「最強の資格」と言われるワケ
医道審議会は年3回開かれ、ほぼ毎回、数名の医師が免許取消処分を受けてはいるが、理由はどれも窃盗や放火、詐欺などの明らかな犯罪で、医療事故ではない。
どれだけ重いミスを犯そうと、医師が「患者を危険にさらした」かどで処分されることはないのだ。
アメリカでは数年で医師免許が失効し、州によっては100時間もの研修を受けなければ更新できない。ところが日本では、医師免許を一度取れば更新の必要も、追加の勉強の機会もなく、取り上げられることもまずない。「最強の資格」と呼ばれる所以である。
医療過誤訴訟に注力する、弁護士の平井健太郎氏が言う。
「日本でも弁護士の場合は、強制加入団体である弁護士会を通じて誰でも懲戒請求ができ、不正や重大なミスを犯した弁護士には懲戒処分が下されます。最も重い除名処分を受ければ、弁護士の身分を失い、活動できなくなるのです。
社会的地位が高く、責任もきわめて大きい医師に、こうした厳しい仕組みがないことには違和感を抱きます」
医道審議会には日本医師会長、日本歯科医師会長、国立病院機構の幹部が必ず参加する。議論の中身は秘密であるばかりか、議事録すら公開されない。まさしく、医療界の最高権力者たちによる「ブラックボックス」だ。