【現地ルポ】「さよならパンダ......」。町民の怒りを受ける"親台湾派"町長にも直撃! "パンダのまち"和歌山・白浜は今後どうなる!?
――前町長時代に、町はパンダ繁殖研究基地のある中国・四川省成都市成華区と姉妹都市提携を目指して覚書を交わしたにもかかわらず、大江さんが町長になった後、断ったことを怒っている町民も多いです。これについては? 「成都と姉妹都市提携を結ぶとなったとき、それなりの条件が必要だと僕は考えました。例えば、白浜には雌のパンダしかいなかった。そこに雄を1頭送りますよと言われていたら、話も違っていたと思いますし、姉妹都市提携も考えていたと思います。 そんな約束や提案もなしにただ『姉妹都市として仲良くしましょう』と言われても、なんのメリットがあるのかはっきりしない。仲良くするぐらいなら、今でもできていますから。少なくとも台湾とこれだけの信頼関係をつくってきてるのに、メリットが見当たらない中で、じゃあやりましょうとはいかないです」 ――宿泊施設を経営されている方が、今後の不安を感じているようです。 「パンダがいないとにっちもさっちもいかないという状況になったら、自分たちで中国にお願いに行けばいいと思っています。 ですが、そもそも町がそこまでしないといけないのかは疑問です。もうすでに、われわれはポストパンダに切り替わっていますから。パンダはもういないという前提で、そうした中でいかに観光客に来ていただくかということを考えています」 ――ポストパンダの具体例は? 「白浜町は観光に関係するいろんな規制が多かったんです。われわれ行政側が規制をかけて、これはダメ、あれはダメと言い続けてきた。その象徴が白良浜です。 町の観光シンボルみたいな場所なんですが、ビーチでは食べ物はダメ、お酒もダメとそんな規制をしてきました。僕が町長になってそれはやめました。 ビーチには夜11時まで開いていて、食事やお酒も飲めるビーチハウスを造って(8月1日オープン予定)、楽しんでもらおうと。 さらに、浜辺沿いの遊歩道もワンちゃんと歩けるようにしました。またそれとは別に、町内にドッグランも造りました。あと、イベントも例年以上に多く白良浜でやったり、町内には千畳敷、三段壁、円月島と観光地があるんですが、そこでのイベントも増やしていこうと思っています」 ――ドッグランに行ったんですが、4時半までに犬を散歩させるのは無理との声が。 「そのとおりです。夏場に4時半までで終わりというのは『来るなと言ってるのと同じ』と、時間制限を廃止しました。施錠もしていないので基本は利用OKです。まだ4時半までと書いてましたか......。事務方に早く周知せよと言ったんですが......」 ――ドッグランを造ったり、白良浜の遊歩道を犬連れOKに変えたりと、今の町長はパンダより犬に力が入っているという声もあります。 「まあ。僕も犬が好きですし(笑)。僕は柴犬を飼ってます」 ――こうした批判の声は耳に入っているのでしょうか? 「そら聞こえてきます。でも僕はダメなものはダメとハッキリ言いますから。批判されるのは政治家を四十数年もやっていたら慣れました。でも、私のことを支持してくれる町民もいますので」 ――パンダがいなくなっても、白浜町はどんどん変わっていくということですね。 「はい。期待して見ていただけたらと思います」 パンダのいた町で終わるのか。新しい観光戦略が功を奏するのか。町長の手腕に注目だ。 取材・構成・撮影/ボールルーム 写真/時事通信社(パンダ)