参政「ロシア選挙介入」疑惑で混乱 候補がロシア政府系メディア出演
20日投開票の参院選に出馬した参政党の候補者がロシア政府系メディアに出演したことを巡り同党が混乱している。神谷宗幣代表は自身は関知していないとして関係した党職員に辞職を勧告した。他党はロシア政府の選挙介入に利用されているのではないかとの懸念を指摘した。
スプートニクに政治利用の疑惑
東京選挙区に出馬した参政党の新人、さや氏がロシアの通信社「スプートニク」のインタビューにこたえた。スプートニクが14日、動画をX(旧ツイッター)の日本語アカウント「Sputnik日本」に公開した。リポスト(転載)などを通じて情報が拡散したことが確認されている。
スプートニクはロシア政府が政治的に活用しているとの疑惑がある。米欧当局はロシア政府の思惑に沿ったプロパガンダや偽情報を発信しているとして問題視する。
米国務省は2024年9月、スプートニクの運営母体を含むロシア国営メディアを制裁対象にした。欧州連合(EU)もロシアがウクライナを侵略した直後の22年3月、域内でスプートニクなどの放送や配信を禁じた。
参政党は「日本人ファースト」を掲げ、外国人規制の強化を公約する。さや氏もインタビューで日本の伝統を守る重要性を強調した。スプートニクが同党を取り上げることで、外国人との共生を重視する層との世論の分断をあおったとの見方がある。
青木一彦官房副長官は16日の記者会見でSNSなどを通じた外国からの選挙介入について「日本も影響工作の対象になっている」と話した。
平将明デジタル相も15日の記者会見でSNSの利用を巡り「社会を分断する効果と(主張が)先鋭化していく効果が両方みてとれる」と述べた。参院選での外国からの介入に関し「一部そういう報告もある」と検証の必要性を訴えた。
外務省の北村俊博外務報道官は16日の記者会見で、ネット空間の動向を人工知能(AI)を使って分析する取り組みを進めていると説明した。外国からの情報操作を把握するため、AIを活用し発信元を特定する。
与野党から選挙介入に警戒感
参政党候補のインタビュー動画を機に、他党はロシアの選挙介入疑惑に関する発信を強め始めた。
国民民主党の玉木雄一郎代表はXに「国会でも問題視してきたので、まずは調べてみたい」と記した。自民党の小野寺五典政調会長は「専門家による調査を検討している。米大統領選でも指摘されたが、民主政治への重大な犯罪行為」と投稿した。
各国では他国による選挙介入が国内問題としてたびたび浮上してきた。
24年だけでも事例は多い。米大統領選でロシアによる情報工作が疑われた。東欧ルーマニアの大統領選ではロシア寄りの無名候補が首位に立ち、選挙介入疑惑で憲法裁判所が選挙結果を無効とした。台湾総統選でも偽情報の拡散などへの中国の関与が指摘された。
ネットを利用して相手国の社会を混乱させる手法は軍事攻撃に至らない「グレーゾーン戦術」とされる。防衛省の安居院公仁報道官は15日の記者会見で「各自衛隊で情報戦の分析強化に取り組んでいる。関係省庁と緊密に連携する」と語った。
神谷氏は15日のBS日テレ番組でインタビュー出演に関係した党職員に辞職を勧告したと公表した。スパイ防止法の制定を訴え「どの国の認知戦も受けてはいけない」と強調した。Xでは「現場と党の末端の職員が勝手にやってしまった」と釈明した。
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(更新)- 広瀬陽子慶応義塾大学総合政策学部 教授ひとこと解説
ロシアが展開するハイブリッド戦争の中で、近年、選挙介入の割合が顕著に増えている。多くで見られる手口が、AIを使った巧妙な偽情報の流布、TikTokなどによる情報拡散、お金のばら撒きなどであって、特にモルドヴァなどは大きな影響を受けた(ルーマニアも影響を受けたと考えられるが詳細な説明が必要)。 他方、スプートニクやRTを利用した情報戦は古典的なものであり、偽情報も多い中、動物の話などほっこりする話も織り交ぜて読者を惹きつけるのが特徴だが、そのような古典的な手段にすら選挙候補者・政党が利用されてしまう状況は、ロシアにさらなる高度な選挙介入を容易に行えると感じさせるはずであり、極めて由々しい状況だ。
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(更新) - 諸富徹京都大学公共政策大学院 教授別の視点
参院選を巡る記事の中で、最も気になった記事です。もしこれが外国による選挙介入の最初の事例だとすれば、国民すべてにとって憂慮すべき事態です。なぜスプートニクが、参政党に狙いを付けたのかが気になります。日本国内の分断を深めること自体が狙いなのでしょうか。さや氏のインタビューをそのまま流しており、スプートニクがその内容をサポーティブに報じていることが伺えます。この主張が日本で拡散されることでスプートニクが、そしてロシア政府が、どのような利益を得るのか、知りたいところです。与党はロシアのウクライナ侵攻に厳しい姿勢を示してきました。参政党は伸び、与党は苦戦しています。このことと関連するのでしょうか。
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(更新) - 富崎隆駒澤大学法学部政治学科 教授、駒澤大学ジャーナリズム・政策研究所 所長ひとこと解説
権威主義国発のフェイク・ニュースやネット・プロパガンダは、国際政治にも関わる民主主義の根幹を揺るがす問題と認識すべきだ。現に広範に実行されている「認知戦」「影響力工作」ともいわれる近年の情報戦では、特定主張を広めるのみならず、左右の急進的立場を互いに煽り、社会の分断を先鋭化させる戦略も多いようだ 言論と政治活動の自由は自由民主制の根幹であり最大限守られるべきだが、マスメディアに外資規制があるように、グローバル化したデジタル空間でも一定の制度的対応が必要だろう 一方、こうした戦略が効果を持つのは、社会に「分断の種」となる社会的脆弱性があるためでもあり、自由社会としての強靱性も又問われるといえる
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