ヘイトに歯止めがきかない―ネット、選挙、日常生活にあふれ出した外国人差別
なぜそこまで嫌われ、攻撃されるのか。なぜ止められないのか。どれくらいの日本人が悪感情を持っているのか―。埼玉県南部の川口市、蕨市に多く暮らすクルド人たちは、おびえきっている。歯止めのきかない憎悪は、ネットだけでなく日常生活に、選挙にもあふれ出した。 【写真】中国のネット上で「日本人死ね」コメント相次ぐ 書き込んでいる人の大半は… 22年
6月15日午前、JR蕨駅近くのビルの一室に、在日クルド人や、支援する市民たちが集まってきた。毎週日曜に市民団体「在日クルド人と共に」が開いている日本語教室だ。和気あいあいとした集まりだが、団体の代表、温井立央さんの顔は晴れない。 「正直、きりがない。気にしないように振る舞っていても少しずつ心にダメージがたまります」 きりがないとは、激しさを増すヘイトスピーチ、ヘイトクライムのことだ。団体ホームページには頻繁に「さっさと国へ帰れ」などのメールが送りつけられる。ここ2年でヘイトメールは187件に及ぶという。 「くるどじンキらい。ころスアるよ」という脅迫の手紙まで届いた。クルド人を誹謗中傷したり、スタッフを怒鳴りつける電話もかかってくる。 差別が日常風景になりつつある。食い止める方法はないのか。(共同通信ヘイト問題取材班) ▽薄く、広範囲に広がっている 「ヘイトスピーチが当たり前のようにSNSに流れ、放置されている。人権が軽く扱われているように感じます」
温井さんは話す。6月、東京の大学に呼ばれて学生に川口の現状を講演した時のことだ。学生たちの感想文には、講演前まで持っていたイメージがこう書かれていた。「SNSを見てクルド人には悪い印象しかなかった」「クルド人のせいで川口の治安が悪くなったという話を聞いた」 温井さんは、川口・蕨を訪れたこともない学生たちが、そんなイメージを持っていたことに驚いた。「一番の問題は、差別がネットを通じて薄く広範囲に広がっていることです」 ▽学校で「くさい」と言われ 温井さんの団体の日本語教室に、クルド人男性、ヤマンさん(44)=仮名=がいた。2022年の「在日クルド人と共に」設立当初から通っている。今年、日本語検定の中で2番目に難しい「N2」を受験予定で、毎日猛勉強中だ。 「SNSでクルド人に対するひどい差別があるのは知っているけれど、けんかになるから見ないし、相手にしない。家族のためにもならないし」
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