO等への支援の拡大に取り組み、スタートアップを生み育てるエコシステムの確立に向け、新たな成長産業の創出と持続可能な経済社会の実現をめざします。
●大学や産業クラスターを核に地方にスタートアップ拠点を整備し、地域大学が強みを持つ分野でディープテック企業の集積を図り、都市部ベンチャーキャピタルとの交流やインキュベーション施設支援で地域発イノベーションを活性化させるとともに、環境・医療・高齢化など社会課題に挑むスタートアップを重点支援し官民連携で実証フィールドを提供し、補助金等を拡充します。
●起業家人材の育成やカーブアウトの促進、シード・アーリー期の支援など、我が国のスタートアップ・エコシステムのさらなる裾野の拡大を図るとともに、ファイナンス環境の整備、自動車分野における「モビリティDXプラットフォーム」の活用のほか宇宙や創薬等のディープテック分野別の重点支援など、大きく成長するスタートアップの創出に向けて取り組みを加速します。特に、スタートアップのグローバル展開支援については、海外拠点設置や現地市場調査への支援、スタートアップビザの活用促進などを通じて、エコシステムの国際競争力を高めます。
●女性起業家の事業環境の向上や支援体制、支援内容の充実を図り、起業家に占める女性の割合を増やし、シニアを含む多様な人材の起業を後押しします。また女性起業家向けのメンターネットワークや資金支援、シニアの経験を生かす新ビジネス創出支援策を充実させます。さらに、女性起業家の成長・発展を促進することで、起業・創業の活性化を図り、地域との連携を強化します。
●スタートアップの創業や円滑な事業承継、早期の事業再生等を後押しするため、官民金融機関における経営者保証を徴求しない融資や、M&Aや事業承継時に経営者保証を解除する取り組みを一層促進します。
●スタートアップを創出・成長させる人材を支援するため、5年間1000人派遣プログラムの推進・若手投資家向けプログラムの新設、未踏事業の拡大やIT分野以外への横展開、大学・高専等への支援に取り組みます。
●スタートアップの資金調達環境の改善のため、セカンダリー市場含めた株式市場の環境整備等に取り組むほか、地域の投資型クラウドファンディング市場の拡大や、未上場株式の発行・流通市場の整備、金融機関によるベンチャーデット普及の促進等を行い、スタートアップの資金調達手段を多様化します。また、海外投資家からの資金供給を加速させる観点から、税制を含む施策の検討や投資の検討から投資実行までを伴走する体制の構築等必要な措置を検討するとともに、官民ファンドによるスタートアップ投資を促進し、大型の資金調達が可能な環境を整備し、早期IPOに頼らずユニコーン級の成長をめざせるようにすることで、スタートアップへの成長資金供給を拡大します。
●オープンイノベーションや優れた技術の社会実装を後押しすべく、ディープテック・スタートアップへの量産化等の支援や大企業や地方自治体、政府からの調達による需要の創出、スタートアップとのM&Aの促進による創業者の出口多様化と再チャレンジの後押しを含めたオープンイノベーションの促進、事業再編を促す税制の恒久化等を含めたさまざまな措置について検討します。また、革新的なビジネスが既存規制に阻まれないよう、規制改革制度において、スタートアップが直面する規制課題に迅速に対処する仕組みを強化します。
●ゼロから事業を始めようとする者も含めスタートアップ企業の創業から成長ステージに応じた切れ目のない支援を行うため、DBJや日本政策金融公庫の各種出融資制度のさらなる活用を進めるとともに、シード・アーリー期の融資相談にきめ細かに対応する「スタートアップサポートプラザ」の活用を促進します。また、JBICの出資等を通じて、デジタル・グリーン等の成長分野で海外展開をめざすスタートアップ企業等の支援を強化します。
●新たに創設した「企業価値担保権」の適切な活用に向けた周知や関係者の理解を深める取り組みを進めるとともに、事業者や金融機関等に対して助言・指導を行う認定事業性融資推進支援機関の導入等の環境整備を進め、事業の実態や将来性に着目した融資を促進します。
⑬経済安全保障
●日本を取り巻く経済安全保障の脅威が、厳しさを増す中で、我が国の先端技術や産業を守り抜き、新たな経済成長を実現するため、経済安全保障推進法に盛り込まれた
①重要物資の供給体制の強靱化
②電力や通信など基幹インフラ設備の安全性等の確保
③我が国の先端重要技術の開発支援の強化
④特許出願の非公開による機微技術の流出防止――の4つの柱からなる諸施策を着実に実行し、規制による安全保障の確保と自由な経済活動との両立を図りつつ推進します。
●セキュリティ・クリアランス制度の民間企業等への丁寧な周知と適切な運用を図り、官民が連携して重要情報の保護や活用を推進するとともに、我が国の経済安全保障体制と産業力の強化も一体的に進めます。あわせて、情報保全に取り組む中小企業等への必要な支援の在り方を検討します。
●医療分野について、経済安全保障推進法の基幹インフラ制度の適用を検討するとともに、重要な物資のサプライチェーンの強靱化に向けて、安定供給の確保に取り組む民間事業者の支援等を実施します。あわせて、AI・量子・宇宙・海洋等の経済安全保障重要技術育成プログラムを着実に推進します。
●情報保全に万全を期した上で、我が国が直面する経済安全保障上の脅威・リスクを官民が連携して分析するために、経済分野におけるインテリジェンスに係る体制を強化します。
●我が国産業が不可欠性を有する製品・サービスの海外事業展開の支援に加え、同志国とのAI、量子コンピューティングをはじめとした重点分野の市場・技術を守り育てるための、産業支援策と産業防衛策を同志国と連携しながら一体的に講じる施策を実施します。
●経済安全保障の特定重要物資を中心に、我が国産業の自律性を高めるため、分析を深化します。我が国の製造業サプライチェーンに必要不可欠な重要鉱物等については、内外の動向等を踏まえ、供給途絶に備えた十分な備蓄量の確保や、上流開発プロジェクトの組成等に取り組みます。
●技術流出防止のための投資管理・輸出管理のあり方について検討するとともに、中堅・中小企業等に対する技術流出対策に係るアウトリーチ強化に取り組みます。
●G7、IPEF、MPIA、EPA等を活用し、ルールベースの国際経済秩序再構築、有志国との信頼性のあるサプライチェーンの構築、グローバル・サウスとの連携強化に取り組みます。また、日本企業の海外市場でのスケールや輸出促進、事業化を重点的に支援します。
●重要物資の安定供給確保等のサプライチェーンや物流等のインフラの強靱化・高度化を推進します。そのため、DBJやJBICの活用促進や体制強化を図るとともに、同志国との互恵的なサプライチェーンの多様化を進めるため、RISE(強靱で包摂的なサプライチェーンの強化)パートナーシップをはじめとする多国間枠組への貢献・参画を進めます。
●経済安全保障の観点から、外為法上の投資審査について、国内外関係機関との連携を引き続き強化するとともに、地方支分部局の活用も含めた情報収集・分析・モニタリング等の執行体制をさらに強化します。
⑭資産運用立国の実現
●家計の安定的な資産形成を支援するため、個々人のライフプラン等に応じた、新NISAの適切な活用を一層促進します。そのため、昨年4月に設立した「金融経済教育推進機構」(J-FLEC)も含めた関係機関について地方も含めた活動の底上げを図り、広く国民が金融経済教育を受けられる環境を整備するとともに、職場つみたてNISAなど企業による資産形成支援の取り組みを支援します。
●内外の資金が国内企業へ向かうよう、東京証券取引所の要請する「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」や、有価証券報告書の株主総会前開示の促進のための環境整備などコーポレートガバナンス改革の取り組みを促進します。
●海外からの投資を呼び込むため、拠点開設サポートオフィスを含むビジネス・生活環境整備など、「金融・資産運用特区」の施策を着実に実施し、国内金融市場の魅力を高め、発信する取り組みを推進します。
●資産運用業の運用力向上、新規参入や競争の促進に向けて新設された「投資運用関係業務受託業者」の制度について、実効性のある検査・監督対応を進めます。
⑮持続可能な建設業の実現
●公共工事設計労務単価の引き上げと労務費の基準の設定により、現場で働く技能労働者の賃上げを推進します。また、週休2日制の導入、適正な工期設定、施工時期の平準化などを推進するとともに、建設キャリアアップシステムの周知・普及、機器購入補助や登録料引き下げなどを図ります。
●建設業における熱中症対策を推進するため、サマータイム導入の検討、クールボックスの導入・積算項目への追加などを推進します。また、専門学校や養成施設の整備、女性が働きやすい環境づくり、建設シニアや外国人技能労働者などの育成を推進します。
●建設業において、最新のICTやドローン、デジタル化のためのソフト購入や専門家派遣などを行うとともに、インフラDX人材の育成拠点の整備・充実を図ります。
●災害時の緊急対応力を強化し、早期復旧につながるよう、緊急性に応じた入札・契約方法の適切な選択、建設業者や団体等との災害協定の締結促進、災害時における発注者の連携等を推進します。
⑯物流問題の解決に向けた物流革新の推進等
●トラックドライバーの賃金上昇を推進します。また、多重構造の是正、荷待ち時間の削減など商慣行の見直し、トラック・物流Gメンの機能強化などを図ります。さらに、トラック輸送の効率化、物流の自動化を進め、サプライチェーン全体の効率化を強力に推進します。
●物流倉庫の自動化、脱炭素化への支援を推進します。また、自動運転トラックの開発、自動物流道路や自動運航船の本格的な商用運航の実現に向けた取り組みを進めるとともに、女性や60代以上の運転者も働きやすい環境を整備する「ホワイト物流」、外国人材の活用などを推進します。
●大口多頻度割引の継続を推進します。また、SA・PA(サービスエリア・パーキングエリア)や道の駅に、大型車・特定大型車用の駐車スペースを整備・拡充します。さらに、中継物流拠点の整備など中継輸送を推進します。
●荷主企業による商習慣の見直しや省力化のための設備・システム投資を促し物流の効率化を推進します。加えて、中長期的な輸送能力不足等の課題を解決するフィジカル・インターネット※の実現に向け、物流リソースに関する情報の標準化・共有を、業種ごと・地域ごとの特性に応じて着実に進めます。
※フィジカル・インターネット:貨物を規格化・標準化することで、トラック等の輸送手段と物流拠点をシェアした輸送を行う持続可能な社会を実現するための革新的な物流システム。トラック等の稼働率向上と燃料消費量抑制を実現
⑰インフラ整備の推進とインフラシステムの海外展開
●世界の膨大なインフラ需要に対し、日本が2030年に45兆円のインフラシステムの受注をめざす「インフラシステム海外展開戦略2030」に基づく官民連携の取り組みを我が国の経済成長のエンジンとして強力に推進します。特に、経済安全保障やグローバル・サウス(東南アジアや南アジア、アフリカ、中南米などの地域)等の国際情勢等を踏まえ、グリーン、デジタル、グローバルヘルス(地球規模の保健医療)などの分野を強化するとともに、ハード・ソフト一体となった防災インフラ、交通ソフトインフラ、スマートシティ、下水汚泥を活用したバイオマス発電等の「質の高いインフラ」の海外展開を推進します。また、国際貢献や相手国のニーズ、収益性の向上、ファイナンス(資金調達・管理)における政府の積極的なリスクテイク機能(リスクの対応能力)の拡充等の取り組みを推進します。
●インフラの老朽化対策を強力に進めます。また、インフラの広域管理 (群マネ)、新技術を活用したインフラメンテナンスや渋滞対策、グリーンインフラによる脱炭素化、都市の緑化、遮熱性・保水性舗装などのヒートアイランド対策、インフラツーリズムなどを推進するとともに、インフラ調査士などの資格取得を促進します。
●公共工事の発注に際しては、資材価格や人件費高騰等の影響を適切に反映しながら、必要な事業量を確保し、適切な価格転嫁が進むよう促した上で、社会資本整備を着実に進めます。
●整備新幹線、リニア中央新幹線の整備に取り組みます。また、大阪・名古屋・東京の三大都市圏を結ぶ「日本中央回廊」の形成を図るとともに、高規格道路ネットワークの整備を推進します。
⑱住宅の流通・活性化
●省エネ性能の高い新築や改修を支援する「子育てグリーン住宅支援事業」を推進します。また、住宅の省エネ性能等の認定・表示制度の普及を進めます。
●長期優良住宅の普及など既存住宅の質の向上、マンション管理の適正化や長寿命化を図るとともに、老朽化マンションの円滑な再生(改修・建て替え・売却等)を促進します。また、マンション管理士の活用、住み替え支援の充実などを図ります。
●国産木材の共同調達への支援など供給網の整備を進め、特に影響を受ける中小工務店の事業者支援を推進します。また、良質な木造住宅の整備推進、CLT(直交集成板)を活用した建築物への支援を図ります。
⑲航空ネットワークの維持・活性化
●原油価格高騰の影響を受ける航空会社・空港会社に対し、経営基盤強化の支援を進めます。また、保安体制の強化、グランドハンドリング・保安検査員・整備士・操縦士の養成、職場環境の改善、航空大学校や外国人材等の活用等を推進します。さらに、持続可能なバイオジェット燃料(SAF)や合成燃料の導入を促進します。
●首都圏空港(羽田・成田空港)、関西空港・伊丹空港、中部空港の機能強化や航空需要の回復・拡大等を図るとともに、地方空港の路線ネットワークの維持・活性化、空飛ぶクルマやドローン利活用のための環境整備、災害時の空港機能確保策などを推進します。
⑳海運業、造船・舶用工業を中核とする海事クラスターの強靱化
●海運業、造船業、舶用工業の国際競争力の強化や持続的な成長、海事産業の担い手の確保・育成、離島航路の維持確保、モーダルシフトの推進など内航海運の活性化を進めます。特に、トン数標準税制や船舶特別償却制度など税制特別措置、船舶サプライチェーンの強靱化、また、GX経済移行債やGI基金などを活用して、日本の海事産業が連携して世界で活躍できる制度を充実します。
●造船業において、造船競合国の政府助成や支援に対抗する助成や支援を進めるとともに、ゼロエミッション船等の建造のための設備投資、DXによる省人化、サプライチェーンの標準化等の支援、自動運航船の技術開発や国際基準策定等の促進などを加速します。
●脱炭素の過渡期においては、さまざまな脱炭素燃料の利活用の促進が重要であるため、水素混燃燃料船の普及にも努めます。
㉑港湾分野における国際競争力の強化
●国際コンテナ戦略港湾(京浜港、阪神港)の機能強化、国際バルク戦略港湾政策、内航フェリー・RORO船ターミナルの機能強化、カーボンニュートラルポートの全国展開、ゼロエミッション船等の保有支援、LNG等新燃料のLNGバンカリング拠点の整備などを進めるとともに、洋上風力発電の導入や海洋保全の取り組みを推進します。
●港湾における水素等の脱炭素燃料の供給施設の整備は重要であるが、規制法令の所管が海と陸で異なるなど複雑であることや、各港湾においてルールが一定でないこと等の課題があるため、バージ型水素供給基地をはじめ、港湾における船舶及び陸上車両向けの脱炭素燃料の供給基地の整備を促進します。
●2030年の農林水産物・食品の輸出額を5兆円とする政府目標の達成に向けて、地域経済の活性化に資する港湾施設の整備や、産地と港湾が連携した農林水産物・食品のさらなる輸出促進に向けた拠点機能強化を推進します。
㉒都市分野における国際競争力の強化
●日々の生活や経済活動の場を提供する我が国の活力の源泉である都市において、国際競争力や魅力を高めるため、公共施設の整備を伴う優良な民間都市開発プロジェクトを促進します。