――となると、コメの生産を増やすには、コメ農家の生活が安定することが大切ですね。

 その通りですね。ただ、これまで高騰しすぎた反動からか、政府からの発言は、コメを安く売るということに軸足を置くものが目立ちました。しかしそれではコメ農家の経営が成り立たず、多くが廃業を余儀なくされる恐れがあります。長年の安値でコメ農家の経営は相当厳しくなっています。

 やはり、コメ農家がある程度利益を出せるように、5kg3000円台で売ることができるような環境を整えるか、コメ農家の収入を補償する制度などを整えないと、コメ農家の経営が破綻し、結果としてコメ不足が慢性的に起きる恐れがあります。コメはもう、安ければ安いほどよい、とは、今後言えなくなるのではないでしょうか。

海外産のコメ、いつまでも「安い」と思ったら大間違い

――「海外から安いコメを輸入すればいいじゃないか」という意見もありますが。

 もし安いコメを輸入すれば、日本のコメ農家の多くが廃業し、国内生産が大打撃を受けるでしょう。もちろん、食料自給力も失われることになります。それでもかまわないじゃないか、という人もいますが。

 現在のアメリカ大統領は、自動車関税をいきなり25%に上げてしまう人です。なんならもっと上げようとまでしています。もし海外にコメなどの食糧を依存するとして、本当に今後も安くコメを輸出してもらえるかどうか、疑わしいです。しかも、これまで大切にされてきた「自由貿易」が保証されない時代が来る恐れもあります。そんな時代に、本当に安心して食料を海外から輸入し続けられるのか、慎重になる必要があります。

 また、日本の工業力が失われつつあることにも注意が必要です。日本がコメを安く輸入できるのは、まだしも自動車という強い商品を持っていて、それを輸出して、貿易で儲けることができるから。でも自動車産業がダメになり、輸出できる魅力ある製品を失ったとしたら、日本の円は海外の通貨に対して暴落するでしょう。

 もし円安が今よりひどくなったとしたら、安いと思っていた外国産のコメが、国内のコメよりも高いということが起き得ます。実際、2000年に入るころには、海外産のコメは国産のコメの20分の1の価格と言われていたはずなのに、今ではそこまでの価格差はありません。日本の国力が低下し、円安が進んだためでしょう。

「海外のコメは国産のコメより安く買える」時代は、恐らくそう長いことではありません。バブル経済の頃の感覚を引きずって、「海外産は安い」という固定観念を維持していては危険です。日本はすでにかなり貧乏になり、海外のものを安く買える時代は終わりつつあるのだ、という認識が必要になるでしょう。

――「農水省が古臭い作況指数なんて調査をしているから実態を把握できないんだ!」という批判がありますが。

 もちろん、国の食糧をあずかる農水省に責任がないとは言えないかもしれませんが、ちょっと厳しすぎる気もします。というのも、作況指数という調査は、2022年までは問題なく機能していたのですから。ではなぜ、2023年、2024年と機能しなかったのか。異常な猛暑だったからです。

 玄米を精米してみたら砕けてしまったり、カメムシ被害のために変色していたり、と、玄米の段階で判断する作況指数の調査方法では、把握できない問題が急に起きるようになりました。これが2023年から2年立て続けに起きたわけですが、そんな猛暑は過去に例がありませんでした。

 もちろん、もし過去のように食糧庁などの調査機関が残っていて、十分な人員を調査に割くことができたなら、現場で起きた初めての事態にいち早く気がつき、農水省も早期に把握できたかもしれません。しかし、現場を回れる人員が減り、現場の状況を把握することができなくなっていました。

 人を減らすだけ減らしておいて、今まで以上に調査できるようになれ、と要求するのは酷と思われます。それに、ここ2年の猛暑は、過去に例のない被害をもたらしたものでした。「まさか」という思いが、農水省にもあっただろうと推測されます。もちろん、それでも責任官庁なのですから、責任を免れるものではないのですが。