コロナ後、全国の病院の経営が猛スピードで悪化している。前編記事〈【全国赤字ワースト病院ランキング100】病院が大赤字で「突然死」し始めた…急患を「受け入れ停止」「門前払い」の恐るべき実態〉に続いて、その実態を報じる。
カネがないから建て替えもできない
とりわけ苦しいのが、県立病院・市立病院といった公立病院や、共済組合などが母体の半官半民病院だ。コロナで注入された補助金が大きく減り、昨年度は赤字の病院が全体の7割にのぼった。
東京都立多摩総合医療センターでは2023年、ERの閉鎖計画が持ち上がり、労組との交渉で撤回された。また、今回本誌が調査した「公立病院『純医業収支ワースト100』ランキング」には入っていないが、純医業収支がマイナス11億8600万円の山梨県・富士吉田市立病院でも今まさに、重症患者を治療するHCU(高度治療室)の休止が看護師不足により検討されている。
静岡県の菊川市立総合病院(純医業収支マイナス8億8500万円)は、今年度いっぱいで産科分娩を休止することを、この6月はじめに正式決定した。
24時間いつでも対応せねばならない救急や産科は、敬遠する医師や看護師が少なくない。昨今は医療界でも「働き方改革」が唱えられ、担い手が激減しつつあるのだ。
さらには前編記事で紹介した近畿中央病院のように、いきなり閉鎖してしまう、いわば「病院の突然死」も起こり始めた。
その背景に横たわるのが、病院施設の建て替え問題である。
ワースト68位の千葉県千葉市立海浜病院(純医業収支マイナス25億1400万円)では、1984年築の建物の老朽化が問題になり、この5年あまり建て替えが議論されてきた。来年、近くに新病院が建つことが決まったものの、折からの建設費高騰で、予算が当初の220億円から310億円に跳ね上がってしまった。
また、ワースト21位の沖縄県立中部病院(純医業収支マイナス36億7300万円)でも、建物が耐震基準を満たしていないことや「肩がぶつかるほど狭い」ことなどが問題視されている。建て替えを検討中だが、場所を移転するか否かについて、地元を二分する対立が起きている。