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司法は医師に厳しくあるべき

先にも述べたように、医道審議会の審査対象となるのは事実上、刑事処罰を受けた医師だけだが、日本ではそもそも医師が刑事責任を問われるケース自体がほとんどない。「医療過誤 原告の会」会長を務める、宮脇正和氏が言う。

「平成以降、相次ぐ医療事故への批判が高まったことを受け、各病院が自主的に事故に対応する『医療事故調査制度』が2015年に始まりました。しかし、きちんと調査・報告するかどうかは病院の管理者しだいで、現状は届け出なかったり、ずさんな調査で終わらせたりするところが大半です。

被害者の側は、裁判を起こすための調査や費用の負担が大きく、泣き寝入りせざるを得ない人が多い。医師の社会的責任を問うための環境が、整っていないのです」

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精神科医の和田秀樹氏は、「日本の司法は、もっと医者に厳しくするべきだ」と語る。

「日本の医療裁判では、患者側が『医者がミスをした』と立証しなければなりませんが、それは困難です。裁判官がもっと患者側に立ち、5億、10億円の賠償金を命じられるようになれば、医者も緊張感をもって働くでしょう。

日本の医者は、製薬会社のMR(営業担当者)と『次はいつゴルフに行こうか』なんて話ばかりしていますが、訴訟社会であるアメリカの医者は、新薬の効果や副作用の話を真剣に聞いている。緊張感がまったく違うのです」

医療界だけが、永遠に「聖域」であっていいはずがない。

さらにこちらの記事では、全国で危機に陥っている公立病院の赤字問題について詳報する。〈【全国赤字ワースト病院ランキング100】病院が大赤字で「突然死」し始めた…急患を「受け入れ停止」「門前払い」の恐るべき実態〉

「週刊現代」2025年07月21日号より 

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