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第五話 (1) BGM・「大いなる西部」の謎
三十後家店主のしかけた罠 |
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俺は本八幡の大黒家でカツ丼を食い、真間川土手の桜並木を通り、弘法寺のしだれ桜、「野菊の墓」碑を見て、矢切の渡しで金町側へ越境し。柴又の
帝釈天で御神水を頂き、柴又の八幡神社をお参りするコースが好きだった。勿論、団子を頬張ることも忘れず。 川千家で「花見の宴」の経験もあるが、
この時も珍しい(ありがたい)○○体験もある。・・・・そこで、『荷風亭寅次郎』って号を、今、思いついた次第だ。
京成の電車も当時は金町駅~単線で
柴又~高砂が行ったり来たりしていた。京成も景気が悪くて車両もショボかった。同じような色で塗られた玉電で、彼女のアパートへ行くこともあった俺
だが。・・・・・・・京成さんには申し訳ない話なのだが・・・・東急と京成では、明らかに乗っている気分自体が違っている自分自身を発見したものだ。 |
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今、流れているBGMは、「懐かしの映画館・近松座さん http://homepage2.nifty.com/e-tedukuri/movie.htm」から勝手に雑録音させて頂いたもの。
素晴らしい映画と名曲だ。ただし、映画は残念ながら見ていない。財政厳しき者の常で、映画一本にも費用対効果を考える。その時点で選に洩れたの
だろう。ただし、音楽はタダだから耳には残るもの。ましてや・・・人生の一大事があった時、耳にしていた曲ともなれば、生涯忘れることはない。俺(寅)
の場合は、映画の「大いなる西部」とストリップの宣伝看板「大いなる性部」がダブッテ脳裏に浮かんでしまうから、いたって始末が悪い記憶のわけだ。

これは、素人さん、しかも「お得意さんの未亡人店主様」とのお話である。なぜ?こんな事が起きたのかと
いうと、「第二話の 銭湯談義」が原因だと、既に予告済みだ。例の意地悪先輩が、俺をバイクに便乗させ
て、お得意さん回りをしたことがある。 いわゆる新人の紹介って奴だ。コ奴は無類の
「おしゃべり野郎」で、
しかも劣等感の塊みたいな人間だ。こんな奴に多く見られる傾向の、『他人の欠点をあげつらって、自分を
少しでも優位にみせたい』言動を好んでいた。 この時も、型通り の「こんど新しく入った○○○○君です」、
までは普通だったが、 「将来は大物になるかも知れませんよ。なにしろ、『馬』みたいですからネ」。と、付け
加えたのだ。 お得意様に対しては、いたって軽妙に愛想良くジョークをとばす先輩に乗せられた
後家 さん
店主は、『へえー! そんな立派なモン。一度拝んで見たいもんだネエー!』とか・・・軽口をたたいていた。
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新顔紹介といったところで、人事交代があるわけでもないし特別に深い意味を含んではいない。「意地悪番頭」の立場から見れば
「俺は手足のように使える子分もいる男です。どしどし、なんでも御用命のほど、よろしくお願いします」 程度のことでしかない。
上役(先輩)と呼べる人は他にもいるし、その後、主人のあの三男坊教授も現れるし。。。丁稚奉公修行中の俺は忙しい身の上だ。
・・・・半年ほど経って、地理を覚え、言葉使いも覚え、商売上の礼儀も、主人の目にかなうようになると、雑用三昧から出世して?
発送や配達要員だ。 とは言っても、オンボロ自転車に荷物を載せて、お得意さんに注文受けた品物を配達するにすぎない・・・・
なにしろ人使いが荒いから、電車と競争して追い越すくらいでないと、「遅いぞ!」と、一喝されてしまうから結構大変なのだ。実は
前述の「未亡人店主」のお店の場合は、厳密にいうと業種がちがう。主力の商品を売った客に、ついでに頼まれた品を注文してく
る程度だから頻繁に足を運ぶ得意先ではなかった。お中元やお歳暮も、タオル1本や花王石鹸だ。商売上手な親方は、タオルや
石鹸も岩本町の問屋や、隅田川岸に本社のあった花王石鹸から値切って仕入れるから、市価の何分の一程度にすぎないものだ。
秋に入りかけた頃、配達があった。大汗を拭きながら届けた俺に、「ごくろうさん。冷たいものでも飲んで一服しなよ」と声をかけた。
ありがたい話だ。それまで、俺のような金儲けにつながらない駆け出し野郎に、飲み物をサービスしてくれる店なんか滅多にない。
大抵の場合は、伝票と品物と数量を付き合わせ、なかには不良品かどうか検査までして時間をとらせ、「よし、ごくろうさん」である。 |
秋に入りかけた頃、配達があった。大汗を拭きながら届けた俺に、「ごくろうさん。冷たいものでも飲んで一服しなよ」と声をかけた。 ありがたい
話だ。それまで、俺のような金儲けにつながらない駆け出し野郎に、飲み物をサービスしてくれる店なんか滅多にない。 大抵の場合は、伝票
と品物と数量を付き合わせ、なかには不良品かどうか検査までして時間をとらせ、「よし、ごくろうさん」である。 だから、こんな時の対応も慣れ
てはいない。丸椅子に畏まって腰をかけ、サイダーをチビチビ飲みながら、「まだ暑い日が続くねえ」。「ハイ。そうですね」「仕事は慣れてきたか
い?」「ハイ。少しは・・・」「お休みは何してる?」「洗濯したり・・・映画とか・・・」。・・・・・・実際には、テキパキと話す女主人と、漸く 日常必要な
商用会話に不自由しない程度の俺との会話が成り立つはずもない。考えてみれば、俺自身、こんなかたちで、女性と一対一で会話すること等、
生まれてはじめてなのだ。途中、お客さんが来ているうちに、サイダーは飲み終えたのだが、客が帰ると、また、サイダーを注いだ。そして・・
「そう言えば、今度、映画のタダ券が貰えるから、あげるよ!、日曜んなったら出かけて来なよ!」。との話。・・・・・その店は渋谷に程近い所。
今日はいい日だ。飲み物をご馳走になったし、映画までタダで見れるし。と、ウキウキ気分で、・・・『映画が
「大菩薩峠」 だとイイんだがなー』と、
ワクワクして帰った。 |
日曜日。一張羅のジャンパーと布団で寝押ししたズボンをはき、中古の革靴を履いて出かけた。 が、お店はカーテンを引いてあって「休業」の様子。??
ガラス戸は開いていたので、声をかけると。。。 ちょっと、メカシた顔つきの主人が出てきて、「私もお休みだから、ご一緒するよ!」と、スタスタ先になって
歩きはじめた。10分ほど歩けば、賑やかな繁華街がはじまり、その一角から映画館が並んでいる。 期待していた「大菩薩峠」を通り越すと、「成人映画」を
上映している劇場に、スーッと入ってから振り返って手招きをした。俺の頭の中は完全にパニックだ。入口付近に人影はなく、開演を告げるベルがジリジリと
鳴っていた。・・・・・18歳未満お断りといっても、いまどきのものではない。パリ?あたりのヌード劇場らしきショーが、強烈なトランペット曲とともに、延々と映
し出されるものだった。生まれて初めて目にした外人の豊満な肉体とトランペットは、地獄へ行っても忘れられないほど耳と脳裏に残っている。18禁の犯罪
も気になる半坊主頭の俺は、映画館を出るまでに少しでも髪の毛の伸びることを願ってたものだ。映画館を出る時、ご主人は
「うちで御飯食べて帰んな」
と耳元で囁いた。もと来た道を数歩おくれで歩く俺の姿は、傍目には夢遊病者のように写ってたかも知れない。汗もたっぷりかいたし、猿股もぬれていた。
いままで伏せていた訳ではないが、この未亡人店主様は、中一の女の子のいる30台後半、中肉中背ぽちゃ顔の女性である。20以上は年上のはずだ。 |
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お店まで帰りつき、表のガラス戸を開けてカーテンをくぐり薄暗い店内を通り抜け、いつも女主人が陣取っているダイニングに辿り着く。すると主人は、「ああ、
暑かったー!」と声をあげながらブラウスを脱ぎ捨てながら、まだ「暑い、暑い」と言いつつエプロンをした。エプロンの紐を結ぶと、今度はスカートまで脱いで、
奥につづく部屋に投げ入れる。下はシュミーズ一枚だ!。?! 思わずドキつく俺には目もくれずに、「カレーライスだよ!あんた好きなんだろ!」と言いつつ、
ガスをひねってマッチをする。食器棚から手際よく、お皿とスプーン、コップを用意すると、一升瓶を取り出してコップに注いで、一口ゴクンと飲んだ。その間に、
コンロの鍋が音をたてはじめた。・・・・・・・・・・・
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当時はこんな看板もあった。 |
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