女性トイレの環境「改善」、骨太の方針に明記 首相肝いり施策、具体策これから

 政府は6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)に「女性トイレの利用環境の改善」を明記した。石破茂首相の肝いり施策で、女性トイレに行列ができる問題の改善を目指す。7月9日には関係省庁の連絡会議を開催し、大規模イベントの主催者向けに女性用の仮設トイレの十分な確保を求める通知を出すことを決めた。ただ、抜本的な解決の具体策はまだ見えていないのが実情だ。

 男性トイレは混んでいないのに、女性トイレには行列ができる――。公共空間で目にするこんな光景に近年、注目が集まっている。原因は、女性トイレが少ないことだ。男女別便器数を調べる行政書士の百瀬まなみ氏によると、駅や商業施設など全国907カ所(6月22日時点)の男性の通算便器数(小便器を含む)は女性の1・73倍。一方、女性便器数が男性を上回ったのは全体で46カ所にとどまった。

 6月の骨太の方針に「女性トイレの利用環境の改善」が明記されたのは、首相の働きかけが大きい。政府関係者によると、首相が問題に注目したきっかけは、6月9日の参院決算委員会で立憲民主党の横沢高徳氏が「女性トイレ渋滞」の問題を指摘したことだった。政府に対応策がないことを知った首相が「何とかできないか」と周囲に漏らすようになった。

 首相が念頭に置くのは、国際赤十字などが災害避難所を想定して定めた「スフィア基準」だという。女性のトイレ使用時間が男性の3倍かかるとの試算があり、同基準は災害時に最低限必要な便器数を男女比で1:3と明記。仮にこの基準を公共施設や商業施設に適用すると、全国の女性の便器数を現状から大幅に増やす必要がある。

 ただ、女性の便器数の大幅な増加をどう実現するかという具体的な方策は未知数だ。駅や空港などのトイレを所管する国土交通省の担当者は、男女便器数の実態を把握していないとした上で、整備の具体策については「検討中」と話す。トイレは設置場所によって所管省庁が分かれており、政府横断的な体制整備も必要だ。政府高官は「整備費用の補助など、多額の予算措置が必要になる」と指摘する。(原田達矢、小林圭)

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