――生産量がそうして減ったにしても、日本人は長年、おコメの消費をどんどん減らしていると言われていますよね。少子高齢化で、コメをたくさん食べる若者が減り、高齢者は食べる量が減る。

 確かに日本人はコメの消費量がどんどん減ってきました。ピーク時には1人で118kgのコメを食べていたのに、2022年には51kgにまで減っています。かつての半分以下。コメよりもパンを好む人が増えたから、コメの消費量は減り続けているのではないか、と言われていますよね。

(写真:Kholi.art/Shutterstock)

 ところがどうも、2024年はコメの消費量が減るどころか、増えたようです。

 先ほどの農林水産省「米の需給状況の現状について」をご覧いただくと、コメの需要量は、2023年が691万トンだったのに対し、2024年は702万トンと、11万トンも増えています。2009年(令和21年)以降で、数万トンの増減はあったとはいえ、前年と比べ11万トンも増加した年はありません。

肉を買えなくなったのでコメを多く食べるようになった?

――なぜ増加したのでしょうか?

 これは私の仮説でしかありませんが、「日本人が貧乏になり、肉を買えなくなった分、コメを食べるようになったから」ではないかと考えています。

 農林水産省「小麦の自給率」の図2をご覧いただくと、小麦の消費量はここ50年、ほとんど増えていないことが分かります。

農林水産省HP「小麦の自給率」より

「日本人はパンを食べるようになったからコメを食べなくなった」という話がよく信じられていますが、小麦の消費量が頭打ちになったこの50年の間にも、コメの消費はどんどん減っています。代わって増え続けたのが、肉の消費です。

 デイヴィッド・ローベンハイマーらによる『科学者たちが語る食欲』(サンマーク出版)によると、バッタも人間も、タンパク質を食べる量が重要で、タンパク質を十分摂取できると、コメのようなデンプン質を食べる量が減り、タンパク質が不足するとコメのようなデンプン質をたくさん食べるようになる、と言われています。

――肉の消費量が減ったのですか?

 実際、日本人の肉の消費はここ数年、減少しているようです。
公益財団法人 日本食肉流通センター「最近の食肉をめぐる状況( 2025年3月報告 )」によると、ずっと増え続けてきたはずの肉の消費が、ここ数年、減っていることが分かります。

 2020年の肉の購入数量は53573gだったのに、2024年には50350gと、6%も減少しています。これは、ここ数年の物価高のためと思われます。実際、食料の消費者物価は2022年から顕著に上昇し、2024年12月には2021年と比べ22.5%もの値上がりでした。肉もかなりの値上がりをし、牛肉は2021年と比べて19.3%の値上がり、豚肉も22.5%の値上がりとなりました。

 小麦の価格も大幅に値上がりしています。2021年5月には、小麦粉1kgで250円だったものが、2024年1月には328円と、31.2%も値上がりしています。

 肉も小麦も値上がりし、それらを食べる量を減らすようになった結果、それらと比べると当時、まだ割安感があった、2024年のコメの消費が伸びたものと思われます。