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石破首相の「なめられてたまるか」、トランプ大統領にどう英訳されて伝わるのか? 思い出した80年代レーガン大統領の”名シーン” 

2025年7月11日 10時52分

石破首相


【竹下陽二記者コラム】
 さて、今回は畑違いの政治、国際問題について書いてみよう。石破茂首相が、米トランプ大統領が、25%の関税を日本に課すことを表明したことについて「これは、国益をかけた戦いだ。なめられてたまるか」「私たちは、言うべきことは、たとえ、同盟国であっても、正々堂々、言わなければならい」と強い言葉を吐いて話題になっている。
 これは、石破首相の心の叫びであり、日本国民への強いメッセージなのだが、SNSでは「お前が言うな」とか「それを、トランプに直接行ってみろ」と手厳しいコメントのオンパレードなのである。個人的には、石破首相の言い分は主権国として当然だし、間違いではないと思う。しかし、門外漢の私はここで、関税問題について、大上段に構えて、持論を展開するつもりはない。私の興味は、「なめられてたまるか」が、伝わるとすれば、どうやって、英訳されて、トランプ側に伝わるかという、1点である。これを考えていたら、昨夜は一睡もできなかった。石破のやつ、なかなかやるなと思われるかもしれないし、逆に、陰でなめたこと言いやがってと逆鱗(げきりん)に触れるかもしれない。ヘタしたら、意図せず、日米関係にもヒビが入るのではと危惧する。トランプ大統領も一言一句を気にするほどヒマではないと思うが、言葉選びは、慎重であらねばならない。
 いきなりであるが、「なめるな」を英訳するのは、難しい。「舐める」は、「リック(lick)」である。「ドント・リック・ミー」だと文字通りの「舐めるな」で、真意は伝わらないし、誰が舐めるか、気持ち悪いという話になる。私の頭に一番先に浮かんだのは「アンダーエスティメイト(underestimate・過小評価)」という単語である。つまり、「ドント・アンダーエスティメイト・ミー」だと、過小評価するな、なめるなよ、甘く見るなよ、の意味になる。ミー(me)は、アス(us)でもいい。ちなみに、アメリカ人の友人に聞いたら「ドント・テスト・ミーという言い方もあるよ」とのことだった。つまり、オレをテストするな、試すな、試すと、やり返すぞのニュアンスも含まれている。微妙に違う気もする。
 と、ここまで、書いて、急に、思い出したことがある。小さな政府、減税を目指す1980年代の米・ロナルド・レーガン大統領が、上院の予算委員会で増税派に向かって「ゴー・アヘッド・メイク・マイ・デイ(Go ahead make my day)」とやったアレである。やってみろ、オレの日を作ってくれ、では、さっぱり、意味が分からないが、これは、やるなら、やれよ、撃つなら 撃ってみろ オレを楽しませてくれ、の意味である。言外に「オレにも考えがあるぞ。覚悟しろよ」と脅して?いるのである。当時、流行っていた「ダーティーハリーシリーズ」のクリント・イーストウッド演じるキャラハン刑事のセリフを、レーガン大統領がまるまるパクったのである。言い方は、毅然(きぜん)としつつ、どこか、芝居がかって、コミカルで、委員会は、ドヒャドヒャと大爆笑に包まれた。政治の世界にも、こんなユーモアあれば救われるのに……。
 話はだいぶ、それたが、石破首相の「なめられてたまるか」は、トランプの耳にどんなニュアンスで伝わるのか、あるいは、伝わらないのか。それを、考えると、今夜も眠れそうにない私である。
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