参院選の後が一番怖い…自民党本部の元ベテラン職員が「自民党はもんじゃ焼きになった」と嘆くワケ
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明るさとか発信力があるとか、信念があるとか。そういったものに対する信頼感です。消費税を下げるとか上げるというような個別の政策は付属物みたいなもの。いまの自民党に信頼感を持たれないから、リーダーの言葉に説得力も生まれません。消費税をなぜ下げられないのか、分かりやすく納得できる説明がないので国民に聞いてもらえないんです。 いま政治不信が広がっているというけど、僕に言わせれば政治不信の本質は政治家不信です。これは自民党だけではありませんが、政治家が国民に信用されていないから、何を言っても響かないんです。 ■派閥解消の影響が表れた ――与党過半数確保がギリギリかという情勢ですが、自民党がこれを挽回するのは、そう簡単ではないということですね。 これには構造的な問題もあるんです。最近では、自民党を支持してくれている企業や団体でも、その構成員の組織に対する忠誠心や依存度が弱まっている。だから社長がこうしろと言っても社員はなかなか言うことを聞かないそうです。 これは自民党だけの問題ではなくて、日本社会の構造全体が、構成員が自由な発想で考えるようになり、組織に対する依存度が減り、組織から受ける恩恵も少なくなっている。労働組合なども似た傾向があるけど、自民党が一番目立ちます。 参議院選挙っていうのは、“派閥の実力”が一番よく出る選挙なんです。比例は特にそう。どれだけ全国で組織を動かせるか、それが問われる。衆議院と違って、参院の比例は“地元での知名度”じゃなくて、“党がどこまで押し上げるか”。つまり派閥の力=組織の動員力がダイレクトに出るんです。 「派閥が弱い→組織戦が機能しない→参院比例で壊滅的な打撃」という構図です。今回の参院選は、その構図があらわになる選挙でもあるんです。
■かつては「信念のある政治家」がいた ――私の経験でも自民党のリーダーは小粒になってしまったなあ、という気がします。久米さんはこれまで見てきた政治家で、どんな人を評価していますか。 僕がすごいなと思った政治家のひとりは、幹事長や官房長官を務めた野中広務さんです。初当選の頃からよく知っていますが、悲惨な戦争を生き残ってきた典型的な政治家です。社会的にも苦しい立場にあったので、弱者の痛みをわかってるんですよ。 思想的には社会党にいてもおかしくない政治家だったと思います。自民党の中にいても、政治っていうのは、弱い人のためにあるんだっていう信念がある人だった。ああいう政治家が今はいません。 僕は野中さんの生き方を尊敬しています。とても厳しい人でしたが、思いやりもあり優しい面があった。何よりも、人から後ろ指をさされない、すごく清潔な政治家でした。 もう一人は中曽根康弘さんです。中曽根さんも戦争を生き残って、そして最初の選挙の頃から首相になったら何をするか、自分は何をしたいのか、ずっと大学ノートに書き留めていたんです。満を持して首相になってからやりたいことを一気にやった。そんな物語になるような人生を送ってきたかどうかはリーダーにとって非常に重要だと思います。 ■右も左も抱え込む政治 ――私は中曽根総理番記者でしたが、確かに中曽根さんには「風圧」を感じました。中曽根さんは“国家”というものを語れた最後の政治家だったかもしれません。国家像・憲法・安全保障といった“国家の骨格”にこだわった政治家であり、国をどうするかという問いを、戦後政治のなかでずっと問い続けたように感じます。 中曽根さんには、自分の意見と違う相手も抱え込む・納得させる包容力がありました。中曽根さんは昭和61年(1986年)の衆参ダブル選挙(いわゆる「死んだふり解散」。自民党が追加公認を含め衆院で304議席、参院で74議席を獲得し圧勝した)で歴史的な大勝を収めましたが、その選挙総括で中曽根さんは、「右と左にウイングを広げて全部抱え込むような政治を目指す」と言いました。自分の信念と同時に相手も認めるという包容力も重要なものだと思います。 ――確かに、2人のような政治家はいなくなりました。これから自民党を背負って立つような政治家は出てきますか。 僕は昨年、雑誌のインタビューで「これから伸びる自民党の政治家」として小林鷹之さん、鈴木英敬さん、尾﨑正直さん、塩崎彰久さんの若手4人(いずれも衆院議員)の名前を上げました。その小林さんも昨年の総裁選に立候補しましたが、あの時に手を挙げた9人のうち、次の総裁選で何人生き残っているかが重要です。 ■参議院選後に予想される混沌 ――参院選後、自民党・石破政権はどうなりますか。仮に、衆院選に続き、参院選で自公が過半数を割ると、自公政権ではだめだという明確な民意が示されたことになります。 まず、言ったことを実現しなければなりません。勝敗ラインを自公で過半数、つまり今回の改選で50議席以上と言ったわけだから、それを割ったら当然……。そうですよね。 石破首相は衆院選で負けた時も責任をとるべきでしたが、選挙の総括をする前に国民民主と「握る」ことで政権維持できた。それで自民党内でも誰も石破さん辞めろと言えなくなった。しかし今度は、そうはいかないと思いますよ。 辞めずに粘れば、第一次安倍政権の安倍さんのようになる可能性はあります。彼は参院選に惨敗した2カ月後に辞めざるを得なくなった。それと同じようになる思います。
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