第5回減税でトクをするのは誰か?消費税の年間負担額、年収別に試算すると
わたしたちは消費税を、一体いくら払っているのだろう。毎日の買い物やサービスを利用するたびに実感する消費税は、身近なようで、負担の全体像は見えにくい。
そこで、財務省の資料をもとに、世帯年収ごとの税額を試算した。会社員や公務員といった勤め人が世帯主で、2人以上の世帯を対象とした。
平均的な世帯年収は700万円台(700万円以上800万円未満)で、この層が1年間に支払う税金の額を平均すると、主な3税(消費税、所得税、住民税)の合計は約63万円。うち消費税は約27万円で、半分弱を占める。
わたしたちの給与からは、社会保険料も引かれている。この層の負担額は年約74万円で、3税の合計よりも多かった。
年収200万円台(200万円以上300万円未満)の世帯だと、消費税の重みがぐっと増す。3税の負担額は平均約25.5万円で、うち消費税が約17.5万円と7割近くを占める。生活費を切り詰めている人にとっては、消費税の「負担感」は、より強いといえる。
また、年収が300万円に満たない低所得の世帯は、支出に占める食料品の割合が3割にのぼる。食料品の消費税だけでも、年4万~5万円ほどを負担している。
年収1250万円以上1500万円未満の高所得世帯では、3税の負担額は平均約170万円にはねあがる。所得税や住民税の負担が所得に応じて上がるためだ。高額な商品を買う余裕もあり、消費の総額も増えるため、消費税は約40万円と高くなる。ただ、3税に占める割合は2割程度にとどまる。
今回の参院選では、消費減税が争点の一つとして注目されている。減税を公約に掲げる野党側に対し、石破茂首相(自民党総裁)は「消費税はお金持ちほど、たくさん減税になる」と述べるなど、議論を呼んでいる。
もし消費減税が実現したら
実際に減税された場合、トクをするのは誰なのか。
消費税を一律に減税すると、確かに消費額が大きい高所得者のほうが、金額ベースでは減少幅が大きくなる。一方、低所得者にとっては、税負担の大きな割合を占める消費税が減るため、生活が楽になる面はある。「金額」と「割合」で見え方が異なり、誰の恩恵が大きいとは言い切れない。
長引く物価高もあり、負担を感じやすい消費税はやり玉にあがりやすい。だが、東京財団シニア政策オフィサーの森信茂樹さんは「目先の負担感ばかりの議論になってしまっているが、生涯を通じた負担のあり方を考える必要がある」と話す。
所得に応じて額が決まる所得税や住民税、社会保険料は、どうしても現役世代に負担が偏ってしまう。それに対して消費税は、定年退職した高齢者らも払う。「世代間の負担を公平にするという長所もある」という。
消費税が導入された1989年以前、日本の税収の約4割は所得税が占めていたが、2024年度は3割弱になった。
消費税率は段階的に10%まで引き上げられたが、社会保障の予算には足りていない。日本では消費増税は敬遠されがちで、かわりに、主に現役世代が負担する社会保険料を増やしてきた側面もある。森信さんは「税の議論から逃げると、(社会保険料を含めた)負担全体のバランスがゆがんでしまう」と指摘する。
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不満の矛先が消費税に向けられている。それは、歴史の「必然」でもあった。(次回に続く)
参院選の投開票を前に、消費税のあり方について考えます。3回連載します。
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