ウチの戦隊ブルーが悪の女幹部として配信してるんだけど、どうすれば良いと思う? 作:新月
【カオス・ワールド】の本拠地に来ちゃったんだけど、どうすればいいと思う?
「ただいまー! 要項持って来たわよー!」
「ああ、おかえりティアー」
俺とカイザーの会話がひと段落していると、飛び出していたティアーが戻って来た。
その手には書類などをよく入れている大きめの封筒が握られており、ご丁寧に【カオス・ワールド】のエンブレムらしきイラストも描かれていた。
「はい、クロス君! 契約書とか入っているから、ちゃんと確認してね」
「ああ、分かった。今この場で書けばいいのか?」
俺は封筒を受け取り、中をすぐ開くか確認をするが、ティアーは少し迷った後否定する。
「んー……いや、今はまだいいわ。それより、アジト内を先に紹介しましょう! その後でも遅くは無いわ! って、あー……そういえばクロス君、あなたって一応病み上がりみたいなものよね? 起きたばかりだし、紹介は別の日に回す?」
「いや、大丈夫だ。おかげさまで元気いっぱいだからな。動いても問題無い」
「そう? 良かったー!」
そうして、ティアーは喜んだ後、今度はうーん……と悩み始める。
どうした?
「どこから紹介しようかしら? 食堂? 休憩室? 玄関ホール? PCルーム? 図書館? 放送室? うーん、どれからがいいかしら……」
「おかしいな? およそ悪の組織とは思えないラインナップばかりが並んでいたような気がするんだけど」
ほら、もっとこう……あるだろ。
訓練室とか、武器庫とか、もっと重要そうな場所。
むしろそこら辺を優先的に紹介するべきだろ。
そんな事を思っていると、見かねたカイザーが口を挟み出す。
「そんなものをチマチマ紹介するより、先にテラスに行って外の様子を見せた方が遥かに早いのでは無いか? その方が我らの凄さも伝わりやすいだろう」
「っ!? カイちゃん天才! その案頂き! じゃ、付いて来てー!」
そう言ってティアーは部屋の出口まで走っていき、こっちこっちー、と手を振っている。
それをやれやれと呟きながら、カイザーと俺は付いて行った……
☆★☆
豪華な廊下を通り、エレベーターに乗ってかなり高層まで移動して。
そこから俺達は屋外に連れて来られる。
この辺一帯の景色がよく見えそうだ。
「さあ、クロス君! 見渡して見て!」
「ああ」
そう言われて、俺は手すりギリギリのところまで近づき、辺りを見下ろす──
「──は?」
一瞬、言葉を失い。
「──なんじゃこりゃああああああああぁぁああッ??!!!」
そして、絶叫。俺の目に入ったものとは……
『きゃーきゃー!!』
『わー、ひゃー!』
高速で動くジェットコースターの様な乗り物。
『おー!』
『相変わらずデッカいモニュメントねー』
【カオス・ワールド】のシンボルの付いた噴水の広場。
『みんなー! 盛り上がってるー!?』
『『『アイリスちゃーんっ!!』』』
アイドルのコンサートらしきものをやっている巨大ステージ。
『行っけー!!』
『コーナー攻めて、コーナー!!』
レーシングカーの走ってるサーキットコース。
『ガオオオオッ!!』
『きゃー!? 吠えたー!!』
『こっちはヨチヨチ歩いてるー!』
ライオンやペンギンなどがいる動物園らしき場所。
『エース、いっきまーす!』
『展示だから動かねえよー!』
巨大ロボットのモニュメント。
『うわひゃあああああああぁぁああ?!!』
『あはは! 落ちたー!!』
タワーらしき場所からのバンジージャンプ。
他にも、観覧車、巨大プールとスライダー、ゴルフ場などなど……
「遊園地かよここはッ?!!」
いや、最早遊園地でもねえな!?
いろんな施設が雑多にミックスしてやがる!!
悪の組織のアジトと言うより、どっかのテーマパークって言われた方が遥かに納得出来るわ?!
並のテーマパークよりテーマパークしてるぞおい!?
「どう? 驚いた!?」
「驚くわ!? どこが悪の組織のアジト!? 隠すどころか、夢と希望がミッチミチじゃねーか!? 何、遊び場!?」
「アッハッハ!! まあ仕方なかろう! 増改築を繰り返していたら、いつの間にかこんな事になってしまったのだからな!!」
「増改築って……どんな建築計画!?」
俺の驚きに対して、おかしそうに笑い声を上げるカイザー。
お前アジトこんなんでいいのかおい!?
心が広いって言うより、どっちかと言うと頭おかしいんじゃねえのが来るぞおい!?
ちょっとその建築計画書見せてくれない!?
どっかのテーマパーク用と取り違えたとかじゃねーの!?
「でもよく見てー! この今いるお城は気合入ってるの!!」
「うん、確かに凄いよこのお城。でもこんな周囲の中の中心部だと、アトラクション施設の一部にしか見えねーんだわ最早」
振り返ってよく見ると、確かに俺たちの立っている場所は濃い紫色の巨大な城。
威厳たっぷりで、これだけなら悪の組織の本拠地として納得出来るだろう、威厳たっぷりだ。
周囲がワクワク施設だらけの中で無ければ、だが。最早テーマパーク施設の一つにしか思えない。
そう思っていると、カイザーが笑いを堪えながら話しかけてくる。
「まあ、うちの方針にしたがっていたら、いつの間にかこんな事になってしまったのだよ。中々愉快な光景だろう?」
「自分のアジトなのに、愉快って言うんだお前……おかしいな? お前たちの方針って“世界征服”だった様な気がするんだけど、俺の勘違いだったかな?」
「我の目的としては合ってるぞ? ただ組織の成り立ちと方向性としては、結果的にこの光景に繋がってしまったというだけで」
「どゆこと?」
どんな方向性?
やっぱこの組織、どっか色々チゲーわ。
普通の悪の組織とは違って、なんかネジが複数本外れて明後日の方向向いてる感じする。
……考えてみればこの組織、ティアーが発端だったんだよな、成立って……
となると、アイツの普段のノリから考えると、一味も二味もおかしな様子もある意味納得出来るか……
そう頭を抱えていると……
「まあ、“うちの報酬システムが独特”だからね。そのせいもあって、この光景が生まれちゃったの」
「は? 独特? 普通に給料制とかじゃねーの?」
「現金も扱っているけど、基本は“ポイント制”でーす」
そう言って、指でバッテン印を作るティアー。
いやまあ、悪の組織が普通の企業みたいに給料制というのもおかしいイメージだけど。
げど現代社会からすると、悪の組織でも報酬システムがないと成り立たないだろうし……
にしてもポイント制? どういう事だ?
そう思っていると、カイザーが口を挟んでくる。
「まあ、その辺は要項に書いてあるだろうから、それを読むなり、ティアーに後から説明してもらえ。それより今は、案内の続きをしたらどうだ?」
「そうね。他の施設は後日でもいいとして、少なくとも今いる場所、“キャッスル・オブ・カオス”の内部は紹介した方がいいかも。ここが1番のメイン施設だしね!」
「さて、それじゃあ……」
そう言って、カイザーは外していたヘルムを再度装着して、俺達の方を振り向いた。
「大変心惜しいが、我は他にやることがあるのでな。細かい案内は、ティアーに任せるとしよう」
「OK! しっかり案内しておくから、安心してね!」
「ああ、また後でな」
そうして、カイザーが歩き出し……ふと、俺の横を通り過ぎようとした時。
「──今の内に、よく見ておくといい。貴様にとっては、どれも重要な情報になるだろう?」
「──っ!」
……そんな事を呟いて、今度こそカイザーはこの場を離れていった。
──あいつ、最早俺がヒーロー関係者だという事に気づいてんじゃねーだろうな……
流石にヒーローそのものだという所までは、掴んではいないと思いたいが……
てか、そんなやつをアルバイトとはいえ引き入れるか普通?
内部に入れても問題無いと、自信満々なのか……それとも、何か起こってもそれはそれで面白いと思っているのか……
どっちもあり得そうだなあ、カイザーなら……
「さて。それじゃあ二人になっちゃったけど、紹介の続きに行くわよー!」
「あ、ああ」
そうして、俺はティアーに連れられて、城の中を案内されて行ったのだった……
☆★☆
「ふうっ……こんな所かしら? お疲れ様ー」
「いや、本当に疲れたな……!?」
あれから俺は、ティアーに城の内部を隅々まで紹介されていた。
いたが……単純に、この城バカでかい。
一般的な巨大組織と呼ばれるものでも、せいぜい一組織につき数百人規模が平均だと考えると、それが4、5個は入りそうな広さはある。しかもこの城だけで、だ。
が……
「なんか、途中から関係ない施設ばかりなかったか……? ショッピングセンター、マッサージルーム、温泉施設……」
「え? いるでしょそれ」
「普通は用意しねえんだよ、んなもんわよぉ……」
案内されてる最中、あれ俺今何処にいるんだっけ?
休日にお出かけしてるんだっけ? 気分に錯覚してたぞおい。
【ジャスティス戦隊】の本部でも、こんな色とりどりな施設はねえよおい。
「さて、どうだった? ここまで見て」
「どうって、言われても……悪の組織って、一体……って、気分になったわ」
正直、ツッコミだらけだったのが心の底からの本音。
というか、普通に気になったんだけど……
「よくここまでの施設を揃えられたな、と。いや、マッサージルームとかそう言うのも気になるんだが……単純に、“土地の面積がバカ広いな”」
そう、それが真っ先に思った感想。
普通悪の組織の本部って、大抵ヒーローから隠れるために目立たない様にする事が多い。
もちろん、カリスマや戦意高揚の関係上敢えて目立つと言う組織もいるにはいるが……そう言うところは大抵、組織規模が十二分以上に大きい場所がやる所だ。
ヒーローにばれたとしても、返り討ちに出来ると言う自信がある場合しか普通やらない。
そう考えると、確かに【カオス・ワールド】の組織規模ならそうしてもおかしくは無いが……
「ここまでの広さで、よく今まで目立たずにいたな? 普通ここまで広いと、流石に有名になりすぎるだろ? よくこんな場所日本で見つけたな?」
そう、【カオス・ワールド】の本拠地の場所なんてヒーロー連合で今まで一切話題にならない。
ティアーの部隊とよく戦っていた時だって、あいつらいつの間にかやって来て、いつの間にか消える様に帰っていた、みたいな感じで足取りが途中で掴めなくなっていた。
つまり、何処からやって来たのか一切不明。
実はこの場所からやって来てた、と言う事なら、もっと目立ってても普通におかしくなかった。
衛星映像から逃れられないだろうし。まあ、おそらくジャミング対策とか、俺が思いつく程度の不安要素は対策済みなのだろうが……
そう勝手に納得していると……
「へ? “日本?”」
「──へ?」
「……あー、そうそう。そうね。うん、日本ね。うん」
急にそう言って、視線をあちこちに向け始めるティアー。
そしらぬ顔をしようとしている。
「──おい、ちょっと待て。もしやここ、“ガチで日本で無い?”」
「どどど、どうかしらー?」
めっちゃわっかりやすうううううううううっ!
え、マジか。ここまじか。マジで日本じゃねーのか?!
俺は冷や汗をたらりと流し始める。
マジか……無意識に日本が活動拠点だと本気で思い込んでた!?
そりゃあ、確かに世界征服を目指しているなら、日本に限定する必要もねえけど……
え? じゃあ俺、寝ている間に外国に移されてたという訳? 4日間の間に!? いやそう考えると十分時間はあるけど……
やべえ、施設の広さといい、思った以上にガチでデカイ組織だぞ【カオス・ワールド】……
「(あ、つーかいざと言う時逃げ出そうと思ってたのに、日本じゃ無いんじゃ逃げられねーじゃん!? 何処の国だここ!?)」
いや、“そもそも国か!?” 何処かの海の上埋め立てて、土地作ってるとかか!?
それなら簡単に気づかれない事にも納得いくけど……くそ、ここまでバカ広いと、なんでもありに思えてくるな!?
やべえ、【カオス・ワールド】が実際どの程度の事が出来るのかまるで把握出来てねえ!?
組織の規模は!? 人数は!? 現在の総合戦力は!? 今どれだけ世界征服の準備出来てる!? 日本以外での活動実績は!?
俺本部の事ちゃんと紹介されてる様で、実は大事な事全然教えられてないな!?
やっぱりティアーは抜けてる様で重要箇所はしっかり抑えてやがる!
「(少なくとも、見た目に騙されちゃ駄目だ。バカげた様に見えても、“そのバカげた事を本気でやれる余裕がある”って事なんだからな)」
俺はそう、しっかり気を引き締め直す。
カイザーの言っていた通り、どの情報も俺にとっては値千金だろう。
こうなったら、手に入る情報手に入れられるだけ手に入れてやる……!
「あはは……えーっと、あっ!! あそこにさっき紹介した放送室が!!」
そう思っていると、話題転換のつもりなのかティアーがある部屋を指差した。
さっき軽く説明された、放送室だった。
「確か、ティアーがいつも配信してるやつ、それをやってる場所か?」
「ううん。それは私の私用施設でやってる。こっちは【カオス・ワールド】公共用。館内のお知らせとかをやってるんだけど……そうだ!!」
そういうと、くるりとティアーは振り向いて。
「──せっかくだし、クロス君の事放送で先に紹介していい?」
そんな事を、提案して来たのだった。
★
23歳
175cm
黒髪
中立・善
主人公
【ジャスティス戦隊】のレッド。
サンタクロース改め、サタン・クロス。
【カオス・ワールド】の内部確認中。
見た目に騙されて、完全に色々油断していた。
今まで関わって来た悪の組織といろいろ違う為、困惑中。
実は施設の紹介中、脱出経路になりそうな所も確認していた。
日本じゃなかった為、大分絶望的だが。
アルバイトは可能な限り真面目にするつもりはあるが、それはそれとして情報収集と最悪の事態の想定も欠かしてはいない。
ティアーの事は色々な意味で受け入れているが、それはそれとして強大な組織のメンバーの一員だという事を改めて理解する。
★
22歳
168cm
青髪
混沌・善
【ジャスティス戦隊】のブルー。
兼、【カオス・ワールド】の幹部、“コバルト・ティアー”。
【カオス・ワールド】紹介中。
張り切って隅々まで教えていた。
だけど新人には教えちゃいけない部分は教えていない。
この場所が外国じゃないという情報も、どちらかというとバレても問題無い範囲だったから適当な態度だった。
それはそれとして、やっぱり娯楽要素は士気にダイレクトに影響するよね、とそっちばかり紹介したのも本音。
★カイザー
22歳
172cm
紫髪
混沌・悪
【カオス・ワールド】のボス。
ティアーの幼馴染み。
是非見せたかったものを見せて驚かせて満足。
この本部の光景は、これはこれで満足らしい。
面白ければ全て良しなタイプ。
少なくとも、サンタクロースが只者じゃ無い事は気づいている。
その上で、どっちに転がっても面白いだろうと受け入れている。
ちなみに、自分もちゃっかり趣味の武器コレクションの施設を作ってる。