ウチの戦隊ブルーが悪の女幹部として配信してるんだけど、どうすれば良いと思う? 作:新月
──あれから暫く攻防が続いた。
トールの雷の槌を回避し、俺が選択する斬撃を飛ばし、の繰り返し。
どっちも互いに譲らない、実質硬直状態。
しかし、それが時間が経つにつれて、互いに崩れていく事になる。
「ミョルニ、ぐうっ──ッ!!」
常時、雷の槌を展開し続けていたトールが、膝をつき始めた。
雷の槌の展開が、再度途切れる。
「ははッ! もうその必殺技だし続けるのが限界か!! もう疲れたんじゃねーの?」
「うるっ、さいッ!! “ライトニング・スティングゥ──ッ!!”」
通常のレイピアに戻ったまま、トールが例の高速移動を放ってくる。
それを俺は躱そうとするが……
「っくぅ……ッ」
軽い、目眩。
フラッ……とする頭のせいで、一瞬動作が遅れた。
どうやら、血を流しすぎた影響がとうとう出始めてきたらしい。
すぐに意識を戻すが、回避が間に合わない。
「貰った──ッ!!」
「渡すかぁッ!?」
トールの必殺技の突きに合わせ、黒刀を振る。
ガキィンッ! と音がして、レイピアの向きを腕ごと弾き、突き刺しは免れた。
「グゥううッ!?」
「チィぃぃッ!?」
が、肝心のトール自体を止められず、俺の胴体にトールがそのままの勢いで直撃。
胴体にトールが突っ込んだまま、俺は大きくトールごと引きずるように後退してしまった。
穴が空いた胴体にぶつかったから、普通に激痛が走って痛え……ッ!!
「もう、回避の気力も無いでしょう!! このまま、突き刺してやります!!」
勢いが止まって、俺とトールがほぼ近い状態で止まった後、トールはレイピアをそのまま突き刺そうとしてきた。
必殺技を使わず……いや、もはや使えない状態でも、素の武器の腕前でトドメを刺そうとするつもりだ。
疲労困憊な状態ながらも、高速の突きが俺に襲いかかり……
「っらあッ!!」
ガキィッ! と、それを黒刀で弾く。
「ッ、なら、これでどうですか!?」
直後、すかさず何十発もの連打の突きを放ってくるトール。
まるで横に降ってくる雷雨のような怒涛の勢い。それを……
「甘い、わぁぁぁッ!!」
全て、弾く。──弾く、弾く、弾く。
ガキキキキキキィィッッ!! と、金属同士が弾かれる音が辺りに響き渡る。
何十、何百もの突きは……俺によって、全て弾かれた。
「な、ん……でっ?!」
トールはヘルムの下で、驚愕したような表情になっていたと思う。
必殺技では無いとはいえ、ここまで防がれたのは予想外だったのだろう。
当然だ。俺が普段、誰と模擬戦していると思ってやがる。
あのグリーンさんのガトリング掃射と、何度も向かい合っているんだ。
あの人に比べたら、この程度の連打、遅いにも程がある。
そして、トールのレイピアと何度もかち合った結果。
“俺は、大体の強度を理解出来た”。
「オラアぁッ!!」
「ぐ、があっ?!」
動揺したトールは、その隙を突かれて俺に蹴り飛ばされる。
黒刀に注目し続けていたせいで足を警戒してなかったのか、トールはそのまま吹っ飛んだ。
「“セレクト・エッジィッ!!”」
そのまま追い討ちを掛けるように、飛ぶ斬撃を。
これが決まったら、止めになる。
「させ、るかァァアッ!!! “ライトニング・スティングゥ──ッ!!”」
ただトールも、負けじと崩れかけた体勢のまま、例の突進技を放つ。
方向は、直接俺の方ではなく、真上。飛ぶ斬撃は、その真下を過ぎていった。
空中に、すごい勢いで飛び上がるトール。高さは、30mにも及ぶ。
「これが最後!! 雷神の槌/ミョルニル──ッ!!」
空中に飛び上がった彼女は、3度目の正直とばかり、最後の力を振り絞って雷の槌を再展開する。
「ここだ……っ!!」
俺はここが、最後の正念場だと理解した。
一見空中に飛び上がって、自分から隙を晒したように見えるトール。
雷の槌を展開したとはいえ、空中では身動きが出来ないはずだ。
しかし、彼女にはもう一つ必殺技がある。それは……
「“サンダーフォール・スピアァッ!!”」
やっぱり使ってきやがった。
予想通り、“トールの体に電気が纏っていく”。
この戦いで、一度だけ見せた急速落下の技。唯一、空中から能動的に地上に戻れる方法。
それを、“雷の槌が展開状態で行ったら”どうなると思う?
答えは、“雷の如く急速落下の勢いに乗せた、雷の槌による一撃”。
おそらく今までで、最高の破壊力と速度を兼ね備えるだろう。
サンダーフォール・スピアと、ミョルニルの組み合わせ。それこそが、トールの真の切り札。
最速で、最大の一撃。
最早、フラついた俺の体では回避は無理だろう。
強化した足でその場から離脱しようとしても、とても間に合わない。
つまり、俺の取れる方法は……
「迎撃……ッ!!」
それしかない。
ただし、タイミングはかなりシビア。
見た所トールは、サンダーフォール・スピアを発動準備はしても、発動待機状態でまだ様子を見ている。
あれは、こっちがセレクト・エッジを放ったらそれに合わせて落下するつもりだ。
つまり、こちらが先にセレクト・エッジを放っても、斬撃が届くまでにトールは既に落下済みという事になる。
だから、放つなら落下直後。
ギリギリ俺に到着するまでの一瞬の間が、俺が迎撃するラストチャンス。
俺は黒刀を構えて、トールを睨む。
チャンスは一瞬。失敗すれば終わり。
狙いは、決まってる。
「…………ッ」
準備万端の俺を見て、トールはまだ落下技を発動しない。
それはそうだろう。俺が今思っていた事、トールが気づかないとは思えない。
けれど、その待機にも限界はある。
トールは、あくまで空中に飛び上がった状態だった。
つまり、その勢いが死んだ今、自由落下し始めている。
地面に近づくにつれ、最後の切札の威力が弱まる筈だ。
つまり、トールの選択する時間は限界だ。
「────ッ! 落ちろッ!!」
その叫びとともに、動いた。来るッ!!
トールが急速落下する!! それに合わせ、黒刀を振る!!
「打ち砕け!! “雷神の槌/ミョルニル”ゥゥゥ────ッ!!!!」
「“セレクト・エッジ”ィィィ────────ッ!!!!」
振り下ろされる雷の槌と、放たれる黒い斬撃が────
☆★☆
────あたりに、砂埃が舞い上がる。
巨大なエネルギーの衝突で、あたり一面に酷い被害が出ていた。
ユラリ、と。砂埃の中から、誰かが立ち上がる。
白い西洋鎧。トールだ。
「…………お、前──ッ」
トールは、憎しみのような声をヘルムの下から放っていた。
砂埃のとある奥を、睨み付けている。
彼女は、ギュッと武器を握りしめる手に力を込めていた。
その武器のレイピアが、“根元から折れていた”
「……へへ。狙いは、成功っと……」
俺は、砂埃が晴れた中からそう言った。
自分で言うのもなんだが、その声は自信に溢れていた。
「最初から、これが狙いでしたか……ッ!!」
「そう。そっちの方が成功率高かったしな」
そう、俺の狙いは、トールではなく、彼女の【ライト・ガジェット】だった。
先ほどの迎撃、トール自体を狙っても良かったのだが、あの急速落下。衝撃が止まり切れる保証が無かった。
それならば。“何度も打ち合った結果、強度をなんとなく理解した”トールの【ライト・ガジェット】を叩き切る方が、成功率は高いと踏んでいた。
あの普通の突きの連続で、なんとなく感触は掴んでいたしな。いける、と判断出来た。
確かに、雷の槌は直接斬ってもすぐに再構成する。
しかし、“根本なら?”
発動の起点となる、レイピア自体を破壊すれば、雷の槌は霧散。もしくは、制御不能で根元から折れ落ちると踏んでいた。
結果は、根元から折れ落ちる方。雷の槌が完全には消えなかったが、トールの急速落下の勢いを乗せられず、自由落下で落ちて来た。
あれなら、回避は余裕になった。
俺は、“ほんの少し無理”をしてその場から離脱する事で、あの攻撃を回避する事ができたのだ。
「これで、お前は武器を失ったな。もう帰ったら?」
俺はトールに、そう促すように声を掛ける。
だが……
「──“それは、あなたも同じでしょう!!”」
そう、怒声で返されてしまった。
……あ、やっぱり?
「そんな分かりやすいものを、見逃すと思いますか!? 見なさい、そこに突き刺さっている黒い刀を!!」
そう言って、トールは折れたレイピアで俺とトールの合間の地面を指し示した。
ピシッ、ピキッ……
……そう、そこには黒刀が突き刺さっていた。
さっき、ほんの少し無理をして回避、と言ったが。あれは、黒刀を突き刺して、両足と腕の力でその黒刀を支えにして、その場から全力で離脱したのだ。
また、黒刀を突き刺したのは“避雷針”代わりとして、落ちてきた雷の槌を少しでも受けてくれないかな、と予想してのことだった。
コントロールを失った雷の槌が、地面に落下の衝撃であたり一面電撃の衝撃波が発生、とならないように、真っ先に電気が伝わりやすいものを置きたかったと言う理由もある。
結果は、予想通り。
折れた雷の槌の電気は、全て黒刀が避雷針として受け持ってくれた。
だが……
ピシッ、パキッ────
バキィィィィィィィンッッッ!!!!!
……そこには、たった今粉々になった黒刀が。
「──完全に、粉々になりましたね。あなたの武器は」
「くっそ……やっぱり、あの雷の槌直撃は耐え切れなかったか……」
見事に、俺の回避のために避雷針となってくれた黒刀だったが、流石に全てをそのまま受けては耐えきれなかったようだった。
役目を果たしたとばかりに、その身を粉々にして消え去った。
「これで、あなたは完全に武器を失った!! 対して私は、折れていたとしてもまだ根元は健在!! あなたをこのまま突き刺すくらいなら出来る!!」
「く、そ……ッ!!」
「もう逃げる気力もないでしょう!! 今度こそ、死ねえ!! “ライトニング・スティングゥ──ッ!!”」
そうして、折れたレイピアのまま、突進技を発動して接近してくるトール。
丸腰の俺に、迎撃の手段は今度こそ無い。そう思っての判断だろう。
俺は、終わる──
そうして、刹那の時間の中────
「──な、ぜ……?」
トールは、その時間の中で、そう溢す。
既に移動開始した後。ストップは出来ない。
その移動中の刹那の意識の中、トールは俺を見てそう言った。
──俺の手には、“黒刀があった”からだ。
「……知らないの、トール?」
俺は、トールに対して。
最近聞きかじった知識を。
「──“最近のヴィランは、武器複数持ちがトレンド”だってさ?」
「あの黒い鎧の彼、分かってるぅ──!!」
「ほう? なかなかの策士だな」
「あ、なた────ッ!!」
トールが、叫ぶような声を出すがもう遅い。
「“セレクト・エッジィィィィ────!!!”」
最後の、残った全力の一撃をトールに放つ。
最初から、トールがこちらに向かってくると予想した上での攻撃だ。タイミングはバッチし。
「ぐ────がアアアアアアアァァァぁぁぁぁッッッ??!!!」
直撃したトールは、そのまま斬撃ごと後方へ飛ばされていく。
「……ライトニング・スティングの勢いプラス、真正面からのセレクト・エッジ。正面衝突の勢いの合算だ」
俺は、吹き飛んでいくトールを見ながらそう呟き。
「──俺の、勝ちだ」
壁に叩きつけられた、トールを見つめてそう言った。
★佐藤聖夜(さとうせいや)
23歳
175cm
黒髪
中立・善
男
主人公
【ジャスティス戦隊】のレッド。
ちゃっかり予備の【ダーク・ガジェット】を再発動していた男。
ティアーが以前ショッピングセンターの屋上でやっていた事を、しっかり覚えて参考にした。
【ライト・ガジェット】が壊れる事は、最近【レッド・ガジェット】で知った為、壊せると確信していた。
あの経験が無かったら、壊すと言う発想に至れなかっただろう。
★トール
──歳
──cm
──髪
秩序・善
女
【ジャッジメント】の一人。電気使い
【トール・ガジェット】が今回折れてしまった。
修復は可能だが、例え生きてこの場を離脱出来たとしても、暫くの戦線離脱はこの時点で確定してしまった。
★??? &???
黒い鎧の戦いぶりに大興奮中。決着が付いた為、そろそろ出る準備をし始める。
長い期間掛かったトール戦、決着です。