DVやレイプ…利用者は「人生の限界点」 赤ちゃんポスト18年 慈恵病院に子を託す女性のリアル
車いす生活で男性5人にレイプ 自殺した女性が相談を寄せるも助けられなかった命
慈恵病院の蓮田健理事長は、様々な事情を抱えた女性たちの言葉に耳を傾けてきた経験の中で、ある一人の女性とお腹の子どもを救えなかったことについてひどく後悔していると語った。 去年、熊本からは離れた場所に住むサキコさん(仮名) から慈恵病院に1本の電話があった。それは、「強姦され妊娠をしてしまった。中絶をしたい」という内容だった。 サキコさんは、急性の神経障害で下半身が不自由になり杖でやっと歩ける程度、普段は車いす生活をしていた。高校生のころはスポーツが万能だったようだ。同じ病気を抱える人とつながりたいとインターネットを検索していたところ、ある女性とつながった。実際に会って話をしようと待ち合わせをすると、そこに現れたのは男性だった。 サキコさんの電話での相談内容 「女性のところへ連れていってあげるよと案内された場所には、5人の男がいた。そこでレイプされて妊娠をしてしまった。男たちが服を脱がせ、下半身が動かずオムツをしていることを笑われたことが屈辱だった」 電話を続けているとサキコさんは内密出産を希望した。しかし、病院の聞き取りでは当時サキコさんの周囲には生活を助ける支援者がいたため蓮田理事長は、支援者が身の回りにいるのであればその人たちを頼ることができるだろうとして地元での出産を促した。それでもサキコさんの電話は続いた。 サキコさんの電話での相談 「慈恵病院で出産したい。妊娠したことは自分の中で受け入れられるものじゃない。」 しばらく電話でのやりとりが続いたあと、サキコさんから電話が来なくなった。連絡が途絶えたことを心配していると、支援者からの連絡でサキコさんが自殺したことがわかった。亡くなる前に腹痛を訴え病院に運ばれ、赤ちゃんも死産していたという。後にわかったのはサキコさんは幼い頃から親からの虐待をうけていたことだ。頼るべき親との関係も破綻している中で、性被害にあって精神的にも不安定な状況が続いていた。 蓮田理事長は、この出来事をきっかけに、助けを求められたことを突き返した自分の判断が誤りだったと後悔の思いが続いていると振り返る。いかなる状況であっても“受け入れる”ことで救えることがあるはずだと思いを改めたと話す。