「がんを早期発見できるかはまだわからない」 線虫がん検査共同研究者の告白
テレビなどで活発に宣伝をしている線虫がん検査「N-NOSE」の「がん検診」としての性能について、医療プレミア(現毎日メディカル)では2023年以来、疑問点を追及してきました。一方、この検査キットを開発、販売しているHIROTSUバイオサイエンス(以下ヒロツ社)は国内の複数の医療機関との共同研究成果をホームページなどで紹介し、その科学的根拠を強調しています。24年末、その一つに、瀬戸泰之・国立がん研究センター中央病院長らとの共同研究が加わりました(論文発表当時は東京大教授)。瀬戸院長は、事務局をヒロツ社内に置いて18年に発足した「日本生物診断研究会」の代表理事でもありました(現在は退任)。瀬戸院長にN-NOSEのがん検診としてのあり方について聞きました。
N-NOSEの商品化知らなかった
――日本生物診断研究会の代表理事に就かれた経緯を教えてください。
◆広津(崇亮)先生(元九州大助教、現HIROTSUバイオサイエンス社長)が九州大学時代に書かれた論文を知人から紹介されました。僕としても線虫という生物の力を診断に使うのは非侵襲的な(編集部注:体に負担が少ない)検査法なので、興味がありました。
――就任後、研究会はどんな活動をされ、組織のトップとして瀬戸先生はどんな仕事をしてきたのでしょうか。
◆年2回の研究発表会で、研究結果を発表してきました。組織と言っても、研究会で成果を発表する程度です。私自身、特に何もしていないと認識しています。
――権威付けとして、東大教授である瀬戸先生の肩書が利用された感じがしますが。
◆それは僕にわかることではないです。
――N-NOSE発売から約5年たちますが、どれくらいご存じですか。
◆販売開始を知らされたということはなく、それに対してアドバイスしたこともありません。僕は線虫ががんのにおいを嗅ぎつけるという点に興味を持ったのであって、N-NOSEという言葉自体、コマーシャルで知りました。
――現在は利用者が70万人いるそうです。
◆知りませんでした。
――研究会の活動で「ある程度の基礎知識は把握しておかないと」という意識はなかったのですか。
◆研究会では、使い方の話は出ていません。特定集団に対してどれくらいの感度だったとか、発表はもちろんありました。ただ細かいことは覚えていません。
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たかの・さとし 1989年入社。東京・大阪本社科学環境部、医学誌MMJ(毎日メディカルジャーナル)編集長、医療福祉部編集委員、福井支局長などを歴任。