ヤブ医者の「医師免許」を剥奪できない本当の理由…『脳外科医 竹田くん』が白日の下にさらした、患者を傷つけても手厚く守られる「最強資格」のダークサイド

どれだけ誤診をくりかえしても、手術で人を殺めても、手厚く守ってもらって高給を食みつづける特殊な職業。いい加減、甘すぎる制度を見直してはどうか?

ヤブ医者の免許剝奪は難しい

今年5月、医療界を揺るがす判決が下った。

2019〜2020年に8件の医療事故(うち3件で患者が死亡)に関わった脳外科医の松井宏樹医師と、当時の勤め先の赤穂市民病院を運営する兵庫県赤穂市に対し、被害者に約8900万円の賠償金を支払うよう、神戸地裁が命じたのだ。

松井医師が関与した医療事故は、被害者の親族が内幕を『脳外科医 竹田くん』という漫画に描いて暴露したことにより、大きな話題となった。ミスをくりかえしても平然と診療を続ける医師、止めようともしない周囲の医療関係者の実態に、誰もが慄然とした。

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なぜこんなヤブ医者が野放しになっているのか。医師免許を剥奪すべきだ……そうした声が、いまだネット上では渦巻いている。だが結論から言うと、「ヤブ医者から医師免許を剥奪する」のは困難だ。

「医師免許に関する処分を決める機関は、厚生労働省の『医道審議会』という非公開会議しかありません。しかも処分対象となるのは通例、刑事処罰を受けた医師だけです。

2014年に群馬大学医学部附属病院で、肝臓の腹腔鏡手術を受けた患者8人が亡くなった件も、処分は行われず、審議の対象となったかどうかもわかりませんでした。

赤穂市民病院のケースも、医師に刑事裁判で有罪判決が下らない限り、処分はされない可能性が高いでしょう」(総合診療医で医学教育も専門とする、金沢大学附属病院特任教授の野村英樹氏)

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