参院選の後が一番怖い…自民党本部の元ベテラン職員が「自民党はもんじゃ焼きになった」と嘆くワケ
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――一方で、野党からは政権を取ろうとする雰囲気は感じられません。 現実的には野党統一の連立政権ができる可能性は非常に低い。国民民主や維新は立憲と組むつもりがないようですから。野党の間には近親憎悪のような感情があります。 さらに野党第一党の立憲にも政権を担えるだけの能力はまだない。それなら、この前の衆院選の後と同じように、少数与党の自民党に政権を運営させ、自分たちの政策を少しでも飲ませるほうが良い。そんな期待が野党にはあるんだと思います。 自民党が、参議院でも少数になれば、もっと自分たちの意見が通る。自民党は通さざるを得ない、という状況が続いて自民党政権そのものが信頼を失ったところで最後に衆院選に持っていこうと思っているんでしょう。 ■「お好み焼きじゃなくてもんじゃ焼きになっちゃう」 ――いまそんな悠長なことを言っていられない状況だと思いますが。 目を国外に向ければ、台湾海峡をめぐる問題、イランとイスラエルの問題、ロシアとウクライナの問題もある。韓国の対北朝鮮政策もどう動くか分からない。与野党の駆け引きで問題を先送りにする政治が続いていたら、この難しい情勢に対応できません。 ――今のお話だと、自民党は選挙で負けても政権を失わない。一方、野党は選挙で勝っても政権を取らない。それでは、ますます重要な決定ができなくなり、政治不信が高まりませんか。 確かに、そんなことでは政治に緊張感も生まれないですよね。内外の状況も非常に厳しい。いま必要なのはリーダーシップを発揮できる政権をつくれるかどうかです。勝負は、次の衆議院選挙です。その衆議院選挙で自民党が回復するのか、あるいは野党がもっと議席を伸ばすか、それによって新しい形ができてくると思います。 ――自民党に活路はあるのでしょうか。今年は結党から70年。自民党の役割はすでに失ったのではないでしょうか。 政党は必要です。政党は思想なんです。仮に自民党が無くなっても、自民党的な政党は自然にできるんです。自民党は保守の総称。そういう人たちの集まりでもあるわけだから。 だからこそ、彼らを固めきれる政治家が出てこないと、ダラダラと続いていくことになる。お好み焼きじゃなくてもんじゃ焼きになっちゃう。自民党がしっかりしないと政治全体が、グジャグジャになっていきかねないと思っています。 原点に返って国民が一体何を求めているのか、日本という国をどういう国にしようとしているのか、きちっとした分かりやすい展望・ビジョンを作らなければ、人はついていきません。石破首相の言う「楽しい日本」ではダメなんです。 日本人が好きな四文字熟語でいえば、いま必要なのは「臥薪嘗胆」。時間をかけて、地道に、信頼を積み直すしかない。その覚悟を本当に持てるなら、まだ自民党に道は残されていると思います。 ---------- 城本 勝(しろもと・まさる) ジャーナリスト、元NHK解説委員 1957年熊本県生まれ。一橋大学卒業後、1982年にNHK入局。福岡放送局を経て東京転勤後は、報道局政治部記者として自民党・経世会、民主党などを担当した。2004年から政治担当の解説委員となり、「日曜討論」などの番組に出演。2018年に退局し、日本国際放送代表取締役社長などを経て2022年6月からフリージャーナリスト。著書に『壁を壊した男 1993年の小沢一郎』(小学館)がある。 ----------
ジャーナリスト、元NHK解説委員 城本 勝
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