ウチの戦隊ブルーが悪の女幹部として配信してるんだけど、どうすれば良いと思う?   作:新月

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すみません、投稿遅れました。
どうぞお楽しみ下さい。


俺の事が紹介されてるんだけど、どうすればいいと思う?

「特別放送! 【カオス・ワールド・チャンネルー!!】 テーマは、期待の新人の紹介でーす!」

 

 :なんだなんだ? 

 :ティアー様ー! 

 :いつもと違う時間だね? 

 :新人紹介か

 :あれ? もっと後の時期の予定じゃなかったっけ? 

 

 放送室と呼ばれた部屋の中で、ティアーがカメラに向かってそう高らかに声を上げていた。

 部屋の中は名前の通り放送機材が沢山あったが、あまりにも本格的過ぎる。

 ヒーロー関連の仕事をするときに、たまに(本当にたまに)テレビ局に呼ばれた事があったが、そのとき見た機材とこの場所のものがほとんど大差ない。

 テレビカメラは勿論、集音マイクなどどれもがガチだ。

 テレビ局のスタジオと言われても信じられるだろう。

 そんな部屋の中で、慣れた様子でティアーが進行を続けていく。

 

「こちら、その期待の新人君、“サタン・クロス”君でーす! わー、パチパチ!」

「どうも。よろしくお願いします」

 

 ティアーの横に立たされ、俺は軽く一言挨拶する。

 多少状況に面食らったが、元々ヒーローとしてインタビューは何度か(少ないけど)経験はある。

 俺はそれほど緊張せずにカメラの前に立っていた。

 

 :誰だこいつ? 

 :全身鎧カッケー!? 

 :なんだと!? 俺まだ汎用スーツなのに!! 

 :新人のくせに生意気ー!! 

 :羨ましいー!! 

 :キャー、イケメーン! 

 :鎧で顔隠れてるよ? 

 

 テーブルに仕込まれている、コメント確認用の画面に様々な感想が流れ込んでいる。

 とりあえず掴みとしては上々か? 多少否定的な意見もあるが、概ねノリがいい感じだ。

 

「クロス君は、私とカイザー自らのスカウトでやって来ましたー! なんと彼、【ダーク・ガジェット】歴が短い中、上位ヒーローと非公開対決で引き分けてまーす!!」

 

 :うっそだろ?! 

 :スッゴーい!! 

 :出来過ぎ

 :おっ、やらせかあ? 

 :よく無事だったね

 :お前らティアー様疑うの? 

 :カイザー様直々って、今まで幹部くらいしかいないよね? 

 

 俺が上位ヒーローと戦ったと聞いて、コメントの盛り上がりが激しくなった。

 信じきれない奴もいるが、ティアーの言葉としてひとまず納得している奴が多いらしい。

 

「そんな訳でクロス君は、ひとまず来月募集のアルバイターの先駆けとして採用していまーす。功績を上げたら、正規採用も夢じゃないかも!」

「へ?」

 

 :今へ? って言ったぞ

 :知らなかったのその人? 

 :なんだ、ただのバイトか

 :じゃあ尚更なんだよその専用スーツっていうか鎧!? 

 :かわいそう

 

 ちょっと待て、俺アルバイト希望とは言ったけど、正規雇用は要望してないからな!? 

 ああ!? よく見たらコメント欄、俺が正規雇用のつもりだった勘違い男として同情されている流れに!? 

 ティアーも今気づいたのか、小さく「ごめんちゃいっ」と言って来ている。それは、どっちの意味で? 

 正規雇用の話をしてなかった事なのか、アルバイトでごめんねーって意味なのか? 

 後者ならそっちの勘違いだから!! 

 

「ま、まあ気を取り直して! ここから視聴者のみんなから、クロス君に質問タイムに入りたいと思いまーす! みんな、質問コメントどうぞ!」

 

 :質問だって

 :男ですか、女ですか? 

 :クロス“”って言ってたから、男じゃね? 

 :いや、女の子の可能性はまだ残ってる! 君付け女子サイコー! 

 

 ティアーから事前に聞かされていた質問コーナーに入った。

 流れとしては質問コメントの中からティアーがちょうど良いのを拾い上げて、それを俺が回答するという形になっている。

 

「ふむふむ。まずは性別ね。クロス君、改めて聞くけど男、女? それともジェンダー?」

「普通に男だな」

 

 :チッ! 

 :チッ!! 

 :チィィィィッ!!! 

 :裏切られた気分

 :ハイ解散

 :夢なんて無かった

 

 コメント欄が一気に荒くなった。

 側から見て正直な分かりやすい奴らだった。

 

「他の質問あるー?」

 

 :なんで汎用スーツ着てないの? 

 :素顔見せてー! 

 :所属どこになる予定ー? 

 :ポイント何に使う予定? 

 :能力はどんなの? 

 :彼女いますか!? 

 :上位ヒーローって誰と戦ったの? 

 :三幹部の中で誰が推し? 

 :実家は何処? 

 :ヒーローの存在どう思ってる? 

 :旧世代のヴィランに関してどう思う? 

 :本名は? 

 

 一気に大量のコメントが流れてくる。

 ちょっと気を抜いたら見逃しそうだ。

 しかしそれらをティアーはしっかり見つめている。

 

「ふむふむ。たくさんの質問が出て来たわね。さて、どれを選ぼうかしら……」

 

 よしっ! と、ティアーが手を叩いて、俺の方を向いて……

 

「彼女いますか?」

「あの沢山の質問の中から、選んだのがそれ?」

 

 俺は思わずティアーにツッコンでしまっていた。

 もっと他に重要そうな質問なかった? 所属とか能力とか、そういうの。

 

「うん。重要だから」

「えー……? まあ……いるっちゃいるけど」

「おお、いるのね! ねね、どういう人!? 興味あるわ!」

「えーっと……」

 

 すっごく興味津々に聞いてくるティアーに対して、俺はなんて答えようか考える。

 どういう人っていうか……“めっちゃ目の前にいる”んですけど。

 これマジでどう答えよう……

 

 :マジかよ、彼女持ちかよ!? 

 :羨ましいっっっ!!!! 

 :俺なんて彼女いない歴=年齢なのにー!! 

 :ッチ、彼女持ちかよ

 :死ね

 :私が名乗り出たかったのにー

 :強さと彼女を両方持っているだって!? 

 :せっかくのイケメン候補がー!! 

 :おい貴様、どういう事だ

 :だから顔見えてないって

 :天は二物を与えやがった

 

「まあ、明るく、場の空気を盛り上げようとしてくれる人かな……」

「へー、ムードメーカーって事かしら?」

「他にも、なんやかんや細かい事に気を配ってくれるっていうか、サポート能力が高いって人だな」

「ふんふん。なんか私に似てるわね、親近感湧いちゃう」

 

 ティアーが頷きながら話を聞いて、そんな事を呟く。

 そりゃあ、お前/本人だからな。

 これで他の質問に行けばいいのに……ティアーはわざわざ、更に話を深掘りしようとしてくる。

 

「ねね、その彼女さんとは何処まで行ったの? 恋愛A、B、Cのどれ? それとも、D、E、F? Z?」

「なんだ、D、E、Fって」

 

 ちょっと待て、恋愛ABCは少し聞いたことあるけど、DEFは知らねーぞ? 

 俺は本気で困惑していた。

 するとコメント欄に有識者が現れる。

 

 :軽く説明すると、

 

 A、キス

 B、ペッティング(身体を撫でたり触ったり)

 C、性行

 

 :ここまでが基本。で、他が。

 

 D、妊娠

 E、結婚

 F、家族になる

 

 :だいたいこんな感じ

 :リスト化ありがとうー

 :他にも、Zとかあるぞ。

 

 :Z、終わり、別れを意味する。

 

 :へー、参考になる

 :今時の最新は違うぜ!! 時代はH・I・J・Kよ! 

 :一応、そっちも

 

 H、セックス

 I、愛が生まれる

 J、妊娠

 K、結婚

 

 :となっている。ABCとは違うステップの見方だな。

 

「へー。DEFはともかく、HIJKは知らなかったわ私。参考になるわねー」

「俺も。そっちは全然知らなかった」

「で、改めて聞くけどこの中で何処まで行ったのクロス君?」

 

 えーっと……

 

「……“a”」

「めっちゃ小さくAって言ったけど、要はキスまでって事? まあプラトニック……」

「……“間接キスって、スモールaかなって思って”」

「まさかのAすら行ってなかった!?」

 

 ティアーが目を見開いて、口元に手を当てながら驚きの声を上げている。

 最近だと、この間のショッピングセンターの時のパフェのアーンが記憶に新しい。

 確かあの時のブルー、自爆してたな。

 一応あれもカウントされる筈、うん……

 

「えっと……お付き合い、もしかして数日か一月行ってない感じ?」

「確か、2~3年は経ってると思う」

 

 :おい、全然恋愛進んでねーぞ

 :ABCのAすら入ってないって……

 :間接キスをわざわざ入れる? 

 :いや待って、むしろキスより間接キスの方が難易度高いかもしれない! 

 :知らねーよ

 :それなら昔部活の先輩とやっちゃったんだけど

 :↑羨ましい!! 

 :↑↑男同士だけどな

 :終えっ!! 

 :キマシタワー!! 

 :バラですわー!? 

 :どっちもやった事ないからわかんねえよおおお!! 

 :本当に恋人関係? 

 

「お、お出かけとか、ショッピングセンターとか喫茶店はよく一緒に行ってたし……」

 

 :声震えているぞ

 

 じゃかあしい。一応遊園地に遊びに行ったりとか、映画館に行ったりとかはやってんだよ。

 恋愛ABCは知らねーけど、それ以外はちゃんとやってんだよこっちは。

 ただでさえヒーロー関連の仕事が忙しかったから、隙間時間に一緒にお出かけするくらいが精一杯だったんだよ。

 ……まあ、そのたまの一緒のお出かけの最中、ヴィラン関連の騒動に巻き込まれる頻度も多かったけど。

 この間のショッピングセンターの出来事とかまさにそれ。

 

「なるほどねえ。正直、他人事じゃないわね……コホン、それはともかく。私からの感想だけど、お出かけ類はともかく、ABCはもうちょい進んでもいいんじゃない? それで数年って……ちゃんと彼女さんと話し合って、もう少し進めましょうよ」

「まあ、俺もそう思ってたんだよ。それで、少し前に話そうとしたんだよ。もう少し恋人らしい事をやらないかって。けど……」

「けど?」

 

 

「──“その彼女が、もしかしてハニトラ要員として俺に近づいた可能性が湧き上がってな”……」

 

「……………………ぉぅ」

 

 

 俺の目をそらしながら言った言葉に、ティアーは声を出せずにいた。

 

 :へ? なんで!? 

 :お金でも要求された? 

 :ざまあっ!! 

 :もしそうなら可哀相

 :ちょっと待って、ちゃんと確かめた!? 

 

「え、えーっと……一応なんだけど、なんでその考えに至ったの? 何かの勘違いとか……」

「……詳細省くんだけど、“その彼女、とある悪の組織の一員だった事が判明してな”。しかも俺と付き合う前から。それに気づいて以来、あれ、俺に近づいた理由って……って、なって」

 

 :かわいそう

 :可哀相

 :かわいそう……

 :可哀想

 :ドンマイ

 :ざまあ! 

 :こいつ、ヒーロー関係者の仕事してね? 

 :ドンマイ……

 :ヴィラン同士の探り合いかもしれないだろー

 :俺、実は元ヒーロー組織のスーツデザイン担当者ー

 :こっちにも裏切り者がいたよ

 :かわいそう

 :恋人を信じきれなくなっちゃったんだね……

 :お前も結局【カオス・ワールド】に入ってるじゃねーか

 :まあ元気出して

 

 俺がこの考えに至ってしまったのは、ティアーの配信を見つけてからだ。

 あの時からブルーがティアーだという事を知ってしまい、その可能性は低いとは思ってはいるんだけど、どうしてもハニトラの一種かどうかという考えが脳裏に過ってしまう。

 そのせいで、恋人らしい事もっとしないかっていう相談をするタイミングも逃してしまっていた。

 それ以来、なんやかんやヒーローの仕事が忙しいからごまかしていたけど、実はちょっとブルーとの距離感を掴みかねていたのが現在だったりする。

 仕事仲間としては十分信頼に値するが、恋人として本当はコイツ俺のことどう思ってるんだろう、と悩んでいたりする。

 

 それを聞いて、ティアーが慌てて声を掛けてくる。

 

「げ、元気出して!! もしかしたら、悪の組織所属とは関係無しに、その人の事愛してるかもしれないじゃない!! ちゃんと話し合えば、分かるわよ!!」

「……じゃあ仮にですけど。“ティアーさんがこの彼女さんの立場だったら、ちゃんと話し合えますか?”」

「……………………………………………………ちょっと、時期尚早かなって」

 

 めっちゃ目を逸らすティアー。

 うん、言えないよな。ブルーがティアーでした、なんて。

 なるほど、とりあえずそれが今のティアーの本音っと。やっぱり暫く相談しないでおこう。

 

「で、でもヴィランとの恋愛関係も普通にありだと思うの!! ウチの組織にも、一般人と結婚してる仲間が沢山いるし!! 真実の愛って組織間に縛られないと思うの!!」

 

 :ティアー様必死

 :レッドっていう自分の好きな人いるから他人事じゃないんだろうな

 :レッド羨ましい!! 

 :ティアー様ヒーローとの恋愛は流石に無理筋ですってー! 

 :やってみなきゃ分からねーだろー!? 

 :茨の道ってレベルじゃねーぞ!! 

 

 ティアーがなおも俺を説得させようとしてくる中、コメント欄にとある言葉が流れる。

 

 :ていうか、結局アンタも【カオス・ワールド】に入ってるじゃねーか。お互い様じゃねーの? 

 :確かに

 :それはそう

 :人の事言えなくなったよね

 

 まあ、確かにそうだな。

 俺はたまたま流れでここにアルバイトする事になったけど……まあ、一応。

 

「……正直、“俺も悪の組織に所属すればこの恋人の気持ちが分かるのかな?” って、少し期待して、それで入ったのも理由の一つなんだよな」

「……! そうだったの!?」

「うん。金関係だけでなく、相手の気持ちが分かるようになるかなって思って」

 

 これは嘘じゃない。

 ヒーローとヴィラン。二重生活をしているブルーの事を、実際に俺自身も経験する事で、ティアーの気持ちが少し分かるんじゃないかと思ってアルバイトの希望を出したのだ。

 少なくとも、何も知らないよりは少しでも知りたいと思ったから。

 

 :おお、カッコイイ

 :ちゃんと考えているんですね

 :頑張ってください! 

 :なんか、相手が浮気してたから、自分も浮気しても文句ないでしょっていう謳い文句にしか聞こえない

 :えぐいボールが飛んで行った

 :確かにそれはそう

 :浮気相手の気持ちを知りたいために、浮気しました。うん、酷いねこれ

 

 めっちゃグサッとくるコメント止めてくれる? 今改めて振り返ってみて自覚したから。

 こうしてみると最低男じゃん俺。

 

「と、とりあえず恋人さんの気持ちを知るために、【カオス・ワールド】のアルバイト頑張っていきましょうね!! それじゃあ、次の質問は〜……」

 

 ☆★☆

 

 玉座の間。

 

「……………………」

 

 そこでカイザーは、スマホを片手に持って画面を覗いていた。

 見ているのは、先ほど別れたティアーとサンタクロースの配信動画だ。

 その内容で、サンタクロースに彼女がいるという事実を初めて聞いたのだが……

 

「………………………………………………………………ふぅぅぅん?」

 

 今現在の彼女との関係の話を聞き終えた後、カイザーは一言そう呟き。

 続けてスマホで一旦別の画面を開いて、グーグル検索をする。内容は……

 

「………………ッチ。“慰謝料の相場”がマチマチでよく分からんな。まあ、“3億”くらい用意すれば十分か」

 

 そうして、カイザーは自分の持ってる個人資産から、一定の財産を分けておく。

 これで準備は整った、と安心する。

 万が一足りなければ躊躇なく追加するつもりだ。

 そうして、再度映像を見直して、画面の中のサンタクロースに目を向けた。

 

「……確か貴様は、法を重視していたな? ああ、いいだろう。ちゃーんと、正々堂々法に則ってやるとも。その方が、貴様も気分がいい/言い訳が利かないだろう?」

 

 その目は、まるで絶対逃さないと言いたいような目つきをしていた────

 

 

 


 

 

 ★佐藤聖夜(さとうせいや)

 23歳

 175cm

 黒髪

 中立・善

 

 主人公

【ジャスティス戦隊】のレッド。

 サンタクロース改め、サタン・クロス。

 

 実は、ブルーの悪の組織の配信バレの際、結構ショック受けてた人。

 本格的に付き合おうと相談しようとした矢先のことだった。

 本編中、実はずっと裏でその事を悩んでいたりする。

 ブルーのアプローチを揶揄いながら躱していたのもその為。

 少しでもティアーの事を知りたいというのは、切実な本音だったりする。

 

 

 ★天野涙(あまのるい)

 22歳

 168cm

 青髪

 混沌・善

 

【ジャスティス戦隊】のブルー。

 兼、【カオス・ワールド】の幹部、“コバルト・ティアー”。

 

 自分がハニトラの疑いを持たれてるとは一切気付いていない人。

 まさか自分の彼氏がティアーとしての自分の事を知ってるとは今だに思っていない。

 今回のクロス君の話を到底他人事とは思えず、自分の先行例として是非上手くいってほしいと願っている。

 

 それはそれとして、確かカイザーとめっちゃ仲良くなかったっけ? と疑問に思っている。

 あれ? カイちゃん、私との昔からの付き合い以外で、男と付き合う暇あったっけ……? 

 まさか親友が黙って彼氏を作ってるとは思えず、ひとまず勘違いだろうと置いておいた。

 

 

 ★カイザー

 22歳

 172cm

 紫髪

 混沌・悪

 

【カオス・ワールド】のボス。

 ティアーの幼馴染み。

 

 サンタクロースの彼女がいる事初耳だった人。

 それを聞いても、“普通に奪う気満々”でもある人。

 慰謝料の暴力で文句を言わせるつもりは無い。

 無理矢理奪っても、自分に心を向かせない事は分かっている為、相手の大事にしている事は尊重した上で奪うつもり。

 ちゃんと法に則るさ。貴様の気にいる/逃さないやり方で、貴様を奪ってやる。

 




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