――2024年のコメの消費量が増えたというデータがあるのでしょうか?

 上で紹介した農林水産省「米の需給状況の現状について」でも、2023年のコメの需要量が691万トンだったのに対し、2024年は702万トンと、11万トンも増えていることを示しています。

 総務省家計調査によると、2024年度のコメの購入量は前年度と比べ6.7%も増加しています。(東京新聞「24年度のコメ購入量6.7%増 高騰も支出継続、総務省家計調査」

 2024年の夏にはコメがスーパーから姿を消したうえ、その後どんどん値上がりしたにもかかわらず、コメの購入はむしろ増えたことがこの数字からも分かります。

「ふりかけ」の売り上げ急伸が意味すること

――コメはずいぶん高騰したのに、コメの消費が増えたというのは意外です。

 小麦や肉の価格が値上がりする中で、2024年までの当時でいえば、まだしもコメに割安感があったため、節約志向から消費が増えたものと思われます。このことを示唆するのが「ふりかけ」です。

 AERA DIGITAL〈昭和の食卓では嫌われた「ふりかけ」が過去最高の売り上げに 節約志向で大人の「夜ごはん」でも重宝〉によると、2024年はふりかけの売り上げが過去最高になったそうです。ふりかけはよく知られているように、ご飯にかけて食べるのが主流です。肉などのおかずを減らす代わり、ご飯にふりかけをかけてお腹を膨らまそうとした人が増えた可能性があります。

(写真:Mutiara Ulfah/Shutterstock)

 残念ながら統計はありませんが、節約志向から外食やコンビニでの購入を諦め、家でお弁当を作って持参する人が私の周囲でも増えました。お弁当を自作すると、ふりかけの利用が増えるでしょうし、必然的にコメの消費も増えます。

――ふりかけの売り上げが過去最高になったからと言って、コメの消費が増えたとは限らないのではないでしょうか。

 米穀機構「米の消費動向調査」によると、コメの「購入量」が増えただけでなく、消費量も増えていることが分かります。1カ月当たりのコメの消費量が、2024年度(令和6年度)は、2025年3月を除き、前年度よりも増えています(表1)。2025年3月に減ったのは、さすがに高騰してコメに手が出なくなったからでしょう。でも、2024年度はコメの消費が増えていることがここからも読み取れます。

【表1】1カ月あたりコメの消費量

 以上から考えると、今回の米騒動は、

・猛暑や品種の変更などにより網下米が減少、網上米もくず米や斑点米となって食用で出荷できる量が減少。このため、コメの供給量が減った

・日本人が貧乏になって肉などの消費を抑えた結果、まだ当時割安だったコメの消費が増え、その結果、コメ不足が加速した

 ことが原因ではないかと思われます。

 もっと単純化してまとめると、「コメの消費がコメの供給量を上回り、推定で62万トン不足した」のが、米騒動の原因と思われます。