ウチの戦隊ブルーが悪の女幹部として配信してるんだけど、どうすれば良いと思う? 作:新月
「────つっっっっっっっっっかれたぁぁぁぁ────ッ!」
俺はそう、肺の奥から吐き出すようにそう大声で呟いた。
ドサッ……と、その場で座り込む。
「最後、マジでうまく誘導出来て良かった……あれ以外、もう手が無かったんだよなあ」
一本目の黒刀を手放したのは、最後の攻防を誘発するためでもあった。
避雷針として上手くいかなくとも、そもそも俺が武器を手放した、と言う状況を作れば、トールは最後に突撃してくると予想出来たからだ。
レイピアが折れた時点で撤退してくれるならそれはそれで良かったが……トールがその程度で諦めるとは思えなかったので予想通りだった。
「もーマジ疲れた。技ガチでもー出せねえ。フラフラだ……」
出血大量も響き、俺自身も戦闘不能だ。
さっきはかっこよく俺の勝ちだ、などと申したが、これ以上戦闘は無理なのは俺もの為、実質相討ちのようなものだ。
これで決着が付いたのはとても大きいだろう。
「今の内に、もう家帰ろう……疲れた」
おそらくトールは、気絶しているだろう。
セレクト・エッジの2度目の直撃で、今度こそ動けない筈だ。
多分アバラ何本も折れてるだろうし、流石に行動不可能だろう。
命を奪うまではしていないが、これで十分だ。
例え、俺がここで見逃したせいでトールが再度俺を狙ってこようとしても、俺が【ダーク・ガジェット】を使わなければ俺だと分からないはずだ。
今後暫くは俺が大人しくしていれば、狙われることもないだろう。
暫くはこんな状況は懲り懲りだ。
「さて、あー腹が痛え……早く帰って、止血しないと……」
そんなことを、呟いて……
────突如、壁にめり込んだトールの体から、バチバチとした音が
「──嘘だろ?」
俺は思わずそう言ってしまった。
目の前の光景が信じられないからだ。
“トールがまた立っている”。
「──ご、ぽ。ゴホッ、ゲホぉッ!! や、って、くれました、ね……」
「いや、ガチで嘘だろ。なんでまだ立ってるんだよ!?」
俺はさすがに冗談だと思いたかった。
手応え的には、十二分にあった筈だ。なのに、何故まだ動ける!?
すると、気づく。“トールの体から、電気を放っている事”が。
「立たせて、いるんですよ……電気の、力で……」
「は!? お前、まさか!? “電気信号”で、無理矢理体動かしてるとか言うんじゃないだろうなぁ!?」
「その、まさかですよ……!!」
ふっっっざけんな?!!
まだそんな奥の手持ってやがったのかよ!?
人間の体は、脳から動かす指令を出すために電気信号で動いている!
トールは、それを応用してレイピアから電気を体に流して無理矢理体を動かしてるって事か!?
どんな精密操作だ、ふざけんな!?
「これで、私は、まだ動けます……これで、あなたに、トドメを……!!」
「お前、いい加減にしろ!? それ以上はお前もガチで死ぬぞ!?」
「お前を殺せるなら、覚悟の上ですッ!!」
「ッ!!」
トールの執念を、舐めていた。
俺は、無理矢理黒刀を構える。
だが、俺自身フラフラで、これ以上戦闘できる自信がない。
ヤバイ……!!
自信のなさは、【ダーク・ガジェット】の性質上、出力低下に繋がる!!
さっきまでの戦闘力を、俺は出せる自信が無い!!
やべえ……【ダーク・ガジェット】の弱点を、今まさに実感してる!?
俺はそう危機感を抱き……
「“ライト、ニング────”」
「ちょおおおっっっと、待ったああああああああアアァァァぁッ!!!!!」
「「ッ?!!」」
突如、誰かが乱入して来た。それは────
「この勝負、改めて引き分けとさせて貰うわ!! 手合わせ終了よ!!」
「ブr……ティアーッ!?」
俺達の間に、ティアーが割り込んで来た。
☆★☆
「コバルト・ティアー!! 何故ここに!?」
「何故って……あんなド派手な技の応酬してたら、嫌でも気づくと思うけど? あなたミョルニル、何回使ってた?」
「本当は、戦闘開始時からこっそり見ていたけどな……」
トールの問いかけに、ティアーは当たり前のような事を返すようにそう答えた。
やれやれ、と両手を広げて呆れた表情をしている。
「さて、決着自体は付いていたでしょう? これ以上はただの泥仕合よ。さっきも言ったように、この勝負、私が預からせてもらうから」
「はあ!? 後から来て、何を馬鹿な事を……!! お前にそれをする資格がありますか!? それに、預かるとは具体的にどうするつもりです!!」
そう言われると、ティアーはふっ……と格好付けて。
「具体的に言うと、そこの黒い彼。“ウチの組織で預からせてもらうから”」
「「ハァッ??!!!」」
そう言って、ティアーは俺の方を指差した。
その言葉に驚いたのはトールだけではなく、俺もだった。
そんな俺に対し、ティアーはこちらに振り向いて問い掛けてくる。
「あなた、一応確認だけど、どこかの組織に所属してる?」
「ど、どこかの組織って……」
【ジャスティス戦隊】所属しています。
と、内心思っていたが、ギリギリ表に出さずにいる事が出来た。
すると、続けてティアーが思い付いたようにポンっと両手を合わせ。
「あ、組織って言っても、会社とかそう言うのじゃ無いの! 普段のあなたの仕事とか学校とかじゃなくて、“悪の組織としてどこかに所属しているか?” って言う質問なんだけど、どう?」
「それなら、まあ……無所属だけど」
「やっぱり? 良かったー♪ じゃあ、ウチに来ても大丈夫よね! 【カオス・ワールド】に!」
悪の組織としては、無所属なのは確かなのでそう正直に言うと、何やら分からぬ内に【カオス・ワールド】に招待される事になっていた。
……いや、待って、何で!?
そう混乱し始めていると、ティアーは再度トールに振り返り……
「……というわけで、彼はウチの組織のメンバーになるから。彼と再試合したいなら、ウチの組織に話を通してね。そういう意味での、預かりよ」
「何を勝手な……!! やはり、そこの黒い彼は元々あなた達と関係がありましたか!?」
「へ? 全然。今日が初対面だけど?」
「ならば、何故!? その黒い彼を、庇うのです!?」
トールの、叫ぶような問いかけに。
ティアーは、「そんなの、決まってるじゃ無い」っと、両手を合わせて……
「一言で言うと……“気に入ったわ!!” こんな素質のある彼、このままここで見逃すには惜しい存在よ!! 最っ高のヴィランとして、成長する素質あるもの!!」
そう言ったティアーの目は、キラキラと輝いていた。
とても面白いおもちゃを見つけたような、宝物を見つけたようなキラキラとした笑顔だ。
すると、急に落ち着いたような表情に変わり。
「……と言うわけで、彼は持ち帰るわ。あなたも見逃すから、もう帰ったら? 辛いでしょ、そのダメージ」
「何を……何をふざけた事を!! 見ての通り、まだやれます!!」
「見栄張るのもそこまでにしたら? “あなたそれ、本当にただ動けるだけでしょう?”」
「っ?!」
ティアーの呆れたような言葉に、トールはまるで図星のように固まった。
ティアーは続ける。
「その電気信号で無理矢理体を動かすってやつ、“まだ未完成でしょう?” 本来戦いの最中に無意識にやっている事を、倒れた体で離脱する程度に動かすだけに使ってるってだけでしょう? つまりあなたはどの道戦闘不能。決着を付けたのはそこの黒い彼だから、彼の“殺したく無い”って意思に従って、あなたは見逃すって訳。分かる?」
そう言って、ティアーは自分の頭を軽くトントンッと指差してる。
まるで理解出来ない子供に言い聞かせるように。
それを聞いて、激怒したのはトールだ。
「そんな事、関係ありません……!! ティアーが何ですか!! そこの黒い彼は、確実にこの場で殺さなくてはならない存在……!! こうなったら、私の命を削ってでも……!!」
そう言って、トールのレイピアにミョルニルの前兆が再度発生する……!
「嘘でしょ、自分の命削ってまで戦うつもり!? やめなって!? そこまでする意味も無いんだし!!」
「ありますよ、私には!! あなた事、彼に一撃を加えるくらい……!!」
「──ほう? ならば、我がいた場合はどうなるのかな?」
「────は、……?」
その割り込んできた言葉に、トールは呆けていた。
まるで、信じられない声が聞こえてきたと言うように。
俺も聞いて、驚愕していた。
その声は、何度も画面越しに聞いて、聞き覚えのある声だったから。
バッと振り返ると……
──そこには、覇王がいた。
全身漆黒の西洋鎧に染まった、“恐怖”がそこに立っていた。
初めて見たときと、同じ威圧感を放ちながら。
「そこのトールとやらは、初めましてだな? 一応自己紹介といこうか。──我は“カイザー”。いずれ世界を支配しようと夢見る者だ。……そこのティアーの、上司と言えば分かるな?」
漆黒の西洋鎧に包まれて、その顔は隠れてよく分からなかったが。
何だか、とても楽しそうな声でカイザーがそう話しているように見えた。
「か……【カオス・ワールド】のトップ、カイザー!? な、何故あなたまでここに!?」
「何、元々ティアーの誘いにちょっと付き合っててな」
「さ、誘いですって!? 何かの計画ですか!?」
「ま、そんなところだな」
「(本当は、“深夜のラーメン食べに行こう”って誘っただけなんだけど、黙っておこうかしら?)」
あからさまに動揺したトールに対して、カイザーはそれはもう楽しそうに話し出している。
横に立ってるティアーが、何故か微妙に悩んでいる顔になっていたのが気になるが。
「……で、確か命を削っても戦う、と言ってたな? ──“それは、我がいてもか?”」
「────ッ!!」
「一応アドバイスするけど、やめておいた方が良いわよー? 私だけならともかく、カイちゃ……カイザーがいるなら、ワンチャンも無いわよ?」
「先ほどティアーも言ったように、この決着はそこの黒い彼がやったものだからな……我らは今回、手を出さない。そんな無粋な事するものか。ただ、これ以上命を無駄にしてまで抗うと言うのなら、話は別だがな」
「……っく、……クゥぅぅああぁぁ────……ッッ!!」
カイザーとティアーの言葉に、本気で、本気で悔しそうにトールが声を上げている。
ティアーなら、以前戦ったもの同士だから手の内は分かっているのだろう。
しかし、カイザー。彼女もいるとなると、未知数過ぎる。
ただでさえ、巨大組織のトップである上に、戦い方が分からなすぎる。
そんな中で、3対1の状態。どう考えても無理だった。
「────ッ、覚えて、なさい……ッ!!」
「ごめん、忘れるって言ったら?」
「覚えなさいッ!!」
そう言って、トールはゆっくりと体を動かして、採石場を出て行った。
近場の森の中を通るように、その姿を隠して行った……
「──さて、と……」
そう言って、ティアーは振り返り……
「改めて!! 私はコバルト・ティアーよ!! 知ってるかしら、よろしくね!!」
「ふむ。我はカイザーだ。よろしく頼む」
「あなたのお名前は?」
ティアーとカイザーが、俺に向かって向き合って、そう自己紹介してきた。
そうして、俺に名前を問いかけてくる。
「俺、おれ、は────……」
なんて、答えようか。
そう悩んでいる内に……
「あ、れ──……?」
「ちょ、ちょっとッ?!」
……気付けば、視界が横たわる。
どうやら、俺自身が、倒れたらしい。
やべえ、意識が、もう……
「ちょっと、大丈──うわっ!? かなり血流してる!?」
「ふむ、限界だったな。さっさと治療ポッドか何かに詰め込まないとまずいかもな」
「キャーッ?! 嘘でしょ!? キュ、救急車ーっ!!」
「ヴィランっぽい格好の彼に、それを呼んだら不味いのでは無いか?」
「そ、そっか! そうじゃなくて!? れ、レイズちゃーん!! レイズちゃんに連絡ー!!」
……そうして、俺が意識を保っていたのは、その会話を聞いたのが最後だった……
「──まあ。十中八九……」
そのカイザーの呟きを、聞き逃したまま。
★佐藤聖夜(さとうせいや)
23歳
175cm
黒髪
中立・善
男
主人公
【ジャスティス戦隊】のレッド。
流石に出血多量過ぎて、気絶した。
ヴィランに捕まった、と言う意味では。彼もこの試合、負け扱いだろう。
ヴィランとして、引き際の見極めが出来ていないのはまだまだ。
★トール
──歳
──cm
──髪
秩序・善
女
【ジャッジメント】の一人。電気使い
もうほぼ、戦う力は残っていなかった。
命を削ったとしても、ミョルニル一振りが限度位。
そもそもティアーが来た時点で無理筋だった。
カイザーも来た事で、やっと頭が冷えて撤退を選べた。
ある意味、ヴィランに対して救われた形となり、余計に心が傷ついた。
★ティアー&カイザー
実はずっと見てました。(ここ好き一覧で見つけやすいよ!)
新しい期待の新人が増えそうでとってもワクワク。
ちなみに、鎧は外さずに治療するつもりらしい。
プライバシーの侵害だからね! そこはちゃんとしてるとの事。
カイザーが何かに気付いている。
☆★☆
「──クソッ! くそ、くそ、くそおっ!!」
私は、森の中を走っている。
負けた、負けた、負けた……っ!!
黒い彼に、トドメを刺す事が出来なかった!!
ティアーとカイザー相手に、立ち向かう事が出来なかった!!
みすみす逃げ出す事しか、出来なかった!!
完膚なきまでに、負けた!!
ヴィランに対して、完全に負けた!!
「くっそおおおぉぉぉァアアアアアアア────ッッッ!!!!」
私は、近くの木に対して、八つ当たりのように頭をぶつけるしか出来なかった。
頭をガンッ、ガンッ、とぶつけ続けていた。自分に対しての、罰のように。
「負けた……負けた……ッ!!」
その衝撃で、ヘルムがカランっと取れて地面に落ちる。
それでもなお、頭を木にガンっとぶつけて。
悔しくて、悔しくて……
「──負けちゃいました……“レッド先輩”──」
その声は。誰にも聞かれる事は無かった。
★
21歳
167cm
黄髪
秩序・善
【ジャスティス戦隊】のイエロー。
レッドの後輩。
レッドが長期休暇に入ったと同時に、彼女も大怪我して本部に現れた。
本人曰く、バイクに初挑戦して盛大に失敗した、との事。
ピンクが大慌てだったのは言うまでもない。
感想とかくれると、とても作者は嬉しいです。