AIでカモを撃退! 高専生が開発した装置がノリ養殖の救世主に 地元生産者が頭を悩ませる「カモの食害問題」に挑んだ学生たち 事業創出コンテストでの企業評価額は1億5000万円!
深刻化するカモの食害 生産者の切実な声から始まった開発
開発がスタートしたのは2024年10月頃。同校の江崎修央教授が研究の一環として地元のノリ生産者と連携する中で、「カモによる食害問題を何とかしたい」という切実な声を聞いたことがきっかけでした。
江崎教授が研究室の学生にこの課題を投げかけたところ、リーダーの北仲一登さんを中心とした7人の学生がチームを結成。生産者から直接話を聞いたり、現地調査をしながら食害に関する知識を深め、開発が進められていきました。
水産庁のデータによると、日本のノリ類の養殖生産量は減少傾向にあります。1994年の生産量は48.3万トンでしたが、2023年には20.1万トンと半減。不作の主な原因は、温暖化による海水温の上昇や、鳥や魚による食害などが挙げられます。中でもカモによる食害は効果的な対策がなく、生産者も頭を悩ませていました。
ノリ養殖は1シーズンで8回の収穫を行いますが、初めに取れる「一番ノリ」は最も柔らかく高値で取引されます。しかし、カモはこの一番ノリを好んで食べてしまうため、生産者にとって大きな損失となっていたのです。
鳥羽商船高専の学生が三重県内のノリ生産者50人にアンケート調査を実施した結果、約80%の生産者がカモによる食害を問題と認識していることが明らかになりました。
地域課題に取り組む若き技術者たちの挑戦
従来のカモ対策は、定期的に大きな音を出したりレーザー照射をするのが一般的でしたが、この方法ではカモがすぐに慣れてしまい、効果が持続しないことが課題となっていました。
そこで、北仲さんたちのチームは、カメラ映像をAIで分析して、カモを検出したときだけレーザーを照射して追い払うというシステムを開発したのです。
カモによる食害は夜間に集中しますが、AIになるべく多くのカモの画像を学習させることで精度を上げていき、暗闇の中でも的確にカモを検出することが可能に。100回以上の実験を重ねた結果、ほぼ100%の確率で追い払うことに成功したということです。